• 更新日 : 2023年7月2日

徹底解説!コーポレートガバナンスと内部統制の違いとは?

コーポレートガバナンスと内部統制は混同されやすく、違いを明確に説明できる人は多くありません。両者の違いは以下の通りです。

コーポレートガバナンス:主に経営者の不正を防ぐための仕組み
内部統制:主に経営者が従業員などの不正を防ぐための仕組み

このように、不正を防ぐ主な対象に違いがあります。両者の用語を適切に理解することは、とても重要です。そこでこの記事では、コーポレートガバナンスと内部統制の違いをわかりやすく説明していきます。

コーポレートガバナンスとは?

コーポレートガバナンスとは、「企業統治」とも訳され、健全な企業経営を行うために企業自身が監視・統制する仕組みのこと。ここでいう健全な企業経営とは、法令を遵守し、不正・不祥事がなく、男女が平等に働ける状態などを指します。

コーポレートガバナンスの取り組みは企業によってさまざまです。例えば、「(業務執行の意思決定機関である)取締役会の監督機能強化」や「女性新卒採用比率の設定」に取り組んでいる企業もあります。企業はこれらの取り組みを通じて、「透明性のある情報開示」や「多様性ある人材の活躍」などを目指しています。

コーポレートガバナンスは、企業の社会的な価値・信頼性の向上につながり、さらに消費者の購買行動にも影響を与える重要な仕組みです。コーポレートガバナンスは今や、すべての企業が取り組むべきテーマといえるでしょう。

内部統制とは?

内部統制とは、健全な企業経営を営む上で、経営者を含む従業員が守るべき社内ルールや仕組みのことです。

例えば、企業の中には「原則としてパソコンやUSBの持ち出しを禁止する」というルールを設けているところもあります。これも情報漏洩を防ぐための内部統制の社内ルールのひとつです。

こうした内部統制を強化することで、情報漏洩リスクや不祥事・不正、各種ミスなどを防ぐ効果が期待できます。このように、内部統制は企業が健全に事業を営み、成長していく上で、土台になる仕組みといえるのです。

コーポレートガバナンスと内部統制の共通点は?

コーポレートガバナンスと内部統制の共通点は、「どちらも健全な企業経営を営むためにつくられたルール・仕組み」という点です。どちらも不祥事の防止や適切に情報開示をするなどの共通の目的を持っています。

ただし、コーポレートガバナンスと内部統制は混同されがちですが、異なる概念です。どちらも健全な企業運営においては欠かすことのできないもので、両輪で走らせることが大切ですが、概念としてはしっかり区別して理解しましょう。

コーポレートガバナンスと内部統制の違いは?

混同されがちなコーポレートガバナンスと内部統制には「誰が・誰に対して監視・管理をする仕組みなのか」という観点で違いがあります。

内部統制:経営者が従業員などを管理するための仕組み。経営者を監視・管理することに重きを置いていない。
コーポレートガバナンス:株主や取締役会、場合によっては顧客や株主などが、経営者の不正や暴走を防ぐための仕組み。

経営者が従業員などを管理するための仕組みである内部統制は“経営者のための”仕組みといえます。一方、コーポレートガバナンスは経営者を監視し、不正や暴走を防ぐための仕組みです。

このようにコーポレートガバナンスと内部統制には、「誰が・誰に対して監視・管理をするのか」、言い換えると「主に誰のための仕組みなのか」という点に違いがあります。

コーポレートガバナンスを強化する方法は?

コーポレートガバナンスを強化することで、企業の社会的な価値・信頼性の向上につながり、収益力にも好影響を与えます。ここでは、コーポレートガバナンスを強化する5つの方法を紹介します。

1.内部統制の強化を進める

コーポレートガバナンスと内部統制は異なる概念の用語ではありますが、共に「健全な企業活動をすること」を目的とした仕組みです。そのため、内部統制の強化がコーポレートガバナンスの強化につながる場合もあります。例えば、内部統制の強化として違反・不正行為をなくす、もしくは少なくすることで、コーポレートガバナンスの「適切な情報開示と透明性の確保」に寄与します。

2.社外取締役や社外監査役、報酬委員会などを置く

コーポレートガバナンスは、主に経営者を監視するための仕組みです。監視には社内の人間ではなく第三者からの視点、例えば社外取締役や社外監査役の設置や、彼らで構成された報酬委員会などを置くことが有効です。

社外取締役

社外の立場から経営の監督をする人。経営者の意思決定や他の取締役の監督を期待される。場合によっては業務の執行を行うことも可能です。

社外監査役

監査役として、社外から選ばれた人。監査役は取締役の「業務の適法性」を外部から監督する役割を担う。

報酬委員会

報酬などの内容を決定する委員会。社外取締役や社外監査役などで構成することで、客観的な判断を下せるようにする。

3.執行役員制度を導入する

そもそも執行役員とは「事業部門のトップ」として、取締役などの役員が決めた方針を執行する役割を持つポジションの人です。そして執行役員制度とは、従来取締役が担っていた業務執行を執行役員が担当する制度のことを指します。

執行役員制度の導入により、経営と業務執行が完全に分離します。すると、役員は経営方針を伝える際に、執行役員にその内容を伝えなければなりません。その際に不審点があれば執行役員は役員に追求することができ、経営者が不正をする抑止力になる、つまりコーポレートガバナンスの強化につながります。

4.従業員にもコーポレートガバナンスについて徹底周知する

コーポレートガバナンス強化にあたり、株主や社外はもちろん、従業員に対してもコーポレートガバナンスについて徹底周知をすることが大切です。

コーポレートガバナンスについて周知を進めることで、従業員の意識が変わります。プロセスを守ろうとする意識が芽生えたり、現行の体制への監視の目を光らせるようになったりと、経営者の不正・暴走への抑止力につながります。

5.コーポレートガバナンス強化に資するツールの導入・活用

「正確な労務管理の実現」や「不正の追及ができる体制づくり」をすることで、コーポレートガバナンスの強化につながります。そのためには勤怠管理システムやワークフローシステムなどのツールを導入・活用してもよいでしょう。

勤怠管理システム

出勤・退勤時刻や残業時間などの管理ができるシステム。従業員の過重労働・長時間労働を的確に把握し、注意・改善することができる。

ワークフローシステム

ワークフロー(一連の業務や手続き)を管理するシステム。業務ごとの責任の所在を明確にし、どの段階で不正があったのかを突き止められる。

上記以外にも、例えば支払プロセスをデジタル化できるツールなど、透明性や公正性を強化できるツールはあります。自社の実情に合わせて適宜導入・活用してみましょう。

内部統制を強化する方法は?

内部統制を強化する方法について、以下4つの手順を踏むことでより強固な内部統制を実現することができます。

1.リスクの洗い出し

財政状態やキャッシュ・フローの変動、特定の取引先・技術等の依存など、全社的なリスクを洗い出す

2.リスクに応じた社内規程の整備

洗い出したリスクに対して、そのリスクを低めるために社内規程を整備する

3.ワークフローシステムの導入

社内規程の変更による業務遂行にも対応したワークフローシステムを導入する

4.取締役会の設置

代表取締役を監視する役割を持つ、取締役が話し合う場である取締役会を設置し、ワンマン経営を防止する

上記3.で挙げたワークフローシステムとは、システムを導入・活用することで、プロセスが可視化・徹底化されるため、内部統制の強化につながります。また、経費精算にも紐付けて使用でき、最終的なキャッシュアウトまで可視化されるため、不正のリスクを抑えることが可能です。

そのほか、ワークフローシステムを活用して内部統制を強化した事例については、以下マネーフォワードの会計Plusの導入事例を参照してみてください。ワークフローシステムは、コストや既存のシステムとの連携性、機能をよく精査して選びましょう。

チャットプラス株式会社 『上場のための内部統制機能と、担当者の対応力が決め手でした』

株式会社クラシコム 『上場を見据え、内部統制に効果的なクラウド会計Plusへ移行』

内部統制報告を作成する

内部統制報告書とは、内部統制がきちんと機能しているかどうか、企業が評価した結果をまとめた報告書です。この内部統制報告者は、金融庁に提出しなければならず、上場企業は作成・提出する義務があります。また、提出前に監査法人による監査を受けなければいけません。監査法人による監査を受けることで、内部統制に関わる現状の課題を捉え、改善・強化対策を見出しやすくなります。

専門家へ相談する

特に「内部統制について一から見直して、強化を図りたい」という場合は、弁護士(法律事務所)や会計士などの専門家に相談してもよいでしょう。例えば、法律事務所では内部統制の構築についても支援しています。優秀な法律事務所に依頼すれば、個々の企業の環境や事業特性などを勘案した上で、最適な内部統制の構築を実現することができるでしょう。

まとめ

コーポレートガバナンスと内部統制の違いは、コーポレートガバナンスが経営者の不正・暴走を防ぐための仕組みであるのに対し、内部統制は経営者が従業員などを管理するための仕組みである点です。ただ、どちらも健全な企業活動をするためにつくられた仕組みです。コーポレートガバナンスと内部統制、両者の強化に努め、より社会に貢献できる健全な企業を目指していきましょう。


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