• 作成日 : 2022年3月31日

テクニカル上場とは?事例も含めてわかりやすく解説

「テクニカル上場」とは、上場会社が非上場会社と合併して解散する際、もしくは株式の交換などで非上場会社の完全子会社になる場合に、非上場会社の株式をスムーズに上場させる制度のことです。

テクニカル上場には、どのようなメリットがあるのでしょうか。そして合併や完全子会社化された上場企業の株式や株価はどうなるのでしょうか。今回は、テクニカル上場について詳しく解説していきます。

テクニカル上場とは?

「テクニカル上場」とは、上場会社が非上場会社と合併して会社を解散する場合や、非上場会社と合併して完全子会社化する際、存続する非上場会社の株式をスムーズ上場させる制度のことをいいます。

通常の株式上場の場合、財務状況や社内制度の整備などに数年間の期間をかけます。さらに、上場する証券取引所の厳しい審査を経る必要もあります。しかし、テクニカル上場では、それらの準備や手続きが簡略化され、速やかに上場できることが特徴です。

テクニカル上場で準備が簡略化される理由

上場会社が非上場会社に合併される場合、存続するのは非上場会社のほうになるため、本来ならば非上場株式になるはずです。ただ、すでに発行されている上場会社の株式は広く流通しており、株主などのことを考えると簡単には非上場株式にはできません。とはいえ、合併する非上場会社がこれから上場準備するには、非常に大きな負担と時間が生じます。

合併される上場会社の株主および存続する非上場会社のことを考えると、テクニカル上場で上場準備を簡略化するのがいちばん適しているといえるのです。

テクニカル上場で株はどうなる?

テクニカル上場を行うと、今まで保有していた株は新しい会社の株へ交換され、交換比率については各社で決定します。なお、テクニカル上場時は、合併する会社の業績、期待感などで株価が大きく動く可能性があります。株価の動きも注意深く観察するとよいでしょう。

テクニカル上場が適用される場合

具体的にテクニカル上場はどのような場合に適用されるのでしょうか。以下の2つのケースについてみていきましょう。

  • 上場企業と非上場会社が合併した場合
  • 上場企業が非上場会社の完全子会社となる場合

 

上場企業と非上場企業が合併した場合

上場会社と非上場会社が合併し、上場会社のほうが消滅会社となる場合は、存続会社になる非上場会社がテクニカル上場を行うことになります。

非上場会社がテクニカル上場を行う場合は、非上場会社の株券について一定期間内の上場申請が必要です。また上場会社の株券は、合併の効力発生日の2営業日前の日に上場廃止されます。

上場企業が非上場企業の完全子会社となる場合

上場会社が非上場会社の完全子会社となる場合、「株式移転」や「株式交換」が行われます。それぞれの特徴を確認しておきましょう。ここでは、上場会社A社が非上場会社B社の完全子会社になるというケースを想定し説明していきます。

株式移転

上場会社A社を非上場会社B社の完全子会社とする場合、新たに特定親会社C社を設立するのが「株式移転」です。特定親会社となるC社がテクニカル上場を行います。なお、株式移転で特定親会社を設立する際は、完全子会社化するA社は消滅するわけではなく、法人格はそのまま残ります。B社は、A社の権利義務を引き継ぐこともありません。

業務関連では、雇用関係等もすぐに整える必要がないというメリットがあります。今までの会社の株式は新会社の株式に交換されますが、その際の比率については、「株式交換のお知らせ」などの形で会社から発表されます。

株式交換

「株式交換」では、非上場会社B社が特定親会社となります。そのため、B社がテクニカル上場を行います。また、B社はA社の権利義務を引き継がなければなりません。

業務関連では、雇用関係等も特定親会社になったB社が引き継いで整える必要があります。今までの会社の株式は新会社の株式に交換されますが、その際の比率については、「株式交換のお知らせ」などの形で会社から発表されます。

テクニカル上場までの流れ

テクニカル上場は、大きく以下の流れで進められます。

  1. 上場申請日前(証券取引所への適時開示および相談)
  2. 上場申請日~上場承認日(審査書類の提出)
  3. 上場日

順を追って説明していきましょう。

1.上場申請日前

上場会社を合併、もしくは完全子会社化する場合、その内容を「適時開示」することが求められます。適時開示は、証券取引所の上場部に内容を開示して相談する必要があります。相談は、合併・完全子会社化の発表予定日の10日前までに行わなければなりません。実際はもっと早くから相談する企業が多いようです。

事前相談時には、次の書類のいずれかを上場部に提出します。

  • 適時開示資料(案)
  • 当該株式移転等の内容を記載した書面

また、適時開示とは別に、テクニカル上場を希望する場合は上場希望日の4ヵ月前の日までに「テクニカル上場に係る審査」を担当する上場管理部への相談も必要です。テクニカル上場の相談時に適時開示についての相談も同時に行えます。

テクニカル上場についての相談時に上場審査で必要な書類や手続きについてのレクチャーもありますが、書類作成で不備があると審査に入れません。スムーズに審査から上場手続きができるように、不明点は随時確認しながら手続きを進めるようにしましょう。

2.上場申請日~上場承認日

上場申請日に審査書類を提出し、テクニカル上場申請であることを伝えます。申請日は、原則上場日の2ヵ月前です。

株式移転で特定親会社を設立し、テクニカル上場を行う場合、新しい会社(特定親会社)はまだ設立されていないこともあるかもしれません。そのような場合でも、「株式移転に係る株主総会決議」を行っているのであれば、テクニカル上場申請は可能です。

上場審査で不明点があれば、電話やメールで問い合わせが来ることもありますので、備えておくことが重要です。また、株主への情報提供のために新しく上場する会社の業績予想などは早めに開示することが望ましいといえます。

3.上場日

上場が承認されたら、その後の手続きが上場部から指示されます。新たに上場する会社は上場日当日に提出を指示されている書類を提出してください。

また、今まで上場していた会社(旧会社)が通期決算や四半期決算を行わずに上場廃止していた場合は、新しく上場した会社が旧会社の決算発表を行う必要があります。旧会社の決算発表は決算の内容が定まり次第となりますので、上場日以降でも構いません。

テクニカル上場の事例

テクニカル上場の事例を紹介します。

メガネスーパー(ビジョナリーホールディングス)

2017年11月、東証ジャスダック市場に上場していた株式会社メガネスーパーは、純粋持ち株会社(完全親会社)の株式会社ビジョナリーホールディングスを設立し、上場廃止しました。ビジョナリーホールディングスはテクニカル上場を申請し、新会社設立と同時にジャスダック市場へ上場を果たしています。

このケースは、合併等での新会社設立ではなく、単独の株式移転となるため、テクニカル上場時の開示事項・内容が一部省略されています。

まとめ

テクニカル上場とは、非上場会社が上場会社を合併する、もしくは完全子会社化する際に、従来の株主に不利益が生じないよう、新しい親会社(もしくは特定親会社)を上場させることをいいます。

通常の株式上場に比べ審査が簡略化されており、上場までの時間がかからない点がテクニカル上場の利点といえます。とはいえ、「相談は合併・完全子会社化の発表予定日の10日前までに行うこと」など、合併等の発表前に進めなければならないことは多くあります。手続きの期限、詳細について確実に把握したうえで進めていくことが必要です。

よくある質問

テクニカル上場と通常の上場の違いとは?

通常の株式上場の場合、厳しい審査があり、財務状況や社内制度の整備などに数年間の期間がかかりますが、テクニカル上場ではそれらの手続きや審査が簡略化され、速やかに上場できます。

テクニカル上場の相談はどこでいつまでに行う?

相談は証券取引所の上場部にて、合併・完全子会社化の発表予定日の10日前までに行います。ただ、それよりもさらに前に相談することが一般的です。


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