- 更新日 : 2024年7月16日
OKRとは?目標設定や管理に使える方法をわかりやすく解説
企業の目標管理にはいろいろな方法があります。OKRとは、それらの目標管理手法のひとつです。全社員が同じ方向を向いて、明確な優先順位を持ちながら、一定ペースで計画を進行することを目的としています。
ここではOKRの意味、他の手法との違い、設定手順やメリット、活用方法、企業事例などについて分かりやすく説明します。
目次
OKRとは?
OKRとは「Objectives and Key Results」の略語で、達成目標である「Objectives」と目標達成のための成果指標である「Key Results」から成り立っている、会社の目標管理手法の中のひとつです。
会社が非常に達成が困難な目標を設定し、組織や個人がその目標を達成するための成果指標も同時に設定します。従来の目標設定と比較して、高い頻度で設定、追跡、再評価するところが特徴です。
KPIとの違い
KPIは「Key Performance Indicator」の略語です。目標達成のキーとなる重要業績「Key Performance」と、目標の達成水準を表す評価指標「Indicator」を定量的に把握するために利用されます。
OKRは、達成目標である「Objectives」と目標達成のための成果指標である「Key Results」から成り立っていて、何を目指し、何を成し遂げたいのかの明確化を目的としています。
それに対して、KPIは、最終目標の達成過程において、何を達成する必要があるかを目的としている点が異なります。また、理想の達成率についても、OKRが60〜70%であることに対して、KPIは達成率100%を理想としている点も違います。
MBOとの違い
MBOは「Management By Objective」の略語です。最終的な目標の達成度を測るため、業績に基づいて社員を評価することが目的です。そのため、達成率は100%を理想としています。
OKRは達成率が60〜70%であるため、OKRは社員の評価と結びつけないところがMBOとは違う部分です。
ノーレーティングとの違い
ノーレーティングは、人事評価による社員のランク付けを行わない人事評価制度のことをいいます。上司が部下の仕事に対する評価を年次などで行うのではなく、リアルタイムで把握するために運用される制度です。
それに対して、OKRは、報酬などの評価には連携せず、組織の目標達成を目的とする点で違いがあります。
コンピテンシー評価との違い
コンピテンシー評価は、コンピテンシー、すなわち、業務遂行能力が高い社員に共通する行動を把握し、それを基準に評価を行う評価手法です。
コンピテンシー評価とOKRとは、その目的が、評価に連携するかしないかという違いがあります。
360度評価との違い
360度評価は、1人の社員(被評価者)に対して、自部門・他部門、上司・部下・同僚など、さまざまな立場の複数の人が評価を行う手法です。
OKRは、困難な目標を設定して、組織や個人が同じ方向に向かって業務を計画的に進めて、従業員を成長させることを目的としています。目標の達成度と人事評価を結びつけるものではないとしていますので、360度評価とは、評価の実行の有無という違いがあります。
OKRが使われている例
ここでは、実際にOKRを使っている事例について見ていきましょう。
花王株式会社
花王株式会社は、2021年度からOKRを導入しました。花王グループでは、OKRを「ありたい姿や理想に近づくための高く挑戦的な目標」としています。
KCMK(花王グループカスタマーマーケティング)では、KCMK版の「OKR」を作成。各部門の担当者が自身の事業や仕事内容に落とし込み、自由な発想でありたい姿に近づくための目標や夢を立てます。
OKRは、花王グループの全社員で共有します。組織の枠を超えて目標を共有することで、同じ想いを持つ仲間と連携できる仕組みを構築しています。
社員自ら掲げた目標への挑戦を通じて、一人ひとりの成長を促し、個の力と英知を結集したイノベーションを生み出すことによって、さらに強い組織に変革することを目指しています。
参考:
組織マネジメント制度「OKR」|花王株式会社
OKR&チャレンジ評価制度|花王株式会社
人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集|経済産業省
株式会社耕電設
株式会社耕電設では、アクションプランとOKR評価制度により、従業員自ら成長できる場を構築しています。
「従業員一人ひとりが自らの人間力・技術力を高め、自社ブランド力の向上を図り、地域から、そして社会から求められる企業へと成長・発展する」というアクションプランを設定。組織のゴール達成に向けて、上司と部下が話し合いながら目標設定を行っています。
評価基準にOKR制度を導入し、双方向での人事考課を実施することにより、透明性の高い評価制度を構築しています。
参考:
「はばたく中小企業・小規模事業者300社」・「はばたく商店街30選」2021 担い手確保|中小企業庁
アクションプランとOKR評価制度で目標を明確化 従業員が自ら成長できる場を構築|株式会社耕電設
ハルモニア株式会社
ハルモニア株式会社では、「ビジネスのすべてをダイナミックにし、地球のサステナビリティを高める」ことをミッションとして、2023年5月に気候変動緩和を目的とする全社目標(OKR)を策定・公表しました。
そのために掲げている事業目標が「食品ロスの削減」「企業の省資源・高収益化」の2つ。目標を実現するために、具体的な日時・数字を盛込みながら「Objective(設定目標)」「KR(主要な成果)」を公表しました。
OKRを広く公表することで、賛同するパートナー企業・個人を募り、協業することで課題解決を加速させることを目指しています。
参考:プライシングで持続可能な世界を目指すハルモニアが、全社目標(OKR)を公表する理由|ハルモニア株式会社
OKRの活用方法
OKRの活用方法について見ていきます。
目標設定での活用
一般的に、目標は100%達成できる内容を検討しますが、OKRの場合には達成困難な目標を設定するため、最終的に60〜70%程度の達成度となるような目標にします。
これにより、通常よりも難易度の高い達成目標の実現に向かって進めますので、前向きな気持ちで仕事に取り組むことができます。
目標管理での活用
OKRは高く設定した目標を達成するために行う目標管理手法です。OKRを実施することで、企業の目標を個人とリンクさせてコミュニケーションを活性化させます。
生産性の低下、社員のモチベーションの低下は社内コミュニケーションの不足が原因であることも多く、そうした企業には目標管理としての活用が効果的です。
OKRはどのように決めればよい?手順について
OKRは、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)の2つから構成されます。OKRを決めるにあたってどのような手順で決めていけばよいか、見ていきましょう。
達成目標(Objectives)を決める
達成目標(Objectives)は、会社全体が目指す理想の姿になります。具体的な数値を入れる必要はなく、シンプルで頭に残りやすく、達成することに関して社員のモチベーションを上げられるようなものであることが重要です。
目標は定性的で、期間は1ヶ月から3ヶ月程度で達成できそうな目標を立てるとよいでしょう。
主要な成果(Key Results)を決める
主要な成果(Key Results)は、達成目標に対する評価を設定します。達成目標とは異なり、主要な成果は数値を細かく定める必要があります。
主要な成果の数は、増え過ぎるとエネルギーが分散してしまいますので、2つから5つ程度にしておきます。設定する数値は、達成可能なラインより高くし、評価する際には60〜70%程度の達成度になっているようにしてください。
OKRシートのテンプレート – 無料ダウンロード
OKRシートを利用することで、目標設定のプロセスを簡素化し、組織全体での目標の透明性を高めることができます。
しかしながら、どのように作成すべきかお悩みの方も多いのではないでしょうか。実際に自社に合わせたOKRシートを1から作成するのは大変なことです。
マネーフォードクラウドでは、今すぐ実務で使用できる、OKRテンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。
OKRを使用することのメリット
OKRを評価制度として使用するメリットについて簡単に説明します。
自社の目標を明確化して従業員と共有できる
OKRでは、最初に自社の目標を設定し、その目標に対して各事業部>各部署>各チーム>個人に落とし込んでいきます。これにより、自社の目標が従業員個人の仕事とリンクしますので、一体感が出ます。
仕事の優先順位が明確になる
OKRは、自社の目標に対して、各事業部>各部署>各チーム>個人のOKRに落とし込んでいきます。個人の仕事が会社の目標に直結していくため、仕事上の課題を抽出し、優先順位をつけて仕事がしやすくなり、業務の効率化を進めることができます。
高い水準の目標に挑戦しやすい
OKRでは、最初から高い水準の目標を設定します。また、人事評価とは切り離して考えられており、達成率も60%から70%で十分であるとしています。そのため、組織全体で高い水準の目標の達成を目指してまとまりやすいので、前向きな気持ちで取り組んでいくことができます。
KPIでは、達成率100%を目標にしており、また、MBOは社員の報酬に影響するという点でOKRとは異なる評価方法になります。
従業員のエンゲージメントやモチベーションが向上する
OKRを使用することで、全社で達成目標を共有することになり、従業員も自分の会社への貢献度合いが実感しやすくなります。従業員のモチベーションが上がり、従業員の会社へのエンゲージメントも向上するでしょう。
OKRは会社と社員に一体感をもたせる
OKRは、企業が自社の目標を社員個人と共有し、企業と社員が一体感をもって設定した高い目標に向かって取り組んでいく目標管理手法です。人事評価や報酬と連動していないため、高い目標を立てても前向きな気持ちで取り組んでいくことができます。OKRを効果的に使用して企業の目標をクリアしていきましょう。
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