• 更新日 : 2024年7月16日

インナーブランディングとは?進め方や社内に浸透させるコツ、成功事例を解説

インナーブランディングとは、企業理念やビジョン、価値観などを社内で共有する取り組みです。企業が内側から行う変革であり、一貫性のあるアウターブランディングを行うためにも大切な施策といえるでしょう。

本記事では、インナーブランディングの概要や実施の必要性、進め方を解説します。成功事例も紹介しますので、参考にしてください。

インナーブランディングとは?

インナーブランディングとは、​企業理念やブランド価値を社内で共有することです。基本的にブランディングは社外に向けて行いますが、インナーブランディングは社内に向けて行います。

ここでは、インナーブランディングが必要な理由や、アウターブランディングとの違いをみていきましょう。

社内へのブランディング活動はなぜ必要か

インナーブランディングの施策は、企業理念や自社の価値観を社員に浸透させるために必要です。社員が企業の使命や価値観、ビジョンを理解・共有し、行動に移すことを目指します。

理解・実践のプロセスを通して、社員の意識を改革することが目的です。従業員が企業理念や価値観に共感し、愛着を持つことは、商品・サービスの品質向上にもつながります。

インナーブランディングは企業の内側からの変革であり、企業の成長のために欠かせない施策といえるでしょう。

インナーブランディングとアウターブランディングの違い

アウターブランディングとは、企業価値や商品・サービスなどのブランドを、外部に向けて展開することです。一般的にブランディングというときはこちらを指します。顧客や消費者に向けて、企業イメージやブランドの魅力を伝える施策です。

アウターブランディングは他社との差別化や自社のファンを獲得することなどが目的です。アウターブランディングを成功させるためには、まず従業員が企業理念やビジョンについて十分共有している状態でなければなりません。

社内の意識が曖昧なままでは、一貫性のあるメッセージを発信できないでしょう。そのため、まずは社内での施策が欠かせません。

インナーブランディングのメリット

インナーブランディングの施策を行うことで、社員のモチベーション向上など、さまざまなメリットを得られます。

詳しくみていきましょう。

社員のブランド理解が深まる

インナーブランディングの実施により、社員のブランド理解が深まる点がメリットです。
自社に対するイメージが高まり、愛着心や貢献意欲といったエンゲージメントも向上します。自社に誇りを持ち、社員同士の連帯感も強くなるでしょう

結果として、同じ目標を目指し、社員全員が方向性を同じくして仕事に取り組めるようになります。生産性の向上にもつながるでしょう。

モチベーションの向上

インナーブランディングによって企業理念やビジョン、仕事への理解が深まることで、社員のモチベーションが向上します。

企業や仕事に対して誇りを持ち、業務にも意欲的に取り組むようになるでしょう。積極性や熱意が高まることで、課題を自ら発見して解決できるようになります。

社員が企業理念やビジョンを共有することで、意識の統一を図れることもメリットです。同じ目標に向かって働くため、誤解や意識のずれ、疑問などもなくなり、仕事への不安も減るでしょう。

生産性が上がる

企業理念やビジョンを共有した社員には連帯感が生まれ、目標達成のために協力し合う意識が芽生えます。業務を助け合う環境が育まれ、生産性向上にもつながるでしょう。

方向性を共有することで、社員一人ひとりが「目的を達成するために何をするべきか」がわかるようになります。その結果、何を優先的に取り組むべきかを考えるようになるため、業務が効率化し、生産性も高まるでしょう。

企業の魅力が高まる

社員が理念やビジョン、価値観を理解していれば、対外的に正しいブランドイメージを伝えられます。取引先との商談や営業活動、接客、販促イベントなど、社員が対外的に情報を発信する機会は少なくありません。理念やビジョンの理解が十分でない場合、企業の魅力をうまく伝えられないでしょう。

インナーブランディングが十分にできていれば、社員は企業に対して愛着心や誇りを持ち、ブランド価値を正確に発信できます。その結果、企業イメージが高まるでしょう。

インナーブランディングは、結果としてアウターブランディングの効果的な施策になるということができます。

優秀な人材の確保

インナーブランディングは、優秀な人材確保にもつながります。企業の理念やビジョンに共感した社員は組織への愛着心や貢献意欲を高め、その企業で働くことにやりがいを感じて定着率が高まるためです。

社員の定着率の高い企業は、求職者からも魅力的な会社と感じられるでしょう。その結果、求人にも多くの人材が集まり、優秀な人材の確保が可能です。

インナーブランディングはどのような企業に向いているか

インナーブランディングはどの企業でも必要な施策ですが、特に社員の入れ替わりが多い企業は、力を入れて取り組む必要があるでしょう。これらの企業では、企業理念やビジョンが浸透する前に社員が入れ替わるためです。

また、事業を幅広く展開している企業にも向いています。企業のイメージがわかりやすい事業では価値観を理解しやすくても、それ以外の事業では難しい場合もあるためです。インナーブランディングの実施でビジョンを浸透させることで、効果を得やすいでしょう。

近年はM&Aで吸収や合併をする企業も増えています。価値観が異なる企業が統合し、それまで違う価値観を共有していた社員が一緒に働くことになるため、新しい組織でのインナーブランディングは欠かせません。

インナーブランディングの進め方、具体例

インナーブランディングの実施は、手順に沿って行います。

ここでは、インナーブランディングの進め方を解説します。

企業理念とビジョンを明確にする

社員に伝える企業理念やビジョンは、わかりやすく明確にすることが大切です。伝えたいことが曖昧では、共通したビジョンや価値観を理解してもらえません。

抽象的な曖昧な経営理念や実現可能性が低いビジョン、高すぎる目標設定では、共感を得られないばかりか、会社への不信感を招くことにもなります。

理解できるだけでなく、共感できるような内容でなければなりません。社員が納得できるビジョンや価値観であれば、それを業務に活かし、実現するために行動するようになるでしょう。

ブランドコンセプトを作成する

企業理念とビジョンを明確にしたら、インナーブランディングで浸透させるブランドコンセプトを作成します。ブランドコンセプトとは、企業理念やビジョンをシンプルかつキャッチーに表現したフレーズです。内容はわかりやすく、簡潔に言語化する必要があります。企業の活動や提供する商品・サービスを端的に表現するものでなければなりません。

例えば、ディズニーランドは「夢と魔法の王国」というコンセプトを掲げています。このコンセプトにより、社員は来客に非日常的な体験を提供しています。

ブランドコンセプトは、社員が取るべき行動の指針になります。アウターブランディングでも重要な要素であり、対外的にも共感を得られる内容であることが大切です。

社内に浸透させる

ブランドコンセプトを言語化したら、取り組む施策を決めて浸透させるための活動を行います。企業理念の背景や経営者の想いなどに共感してもらうための仕組みを作り、浸透させるための環境を整えます。

施策によって準備にかかる時間やコストは変わるため、自社に合う方法について、詳細に検討していくことが必要です。

施策を決める際は、ただむやみに取り入れるのではなく、社内の状況や理念の浸透度に応じて適切な施策を選ぶようにしてください。浸透度を可視化する手法として、エンゲージメントサーベイがあげられます。従業員のエンゲージメントの度合いを可視化することで、効率的にインナーブランディングを進められるでしょう。

効果測定・アップデートを行う

インナーブランディングを成功させるには、効果について定期的に効果測定することも大切です。社員へのアンケート調査や個人面談を行い、浸透できているかどうかをチェックしましょう。

結果を分析して、課題があれば改善策を講じます。インナーブランディングの目的と現状にずれがあれば、修正するための施策を立てて実施してください。再度効果測定して結果を分析するというサイクルを回し、インナーブランディングを成功させましょう。

インナーブランディング活動に役立つ手法

インナーブランディングに役立つ手法はさまざまあるため、自社に合う方法を取り入れましょう。

ここでは、代表的な手法を紹介します。

社内報

ブランドコンセプトや企業のブランドメッセージを社員に伝えるために便利なのが、社内報です。特に社員数が多い場合、同じ情報を共有できるツールとして社内報が役立ちます。

古くから紙媒体の社内報が情報共有に活用されていましたが、近年はWebの社内掲示板や社内ポータルサイトを利用する企業も増えています。Web版の社内報であれば、動画で経営層のメッセージを流すなど、より効果的にインナーブランディングを図ることができるでしょう。

トップメッセージ

トップメッセージは、経営者が企業理念や方針、ビジョンについて語り、社員にどのような行動をしてほしいのかを直接伝える施策です。

経営者自らが企業の未来について語りかけることで、企業の姿勢について理解を深められます。社員の企業への信頼感も高まり、士気の向上にもつながるでしょう。

トップメッセージは、定期的に職場訪問して現場との意見交換を行うトップキャラバンで実現できるほか、社内報などを通じて定期的にメッセージを発信する方法も効果的です。

クレド

クレドとは、社員が心がける信条や行動指針のことです。クレドを定めることで、社員がさまざまな事態に直面した際の判断基準になります。

ブランドコンセプトをクレドとして印刷したカードを配布し、行動に迷ったときの参考にしてもらうことで理念の浸透を図ることができます。クレドはすぐに覚えられるよう、シンプルでキャッチーな言葉でまとめることがポイントです。

社内SNS

社内で情報を発信できるSNSを導入することも、インナーブランディングとして活用できます。社内SNSは社員同士が気楽に情報をやり取りでき、立場や部署を越えたコミュニケーションが可能です。

経営層が企業理念やビジョンを一方的に伝えても、社員には浸透しにくい側面があります。双方向のコミュニケーションがとれる社内SNSであれば、経営層と社員が垣根を越えたやり取りができ、理念やビジョンの共有に役立ちます。

社内イベント

社内イベントでは、上司や同僚、部下が業務から離れたコミュニケーションができます。コミュニケーションが活性化することで、企業理念やビジョンが自然な形で社員に伝わりやすいでしょう。

社内イベントは社員同士のつながりも強め、信頼関係を築きます。社員のエンゲージメントを高めて、企業理念やブランド価値の共有も進むでしょう。

日報

日々の仕事内容や進捗状況、課題などを報告する日報も、インナーブランディングに役立ちます。日報によって上司と部下のコミュニケーションが図られ、仕事への理解を深められるでしょう。

上司は日報を介して、部下が何を考えどのような行動をしているかがわかります。上司からのコメントにより、企業理念や価値観を伝えることもできます。

インナーブランディングに日報を利用する場合は、企業理念やビジョンに関する報告を日報のテーマにしなければなりません。これにより、社員は日報を書くたびに企業理念や行動指針への理解を深めます。上司は日報をチェックすることで、社員の理解度を確認できるでしょう。

インナーブランディングの成功事例

インナーブランディングに成功している企業は多く、事例を見ることで自社の施策を考える際の参考になります。

ここでは、インナーブランディングの成功事例について解説します。

社内SNSを活用|日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業では社員の情報共有を推進するため、社内SNSを導入して社員同士の結束を高めています。

日本たばこ産業の中核事業は国内たばこ事業ですが、他の事業に関わる社員も少なくありません。たばことは関係のない部署やグループ会社に所属するメンバーとも広く情報を共有するため、社内SNSを使ったインナー向けの告知活動と製品改善につながる意見収集などを行っています。

その結果、たばことは関係のない部署から新しいアイデアが発信されるなど、これまで埋もれていた情報が自然と集まるようになったということです。

参考:社内SNSを活用|日本たばこ産業株式会社

新たな学びのプラットフォームの社内浸透|旭化成株式会社

総合化学メーカーの旭化成株式会社は、社員の自律的な成長やキャリア形成を後押しする学びのプラットフォーム「CLAP」を立ち上げ、これを社内に浸透させる施策を行いました。

導入の目的やそこに込められている想いに理解・共感してもらうため、スローガンやブランドロゴ・キービジュアル、浸透映像の制作を実施します。

浸透映像は使用イメージや社長インタビューの映像を取り入れ、経営者の想いと具体的な活用方法をわかりやすく伝えられるよう工夫しています。

参考:ブランドの強みと弱みを可視化して分析|旭化成株式会社

ブランド浸透度調査|ライオン株式会社

2011年に創業120周年を迎えたライオン株式会社は、2012年から新たに経営ビジョンと企業メッセージを導入し、企業メッセージの浸透を中心としたインナーブランディングに尽力しました。

同社は「これからの100年・200年に向けて何か残せないか」と考え、原点に戻ることを決めたのが、インナーブランディングの実施を決めたきっかけだということです。取り組みにより、社員のビジョンへの理解度はかなり高まったとしています。

参考:ブランド浸透度調査|ライオン株式会社

カルチャーブックを作成|株式会社ユーザベース

SPEEDA、NewsPicksなどのサービスを提供する株式会社ユーザベースは、2008年に設立されたベンチャー企業です。

同社は会社の規模が大きくなるにつれ、設立当初の価値観が浸透していない社員も増えてきました。そこで、企業の共通の価値観であるバリューを「7つのルール」としてまとめ、そこからさらに行動指針をより噛み砕いて明文化した「31の約束」を設定しました。

この31の約束は「カルチャー・ブック」と呼ばれる冊子として製作され、困ったときにふと思い出して活用される存在となっています。

参考:カルチャーブックを作成|株式会社ユーザベース

インナーブランディングの注意点

インナーブランディングを実施する際は、次の点に注意が必要です。

  • 中長期的に考える
  • こだわりすぎない

社員に企業理念やビジョンが浸透するには、ある程度の時間が必要です。すぐに効果が出るわけではなく、中長期的な視点で取り組む必要があります。

また、すべての社員が価値観を共有できるとは限りません。インナーブランディングにこだわりすぎると、価値観を共有できない社員を排除することにつながります。

例えば、会社のブランドコンセプトを変更した場合、これまでの価値観に慣れていた社員は納得できず、疑問を感じることがあるかもしれません。そのような場合、社員の声にも耳を傾け、無理に共有を強いることのないようにしてください。

インナーブランディングで企業を成長させよう

インナーブランディングは社員に企業理念やビジョンを浸透させ、仕事へのモチベーションを高めるというメリットがあります。

企業価値の理解を深めた社員は、企業への愛着心や貢献意欲を高め、仕事にも積極的に取り組むようになるでしょう。対外的にも正しいブランドイメージを発信できます。

インナーブランディングの実施では企業理念とビジョンを明確にし、ブランドコンセプトの作成が必要です。インナーブランディングに取り組み、企業イメージを高めていきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事