- 作成日 : 2022年12月20日
財務報告とは?重要性や内部統制との関係性をわかりやすく説明

内部統制に、財務報告は欠かせません。しかし財務報告とは何か、正しく理解できていない方もいるのではないでしょうか。内部統制との関係性は深く、内部統制を無視して財務報告はできません。
この記事では、財務報告とは何かを解説するだけでなく、財務報告がなぜ重要なのか、内部統制との関係性まで説明していきます。財務報告と内部統制の関係について、ぜひ参考にしてみてください。
目次
財務報告とは
財務報告とは、利害関係にある相手に対し、公正な財務状況や利益配分を報告することです。利害関係のある相手とは、主に株主や債権者、銀行、税務署などを指します。
財務報告をする理由は、財政状況や業績を連結決算ベースで定期的に報告し、利害関係者に企業の実態を知ってもらうためです。財務報告は会社法や金融商品取引法などの法律によって義務付けられているほか、銀行などとの契約によって定められている場合もあります。報告の際、書類として発行する必要のあるものが財務諸表です。財務諸表は一般的に、「決算書」と呼ばれます。
一般に決算書と呼ばれる書類は、法律などによって財務諸表と呼ばれたり、計算書類と呼ばれたりします。財務諸表は金融商品取引法によって、決算書類は会社法によって作成が義務付けられている書類です。発行すべき財務諸表にはいくつか種類がありますが、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書の3つを財務三表と呼びます。
- 貸借対照表
ある時点の財政状況を資産・負債・純資産の3つに分類し、表にまとめたものです。 - 損益計算書
会計期間の収益と費用を集計・分類し、純利益を算出する書類です。収益や費用は売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外収益、営業外費用、特別利益、特別損失に区分され、法人税などの金額を引いた後に当期純損益が求まる形式になっています。 - キャッシュ・フロー計算書
会計期間の現金や現金同等物の増減・残高を算出し、該当機関のお金の流れを記載する書類です。
財務諸表の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
財務報告の重要性
財務報告は、利害関係者に広く財務状況を公開するものです。財務報告によって各利害関係者が知りたい情報を入手できる状況となるので、それぞれの判断・評価に利用します。ただし、必要としている理由は利害関係者によって異なります。
- 投資家
投資家は、投資するのに適した企業かを判断するため、財務報告書を参考に評価します。投資先が倒産したり、財政赤字に陥ったりして損失につながるのを避けるためです。 - 株主
投資家のなかでも、すでに企業の株式を保有している株主は、このまま投資を継続しても問題ないかを判断するために財務報告を参考にします。財政状況が傾きつつある企業の株式に対し、手放すか保有するかの大事な判断に使われます。 - 債権者
銀行などの金融機関や売上債権を有する取引先は、債権者として財務報告を必要としています。融資した資金や売上債権の回収が、予定通り行われるかを判断します。 - 従業員
従業員は、今後も自社に所属しても問題ないか、自社の財政状況を気にしています。財政状況が傾いている場合、転職の判断基準となる可能性があります。 - 取引先
取引先は、取引を継続すべきかの判断材料に財務報告を活用します。財政赤字が続き、経営が危うい企業と取引すると売上を回収できない可能性があるためです。 - 税務署
税務署は、法人税などの申告内容や納付額に誤りがないかを確認するため、財務報告の提出を求めています。
企業外部の利害関係者を中心に、財務報告が重要な理由を説明しましたが、自社の経営陣にとっても財務報告は重要です。財務分析をしたり、経営戦略を立てたりする際に財務報告で作成した書類が役に立ちます。
財務諸表の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
財務報告の信頼性を向上させる「内部統制」とは
財務報告の信頼性を向上させる「内部統制」とは、財務諸表の作成において事実と異なる内容を記載したり、公開できないような財務状況にならないように経営したりと、企業内の体制を整えることを指します。
そもそも内部統制とは、事業の目的や経営目標に対し、適切な仕組みやルールを整備・運用することです。金融庁が公表している「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、以下のように定義されています。
内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。
引用:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」
内部統制によって財務報告の信頼性が向上するのは、内部統制が整っている環境では、不正やミスによる虚偽報告が起こりにくい体制になっているからです。内部統制はそもそも、企業のリスクコントロールを目的としているため、リスクとなる不正が起こりにくい環境づくりを目指しています。
財務報告の信頼性の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
その他の内部統制の目的
内部統制は、財務報告の信頼性の向上以外にもメリットがあります。財務報告の信頼性の向上以外における内部統制の目的は、主に以下のとおりです。ここでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。
財務報告の信頼性の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
- 業務の有効性・効率性の向上
- 事業に関わる法律等の遵守
- 資産の管理
業務の有効性・効率性の向上
内部統制には、業務の有効性・効率性の向上といった目的もあります。内部統制では、業務の効率化を目指すためです。業務の有効性・効率性が向上すると、人員やコストの削減につながるだけでなく、空いた時間を有効活用して新しい事業の立ち上げにも使えるようになります。企業の発展において、業務の有効性・効率性の向上は非常に重要です。
事業にかかわる法令等の遵守
大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)において、内部統制の構築や報告は、会社法と金融商品取引法によって要求されています。会社法第362条4項の6には、以下のように記されています。
4取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
内部統制が整備されていない場合、法律違反となり、「懲役5年以下または500万円以下の罰金またはその両方(金融商品取引法)」に科せられます。
資産の管理
企業における資産とは、企業内にある現金や預金の他にも、建物や土地、備品・機械などすべての財産です。
内部統制することで、資産管理が効率化・適正化されます。もし資産を適切に管理・保全できない場合、知らない間に損失・紛失して、財産が減っていることに気付かない可能性もあります。
コストのかかっている部門や機械に気付かず、企業の利益を増やせないこともあるため、資産管理は重要です。
財務報告に係る内部統制の基本的要素
財務報告に係る内部統制の基本的要素は、以下のとおりです。
- 統制環境
統制環境とは、以下5つの実施基準を支える土台となる部分です。簡単に言い換えると「企業風土」のことで、企業の倫理観や経営方針、経営者の意向などが含まれます。 - リスクの評価と対応
企業運営の際には、なんらかのリスクが生じるのが一般的です。企業内はもちろん、企業外にもリスクは多くありますが、内部統制では主に自社内で起こりうるリスクを評価し、その対応策を練っていきます。 - 統制活動
統制活動とは、経営者の指示が正しく実行されるために整備される手続きです。統制環境が「企業風土」なら、統制活動は「風土づくり」に例えられます。 - 情報と伝達
内部統制では、必要な情報が識別・把握・処理され、関係者に正しく伝えられる状態を整える必要があります。誤った情報が伝わってしまう状態は統制が取れているとは言えないからです。 - モニタリング
モニタリングとは、整備した内部統制が正しく機能しているかを監視・確認して評価することです。実施するだけではなく、うまく運用されているかを確認し、必要に応じて修正していく必要があります。 - ITへの対応
業務の一部に適切なITを導入し、DX化を図ることで、業務を効率化することです。やみくもにIT化するのではなく、適切な場所で適切に運用されているかが重要になります。
財務報告の信頼性の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
財務報告に係る内部統制のチェックリスト
金融庁の「財報告にかかる内部統制の評価及び監査の基準」を参考に、財務報告に係る内部統制の評価項目例を以下の表にまとめました。
実施基準 チェックリスト 統制環境 リスクの評価と対応 統制活動 情報と伝達 モニタリング ITへの対応
財務報告に係る内部統制のチェックリストの信頼性の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。