• 更新日 : 2023年7月7日

株式発行で資金調達を行うメリットとデメリットをわかりやすく説明します

株式による資金調達には金融機関からの融資や社債による資金調達にはないメリットがあります。
この記事では、株式とは何かわかりやすく説明した後、株式発行で資金調達するメリットとデメリットを紹介します。株主発行の方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

株式とは

株式発行で資金調達を行うメリットとデメリットをわかりやすく説明します
そもそも株式とは、わかりやすく言うと「企業が資金調達のために活用できる制度」です。金融機関からの融資は「間接金融」、株式や社債による資金調達は「直接金融」と呼ばれます。

投資家に出資してもらう際に企業は株式を発行し、出資金額が企業の自己資本となります。投資家が株を売却したい場合は、その株を買いたい別の投資家を見つける必要があり、発行した企業が返済する必要はありません。
ただし、株式を利用して資金を得た企業に利益が出た場合、その利益を株主と分ける必要があります。利益を株主に分配することを配当金や分配金と呼びます。

また、株式を保有する株主には、株主総会での議決権が与えられます。つまり、意見を表明することで企業経営に参加できるようになります。株式の過半数を保有する株主には経営権が発生するため、経営権を渡したくない場合は自社と通じた人のみで過半数の株式を保有する必要があります。

社債との違い

資金調達の方法として、株式に似た仕組みが社債です。社債とは、投資家から融資を得る制度で、社債を発行した企業には利息や返済が発生します。株式は自己資本の扱いでしたが、社債は負債となります。

ただし株式とは異なり、株主に議決権や経営権を与える必要がありません。また、株式より短期間で発行できたり、株価に影響を与えることが少ないといったメリットもあります。

株式発行で資金調達を行うメリット

株式発行で資金調達を行うメリットとデメリットをわかりやすく説明します
では、株式発行で資金調達を行う際、どのようなメリットがあるのでしょうか。株式発行で資金調達を行うメリットには、以下の2つがあります。

  • 返済する必要がない
  • 財務体質を強化できる

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

返済する必要がない

株式発行で調達資金は、返済する必要はありません。金融機関からの融資や社債の発行による資金調達は企業の負債となり、返済する必要があります。

しかし、株式は自己資本となる仕組みのため、株主に対しての返済は不要です。前述のとおり、株主が株を売却したい場合は、株を購入したい別の投資家を探して購入してもらう仕組みのため、投資家間の株の売買に企業は関わりません。

財務体質を強化できる

財務体質を強化できることも、株式発行で資金調達するメリットです。財務体質とは、企業の財務状況のことを指します。自己資本比率が高く、負債が少ないほど財務体質が健全とされています。

繰り返しになりますが、株式発行により調達した資金は自己資本です。株式発行による資金調達は、金融機関からの融資や社債発行などの負債と比較し、自己資本比率を高める結果となります。

自己資本比率を上げて財務体質を強化することで、安定的な経営を実行できたり、融資を受けやすくなったりと信用力が向上します。

株式発行で資金調達を行うデメリット

株式発行で資金調達を行うメリットとデメリットをわかりやすく説明します
前項では株式発行による資金調達のメリットを紹介しましたが、一方でデメリットもあります。主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 経営権を奪われる可能性がある
  • 株価が低下する可能性がある
  • 法人税が増える

では、それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。

経営権を奪われる可能性がある

株式発行で資金調達を行うと、経営権を奪われる可能性のあることがデメリットです。そもそも経営権とは、株主総会において決議を行う権限のことを指し、つまり経営権を奪われてしまうと、企業の経営に参画できてしまいます。

もちろん、経営権を保持する株主に知識やスキルがあり、よりよい経営を実現してくれるなら話は別ですが、そうでない株主に経営権を奪われてしまうと企業の存続にかかわる事態になりかねません。総議決権の2分の1超を保有する場合、あるいは総議決権の3分の2以上を保有する場合経営権を奪われてしまうのです。総議決権の3分の2を保有する株主は、普通決議だけでなく特別決議でも単独で可決できるようになります。

株価が低下する可能性がある

株価が低下する可能性のあることも、株式発行で資金調達するデメリットの1つです。株式の新規発行を行うと、すでに株式を所有している株主の持株比率が下がります。持株比率とは、発行済み株式総数に対する所有株式数の割合です。
たとえば、発行済み株式総数が100株だった場合、30株保有している株主の持株比率は30%となります。新規株式100株を発行して発行済み株式総数が増えた場合、この株主の持株比率は15%となり約2分の1に減少してしまいます。

持株比率が下がることで既存株主の反感を買い、株式の売り注文が増え、株価が低下する可能性についても理解しておきましょう。

法人税などの税金が増える

株式発行により資金調達を行うデメリットには、法人税が増えることも挙げられます。そもそも法人税は、資本金の額によって増減するものです。前述のとおり、株式発行により調達した資金は自己資本となります。つまり、企業の資本金などに含まれることとなり、法人税などの税金が増加する可能性があります。

2023年2月時点での法人税の税率は、普通法人は23.2%、資本金1億円以下の普通法人は15%からです。株式発行により資本金が1億円超となった場合、法人税の軽減税率15%が適用されず、23.2%に増加する可能性があります。

株式を発行する方法は3種類

株式発行で資金調達を行うメリットとデメリットをわかりやすく説明します
株式発行と一言で言っても、実は株式を発行する方法には以下の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った方法を検討しましょう。

  • 株主割当
    既存の株主に対し、持株比率に応じた新規株式を発行する方法です。条件に合意してもらう必要があるものの、比較的素早く資金調達できます。既存株主の負担になるような大きい金額の資金調達には不向きです。
  • 第三者割当
    既存株主ではなく、第三者に新規株式を発行する方法です。既存株主の持株比率は下がるため株価の低下が危ぶまれるものの、特定の相手に対する交渉で済むため、短時間で大きな金額を資金調達できる可能性があります。
  • 公募発行
    既存株主でも特定の第三者でもなく、新規株式を公募により発行する方法です。調達できる金額が大きくなり、発行後は株式の売買数が増加する可能性もあります。ただし、株主数が増えるため対応コストもかかります。

まとめ

株式とは、企業が出資してくれた人に対して発行する証券です。投資家による出資は自己資本となるため、返済する必要はありません。また、出資額は自己資本比率に含まれるため、財務体質の健全化にもつながり、信用力が向上するメリットもあります。

ただし、株式発行には経営権を奪われたり、既存株主の反感を買うことで株価が低下したりする可能性があることも理解しておくことが重要です。株式を発行する方法は、株主割当・第三者割当・公募発行の3種類です。自社に適した方法で株式発行による資金調達を目指すとよいでしょう。

よくある質問

株式ってなに?

株式とは、投資家に出資してもらう際に企業が発行する証券です。株式を保有する投資家を株主と呼び、議決権が付与されたり、利益が分配されたりします。企業にとっても、返済不要で資金調達できるため、メリットの大きい資金調達法です。

株式を発行するメリットはなに?

株式を発行するメリットは、金融機関からの融資や社債のように返済する必要がないことです。また、財務体質を強化できることも、株式発行によるメリットです。株式発行により得られる資金は自己資本となるため、自己資本比率が上がり、財務体質の健全化を図れます。

株式を発行する際に注意すべきポイントは?

株式の発行にあたって注意すべきポイントは、資金調達を行うと経営権を奪われる可能性のあることがまず挙げられます。経営権とは株主総会において決議を行う権限のことを言い、経営権を奪われてしまうと企業の経営に参画できてしまうのです。また、株式の新規発行を行うとすでに株式を所有している株主の持株比率が下がること、調達資金が資本金に含まれるので法人税などが上がる可能性があることにも気を付けましょう。


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