• 更新日 : 2022年7月28日

上場廃止のメリット・デメリットを解説!廃止する原因や事例も紹介

上場廃止は、投資家を保護する目的で作られた仕組みです。経営状況が悪くなったときに上場廃止すると思われがちですが、健全な経営状況の企業でも、上場廃止をすると知っている人は少ないのではないでしょうか。

本記事では、上場廃止を知りたい初心者の方に向けて、上場廃止のメリットやデメリットを解説します。さらに上場廃止になる原因や事例についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

上場廃止とは

上場廃止のメリット・デメリットを解説!廃止する原因や事例も紹介
上場廃止とは、証券取引所が取り決める基準に該当したり、上場している会社が自主的に申請したりすることで、取引所で株式等の売買が終了することです。上場廃止が決まった会社の株式は「整理銘柄」に指定されて、投資家に「上場廃止すること」を周知する期間が設けられます。そして一定期間、売買がおこなわれた後、上場廃止が実施されるのです。

上場廃止となる原因

上場廃止のメリット・デメリットを解説!廃止する原因や事例も紹介
上場廃止となる原因は主に2つです。

  • 上場廃止の要件を満たした
  • 経営戦略として上場廃止という手段を選ぶ

経営破綻が上場廃止の理由になるのでは?と思う方もいると思います。経営破綻が原因で上場廃止になる事例は、実際は多くはありません。2020年には東京証券取引所では57社の会社が上場廃止となりましたが、経営破綻による上場廃止は2社のみです。

主な原因は、上場廃止の要件を満たす、あるいは経営戦略として上場廃止という手段を選ぶことなのです。

上場廃止の要件を満たした

1つ目の原因は、上場廃止の要件を満たしたことです。代表的な要件には、以下の6つがあります。

  • 上場維持基準への不適合
  • 有価証券報告書の提出遅延
  • 虚偽記載又は不適正意見等
  • 特設注意市場銘柄等
  • 上場契約違反等
  • その他

その他の例としては、銀行取引の停止や反社会勢力の関与などがあります。

このように、投資家が安心して投資できるか否かに関わる事項は、上場廃止の基準に該当するのです。

経営戦略として上場廃止という手段を選ぶ

2つ目の原因は、経営戦略として上場廃止を選ぶことです。上場廃止すると、株式を自由に売買できなくなるので、会社の外部から経営に関与されるリスクを減らせます。つまり、敵対的買収を回避する手段として、上場廃止が有効なのです。さらに、株主の評価を気にせずに済むので、経営者は中長期的な視点で経営に打ち込むことができるのです。

上場廃止のメリット

上場廃止のメリット・デメリットを解説!廃止する原因や事例も紹介
上場廃止には、2つのメリットがあります。

  • 経営権を獲得できる
  • 上場の維持にかかる費用を削減できる

経営権を獲得できる

上場していると、経営者は株価を上げる目的や、株主の評価を得るために、短期的な利益を気にしなくてはなりません。しかし、上場廃止にすれば外部から経営に関与されなくなるので、経営者が経営権を獲得できるのです。したがって、事業方針などの意思決定をスムーズにおこなえ、迅速な経営判断が可能になります。

上場の維持にかかる費用を削減できる

上場廃止をすれば、上場を維持するための費用を削減できます。上場維持にかかる費用は、以下の通りです。

項目費用相場
年間上場料48万円~456万円(時価総額および上場する市場により異なる)
TDnet使用料12万円
株券の発行などにかかる料金株価と発行する株式数などから算出
新株の上場にかかる料金株価と発行する株式数などから算出

TDnetとは、Timely Disclosure networkの略称で、適時開示情報伝達システムを意味します。上場企業は上場規定により、TDnetの使用が義務付けられています。

上場廃止により、継続的に発生する数百万円という規模の費用を削減できるのです。

上場廃止のデメリット

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一方、上場廃止には2つのデメリットもあります。

  • 資金調達の方法が制限される
  • ブランドイメージが下がる可能性がある

資金調達の方法が制限される

上場廃止した企業は、証券取引所を通じて不特定多数の投資家から資金を調達できなくなります。多額の資金を短期に調達できる手段を失うので、事業を継続するための資金調達の目途をつけておくことが重要です。

ブランドイメージが下がる可能性がある

上場廃止になると、一般消費者や取引先が抱くブランドイメージが下がり、売上に影響する恐れがあります。さらに、企業の信用力が下がれば、金融機関からの借入が難しくなる可能性すらあります。ブランドイメージの低下を避けるためには、取引先などに対して上場廃止の理由を明らかにするといった配慮があるとよいでしょう。

上場廃止の事例

上場廃止のメリット・デメリットを解説!廃止する原因や事例も紹介
上場廃止となった企業の例は以下の通りです。

企業名上場廃止の理由
ジーンズメイトREXTの完全子会社化
よみうりランド株式の併合
日本通運NIPPON EXPRESSホールディングスの完全子会社化
大塚家具ヤマダホールディングスの完全子会社化
島忠株式の併合

主な上場廃止の理由は、完全子会社化や株式の併合が主な理由です。経営破綻が理由となることは、少ないことがわかります。

上場廃止後も再上場できる

上場廃止のメリット・デメリットを解説!廃止する原因や事例も紹介
上場廃止をしても、改めて審査を通過すれば再上場できます。ただし、再上場の場合は、新規に上場する(IPO)よりも厳しい審査基準が設けられています。新規に上場する条件は、上場する株式市場によって以下のように定められています。

上場維持基準プライムスタンダードグロース
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数20,000単位以上2,000単位以上1,000以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
財政状態連結純資産50億円以上
かつ単体純資産の額が負でないこと
連結純資産が正
利益の額(連結)最近2年間の利益の額の総額が 25 億円以上であること
または
最近1年間における売上高が 100 億円以上である場合で、かつ、 時価総額が 1,000 億円以上となる見込みのあること
最近1年間における利益の額が1億円以上であること

例えば、MBO後に再上場する場合を考えます。MBO(Management Buyout)とは、経営陣が自社の株式を買い取って、会社を非公開化する手法です。再上場を申請する場合は、MBOと再上場の関連性が問われることがあります。具体的には、経営者や株主に変化はあったのか、あるいはMBOから再上場するまでの期間などが審査されます。

上場廃止後に再上場した企業の例は、以下の通りです。

  • 製紙メーカーである大王製紙は、1963年に上場廃止、1982年に再上場
  • 通信事業者であるソフトバンクは、2005年に上場廃止、2018年に東証1部に再上場
  • 外食産業者であるすかいらーくは、2006年に上場廃止、2014年に東証1部に再上場

上場廃止のメリットを理解しよう

取引所で株式等の売買が終了する上場廃止には、経営権の取得と上場を維持する費用を削減する2つのメリットがあります。一方で、資金調達やブランドイメージに影響があるデメリットも知っておくと良いでしょう。さらに、経営戦略として上場廃止という手段を選ぶことがある点を把握しておくと、理解が深まるでしょう。

よくある質問

上場廃止に関する、よくある質問に回答します。

上場廃止とは?

上場廃止とは、投資家を保護する目的で作られた仕組みであり、取引所で株式等の売買が終了することです。

上場廃止するメリットとは?

上場廃止するメリットは、経営権の取得と上場を維持する費用を削減する2つです。

上場廃止するデメリットは?

上場廃止するデメリットは、資金調達の方法が制限される点と、ブランドイメージが下がる可能性がある点です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。