• 作成日 : 2022年10月21日

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

上場を考えている担当者は、上場申請のスケジュールについて全体像を把握しておきたいのではないでしょうか。スケジュールを見て逆算しないと書類の準備などが間に合わないケースもあるため、上場申請にあたっては監査法人の監査証明が2期分必要になること、上場の準備は3〜4年かけて進めていく必要があることを理解しておく必要があります。

本記事では、上場申請での対応事項やスケジュール、必要書類について解説しています。

申請から上場までの期間

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

一般的に、上場を検討してから準備を進めていくためには、上場準備期間として3〜4年程度の期間を要するとされています。上場するためには、資本政策の策定や社内管理体制の整備、財務報告にかかる内部統制の整備などに大きな時間と労力を要するからです。

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上図は、上場準備を進めるうえでのモデルケースです。上場の準備に3〜4年、申請から上場までは2〜3ヶ月かかるとされています。想定したスケジュールにあわせて上場するためには、証券会社やIPOコンサルタントからサポートを受けて、会計監査の受入体制を整備していくとよいでしょう。

上場申請の流れ

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

上場申請の準備ができた場合、主幹事証券会社は、上場申請の2週間前までに上場申請のエントリーを行います。エントリーが行われたあとは、上場申請の事前確認として、公開指導・引受審査の内容に関する事項や反社会的勢力との関係、審査日程などが確認されます。

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

上場申請のスケジュールは通常、上記のような流れで行われます。上記の流れの中で、会社が上場申請に向けて進めるべき手順は以下のとおりです。

  1. 書面による質問・ヒアリングへの回答
  2. 実地調査への対応
  3. 監査法人・代表者・監査役・独立役員への面談
  4. 社長による説明会の実施
  5. 上場承認の公表

①書面による質問・ヒアリングへの回答

申請時に提出する書面(上場適格性調査に関する報告書)による質問に加え、公開指導・引受審査の内容に関する事項、反社会的勢力との関係、審査日程についてのヒアリングが行われます。

ヒアリングでは、主要幹事証券会社が上場申請に至るまでに実施した公開指導・引受審査の過程で特に気になったことや、書面の内容に関する確認が行われます。具体的には、会社の業種形態や法令違反の存在、事業上起こりうるリスクなどについてのヒアリングです。ヒアリングは3回ほど行われるため、それぞれの質問へ回答できるよう、準備しておく必要があります。

②実地調査への対応

実地調査では、審査担当者が本社や工場、店舗などへ訪問し、事業の内容を調査します。また場合によっては、会計伝票や帳票等も閲覧され、会計手続きに関する確認が行われます。

③監査法人・代表者・監査役・独立役員への面談

代表者・監査役・独立役員への面談では、審査担当者より、役職に応じたヒアリングが行われます。また会計監査を実施している場監査法人等への面談が行われる場合もあるようです。

それぞれの役職に対して行われる面談では、以下のようなことが質問されます。

【代表者へのヒアリング項目】

  • 経営に対するビジョン
  • 上場会社となった場合の株主への対応
  • コーポレート・ガバナンスおよびコンプライアンスの体制および運用状況
  • 適時開示に関する体制および内部情報管理に関する体制

 

【監査役へのヒアリング項目】

  • 実施している監査の状況
  • 会社が抱えている課題

 

【独立役員へのヒアリング項目】

  • 会社のコーポレート・ガバナンスに対する方針・現状の体制および運用状況
  • 経営者のコンプライアンスに対する意識
  • 独立役員の職務遂行のための環境整備の状況
  • 経営者が関与する取引の有無や当該取引への牽制状況等についての評価
  • 上場後に独立役員として果たすことが期待される役割・機能等についての認識

 

【監査法人へのヒアリング項目】

  • 会社の会計組織の整備・運用状況
  • 会計参与の関与状況

④社長による説明会の実施

社長説明会では、社長が金融商品取引所へ訪問し、会社の特徴や経営方針・事業計画について説明を行い、それらに対する質疑応答などによって上場可否の最終的な判断が行われます。また、当日は日本取引所自主規制法人役員から上場会社になった場合の留意事項・要請事項について、審査担当者から説明されます。

⑤上場承認の公表

上場が承認された場合は、金融商品取引所のホームページ等で公表されます。上場により公募または売出しを行う場合は約1ヶ月後、他市場においてすでに上場している会社で公募または売出しを行わない場合は、上場承認の公表から1週間後に上場することとなります。

【期間別】上場申請の対応事項

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

上場申請の対応事項は、上場準備期と申請期間に分かれます。ここからは上場の直前前々期(3期前)から申請期までの対応事項を、期間別に紹介していきます。

直前前々期

上場申請の直前前々期(3期前)は、上場の意思決定を行う時期です。まずは監査法人やIPOコンサルタントからショートレビューを受けて、株式上場までに改善すべき全体像を把握することをおすすめします。

直前前々期に対応すべき事項は、以下のとおりです。

  • IPOコンサルタントの選定
  • IPO準備責任者の選定
  • 主幹事証券会社、監査法人の選定
  • ショートレビューの実施
  • IPO準備スケジュールの検討・決定
  • IPO準備プロジェクトチームの編成
  • 社内協力体制の構築
  • 内部統制の整備
  • 資本政策の策定
  • 経営計画の策定

直前々期

上場申請の直前々期(2期前)では、経営管理体制の整備が終了し、運用が始まっている時期です。上場申請の直前2期分は監査法人による監査証明が必要となるため、会計制度の整備を行いましょう。

直前々期に対応すべき事項は、以下のとおりです。

  • 監査法人による会計監査の実施
  • 月次決算の早期化
  • 会計制度の整備
  • 資本政策の見直し
  • 経営計画の見直し

直前期

直前期(1期前)に入ると、上場後と同様の体制で運用されていることが望ましいです。また、この時期から、上場申請に必要な書類の準備や、上場する市場の選定(グロース市場、スタンダード市場、プライム市場)が始まります。

直前期に対応すべき事項は、以下のとおりです。

  • 市場の選定
  • 証券会社の選定
  • 株式事務代行機関の設置
  • 申請書類の作成準備

申請期

上場申請書類を完成させてエントリーを行うことで、上場申請にあたっての事前確認が行われます。上場申請では、ヒアリング審査や実地調査などの審査が行われるほか、代表者面談や社長説明会の実施も行われます。取引所の上場審査が終了すると、上場承認の公表が正式に行われるという流れです。

申請期に対応すべき事項は、以下のとおりです。

  • 株主総会
  • ヒアリング審査
  • 実地調査
  • 監査法人・代表者・監査役・独立役員への面談
  • 定款の変更
  • eラーニングの受講
  • 取引所による上場審査
  • 上場申請書類の完成
  • 目論見書の配布
  • 社長説明会の実施
  • 上場承認の公表

上場申請に必要な書類

上場申請のスケジュール|期間別の対応事項や必要書類をわかりやすく紹介

上場申請に必要な書類は以下のとおりです。

  • 特定証券情報

発行者の事業や経理に関する事項など、発行する有価証券に関する情報を記載します。

  • 有価証券届出書(Ⅰの部)

財務局などに提出する書類で、電子開示に対応する形でなければなりません。

  • 有価証券届出書の訂正届出書

特別な理由がない限り2回提出しなければなりません。1回目は公募・売出しの仮条件価格を決定後、2回目は公募・売出し価格の決定後です。

  • Ⅰの部改訂版

有価証券届出書と内容に相違がないかを確認するために必要な校了時点のデータ。PDFを作成し納品しなければなりません。

  • 目論見書

有価証券届出書の内容を法令に従って記載した書類。投資者の理解を深める目的でグラフや写真を使用してもいい書類です。また、有価証券届出書の訂正が発生した場合は目論見書の訂正事項分が必要です。

  • 大量保有報告書

発行済み株式の保有率5%以上になって5営業日以内に財務局に提出します。

  • コーポレート・ガバナンス報告書

コーポレート・ガバナンスに関する会社の取組みや、基本的な考え方、目的などを記載します。

  • 定款

会社で定めている社内ルールを記載します。社内ルールとは、事業の目的や商号(法人名)、本店の所在地などのことです。

  • 支配株主等に関する事項を記載した書面

申請会社が支配株主等を有する場合は「支配株主等に関する事項を記載した書面」の提出が必要です。支配株主等とは、親会社または、議決権の過半数を所有している関係会社のことをいいます。

  • 非上場の親会社等に関する決算情報

申請会社が非上場の親会社等を有する場合は「非上場の親会社等に関する決算情報」の提出が必要です。

  • 特例第 313 条の規定に基づき担当 J-Adviser との間で締結した契約(写)
  • TOKYO PRO Marketへ上場するためには、東京証券取引所から認証を受けたJ-Adviserとの契約が必要ですが、その際に使用した契約書の写しを上場申請のために提出する必要があります。

  • 新規上場申請に係る内国株券等の評価額算定書(算定根拠に関する書面を含む)
  • 直接上場銘柄かつ、特定投資家向け取得勧誘または特定投資家向け売付け勧誘等を実施しない場合は、算定根拠に関する書類を含む「新規上場申請に係る内国株券等の評価額算定書」の提出が必要です。

  • 有価証券新規上場申請書
  • 新規上場申請にかかる株券等の内容や潜在株式の状況など、新規上場する株券等の情報を記載します。

  • 新規上場申請に係る宣誓書
  • 新規上場申請および上場審査において提出する書類について、必要な情報が漏れなく記載してあることや、真実を記載していることについて、宣誓を行います。

  • 上場適格性に係る宣誓書
  • 上場する会社が、上場適格性要件を有していることについて、宣誓を行います。

  • 上場適格性に係る宣誓書の作成にあたって留意すべき項目
  • 上記宣誓書の作成にあたって調査および確認を行った結果、上場適格性要件を満たしていると判断した項目について、チェックを記入します。

  • 流動性プロバイダーに係る届出書
  • 東京証券取引所の定義によると、流動性プロバイダーとは、上場会社の発行する株券等の売買を円滑にするために、売付けおよび買付けの気配の表示等を行う取引参加者のことをいいます。上場申請にあたって会社は、流動性プロバイダーに指定されたことについて、届出書を提出する必要があります。

  • 流動性プロバイダーの義務の遵守に係る確約書
  • 流動性プロバイダーに指定された会社は、上場後の株券等について円滑な流通の確保に努める義務を担います。上場申請にあたって義務の遵守に同意できる場合は、確約書の提出を行います。

  • 上場契約書
  • 株券等を上場するにあたり、東京証券取引所が定めた事項について承諾できる場合は、上場契約書を提出します。

  • 監査概要書、中間監査概要書もしくは四半期レビュー概要書
  • グロース市場への上場で必要になる書類。監査法人や公認会計士が作成したものが必要です。

  • 監査報告書、中間監査報告書もしくは四半期レビュー報告書
  • 監査法人もしくは公認会計士が作成した監査関係の書類を提出しなければなりません。

    まとめ

    上場の準備にあたっては、内部統制やコーポレート・ガバナンス、経営管理体制の整備が求められるため、時間と労力がかかってしまいます。また上場申請に必要な書類が膨大であることから、自社で完結させることは難しいでしょう。

    上場の準備をスムーズに行うためには、早い段階でIPOコンサルタントや監査法人等の専門家に依頼することをおすすめします。専門家からショートレビューを受けることで、課題抽出および改善のためのアドバイスがもらえるからです。また専門家に依頼することで、上場申請に至るまでの全体像が把握しやすくなる特長もあります。上場準備の全体像を把握しておくことで、やるべきことが明確になり、社内の連携もスムーズに行えるのではないでしょうか。

    よくある質問

    上場までにどのくらいの期間が必要?

    一般的に、上場を検討してから準備を進めていくためには、上場準備期間として3〜4年、申請から上場までは2〜3ヶ月の期間を要するとされています。

    上場に必要な書類にはなにがある?

    上場申請に必要な書類には、以下のようなものがあります。

  • 特定証券情報
  • コーポレート・ガバナンス報告書
  • 定款
  • 支配株主等に関する事項を記載した書面
  • 非上場の親会社等に関する決算情報
  • 特例第 313 条の規定に基づき担当 J-Adviser との間で締結した契約(写)
  • 新規上場申請に係る内国株券等の評価額算定書(算定根拠に 関する書面を含む)
  • 有価証券新規上場申請書
  • 新規上場申請に係る宣誓書
  • 上場適格性に係る宣誓書
  • 上場適格性に係る宣誓書の作成にあたって留意すべき項目
  • 流動性プロバイダーに係る届出書
  • 流動性プロバイダーの義務の遵守に係る確約書
  • 上場契約書

  • ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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    上場までの道のりガイド

    監修:中川崇

    田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。