• 作成日 : 2024年9月30日

新たな資金調達の1つとなるセキュリティトークンとは?その全体像を解説

近年、投資活動は選択肢が拡がり、より簡単に一般の個人が投資を行えるようになってきています。これは投資を行う側だけでなく、投資を受ける企業側にとっても資金調達のハードルが下がったことを意味しています。

ビットコインなどの仮想通貨はその代表例の1つであり、仮想通貨の基盤となるブロックチェーン技術が大きく注目を集めています。さらに近年では、そこから派生したセキュリティトークンと呼ばれる手法が、一部の企業や投資家の間で活用され始めてきました。本記事ではそのセキュリティトークンの全体像を解説します。

セキュリティトークンとは

はじめに、セキュリティトークンとは何か、その役割や浸透した背景などを解説します。

セキュリティトークンの概要

セキュリティトークンとは、一言でいえば「デジタル化された有価証券のことを指します。また、セキュリティトークンにはブロックチェーン技術が用いられており、ビットコインなどの仮想通貨と類似した特徴を有しています。

ブロックチェーン技術とは、ブロック単位のデータがチェーン状に管理されたもので、不正や改ざんを防いで取引履歴を管理できるというメリットが存在します。

一方で有価証券とは、株式や債権、小切手など財産としての価値があるものの権利を表す証書のことと定義されます。

したがってセキュリティトークンは、不正などが行えない安全な状態で管理されたデジタル上の有価証券だと理解しておきましょう。

セキュリティトークン普及の背景

セキュリティトークンが普及する以前は、ブロックチェーン技術を用いたビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨が注目を集めていました。これらの仮想通貨は多くの分野でその活用が模索され、資金調達も活用方法が模索されたものの1つでした。

しかしながら、企業の資金調達においてICO(Initial Coin Offering)などが流行した中で規制の整備が追いつかず、詐欺被害などが横行し問題視されていました。

そこで2020年5月1日に施行された金融商品取引法の改正によって、これらの暗号資産に関する規制が国内でもきちんと整備されるようになりました。

つまり、セキュリティトークンが「電子記録移転有価証券表示権利等」と見なされることになり、法律上で有価証券であることが示されました。この法改正によって世の中に普及するようになったことが、セキュリティトークンが注目を集めている背景です。

セキュリティトークンの特徴

次に、セキュリティトークンを用いた資金調達方法であるセキュリティトークンオファリングやセキュリティトークンを用いるメリット、課題について解説します。

セキュリティトークンオファリング(STO)

先に紹介したICOが、仮想通貨を発行することで資金調達を行う手法であるように、セキュリティトークンを発行することで資金調達する行為を、セキュリティトークンオファリング(STO)と呼びます。

具体的には、有価証券化できる債券や不動産などを金融商品化することで、企業が資金を調達する動きのことを指しています。

セキュリティトークンによる資金調達の企業側のメリット

STOによって資金調達を行う企業側が享受するメリットとして、次の2点が挙げられます。

  1. 株式や債券といった通常の金融商品だけでなく不動産やアートなども活用できる
  2. ブロックチェーンによって自動的に取引が行え、低いコストで済む

基本的に、有価証券とは株式などの金融商品を指しますが、ブロックチェーン技術によって不動産やアートなどの固有の価値を示すものも、その対象とすることができるようになりました。そのため、企業は通常の金融商品を活用するだけでなく不動産などをセキュリティトークン化することで、資金を調達することができるようになるわけです。

またブロックチェーン技術の持つもう1つのメリットとして、管理をテクノロジーによって自動化できる点が挙げられます。したがって、セキュリティトークンを活用することで、企業側はコストを抑えて取引をすることが可能となります。

これらの特徴によって、上場していない中小企業なども資産があれば容易に資金調達ができる可能性がある点がメリットだといえるでしょう。

セキュリティトークンによる資金調達の投資家側のメリット

一方、STOによる投資家側のメリットとしては次の3点が挙げられます。

  1. 小口での投資が可能になる
  2. 自動での取引のため24時間投資が行える
  3. 不正や改ざんができないため安全に投資できる

3点とも基本的にはブロックチェーン技術によるメリットであり、改ざんなどがされない状況下で時間の制約がなく取引が可能です。さらに、企業側の対象とする有価証券に通常の金融商品だけでなくアートなども含められることで、投資の選択肢が広がり、小口での投資ができるようになる点も特徴です。

したがって、より簡単に一般の個人でも投資に参加できるようになることが、STOのメリットだといえるでしょう。

セキュリティトークンの課題

ただし、当然ながらセキュリティートークンも万能な手法ではなく、課題も存在します。特に今後解消が期待されている課題は次の2つです。

  1. 国や地域における法規制の違い
  2. 現状では不動産がメイン商品であり他商品への展開は限定的

まだ各国とも規制の整備を始めたタイミングであり、国際的に標準化されていない点が課題として挙げられます。国や地域によって規制が異なるため、取引の際には注意しましょう。

また、理論上ではアートなども幅広く有価証券化が可能なものの、現状では不動産のみで活用が広がっており、他商品への展開は限定的です。

セキュリティトークンを活用した資金調達の事例

続いてSTOの事例を紹介します。今回は、国内で積極的にSTOを行う、不動産アセットマネジメント会社のケネディクス株式会社(以下、ケネディクス)の事例を取り上げます。

ケネディクスは2021年8月より、不動産セキュリティトークンによる資金調達を国内で初めて開始しました。その後、2022年8月には、ケネディクスにて3例目となる不動産STOとして、国内最大となる70億円の資金調達を達成しています。

これは資産規模146億円の物流施設を裏付け資産としており、調達した70億円を用いて、「ケネディクス・リアルティ・トークンロンコプロフィットマート厚木Ⅰ(譲渡制限付)」の物件の運用を開始しました。

発行数6,915口の一口あたり発行価格1,000,000円、運用期間7年という形で、大和証券株式会社を通じて募集をし、幅広い投資家から資金を調達しています。

引用元:ケネディクス株式会社「News Release

まとめ

本記事では、近年資金調達の新たな手法の1つとして注目を集める、セキュリティトークンについて解説しました。セキュリティトークンは2020年の法改正により普及し始め、不動産を中心にその活用が拡がっています。

セキュリティトークンはブロックチェーン技術によって、株価や債権などの通常の金融商品のほか、不動産やアートなどの固有物も有価証券として扱えることが特徴です。セキュリティトークンによって資金調達をする企業側、投資を行う投資家側ともに、そのハードルが下がり、簡単かつスピーディーに取引を行うことが可能です。


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