• 作成日 : 2024年1月31日

IR(インベスター・リレーションズ)とは?目的や上場後に必要不可欠な理由、実施方法など全体像を解説

IR(インベスター・リレーションズ)とは、簡潔にいえば投資家や株主向けの広報活動に位置付けられます。

基本的に、企業は投資判断を行うために必要な情報を開示することが求められています。
特に上場企業は多岐にわたる投資家に対して包括的・網羅的な情報の提供が必要となるため、上場前から準備が必要です。

本記事では、上場を控えたスタートアップの経営者やIR担当の方に向けて、IRにおける目的や具体的な内容について解説します。

IRとは

まずはじめに、IRの概要や目的について解説します。

IRの概要

IRとは、冒頭でも紹介した通り「投資家や株主向けの広報活動」と定義されます。
企業活動を行うにあたって、投資を受けることは必要不可欠であり、投資家らに対して投資判断に必要な情報を開示することが、企業には求められています。
IRを通じて、企業が財務状況や企業活動の実績、経営方針などを公開することで、投資判断を促します。

IRの目的

上記のIRの定義に基づくと、企業がIRを行う目的は主に次の5点です。

  1. 株主や投資家との良好な関係を築くため
  2. 自社の魅力をアピールし投資を促すため
  3. 自社の社会的価値を高めるため
  4. 会社法や証券取引所による開示が義務付けられているため
  5. インサイダー取引を防止するため

以下でそれぞれについて解説します。

目的1:株主や投資家との良好な関係を築くため

1つ目の目的としては、株主や投資家らとの関係性構築が挙げられます。
株主や投資家は自身の資金を投資することになるため、より慎重な判断を要することは想像に難くないでしょう。

企業の経営層がいかに投資家らから信頼を得て関係性を築けるかは、重要なポイントの1つです。財務状況や経営方針に関する情報を提示することで、企業活動の透明性が高まり、株主や投資家からの信頼を得やすくなります。

目的2:自社の魅力をアピールし投資を促すため

既存の株主や投資家に加えて、新たな投資家を惹きつけることも企業にとっては欠かせません。したがって、自社の魅力を外部に積極的に発信し、投資を促すこともIRの目的の1つだといえるでしょう。

企業の価値や成長戦略を効果的に伝えることで、新たな資金調達の機会を得られるだけでなく、IRによって企業に対する理解が深まり、株式の取引が活発化することも期待されます。

目的3:自社の社会的価値を高めるため

IRが持つ役割は、株主や投資家に向けたものだけではありません。顧客や取引先といった他のステークホルダーに対しても、IRは重要な意味を持ちます。

IRは基本的に自社のHP等を通じて発信されます。多様なステークホルダーに対して企業の価値を伝え、自社の社会的価値を高めることも目的の1つです。

目的4:会社法や証券取引所による開示が義務付けられているため

上場企業に対しては、会社法や証券取引所によって特定事項の開示が義務付けられており、その要求事項が満たされなければ上場廃止などのペナルティにつながる恐れがあります。
これらを避けるためにもIRは必要です。

目的5:インサイダー取引を防止するため

IRの目的としては、上記の開示義務のほかにインサイダー取引の防止が挙げられます。

インサイダー取引とは企業の未公開の重要情報を用いて、従業員などが利益を得る行為を指します。IRを通じて外部に公平に情報を開示することによって、インサイダー取引を未然に防ぐことにつながります。

投資判断に必要な情報を適時開示することは透明な市場運営に必要であり、IRが持つ重要な役割の1つとして位置付けられるでしょう。

IRの具体的な内容

続いて本章では、IRにて開示する具体的な内容について紹介していきます。

IRで求められる一般的な開示情報

基本的な開示事項としては、まず会社法などで開示が義務付けられている必須情報と、義務付けられてはいないものの、投資家らに対する透明性や説明責任を果たす目的で多くの企業が開示している情報とに分けられます。

(必須情報)

(必須ではないが多くの企業が開示する情報)

  • 中期経営計画
  • 新商品情報や業務提携情報
  • 役員情報
  • ガバナンス情報
  • ESG/サステナビリティポリシーおよび報告書

特に後者の必須ではない情報については、世の中のトレンドによって変わる可能性もあることに注意しましょう。

例えば、ガバナンス情報についてはコーポレートガバナンスコードが国内で開始された2015年を境に、より多くの企業で開示されるようになりました。
さらに近年では、ESGやサステナビリティに関する情報開示が注目されています。

IRを行う手段

IRを実施する手段についても、多くの選択肢が存在します。
イメージしやすいのは企業のHP上での各種情報の開示ですが、その他にも下記のような方法が挙げられます。

  • HP上での各種報告書やプレスリリース等の開示
  • 報道機関やTDnet(適時開示情報閲覧サービス)等を通じた適時開示情報の公開
  • 決算の公表および決算説明会の開催
  • 投資家とのミーティング

積極的なIRを行うためのポイント

1章で紹介したIRの目的にもあるように、株主や投資家に企業の価値を認知してもらうためには、会社法などの義務に従ってペナルティを回避するだけでなく、より多くの投資家を呼び込み、関係性を築きながら企業価値を高める積極的なIRが必要です。
本章では、積極的なIRを行うためのポイントを紹介します。

積極的なIRの必要性

積極的なIRを実施することは、競合企業と差別化を図ることにつながるといえるでしょう。株主や投資家らの資金は有限であり、数多くある企業の中から特定の企業に投資先を絞り込む必要があります。その際の判断材料となるのがIRです。

したがって、IRを通じて積極的に自社の魅力を訴求することは、競合他社との差別化につながります。

実際に日本IR協議会では「IR優良企業賞」を毎年公表しており、このような表彰を受ける優れたIR活動は企業にとってポジティブな影響をもたらすことが分かります。

積極的なIRのポイント

上記の「IR優良企業賞」での評価コメントなどを中心に、優れたIR活動におけるポイントをまとめると、以下の点が挙げられます。

  1. 投資家が必要とする情報を詳しく丁寧に開示していること
  2. 経営者や役員ら経営トップが積極的にIR活動に関わっていること
  3. 説明会など投資家らとのコミュニケーションの場を頻繁に設けていること
  4. IR活動によって得られた投資家らからのフィードバックなどを経営に反映させていること
  5. グローバルや国内の企業をリードする先進的な情報開示ができていること

まとめ

本記事ではIRの目的や開示すべき内容、より積極的なIR活動を実施するためのポイントについて解説しました。

IRは主に外部の投資家や株主に、投資判断に資する適切な情報を開示することと定義されますが、戦略的に行うことで、より大きな効果が期待できます。
可能な限り透明性を高く保ち、広く情報を開示しながら、投資家らと頻繁にコミュニケーションを行っていくことが必要です。

一方でIRにはある程度のリソースや準備期間も必要となるため、上場を見据えているのであれば、未上場のスタートアップであっても、事前にIRの準備を始めておくことが差別化につながるといえるでしょう。


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