- 更新日 : 2024年7月17日
シリーズBとは?資金調達における定義や投資ラウンドについて解説
シリーズBは、スタートアップの成長を支える資金調達プロセスの一環です。この段階での資金調達は、事業の拡大と安定化を目指す企業にとって重要なステップです。
本記事では、シリーズBの定義、資金調達方法、および他の投資ラウンドとの関係性について、詳しく掘り下げていきます。
目次
シリーズBとは
シリーズBとは、スタートアップが成長過程で行う投資ラウンドの一つです。通常、製品開発や市場でのポジションがある程度確立されたシリーズAの後、さらなる成長や市場拡大のために必要な資金を調達する段階に当たります。
資金調達におけるシリーズBの定義
前提として、シリーズA・B・Cの定義は明確には決まっていません。シリーズBは、スタートアップが事業を拡大し、市場での存在感を強化するための資金調達です。製品やサービスが市場で受け入れられている証拠(PMF: Product Market Fit)がある状態で、より大きな市場機会を追求するための資金を確保するのが目的になります。
そのためシリーズBにおけるスタートアップは、一定の収益を生み出しており、ビジネスが軌道に乗り始めた段階にあることが一般的です。
シリーズB以外の投資ラウンドのフェーズ
資金調達ラウンドは、スタートアップの成長段階に応じて分かれています。
シリーズAは製品やサービスが市場での適合性を証明した段階で行われ、シリーズC以降は事業のさらなる拡大や上場、M&Aなどを意識した段階での資金調達となります。
なお、シリーズAについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
シリーズBの資金調達方法
シリーズBの資金調達方法は、VC(ベンチャーキャピタル)やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)といった投資家から資金調達してもらうケースと、金融機関から資金調達してもらうケースの2パターンが考えられます。それぞれ、詳しく解説していきます。
VC・CVCから資金調達する
シリーズBの資金調達において、VC・CVCはスタートアップの成長性に期待して出資を行うため、スタートアップにとって事業拡大の大きな原動力となります。
シリーズBの段階では、プロダクトが市場で受け入れられ、継続的に利用されていることが重要です。そのためVC・CVCは、プロダクトのユーザー数や売上、顧客満足度などの指標となるPMFを重視して評価を行います。 また、チームの経営能力や事業に対するコミットメントや事業戦略の実現可能性に加えて、市場の成長性や競合状況なども考慮されます。
なお、CVCの場合は事業会社とのシナジーの可能性も重要な評価ポイントとなるため、具体的に説明できるようにしておきましょう。
メリット
シリーズBの資金調達は、スタートアップにとって事業の大きな転換点となる重要な局面です。VC・CVCからの出資を獲得することで、スタートアップは資金調達だけでなく、経営支援やネットワーク提供など、さまざまなメリットを得ることができます。事業の拡大や市場進出に関する専門知識を活用できることもメリットでしょう。
デメリット
一方で、VC・CVCから出資を受けると保有株式比率が高くなるため影響力が強くなり、経営の自由度が下がるかもしれないことはデメリットです。また、影響力ゆえ不利な条件を提示されることも考えられます。具体的には、株式の譲渡義務や条件付き株式の付与などの条件を出され、株式の譲渡義務があると将来的にVC・CVCへ株式を売却しなければならない可能性があります。
金融機関から資金調達する
シリーズBの資金調達では、数十億円規模の資金が必要となるため、VC・CVCからの出資が主な資金源となります。しかし、VC・CVCは投資先の事業の成長性に期待して出資を行うため、必ずしもすべてのスタートアップがVC・CVCから出資を受けられるわけではありません。
そのような場合、金融機関からの融資も考えることになります。民間銀行が主な選択肢ですが、融資条件は厳しい場合があるため、政府系金融機関や地域金融機関からの融資も検討することをおすすめします。なお、金融機関から融資を受けるにあたっても、事業計画の実現可能性や財務状況の健全性、経営陣の能力などが重視されるため、十分に理解したうえで準備を進めましょう。
メリット
金融機関から資金調達するメリットとして、株式比率が下がらないことが挙げられます。金融機関から受ける融資は借り入れとなるため、経営権に影響はありません。ただし、金融機関からの融資を受ける場合でも、融資契約書に一定の条件が付くケースがあるので留意しておきましょう。
デメリット
一方で金融機関からの融資は、VC・CVCからの出資に比べて金利が高い傾向がある点はデメリットといえます。金融機関は融資の元本と利息を回収するために一定の利回りを確保する必要があること、またスタートアップの事業は不安定な要素が多くリスクが高いと判断されることなどが理由です。同様の理由から審査が比較的厳しいことも注意が必要です。また返済の義務があるので、事業の成長に十分な資金を確保するために返済計画をしっかりと立てておきましょう。
シリーズBの資金調達額の相場
シリーズBの資金調達額は、事業の規模や市場での位置づけ、今後の成長戦略に基づいて異なります。一般的には数億円から数十億円程度の資金が必要とされることが多いです。
シリーズBにおいて多額の資金調達をすることで、事業の拡大や新規事業の創出などさまざまな施策を実行できるようになり、事業を急成長させることが期待できます。結果的に企業価値が高まれば、株式上場やM&Aなどの機会も広がるでしょう。また、従業員の採用や研修、マーケティングなどに投資を行うことで人材や技術の強化にもつながり、経営の安定化も図れます。
一方で、資金調達にあたって株式を発行する必要があるため、株式の希薄化が進むかもしれません。創業者や経営陣の株式保有比率が下がると、経営権が揺らぐ恐れがあります。また事業がうまくいかなければ、資金繰りに苦しむでしょう。資金調達後も事業を成長し続けられるよう、資金を有効に活用することが重要です。
シリーズBにおいて多額の資金調達をするかどうかは、事業の状況や経営陣の判断によって異なります。メリットとデメリットを十分に検討した上で、慎重に判断しましょう。
シリーズBの資金調達を成功させるためのポイント
ここからは、シリーズBの資金調達を成功させるためのポイントを3つ紹介します。
事業の成長性やポテンシャルを明確に示す
事業計画の実現可能性と、将来の成長ポテンシャルを投資家に示すことが重要です。
シリーズBの資金調達では、投資家は、投資先の事業の成功にコミットしています。そのため、投資家の信頼を獲得しなければ資金調達につなげることは難しいでしょう。具体的には、事業が参入する市場の規模や成長性、競合優位性などをもとにした事業の将来性や収益性を示します。
投資家に対して事業の展望や戦略を説明する
事業計画や市場分析、競合分析を通じて、事業の展望を投資家に理解してもらうことが必要です。
投資家が事業の成長をイメージできるよう、投資家とスタートアップの間で事業の方向性や目標について、共通認識を形成しましょう。
投資家に魅力的なエクイティオファーを提示する
投資家が出資するインセンティブとなるようなエクイティオファーを考えることが大切です。
シリーズBの資金調達では、投資家から多くの資金を集める必要があります。そのため、魅力的なエクイティオファーを提示し、投資家の投資意欲を高めることが重要です。エクイティオファーを提示することで投資家との良好な関係を築けるだけでなく、競合他社との差別化を図り、優位性を獲得することも期待できます。
まとめ
シリーズBは、スタートアップの成長段階において重要な資金調達ラウンドです。自社にとって適切な資金調達方法を選べば、企業の成長を加速させることが可能です。シリーズBでの資金調達を成功させるためには、事業の成長性や市場のポテンシャルを明確に示し、投資家に対して魅力的な提案を行うことが鍵となります。
よくある質問
シリーズBとは?
シリーズBとは、スタートアップが成長過程で行う投資ラウンドの一つです。一般的に、一定の収益を生み出している、かつビジネスが軌道に乗り始めた段階を指します。
シリーズBで資金調達できる金額目安はいくら?
事業の規模や市場での位置づけ、今後の成長戦略によって異なるものの、一般的には数億円から数十億円程度とされています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
IPOによるイグジット戦略とは?M&Aとの違いやメリット・デメリットを解説
イグジットとは、企業が上場後に株式を売却し、投資家としての利益を確定するプロセスを意味します。 IPOにおいてイグジットは、重要な戦略の1つとなり、成功するイグジット戦略は資本の回収だけでなく、企業の成長戦略にも影響を及ぼします。 そこで本…
詳しくみる少人数私募債とは?公募債や私募債との違い、メリット、デメリット、制限事項、発行の流れを解説
「少人数私募債」とは、少人数の投資家を対象に、特定の条件下で発行手続きが簡素化された社債の一種です。中小企業には銀行からの融資や一般の社債発行が難しく感じられる場合も少なくないため、注目を集めています。 そこでこの記事では、少人数私募債の特…
詳しくみる資金調達をネットで行う方法は?やり方や成功事例・ポイントを解説
インターネットを通じて、企業や個人でプロジェクトに必要な資金を募れる資金調達方法にクラウドファンディングがあります。クラウドファンディングといっても、さまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。 ネットで資金調達を検討している企業の中に…
詳しくみる上場維持にかかるコストの相場や内訳|会計処理についても解説
自社の株式を上場すると、パブリックカンパニーとして信用度・知名度が上がるうえ、資金調達が容易になるなどメリットが得られます。企業としてさらなる成長フェーズを目指すのであれば、IPOは不可欠なステップです。しかし、上場を維持するにはランニング…
詳しくみるプロラタ方式とは?種類やメリット・デメリット、手続きの流れを解説
事業資金の確保でお悩みの経営者の方は少なくないかもしれません。資金調達の際に「プロラタ方式」という方法を活用すると、資金調達の選択肢が増えます。プロラタ方式は返済にも役立つ考え方です。資金調達から返済までスムーズに進めるために、プロラタ方式…
詳しくみるベンチャーキャピタルとは?種類、メリット・デメリットなどを解説
ベンチャー企業がスタートする際に直面する大きな課題の一つは資金調達だと考えられます。この課題に対処する手段として、ベンチャーキャピタルからの資金調達が挙げられます。 本記事では、ベンチャーキャピタルの概要や種類、メリット・デメリットを解説し…
詳しくみる