- 更新日 : 2024年7月16日
KSF(Key Success Factor)とは?意味や使い方を具体例をもちいて解説
KSF(Key Success Factor、キーサクセスファクター)とは、日本語では重要成功要因と訳されます。事業を成功させる要因のことで、市場で生き残るためにも必要な要素です。KSFの見つけ方や設定の際に役立つフレームワーク、KPIやKGIとの違いについて解説します。
目次
KSF(Key Success Factor)とは?
KSF(Key Success Factor)とは、事業を成功させる要因のことで、日本語では重要成功要因と訳されます。KSFは、参入している、あるいはこれから参入する市場において生き残るために必要な要素で、市場動向などの外部環境要因と自社の強みなどの内部環境要因の2つに分けられます。
KSFを特定すると、事業をおこなうにあたってどこに注力するべきかを明確にすることが可能です。KSFを分析したうえで事業計画を立てると、計画がより現実的なものとなるだけでなく、効率よく事業を成功させやすくなります。
KGIとの違い
KGI(Key Goal Indicator)とは、ビジネスの最終目標を評価するときに用いる指標のことで、重要目標達成指標と訳されます。たとえば、売上高や利益率、業界内のシェア率などをKGIに設定することがあります。
KSFは事業を成功させるカギとなるものですが、KGIは成功したかどうかを調べる尺度です。KSFを設定して事業を進め、事業の結果をKGIでチェックしましょう。
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicator)とは、事業を進めるにあたって、適切なプロセスを踏んでいるかを評価する指標のことです。重要業績評価指標とも呼ばれます。KGIが最終的な目標を達成しているかどうかを調べる指標であるのに対し、KPIは中間目標の達成度をチェックする指標といえます。
たとえば、KGIとして「3年以内にECの売上高10%アップ」を掲げたとしましょう。KPIには、「1年以内にECサイト閲覧者30%増」や「半年以内にメルマガ会員50%増」など、より短い期間で達成できる目標を設定できます。
KBFとの違い
KBF(Key Buying Factor)とは、顧客が商品・サービスを購入するときに重視する要素のことで、購買決定要因とも呼ばれます。たとえば、デザインや価格、ブランド名、口コミなどがKBFになります。
KBFはKSFを見つけるための手がかりです。KBFを分析することで売上を伸ばす要因が見つかり、その要因に注力したマーケティングを実施すれば、KSFを見つけられることもあります。
KFSとの違い
KFS(Key Factor for Success)はKSFと同じく、重要成功要因のことです。元となる英語の語順が異なるだけで、意味に違いはありません。
CSFとの違い
CSF(Critical Success Factor)も重要成功要因と訳され、KSFとほぼ同義の言葉として使われます。
KSF(Key Success Factor)が使用される場面
KSF(Key Success Factor)は、次の場面で使用されます。
- マーケティング活動
- 事業戦略
それぞれの場面において、KSFを活用する方法を解説します。
マーケティング活動
事業を推進するにあたって、マーケティング活動は欠かせません。顧客のニーズや市場の変化を分析し、ターゲットを割り出して広告活動を実施します。
マーケティング活動を成功させるためにも、KSFの設定が必要です。KSFを適切に設定することで、マーケティング活動が成功しやすくなり、事業の成果も期待できるようになります。ただし、顧客のニーズや市場は目まぐるしく変化するため、定期的にKSFを見直し、状況に合わせて再設定するようにしましょう。
事業戦略
KSFを設定してから事業を進めることで、無駄のない効率的なプロジェクト進行が可能です。事業戦略を立てるときには、最初にKSFを設定しておくことでプロジェクトが一貫性を持って進み、判断に迷ったときの意思決定基準にもなります。
事業の失敗を回避するためにも、KSFに基づいた事業戦略の構築が欠かせません。また、一貫性のある行動は、顧客や社会からの信頼獲得にもつながります。
KSF(Key Success Factor)を導入するメリット
KSF(Key Success Factor)を導入することには、次のメリットがあります。
- 目標に対する具体的なアクションの明確化
- プロジェクトの進行を効率化
- アクションの一貫性
それぞれのメリットについて解説します。
目標に対する具体的なアクションの明確化
KSFを設定することで、プロジェクトの具体的な目標が明確になります。何をするべきかが明らかになり、とるべきアクションも明確になります。
プロジェクトの進行を効率化
事業戦略を立てるときには、最終目標としてKGIを設定しますが、KGIだけではプロセスが不明瞭になり、場合によっては無駄な工数が増えるかもしれません。KSFを設定することで、プロセスの途中にある小目標が明確化し、結果として効率性の高いプロジェクトの進行が可能になります。
アクションの一貫性
KSFを設定してからプロジェクトを始動することで、事業達成のためのアクションに一貫性が生まれます。
KGIを設定することも大切ですが、最終目標を達成するまでのプロセスが不明瞭なため、プロジェクトメンバーの解釈によっては一貫性のないアクションが生じるかもしれません。プロジェクトに関わるすべての人々が同じ方向に向かって進むためにも、KSFを設定しておくことが大切です。
KSF(Key Success Factor)を設定する際のポイント
以下のポイントに注目することで、より有用なKSF(Key Success Factor)を設定できます。
- KGIを具体化する
- KGIに対する目標達成プロセスを明確化する
- KPIとKGIの紐づきを明確化する
- KSFを定期的に見直す
- KSFの設定を目的にしない
- 内部要因と外部要因を見極める
それぞれのポイントを説明します。
KGIを具体化する
プロジェクトの最終的な目標は、KGIを達成することです。KSFもKGIに沿って設定する必要があるため、まずはKGIを具体的に設定しましょう。たとえば「1週間の受注件数を100件にする」「1年後に売上30%増を達成する」など、具体的な数値目標を設定することが大切です。
KGIに対する目標達成プロセスを明確化する
次は、KGIを達成するためのプロセスを明確にします。たとえば、「1年後に売上30%増を達成する」をKGIとするならば、次のように目標達成プロセスを作成できます。
- 見込み顧客のリストを作成する
- 購買意欲の高さによってランクに分ける
- ランクに応じたアプローチを実施する
- 購入者に次回使える割引クーポンを提供する
- 購入後も定期的にメルマガなどでアプローチする
KPIとKGIの紐づきを明確化する
目標達成プロセスを明確化した後で、各プロセスにおける目標(中間目標、KPI)を設定します。KPIはKGIを達成するための目標として、明確に紐づいていることが必要です。
たとえば上記のプロセスであれば、「割引クーポンの使用率10%」「メルマガの開封率30%」などのようにKPIを設定できます。KGIとKPIを設定すると、プロジェクトの進行方向が明確になり、KSFも設定しやすくなります。
KSFを定期的に見直す
顧客のニーズや市場の変化によって、KSFも変わります。定期的に見直すことで、常に現状に即したKSFを設定しましょう。
KSFの設定を目的にしない
プロジェクトの目的は、あくまでもKGIの達成です。KGIを達成するために、具体的なKPIやKSFを設定します。KSFを設定することはプロジェクト成功に必要な要素ですが、設定自体が目的にならないように注意しましょう。
内部要因と外部要因を見極める
解決すべき課題を分析し、内部要因と外部要因に分けておきましょう。
たとえば、プロジェクト成功を阻む要因として「製品の量産体制が整っていない」という内部要因と、「ターゲットが狭くニーズが低い」という外部要因が想定されるとします。いずれの課題も克服するためには、「高性能の機械を導入して量産体制をつくり、ターゲットを広げて市場を開拓する」などのKSFが設定できます。
このように内部と外部の要因を分析して、克服すべき課題を明確にしたうえで、KSFを設定することが有用です。
KSF(Key Success Factor)の具体例・事例
KSF(Key Success Factor)を適切に設定することで、効率的に目標達成を実現した企業も少なくありません。たとえば、ある携帯電話会社では「顧客開拓のスピードアップ」をKSFに設定し、携帯電話本体を無料にしたり代理店を増やしたりする施策を実施し、顧客の囲い込みに成功しました。
また、ある衛生用品を取り扱う企業では、「紙おむつの価格を下げる」というKSFを設定し、紙おむつ業界内のシェア拡大を狙いました。安価になった紙おむつを購入するユーザーは多く、シェアは約2倍に増え、売上増を実現しています。
適切なKSFは時代によっても変わります。そのときに求められているニーズと近い将来求められるニーズを敏感に察知し、KSFとして設定することが、プロジェクト成功のカギといえるでしょう。
KSF(Key Success Factor)の設定に役立つフレームワーク
KSF(Key Success Factor)を設定するには、顧客ニーズや市場、自社の強みなどを適切に分析することが欠かせません。分析に役立つフレームワークを紹介します。ぜひ活用して、KSFの設定に役立ててください。
3C分析
3C分析とは、主にマーケティング環境を分析する際に用いるフレームワークです。なお、3Cとは以下の頭文字です。
- Customer(市場、顧客)
- Competitor(競合企業)
- Company(自社)
Customerでは顧客のライフスタイル・年齢・ニーズなど、Competitorでは競合企業の強み・弱み・市場シェアなど、Comanyでは自社の強み・弱み・社会からの評価などを分析します。3つの視点から環境を分析することで、KSFを見つけやすくなります。
5F分析
5F(Five Forces)分析とは、5つのForce(脅威)を分析することです。自社を取り巻く環境を分析し、KSFを設定する際に用いられます。なお、5つの脅威とは以下のとおりです。
- 競合企業
- 代替品
- 新規参入者
- 買い手
- 売り手
それぞれの脅威を分析することで、業界の収益構造や自社の優位性が明確になります。収益構造や自社優位性を分析できると、マーケティング戦略を立てやすくなります。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社の内部環境と外部環境を分析する手法です。プロジェクトや自社の現状を分析する際に用いられます。
- Strength(自社の強み)
- Weakness(自社の弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
なお、StrengthとWeaknessは内部環境、OpportunityとThreatは外部環境です。各環境のプラス面とマイナス面を洗い出すことで、現状を客観的に把握しやすくなります。
PEST分析
PEST分析とは、自社の外部環境を分析する手法です。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
外部環境は自社でコントロールできません。PEST分析を実施することで、市場の将来性や有効なマーケティング手法を読み解き、事業戦略やマーケティング戦略の策定に役立てます。
KSFを設定して効率的に事業を進めよう
KSFを設定することで、プロジェクトを効率的に進めることが可能です。KGIに即したKSFを割り出し、無駄のないアクションで目標達成を目指しましょう。
KSFを割り出すときには、3C分析などのフレームワークを活用すると、内的要因・外的要因を包括的に分析しやすくなります。ぜひ紹介したフレームワークも参考に、適切なKSFを設定してください。
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