• 作成日 : 2024年4月26日

取引信用保険とは?補償内容やメリット、気になるポイントを解説

売掛金の回収に失敗することは、資金繰りの悪化につながります。運転資金を一定に保ち資金繰りを安定させるためには、売掛金の保全が重要です。
取引信用保険は、取引先の倒産や支払不能により売掛金が損なわれた場合に損失を補填します。取引信用保険を活用することで、取引先の信用リスクを管理し、自社の資金繰りへの影響を最小限に抑えることができます。
本記事では、取引信用保険の補償内容やファクタリングとの違い、メリットやリスク、気になるポイントについて解説します。

取引信用保険とは

はじめに、取引信用保険の目的や補償内容、ファクタリングとの違いについて解説します。

取引信用保険とは?

取引信用保険は、取引先が債務不履行に陥り、売掛金が回収できない場合に損失を補填してくれる保険です。取引先の倒産や財産の差押えなどが発生した場合に保険金が支払われます。

なぜ必要なのか?

売掛金が回収不能になると、債権保全に時間と手間がかかり、資金繰りに悪影響を及ぼします。その結果、信用力が低下し、資金調達が困難になるかもしれません。
取引信用保険に加入しておけば、債権回収の手間を省き、損失の一部を補填することができます。

関連記事:全国中小企業団体中央会「取引信用保険制度について

取引先の条件と補償内容

取引信用保険の対象となる取引先の条件としては、主に以下が挙げられます。

  • 国内に所在する
  • 国や地方公共団体ではない
  • 自社の関連会社ではない
  • 継続的な売買契約が存在する
  • 既に債務不履行が発生している状態ではない
  • 個人事業主ではない

では、どのような場合に取引先が債務不履行に陥ったとみなされるのでしょうか。

  • 破産手続、民事再生手続、会社更生手続が開始された
  • 特別清算開始の申立があった
  • 銀行または手形交換所の取引停止処分を受けた
  • 財産について強制換価手続が開始された
  • 財産について仮差押命令もしくは差押通知が発せられた
  • 相続人が限定承認や相続放棄の申述をした

上記のいずれかの条件を満たし債務不履行に陥ったとみなされると、保険金が支払われる仕組みです。

ファクタリングとの違い

取引信用保険とよく比較されるファクタリングは、売掛債権を支払期日前に買い取るサービスです。売掛金の回収不能リスクを回避できるだけではなく、売掛金売却による資金調達が可能です。

取引信用保険とファクタリングの違いとしては、主に以下が挙げられます。

  • 取引先の選択可否
  • 保険料(掛け金)
  • 補填範囲

ファクタリングでは対象となる取引先を個別に選定することが可能ですが、取引信用保険では原則すべての取引先が対象です。

また、料金も異なります。取引信用保険の保険金は債権金額の1〜3%と比較的安いですが、2社間ファクタリングでは債権金額の10〜20%と、保険よりも高いです。

補填される範囲についても、ファクタリングでは売掛金を売却するため100%補填されますが、取引信用保険では80〜90%程度となります。

上記のように、ファクタリングは売掛金を売却することで融資よりも迅速な資金調達が可能な上に自由度が高い一方、掛け金も高くなる傾向にあります。

関連記事:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起

取引信用保険のメリットとデメリット

ここでは、取引信用保険のメリットとデメリットを解説します。

メリット

取引信用保険のメリットとしては、主に以下が挙げられます。

  • 資金繰り悪化の防止
  • 信用力の強化
  • 新規取引の獲得
  • 損失の平準化

売掛金を回収できない事態が発生しても保険が損失を補填してくれるため、資金繰りの悪化を防ぐことができます。

また債権回収の手間も省けるため、事業に集中することにもつながります。

売上債権が保全されるので被保険者である自社の信用が高まり、銀行融資や取引先の信用供与枠の拡大も期待できるでしょう。

信用力があるので、新たな取引先を獲得できるかもしれません。また、売掛金が損なわれるリスクを考慮する必要も減り、大胆に新規取引を増やすことができます。

売掛金の貸し倒れによる損害は一定に推移せず、予測困難です。しかし、保険によって損失が保険料に平準化され、資金繰りの計画が立てやすくなります。

デメリット

一方でデメリットとしては、主に以下が挙げられます。

  • 保険料の負担
  • 取引先を選定できない
  • 資金化できない
  • 損失が完全に補填されない

保険なので、毎月保険料が発生します。保険料は取引先の信用力により変動しますので、高額な保険料が発生する可能性もあります。

対象となる取引先は「すべての取引先」「売上額上位5社の取引先」「特定の業種や商品を扱う取引先」などの指定があるため、信用に不安のある特定の取引先を選定することはできません。

ファクタリングと異なり、売掛金を売却して資金化することもできません。また、売掛金を回収できなかった場合でも、損失は完全には補填されない点にも注意しましょう。

取引信用保険の気になるポイント

ここでは、保険金の計算方法や加入方法などの気になるポイントについて解説します。

保険金について

万が一の際に受け取る保険金は、以下のように計算されます。

保険金=損害額(債権額)×縮小率

損害額とは、取引先の破産手続、民事再生手続などが開始されて売掛金が回収不能になった時点での売掛金の金額です。
縮小率とは補填率であり、一般的に80〜90%程度に設定されます。しかし、保険金には支払い上限額があります。

例えば、3000万円の売掛金が回収不能となった事態を想定します。上限額が2500万円、縮小率が90%とすると、保険金は以下のように計算されます。

3000万円×90%=2700万円>2500万円(上限額)

この場合、受け取れる保険金は2500万円になります。

加入方法

保険の相談から契約までの流れは以下のとおりです。

1. 取引先の選択
2. 告知書による取引先情報の提供
3. 取引先の信用審査
4. 支払限度額の決定と見積もりの提示
5. 契約締結

原則、すべての取引先が対象ですが、保険会社との協議によって個別選択できる場合もあります。
次に、告知書に取引先の債権額、売上額、希望支払限度額などを記載し保険会社に提出します。
保険会社は告知書に基づき、取引先への信用供与を検討します。
その検討結果に基づいて支払限度額や縮小率などが決定され、被保険者に見積もりが提示されます。
見積もりに納得できれば、保険会社と契約を締結します。

どの保険会社を選ぶか

では、どの保険会社を選ぶのが良いのでしょうか。

取引信用保険を取り扱うのは損害保険会社です。保険会社によって保険料や縮小率が異なりますが、基本的に商品の内容に大差はありません。

なお、全国中小企業団体中央会や商工会議所が契約の窓口となっていることがあり、それらの窓口で契約することで保険料が割安になる場合もあります。検討する際は、自社が所属する団体が窓口となっている取引信用保険がないか、事前に確認してみましょう。

まとめ

取引信用保険は、取引先の倒産などによって売掛金が回収できない際に被保険者が被る損害に対して保険金が支払われる仕組みです。

急成長するベンチャー企業では拡大する取引先への与信管理が不足することがあり、売掛金を失うリスクを抱えています。

取引信用保険を活用することで、売掛金の回収不能による資金繰り悪化を防ぎ、信用力を強化できるので、安定的な事業運営につながるでしょう。


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