- 更新日 : 2024年7月12日
資金調達をネットで行う方法は?やり方や成功事例・ポイントを解説
インターネットを通じて、企業や個人でプロジェクトに必要な資金を募れる資金調達方法にクラウドファンディングがあります。クラウドファンディングといっても、さまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。
ネットで資金調達を検討している企業の中には、クラウドファンディングに興味があるけれどどんな種類があってどのように利用すればいいか分からない方もいるでしょう。
本記事では、利用方法ややり方だけでなく、メリットやデメリットについても解説します。クラウドファンディングを利用して、プロジェクトをはじめたい方はぜひ参考にしてください。
ネットによる資金調達方法
ネットで資金を調達する代表的な方法には、クラウドファンディングによる資金調達方法があります。
クラウドファンディングとは、群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)の造語です。インターネットを通じて自身の夢や応援してもらいたい活動を発信し、さまざまな人から資金を調達します。
クラウドファンディングの主な種類は、以下の5つです。
- 購入型クラウドファンディング
- 株式投資型クラウドファンディング
- 融資型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- ファンド型クラウドファンディング
それぞれの種類の特徴について、次の項目で解説していきます。
購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングは、商品やサービスを提供する代わりに資金を集める方法です。
クラウドファンディングでは購入型が主流であり、販売や販促の手段となったり、商品やサービスのファンを作れたりするメリットが期待できます。
一方、目標金額に達成せず、失敗する可能性もあるため、注意が必要です。
株式投資型クラウドファンディング
株式投資型クラウドファンディングは、企業の株式を出資者に譲渡し、資金を調達する方法です。
発案者は株式会社となるため、成長が期待できる企業に出資すると株式の価値が上がる可能性が高いというメリットがあります。
一方で、譲渡制限がかかっていることが多く売りたいときに売れなくなるといった点に注意が必要です。
融資型クラウドファンディング
融資型クラウドファンディングは、ファンドで集めたお金を資金として、出資者に分配金としてリターンを行う方法です。
出資者は、商品やサービスを受け取るのではなく、分配金を受け取れるため金銭面のリターンが他のクラウドファンディングよりも高いといったメリットがあります。
一方で、融資できる資金は事業資金に限られているといったデメリットも存在します。
寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングとは、出資者が見返りを求めることなく、資金を調達できる方法です。
その名の通り、寄付に対する見返りを求めず、非営利団体や自治体の活性化のために支援を行えるのが魅力となります。
しかし、他のクラウドファンディングと比較して、リターンが見込めないため支援者が集まりにくいというデメリットがあるでしょう。
ファンド型クラウドファンディング
ファンド型クラウドファンディングとは、株式型と同じで企業の株式を譲渡して、リターンを得ることを条件として資金を調達する方法です。
金銭のリターンだけでなく、品物やサービスを利用できる場合がある点はメリットといえます。
一方で、融資型のように毎月配当はもらえないため、業績しだいでは配当金がゼロになる可能性がある点はデメリットでしょう。
ネットによる資金調達のメリット
ネットによる資金調達のメリットは、以下の4つです。
- 初期費用が必要ない
- 宣伝効果が高い
- テストマーケティングの効果がある
- 融資型以外は返済の必要がない
それぞれの特徴について、解説していきます。
初期費用が必要ない
ネットによる資金調達は、初期費用が必要ありません。着手金も原則ないため、誰でも簡単にクラウドファンディングが利用できるのは大きなメリットです。
しかし、初期費用はかかりませんが、調達が成功した際は5〜20%程度の手数料が発生する点は、覚えておくべきでしょう。
宣伝効果が高い
ネットによる資金調達は、宣伝効果が高いのもメリットでしょう。通常の資金調達は、金融機関から借り入れる場合が多く、企業にとって資金を調達できる以外メリットは少ないのが特徴です。
また、ネットによる資金調達方法は資金を集められるだけでなく、ネットを通して企業の宣伝も行えるため商品やサービスのファン作りにも適しています。
ネットは、不特定多数の人が閲覧できる環境にあり、多くの人にプロジェクトを知ってもらえるきっかけとなるでしょう。
テストマーケティングの効果がある
クラウドファンディングでは、市場に出る前の製品をユーザーに試してもらう機会が多いため、テストマーケティングの効果も期待できます。
テストマーケティングを行えると、実際に製品やサービスを利用したユーザーの反応を知ることが可能です。
ユーザーの反応次第では、改善点なども見つけられるため市場に出る前によりニーズに合った製品やサービスを作れる利点があるのもメリットと言えるでしょう。
融資型以外は返済の必要がない
クラウドファンディングで得た出資金は、融資型以外は返済の必要がありません。
支援者に返済の必要がない代わりに、商品やサービスを提供したり、株式の利益や配当金などをリターンしたりして支援者に還元します。
ネットによる資金調達のデメリット
ネットによる資金調達のデメリットには、以下の4つが挙げられます。
- 資金調達までに時間がかかる
- 募集中にプロジェクト内容を変更できない
- 資金を調達できない可能性がある
- アイデアを盗まれる可能性がある
デメリットの詳細について、みていきましょう。
資金調達までに時間がかかる
ネットによる資金調達は、資金を調達するまでに時間がかかります。
ネットで出資者を募り、さまざまな審査を通過して資金を調達できるまでに数ヶ月程度かかることもあります。
資金調達までに時間がかかと、プロジェクトをスムーズに進められない可能性が高く、プロジェクトの進行が遅れてしまうリスクもあるでしょう。
募集中にプロジェクト内容を変更できない
クラウドファンディングを利用して資金を集める場合、募集中はプロジェクト内容を変更できません。
理由は、プロジェクト内容を変更すると、変更前と変更後のどちらに出資したかによって平等ではないと感じる人が出てくるからです。
募集中にプロジェクト内容を変更できないと、提案するプロジェクト内容によっては企業が不利益を被る可能性もあるでしょう。
資金を調達できない可能性がある
クラウドファンディングによっては、プロジェクトを実行するための資金を調達できない可能性もあります。募集方式には、「All-or-Nothing形式」と「All-in方式」の2種類があります。
All-or-Nothing形式は、目標金額に達した場合に出資金を出資者にリターンする方式ですが、目標金額に届かなければ支援がキャンセルされ返金される仕組みです。一方、All-in方式は出資者が少しでも支援した場合、リターンを提供しなければなりません。
All-or-Nothing形式の場合は、資金が足りなければ自己資金や他から融資を受けて、プロジェクトを実行しなければならないため金銭的負担が生じるデメリットがあります。
アイデアを盗まれる可能性がある
資金を募るためにクラウドファンディングサイトで募集したアイデアは、プロジェクトに関係のない外部の人に盗まれる可能性があります。
その理由として、サイトに掲載されているアイデアは、誰でも閲覧できるからです。せっかく自分たちで考えたアイデアを他社に取られてしまうと、売上アップする機会の損失に繋がります。
アイデアを盗まれないためにも、特許権や意匠権など産業財産権を取得するための手続きは事前に進めておきましょう。
ネットによる資金調達のやり方
ネットによる資金調達のやり方は、以下の通りです。
- クラウドファンディングの掲載サイトを選ぶ
- 掲載サイトの審査を受ける
- プロジェクトの審査を行う
- 継続的に情報を発信する
- プロジェクトを実施する
それぞれの手順内容について、次で解説していきます。
1.クラウドファンディングの掲載サイトを選ぶ
クラウドファンディングの掲載サイトを選ぶ際のポイントを紹介します。
- 手数料
クラウドファンディングでは、原則着手金はかからないが調達金はかかる。サイトによってかかる調達金が異なるため、確認が必要。 - ユーザー数
ユーザー数は、サイトの規模を把握する目安となる。ユーザー数が多ければ、出資者にアプローチできる機会は増える。 - 成功率
クラウドファンディングの成功率は、100%ではない。サイトによって成功率は異なるが、成功率だけで選ぶのではなく、相性のよいサイトを選択する方が成功する可能性は高くなる。
掲載サイトを選択する際は上記のポイントに着目し、あなたのプロジェクトに適したクラウドファンディングサイトを選択しましょう。
2.掲載サイトの審査を受ける
クラウドファンディングサイトを利用するためには、必ず掲載サイトの審査を受けなければなりません。
審査通過は難しいものではありませんが、掲載サイトごとに審査基準は異なります。審査を通過するためにも、申し込みフォームを事前に確認しましょう。
また、掲載を断られる場合もあります。例えば、他人の権利を侵害するものや医療に関するものは掲載を断わられる可能性が高いため事前に確認が必要です。
3.プロジェクトの宣伝を行う
サイトへの掲載が決定したら、プロジェクトの宣伝を行います。プロジェクトの宣伝は、SMSなどを利用して拡散させましょう。
プロジェクト内容を、どれくらい認知してもらえるかが、プロジェクト成功のポイントとなります。
4.継続的に情報を発信する
プロジェクトの宣伝は、継続的に情報を発信する必要があります。
継続的に情報を発信する方法には、X(旧Twitter)やYouTubeなども利用するとよいでしょう。
5.プロジェクトを実施する
プロジェクトを実施した後は、出資者に返礼品を渡す必要があります。
返礼品を渡す際は、返礼品だけでなく、お礼の気持ちをこめて簡単なメッセージを添えて手配するとよいでしょう。
ネットによる資金調達の成功事例
クラウドファンディングの成功事例として、2016年11月に公開されたアニメーション映画「この世界の片隅に」が挙げられます。
購入型クラウドファンディングで、約3,900万円を集めて制作から公開まで行い、興行収入は25億円まで到達し、大成功を収めました。
成功の背景として挙げられるのが、出資者が映画の制作メンバーになれる点です。10,000円以上の寄付を行えば、エンドロールに自分の名前が載ることも話題となり、開始わずか8日で目標である2,000万円の寄付が集まりました。
ネットによる資金調達を成功させるポイント
ネットによる資金調達を成功させるためには、以下の3つのポイントに着目しましょう。
- 具体的にプロジェクト内容を説明する
- 魅力的なリターンを用意する
- 共感を得られるようにアピールする
それぞれのポイントの詳細について、次で解説していきます。
具体的にプロジェクト内容を説明する
具体的にプロジェクト内容を説明することは、出資者の信頼を得るために重要になります。
具体的に意識して説明する内容は、以下の通りです。
- 資金の用途
- いつ資金を使用するのか
- プロジェクト成功までの過程
- プロジェクトを成功させるためのポイント
クラウドファンディングで資金が集まらない要因として、プロジェクト内容の不透明さが考えられます。
失敗しないためには、出資者にプロジェクト成功をイメージさせ、出資したくなるようなプロジェクトであると認識させましょう。
魅力的なリターンを用意する
魅力的なリターンを用意するのも、クラウドファンディングを成功させるためには重要です。
理由として、出資者全員が同じ熱量ではないためリターンが魅力的でない場合は出資してもらえない可能性が高くなります。出資してもらうためには、リターンを複数用意したり、限定数を設定して特別感を演出したりしましょう。
そうすると、選択できる幅が広がり、出資者は自身が提供できる資金内でプロジェクトに参加できるようになります。
共感を得られるようにアピールする
プロジェクトの内容に共感を得られるようにアピールするのも重要です。個人で資金を募れるクラウドファンディングでは、共感を得られなければ資金は調達できません。
共感を得るためには、プロジェクトを立ち上げた経緯や資金の活用方法などを見せると出資者の共感を得られる可能性が高くなります。
まとめ
クラウドファンディングは、自身の夢や応援してもらいたいプロジェクトにかかる資金をインターネットで集める方法です。
プロジェクトの内容次第で、個人でも資金を集められるのはクラウドファンディングの魅力でしょう。しかし、クラウドファンディングにはメリットだけでなく、デメリットも存在するため仕組みを理解した上で利用してください。
よくある質問
ネットで資金を調達する方法は?
ネットで資金を調達する方法として、クラウドファンディングがあります。 クラウドファンディングの種類は、以下の5つです。
- 購入型クラウドファンディング
- 株式投資型クラウドファンディング
- 融資型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- ファンド型クラウドファンディング
ネットで資金を調達するクラウドファンディングのやり方は?
クラウドファンディングをおこなうためには、まずクラウドファンディングの掲載サイトを選択します。掲載サイトの審査を受け、審査を通過できればプロジェクトの宣伝がおこなえるのです。 プロジェクトを多くの人に知ってもらうためには、SMSを活用して、継続的に発信を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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