• 更新日 : 2024年7月16日

サテライトオフィスとは?メリット・デメリットや利点を解説

テレワークやリモートワークなど、出社を要しない新しい働き方もすっかり定着しています。そのような中で注目されているのが、「サテライトオフィス」です。

当記事では、サテライトオフィスについて、導入事例やメリット・デメリットなどを解説します。働き方の見直しを考えているのであれば、ぜひ参考にしてください。

サテライトオフィスとは?

「サテライトオフィス」とは、企業の本社や本拠地から離れた場所に設置される小規模なオフィスのことです。惑星(本拠地)の周りを周回する衛星(サテライト)のようなオフィスであることから、この名前が付けられています。

本項では、サテライトオフィスと支社や支店、テレワークなどとの違いについて解説します。

支社・支店・営業所との違い

企業が本社以外に設ける拠点として、支社や支店、営業所などが挙げられます。支社や支店なども本社や本拠地から離れた場所に設置されること自体は、サテライトオフィスと変わりません。

しかし、支社や支店が独立して運用可能な組織であるのに対し、サテライトオフィスは、あくまで働くスペースであり、独立した組織ではないことが通常です。営業所も独立した組織ではないことが多いですが、営業のために設置される点でサテライトオフィスとは異なります。

テレワークとの違い

サテライトオフィスとテレワークは、双方とも本来の拠点となる会社から離れて仕事を行います。しかし、サテライトオフィスは、「働く場所」であるのに対して、テレワークは「働き方」の一種です。

また、テレワークは、自宅や社外のワーキングスペースで業務を行うため、出社を要しません。しかし、サテライトオフィスはオフィスまでの通勤が必要となります。出勤や通勤の有無という点でも両者は異なった存在です。

サテライトオフィスが注目されている背景

サテライトオフィスが注目されている背景には、コロナ禍の存在があります。感染症の流行により、出社や通勤による密を避ける必要があり、多くの企業がテレワークに移行しました。しかし、自宅に集中して仕事ができるスペースがある社員ばかりではありません。

出社すれば、集中して作業ができるでしょう。しかし、それが叶わない状態であったため、密の回避と作業スペース確保、双方の問題解決手段として、サテライトオフィスに注目が集まることになりました。

また、サテライトオフィスが注目を集める理由には、多様な働き方の普及も挙げられます。働く場所の選択肢を従来の本社や支社などに限定せず、より小規模なサテライトオフィスを追加することで、社員が望む多様な働き方の実現にも貢献するでしょう。

サテライトオフィスの種類

サテライトオフィスは、設置される場所によって複数の種類に分類されます。それぞれに特徴があるため、項目を分けて解説します。

都市型

アクセスの良い都市部に設置される形態です。外回りを行うことからアクセスの良さが必要な営業担当者が利用するケースが多くなっています。また、地方に本拠地を持つ企業の都市部進出のために設置される場合も見られます。

郊外型

ベッドタウンなどの都市部郊外に設置される形態です。都市部に本拠地を設ける企業に通勤する社員は、郊外に住居を構える場合が多くなっています。そのため、郊外にサテライトオフィスを設置することで、職住近接を実現し、通勤時間の短縮を図ることも可能です。

地方型

都市部に本拠地を持つ企業が地方に設置する形態です。地方自治体が誘致する場合や、厚生労働省など、国の機関が支援している場合もあります。地方における雇用創出に役立つ形態であり、自然豊かな環境で働くことは、社員の福利厚生にもつながります。

サテライスオフィスのメリット

本社や支店などの他に、あえて小規模なサテライトオフィスを設ける理由はどこにあるのでしょう。サテライトオフィスを設けるメリットについて解説します。

生産性の向上・無駄な時間を削減

サテライトオフィスの設置は、生産性向上の効果が期待できます。営業先や社員の住居に近い場所に設けることで、移動に掛かる時間の大幅な短縮につながるでしょう。

移動の無駄を省くことにより、業務が効率化され生産性が向上します。また、通勤手当等の削減にもつながるため、余剰資金を設備投資等に回すことで、更なる生産性の向上も見込めます。

ワークライフバランスの調整がしやすい

サテライトオフィスを設けることで、通勤時間を大幅に短縮可能です。職住近接の実現により、通勤時間が短縮され、自由な時間が増えることになります。自由な時間を育児や介護、趣味の活動等に充てることも可能となるため、良好なワークライフバランスが実現できるようになるでしょう。また、育児や介護による離職を防ぐ効果も期待できます。

都心以外の人材の確保・採用に有利に働く

都市部の拠点に通勤が必要であれば、どうしても都市部や都市部近辺に住む人材しか採用できません。通勤距離の関係から、応募を諦める求職者も存在し、採用先となる拠点を限定することは、人材確保にとってデメリットであるといえます。

しかし、サテライトオフィスを地方に設置すれば、都市部以外の人材も採用可能となります。地方へのサテライトオフィス設置は、これまで見逃していた優秀な人材の発掘や、多様な人材の確保にもつながるでしょう。

BCP対策・サステナビリティの対策

コロナ禍を受けて、企業のサステナビリティ(持続可能性)や、災害時における業務遂行や復旧を定めた事業継続計画(BCP)にも、改めて注目が集まりました。サテライトオフィスのような拠点を増やすことによるリスク分散は、企業の持続可能性を高め、災害時における復旧を容易にする効果も見込めます。

サテライスオフィスのデメリット

サテライトオフィスには、メリットだけが存在するわけではありません。導入によってマイナスの効果を発揮する場合もあるため、デメリットについて確認することも大切です。

オフラインでのコミュニケーション減少

サテライトオフィスの設置により、社員同士のコミュニケーションが減少する場合もあります。テレワークも同様ですが、遠隔地において作業を行っている場合には、どうしてもコミュニケーションはオンラインに頼ることになります。

しかし、実際に顔を合わせなければ、密なコミュニケーションを取ることは難しいでしょう。コミュニケーションの不足は、業務における連携の低下にもつながり、業務効率が落ちてしまう場合もあります。

セキュリティ上のリスク

本社や支社であれば、厳重なセキュリティ体制が敷かれているでしょう。しかし、小規模なサテライトオフィスに、同様のセキュリティ体制を求めることは困難です。そのため、本人が意図しないような形で、情報漏洩が起きる可能性も否定できません。改善自体は可能でしょうが、強固なセキュリティ体制の構築や、リテラシー教育などには相応の期間やコストが掛かってしまいます。

勤怠・社員の管理が難しい

遠隔地において働く社員の勤怠管理は、通常とは異なった方法が必要となります。本社や支社といった場所で働いている場合であれば、上司による労働時間の把握は容易です。しかし、確認する者がいないサテライトオフィスでは、自己申告によって労働時間を把握しなければならない場合もあるでしょう。自己申告による労働時間の把握は、不正やミスの発生につながるため、打刻方法などを含めた管理体制の見直しが必要となります。

オフィスごとの格差が生じる可能性

サテライトオフィスは、様々な場所に設置されるため、オフィスごとに格差が生じる可能性もあります。通信環境の整っていないオフィスや、交通の便の悪いオフィスなどがあれば、折角のサテライトオフィスのメリットも帳消しになってしまうでしょう。また、格差を感じた社員のモチベーションも低下してしまいます。サテライトオフィスを設ける場合には、環境の格差をできるだけ生じさせないようにしましょう。

サテライスオフィスの導入方法

サテライトオフィスを導入するには、まず設置先となるスペースの確保が必要です。どこでも良いというわけではなく、働くことになる社員にとってアクセスが良いなど、利便性の高い場所である必要があります。

設置先のアクセスだけでなく、通信環境の確認も必要となるでしょう。遠隔地での作業は、進捗の報告やコミュニケーションなど、ほとんどをオンラインで行わなければなりません。そのため、セキュリティ対策を施すことも重要です。

小規模なサテライトオフィスとはいえ、複数人が働く場合もあります。そのため、集中して作業できるようにパーテーションなどで個人スペースを確保することも必要となります。

サテライトオフィスは、ただ遠隔地に設ければ良いというものではありません。あくまでも、業務の効率化やワークライフバランスの向上のために設置するものであることに留意しましょう。

サテライスオフィスの導入に企業が活用できる制度

サテライトオフィスの導入は、少なからず企業に負担がかかります。しかし、導入にあたって活用できる制度が存在します。有効に活用することでスムーズな導入が可能となるでしょう。

自治体が運営しているサテライトオフィスの活用

地方公共団体がサテライトオフィスの開設を行っている場合があります。令和3年度末時点では、地方公共団体によって、1,348のサテライトオフィスが開設されています。設置先では、北海道の110か所が最大となり、新潟県の95か所が続く形です。

空き家・空き店舗の活用や、地方における雇用促進などを考える地方公共団体による支援が受けられるため、通常のサテライトオフィスに比べて、導入における企業側の負担は軽減されます。また、地元企業との連携によって、新たなビジネスの創出にもつながるでしょう。

参考:報道資料|地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査|総務省

サテライスオフィスの導入事例

大手商社である「住友商事株式会社」では、首都圏を中心におよそ200か所のサテライトオフィスを設けることで、社内とほぼ同様の業務が可能な体制を構築しています。懸念事項である勤怠管理ついても業務計画を事前に上司と協議することで対策しています。このことにより、サテライトオフィスにおける勤怠状況もチャットツールやスケジュールツールで共有可能です。

大手食品会社である「味の素株式会社」でも、経営会議をサテライトオフィスで行うなど、導入が進められています。また、同社では社長自らが情報を発信し、新しい働き方の普及に努めています。他にも「株式会社リコー」や「東急株式会社」などの大企業をはじめ、サテライトオフィスの導入が進んでいるのが現状です。

参考:
企業の取り組み事例|テレワーク総合ポータルサイト
住友商事株式会社
味の素株式会社
株式会社リコー
東急株式会社

サテライトオフィスの活用で効率化を

サテライトオフィスは、適切に設置すれば、多くのメリットを享受可能です。導入を考えている企業の担当者は、ぜひ当記事を参考にして、業務の効率化を図ってください。


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