- 更新日 : 2024年7月12日
ディスクロージャーとは?企業が実施するメリットやデメリットを解説
ディスクロージャーとは、企業が自らの財務状況、業績、経営戦略、リスク要因などの重要な情報を公開することを指します。この情報の開示は、投資家やその他の利害関係者が、その企業の健全性や将来性を評価する上で不可欠です。
本記事ではディスクロージャーとはどのようなものかと併せて、生まれた背景や実施するメリット・デメリットを解説します。
目次
ディスクロージャーとは
ディスクロージャーとは、情報開示(情報公開)のことを指す言葉です。多くの場合は、企業が投資家や株主・債権者などに対して経営内容を開示することをいいます。
主な目的は投資家の保護ですが、会社にとってプラスとなる材料を情報公開することも一つの目的です。
投資家の興味を多く引けば市場からの資金調達が容易になるため、上場企業であっても積極的にディスクロージャーを行うのが一般的でしょう。
もちろん、プラスの情報だけでなくマイナスの情報を公開することもあります。企業経営について不利益となる要因や不祥事などが発生した場合に公開されることが多く、投資家からの信頼を得るために有効な手段といえるでしょう。
ディスクロージャーが生まれた背景
ディスクロージャーが日本で注目されるようになったのは、1990年代後半のことです。
当時の日本では、金融市場を自由かつ公正で国際的な市場とするために「金融ビッグバン」と呼ばれる制度改革が進行していました。「金融ビックバン」は資産運用手段の充実や魅力的な金融サービスの提供のために進められたものの、利用者が安心して取引するのには程遠かった背景があります。
安心して取引するために、企業の情報公開が求められるようになりました。
また、経済システムが変革したのもディスクロージャーが生まれた1つの要因です。戦後はメインバンクだけでなかなか企業価値の増大が見込めなくなり、投資や出資をしてもらうために注目されました。
戦後の市場改革および経済システムの変革が、ディスクロージャーが生まれた背景といえるでしょう。
企業におけるディスクロージャーの種類
企業におけるディスクロージャーの種類は、大きく2つに分かれます。
- 法律で定めているもの
- 企業の判断に任しているもの
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法律で定めているもの
法律で定められているディスクロージャーは、金融商品取引法などによって定められています。上場企業の義務として定められており、制度上で必要なものです。
法律で定められているものの主な目的は、投資家の保護となります。適切な情報開示のための情報の種類および書式などがすべて決められており、経営状況をはじめとした情報をまとめて比較可能です。
さらに情報を公開するタイミングも決まっているため、投資判断に必要な情報を随時取得できます。
なお、適切な情報を開示するために、財務諸表など決算関係書類について有価証券報告書の提出義務および監査法人や公認会計士による監査が義務付けられていることも多いことは覚えておきましょう。
企業の判断に任しているもの
企業の判断に任せているディスクロージャーは、法律で定められているものと異なり、形式や内容の定めはありません。
企業ごとにさまざまな情報を公開しており、主に投資家がきめ細かい情報の元、判断することを手助けします。
「IR(Investors Relations・投資家情報)」と呼ばれるのも一般的で、投資家へのアピールとして情報公開する企業も多いです。
ただし、企業の判断によって公開される内容が異なるため、法律で定められているもののように比較するのは難しくなります。そのため、法律で定められているものと企業判断に任せているものを併用するのが一般的です。
企業におけるディスクロージャーのメリット
企業がディスクロージャーを行うと、2つのメリットを得られます。
ディスクロージャーを実施することで得られるメリットについて、以下の2つを見ていきましょう。
- 外部に透明性をアピールできる
- 投資判断に必要な情報を提供できる
外部に透明性をアピールできる
ディスクロージャーを行うと、外部に企業の透明性をアピールできます。ディスクロージャーは、企業の経営状況をわかりやすく伝えるものです。
経営状況をありのまま伝えている企業は、クリーンなイメージを持たれやすくなります。クリーンなイメージはプラスな影響を与えやすく、どのような経営を行っているかを伝えられれば、投資家や株主からの信頼も得られるでしょう。
また、投資家から見た際の信頼度は、そのまま株価にも反映されます。信頼されている企業は投資が増えるため株価が高まり、逆に信頼が薄い場合は投資が少なくなって株価が下がってしまう可能性が高いです。
もちろん公開されている内容が適切であるのが大前提ですが、時価総額が上がり、企業価値が高まるのもメリットといえます。
内容はもちろん、公開のタイミングや頻度などにも注意して、ディスクロージャーを行う必要があることを忘れないようにしてください。
投資判断に必要な情報を提供できる
ディスクロージャーを行うと、投資家に対して投資判断に必要な情報を提供できます。
ディスクロージャーは企業が投資家や株主・債権者などに対する経営内容の開示を目的に行われるのが一般的です。
経営内容は、投資家が投資の判断をする上で欠かせません。経営状況が悪い企業に対して投資をしようと考える投資家は少ないでしょう。
また、情報公開によって投資家から信頼を得たり、将来性を感じてもらえたりすれば、積極的に投資してもらえる効果も期待できます。
結果として資金調達につながるのも、企業側のメリットの一つです。
企業におけるディスクロージャーのデメリット
企業がディスクロージャーを実施するにあたっては、実施に伴うデメリットについても理解しておかなければなりません。
ここでは具体的なデメリットとして、以下の2点が挙げられます。
- 多くのコストがかかる
- 開示内容によってはマイナスイメージを与える
多くのコストがかかる
ディスクロージャーを実施する際は、多くのコストがかかる点に注意しなければなりません。
特に情報管理にかかるコストの負担は大きく、上場企業の多くはディスクロージャーの専門部署を構えています。専門部署を構えている理由は、開示の内容やタイミングが細かく定められているためです。
もしこれまでディスクロージャーをしてこなかったのであれば、専門部署を構えるためのコストがかかってくるでしょう。
また、掲載情報や書類発行をするためには多くの労力が必要になります。原稿の編集や校正作業が生じるケースも多いため、人手をしっかり確保しなければならないのもデメリットの一つです。
開示内容によってはマイナスイメージを与える
ディスクロージャーを実施するデメリットとして、開示内容によってはマイナスイメージを与えることを理解しておきましょう。法律で定められているものは、公開する情報を企業側で選択できません。
そのため、赤字をはじめとしたマイナスの情報が投資家に悪いイメージを与える可能性があります。投資家に悪いイメージを抱かれてしまうと、投資対象から外れてしまったり、企業価値が低下したりしてしまうでしょう。
ただし、実施する際に情報を隠蔽するのは絶対にやってはいけない行為です。
不適正な開示が発覚した場合、最も重い処分として上場廃止につながるため、注意してください。
企業がディスクロージャーを実施する対象
企業が実施するディスクロージャーは、投資家や従業員が主な対象となります。
他にも、取引先や金融機関なども実施対象になり、対象者ごとのディスクロージャー実施目的は、主に以下の通りです。
対象者 | 実施目的 |
---|---|
投資家 | 投資対象として、企業の実態を隠すことなく開示する目的で行われる |
従業員 | M&Aに大きく関係する経理担当者や幹部社員に対して、事前に情報開示されることがある |
取引先企業 | 経営実績や活動状況、財務状況などを開示することで、優良企業であることをアピールし、事業の継続につながる |
金融機関 | 資金調達を円滑に進めるため、企業の状況をクリーンに伝えるために実施される |
上記はあくまでも一般的な事例であり、開示先によって求められる情報は異なります。
ディスクロージャーを実施する際は求められた情報を開示できるように、しっかりと準備しておくようにしましょう。
まとめ
ディスクロージャーは企業が投資家や株主・債権者などに対し経営内容などを開示することを指す言葉です。主な目的としては投資家の保護ですが、会社にとってプラスの情報を与えられれば、資金調達の方法としても有効でしょう。
もちろんメリット・デメリットがそれぞれあるため、実施する際はこれらを理解しておかなければなりません。実施対象によっても開示すべき内容が異なってくるため、適切な情報公開を行い、企業の透明さをアピールしていきましょう。
よくある質問
ディスクロージャーとは?
ディスクロージャーとは、情報開示または情報公開という意味を持つ言葉です。企業が投資家や株主・取引先などに事業内容を公開し、企業の透明さをアピールするのに用いられます。 なお、法律で定められているものと企業が任意で行うものの2種類があることも覚えておきましょう。
企業がディスクロージャーを実施するメリットとは?
企業がディスクロージャーを実施する主なメリットは、以下の2つです。
- 外部に透明性をアピールできる
- 投資判断に必要な情報を提供できる
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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