- 更新日 : 2024年7月12日
上場企業の経理業務の特徴とは?非上場企業との違いや必要なスキルを紹介
経理担当者として上場企業に就・転職を考えるとき、やはり気になるのが具体的な業務内容や必要なスキルなどではないでしょうか。「経理」と言っても業務内容は多岐にわたります。上場企業には、非上場企業にはない業務もあります。
本記事では上場企業の経理業務の特徴や必要となるスキルや知識、また上場企業に限らず経理担当者に求められるスキル・知識についても紹介しています。上場企業に経理担当者として就職を考えている方、非上場企業から上場企業への転職を考えている経理担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
上場企業の経理業務の特徴
上場企業の経理業務は、財務会計が重要視されているのが特徴です。財務会計とは、株主や債権者などの企業外部に対して財政状態・経営状態を明らかにするための会計です。
上場企業の経理は業務負担が大きく、上場企業の多くが大企業であることから、業務内容も特定分野を専門的に扱うことが多い傾向にあります。一人ひとりの経理業務の範囲は狭まりますが、より専門化した仕事になります。
【上場企業の特徴的な業務】
非上場企業の経理業務の特徴
非上場企業の経理業務は、上場企業のものと違い税務会計が重要視されています。税務会計とは、企業の課税される所得額を計算するための会計で、国・地方自治体に納めるべき税金を算出するために行われます。
非上場企業では株主と経営者が一致していることが多いため、上場企業ほどには株主などの外部利害関係者に対して経営成績を報告することが上場企業ほど重要視されていません。まず、重要視されているのは適切な納税ですが、銀行から借り入れを行っているときには経営成績の報告が重要となることもあります。
非上場企業は証券取引所に株式を公開していません。そのため、有価証券報告書の提出義務も基本的にはないのです。決算に関する書類についても、会社法・法人税法等により義務化されている年次のものだけを作成することが多く、上場企業に比べて業務を簡素化しやすくなっています。
【非上場企業の主な経理業務】
上場企業の経理担当者に求められるスキル・知識
それでは上場企業の経理担当者には、どのようなスキルや知識が求められるのかご紹介します。これらのスキルは上場企業で経理業務を行うには大切なものとなり、非上場企業から上場企業の経理へと転職する際も重要になります。
【上場企業の経理担当者に求められるスキル・知識】
順に見ていきましょう。
会計基準に関する知識
上場企業には「会計基準に則った決算と開示」が義務付けられています。そのため上場企業の経理担当者の知識として、会計基準に関するものが必要になってきます。この知識は、主に決算書の作成の際に必要です。
会計基準に則った決算処理としてはさまざまなものがありますが、主に以下のようなものがあげられます。
実務上、これらの決算処理は難しく、会計基準を理解した高いスキルが必要になります。会計基準を理解するための知識は、日商簿記2級を勉強することで身につけられます。日商簿記2級では「会計基準に則った決算処理」を勉強しますので、興味のある方は勉強してみることをおすすめします。
さらに、上場企業の経理業務を深く理解したい場合は、日商簿記1級に挑戦してみるとよいでしょう。
申告書の作成スキル
上場企業の経理担当者には、申告書作成スキルも求められます。ここでいう申告書とは、法人税などの計算に関するものになります。
税金計算は、どの企業でもやらなければならない決算作業の一つです。中小企業では顧問税理士に依頼することが多いですが、上場企業の多くが自社の経理部員が担当しています。そのため決算時には、経理担当者が税金計算から申告書一式を作成することになります。
税金の知識を身につけるには、独学であれば書籍などでも身につけることが可能です。また、スクールや通信講座などもありますので、一人では心配、誰かに教わりたい、という場合は利用してみるのもよいでしょう。専門的に知識を深めるのであれば、税理士試験の勉強をしてみるのも一つの手です。
連結財務諸表の作成スキル
連結財務諸表を作成して開示することは、上場会社の義務です。また、上場企業のほとんどは子会社を抱えており、子会社がある場合は原則として子会社を含めた連結決算をしなければなりません。そのため上場企業の経理担当者には、連結決算・連結財務諸表の作成スキルが求められます。
上場企業は、義務である四半期ごとの連結財務諸表の開示を行わないと、上場廃止となってしまいます。そのため、上場企業で経理を担当するには必須のスキルになります。
連結財務諸表の作成には会計基準の知識が必要になるため、前述しましたが日商簿記2級や1級の勉強をするのがおすすめです。
上場企業に限らず経理担当者に必要なスキル・知識
次に上場企業・非上場企業を問わず、経理担当者に必要となるスキル・知識についてご紹介します。これらは経理担当者としての基本とも言える大切なことです。具体的には以下のようなスキル・知識が必要となります。
【経理担当者に必要なスキル・知識】
- コミュニケーションスキル
- ITツールの操作スキル
- 簿記の知識
それでは順に見ていきましょう。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルは、経理担当者にとって自分の業務をスムーズに行うため、そして部署全体の業務を円滑に進めるためにも必要です。また、経理はさまざまな部署と関わりを持つ仕事でもあります。
例えば、経費の申請に関するお願いの場面などでは適切なコミュニケーションが必要になってきます。経費などのチェックを厳しくすれば、会社的にはよい人材として見られるかもしれません。しかし、他部署の人からはきつい性格だと捉えられたり、協調性に欠けると思われたりしてしまい、よい面ばかりでもありません。逆に経費を甘く認めてしまうと、会社にとってマイナスの事態を招きかねない存在になってしまいます。
どこまで厳しく接するか、人当たりを良くするにはどうしたらよいかなど、コミュニケーションをとっていく力が必要になってくるのです。
ITツールの操作スキル
どのような企業でも、今ではITツールを使用するのが当たり前になっています。そのため、経理担当者にもITツールの操作スキルが求められるのです。経理担当者が使用するのは会計ツールですが、決算作業では以下のようなツールを使います。
【決算作業で使用されるITツール】
- 会計システム
- 固定資産システム
- 原価管理システム
- 予算管理システム
- 販売管理・生産管理などの基幹系システム
このように様々なツールを使用して決算処理が行われます。社内の各種ツールを使えなくては、決算処理を行うのは難しいでしょう。
簿記の知識
経理担当者に欠かせない知識が簿記の知識です。簿記は毎日の伝票の処理やデータ入力に必要になります。大企業になれば、より正確な会計処理が求められるので、高い簿記の知識が必要になるでしょう。
中小企業であっても、簿記の基礎レベルになる「資産・負債・純資産(資本)」「費用・収益の区別」「財務諸表の構造や仕組み」「仕訳の基本(借方と貸方など)」などは身につけておくべき知識です。
簿記の習得方法としては、前述した日商簿記の2級や1級であれば、書籍や動画などを利用して、独学で学ぶ方法もあります。また、通信講座やスクールなどもありますので、ご自身にあった方法や、レベルなどを考慮して選ぶとよいでしょう。
まとめ
上場企業の経理には、非上場企業のものよりも高度なスキル・知識が求められます。会計の知識も高度なものが必要になり、外資系企業などになってくると広範囲の知識が求められるでしょう。
また、上場企業は大企業であることが多いので、経理に求められるスキルや知識も経営者寄りの考えを必要とします。しかし、その分だけやりがいのある仕事とも言えます。ぜひこの記事を参考にして、キャリアアップの一助としていただけると幸いです。
よくある質問
上場・非上場企業の経理業務の違いとは?
非上場企業では税務会計が重視されるのに比べ、上場企業では財務会計が重要視されます。上場企業特有の経理業務としては、株式を公開しているからこそ必要になる有価証券報告書や四半期報告書の作成などがあります。
上場企業の経理はきついって本当?
上場企業の経理は非上場企業に比べて、ある意味きついと言えるかもしれません。理由としては、業務の簡素化が難しいこと、より高度な会計知識が求められるだけではなく、管理会計や資金調達の知識も必要になることなどがあげられます。 しかし、その分だけ身につけたスキルを使って、さらなるキャリアアップ、ハイレベルな求人への応募が目指せるというメリットもあります。どうしても必要となってくるスキルや知識が高度で勉強が必要なため、上場企業の経理はきついと感じる人が多いようです。
上場企業の経理担当者に求められるスキル・知識とは?
上場企業の経理担当者には、会計基準に関する知識、申告書の作成スキル、連結財務諸表の作成スキルが必要になってきます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
内部統制報告制度とは?目的や改訂ポイントをわかりやすく解説
上場企業は、財務報告の信ぴょう性を確保するために内部統制報告制度への対応を行う必要があります。内部統制報告書の提出が義務付けられており、提出しなかった場合は罰則を受けることになるためです。そのような状況にならないためにも、まずは内部統制報告…
詳しくみるIPOにおける反社チェックの重要性、対応項目、手法を解説
IPOを実現するには、反社チェックの実施が不可欠です。反社チェックにより、上場審査に通るだけでなく、社会的な信用を獲得することにもつながります。 本記事では、IPOにおける反社チェックの重要性や手法、対象者などを解説します。また、IPOの際…
詳しくみる三様監査とは?役割の違いや連携の重要性などを解説
現代のビジネスにおいて企業経営の透明性と信頼性を確保することはますます重要になっていますが、「三様監査」は企業経営の健全性を高めるための有力な手法とされています。 そこで本記事では、三様監査の基本的な概念、三者の連携の重要性、そして実際の連…
詳しくみるIPO準備の業務内容は?流れや期間別に必要な手続きについて解説
IPO業務に関心を持つ企業にとって、適切な準備と手続きは成功の鍵です。株式公開を目指す過程では、財務の透明性、法的準拠、ガバナンスの強化が求められ、多岐にわたる業務が発生します。 本記事では、IPO準備の全体像と期間、業務内容などを詳しく解…
詳しくみる管理部門・管理課とは?業務内容や必要なスキルを徹底解説
管理部門は、人事・経理・総務・法務などの業務を担当し、組織の経営資源を管理・最適化する役割を担います。 本記事では、管理部門・管理課の業務内容や職種別の役割、必要なスキルなどについて解説します。 管理課(管理部門)とは|企業の経営資源を管理…
詳しくみるIPOにおける内部統制の重要性|監査免除でも内部統制報告書の提出はすること!
IPO(新規株式公開)に向けて、内部統制は企業の信頼性と透明性を高めるために欠かせない要素です。 適切な内部統制の整備は、法令遵守やリスク管理を徹底するだけでなく、投資家からの信頼を獲得し、企業の持続的成長を支援します。 本記事では、IPO…
詳しくみる