- 更新日 : 2024年11月13日
IPOの最新動向2024!世界・日本のIPO市場を深掘り
本記事では、世界および日本における2024年最新のIPO動向を解説します。件数や調達額に加え、上場後のパフォーマンスなども紹介します。IPOに成功した企業事例も紹介するので、上場を検討している方は注目です。
目次
2024年における世界のIPO動向
はじめに、2024年第1四半期における世界のIPO動向を解説します。
件数
2024年第1四半期のIPO件数は287件であり、前年同期比で7%減少しました。ちなみに、2020年〜2023年は以下のように推移しています。
- 2020年:1,452件
- 2021年:2,436件
- 2022年:1,415件
- 2023年:1,351件
突出して多い2021年を除くと、横ばいに推移しているといえます。
調達額
2024年第1四半期のIPO調達額は237億米ドルであり、前年同期比で7%増加しました。ちなみに、2020年〜2023年は以下のように推移しています。
- 2020年:2,713億米ドル
- 2021年:4,599億米ドル
- 2022年:1,843億米ドル
- 2023年:1,261億米ドル
全体で見ると、近年はやや減少傾向であるといえます。
公開後パフォーマンス
公開後パフォーマンスとは、上場企業の時価が公開価格をどの程度上回ったか、つまり「上昇幅の割合」を意味します。
2023年第1四半期から2024年第1四半期にかけての推移を地域別に見ると、アメリカでは30%から38%と小幅に推移しました。
一方で、その他地域の推移は以下のとおりであり、欧州や中国本土、日本で大幅な推移が見られました。
- 欧州:63%→88%
- 中東:55%→71%
- 中国本土:43%→89%
- 日本:59%→100%
- ASEAN:45%→48%
- インド:70%→72%
※参考:EY Japan 「2024年第1四半期 世界のIPO分析」
2024年における日本のIPO動向
次に、2024年における日本国内のIPO動向を解説します。
件数
2024年1〜3月における国内全市場における新規上場件数は35件であり、前年同期比で11件の増加となりました。2020年〜2024年では、以下のように推移しています。
- 2020年1〜3月:28件
- 2021年1〜3月:24件
- 2022年1〜3月:21件
- 2023年1〜3月:24件
- 2024年1〜3月:35件
2020〜2023年にかけては横ばいで、2024年は大きく増加しています。
※参考:EY Japan「日本の新規上場動向 - 2024年1月~3月」
業種別上場数
2024年1〜3月における新規上場企業数に占める各業種の割合は以下のとおりです。
業種 | 全体に占める割合(カッコ内は件数) |
---|---|
情報通信業 | 28.6%(10件) |
サービス業 | 25.7%(9件) |
小売業 | 11.4%(4件) |
不動産業 | 11.4%(4件) |
建設業 | 5.7%(2件) |
卸売業 | 5.7%(2件) |
医薬品製造業 | 2.9%(1件) |
非鉄金属製造業 | 2.9%(1件) |
陸運業 | 2.9%(1件) |
その他金融業 | 2.9%(1件) |
情報通信業とサービス業の件数が他業種と比較して多く、昨年と同じ傾向が見られます。
※参考:EY Japan「日本の新規上場動向 - 2024年1月~3月」
調達額(東証)
東証に新規上場した企業のIPO調達額は、2024年1月〜2024年6月にかけて以下のように推移しています。
- 2024年1月:0円
- 2024年2月:2,546百万円
- 2024年3月:47,690百万円
- 2024年4月:3,490百万円
- 2024年5月:174百万円
- 2024年6月:22,684百万円
また、2019年〜2023年では、以下のように推移しています。
- 2019年:91,559百万円
- 2020年:82,367百万円
- 2021年:176,249百万円
- 2022年:73,763百万円
- 2023年:116,402百万円
昨年の同時期と比較すると、調達金額は微増の傾向となっています。
※参考:日本取引所グループ「その他統計資料 上場会社資金調達額」
公開後パフォーマンス(初値)
庶民のIPO「IPO 上場実績 一覧(2024年) 」によると、2024年(7月18日時点まで)における騰落率(初値から公開価格における価格の変化率)の上位5銘柄は以下のとおりです。
銘柄名(社名) | 主な事業内容 | 騰落率 |
---|---|---|
ジンジブ | 新卒採用支援事業 | 127.43%(2.27倍) |
Cocolive | マーケティング自動化ツールの開発 | 124.16%(2.24倍) |
情報戦略テクノロジー | DX関連事業 | 121.96%(2.22倍) |
光フードサービス | 立ち飲み屋の運営 | 119.92%(2.20倍) |
イシン | 自治体向けマーケティング支援 | 106.85%(2.07倍) |
ちなみに、2023年には、200%(3倍)を上回る銘柄が多数ありました。そのため、少なくとも7月時点において、2024年におけるIPO市場はやや盛り上がりに欠けているといえます。
※参考:庶民のIPO「IPO 上場実績 一覧(2024年)」
2024年のIPO市場に見られる特徴
2024年1〜3月のデータをもとに、2024年のIPO市場に見られる特徴を解説します。
世界
大半のIPO市場においては、時価が公開価格を上回る新規上場が多数見られました。要因として、投資家による信頼感の高まりが考えられます。また、PE(プライベートエクイティ)が関与したIPOの増加も特徴的です。
今後は、AI(人工知能)をはじめとした最先端のビジネスを行う企業のIPOが活発化すると予想されます。
日本
IPOを行った企業のうち初値時価総額が50億円未満の企業が51.4%、50億円〜100億円の企業が20%を占めており、2024年は比較的小規模な上場が多いといえます。
ただし、グロース企業における平均初値時価総額は、前年同期よりも増加(248億円→279億円)していることから、少数ながら大規模なIPOも行われていると考えられます。
2024年に行われたIPO事例と成功要因
2024年のIPO事例として、中小企業を対象としたM&A仲介事業を展開するインテグループを紹介します。ウエルスアドバイザー株式会社の発表によると、6月18日に上場した同社は、公募価格3,960円に対して5,940円(+50%)の初値をつけており、IPO自体は成功したといえます。
IPOが成功した背景として、以下の要因が考えられます。
- 事業承継ニーズの増加により、中小企業M&A市場が拡大しており、今後も継続すると見込まれる
- 成長している市場において、順調に売上や利益を伸ばしている
- 競合他社に価格面で優位性を築いている
つまり、市場の将来性や同社の成長性、競争優位性の高さが投資家に高く評価されたことが、IPOの成功につながったと考えられます。
この事例より、投資家から高い評価を得られるビジネスモデルであることや、同業他社にはない強みを持つことが、IPOを目指す企業にとって重要なことであるといえます。
※参考:ウエルスアドバイザー株式会社「IPO=インテグループの初値は5940円、公開価格を50%上回る」
まとめ
為替変動やインフレなどの要因により、世界的にIPOを取り巻く市場の変化は激しさを増しています。また、米国の利下げ時期が不透明なこともあり、IPOに慎重な姿勢を見せている企業も少なくありません。
こうした不確実性の高い市場においては、「投資家から高い評価や信頼を得る」という原点に帰ることが、IPOを成功させる要因の1つとなり得るでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
IPOにおけるCFOの役割とは?人材確保の方法3つと、注意点をまとめて紹介
近年、IPOにおけるCFOのニーズが高まっています。CFO人材をどのように確保すべきか迷っている企業もあるのではないでしょうか。 この記事では、そもそもCFOとはどのような立場なのか、財務部長や経理部長との違い、IPOにおけるCFOの役割を…
詳しくみる危機管理とは リスク管理との違いやプロセス、事例を解説
危機管理は、発生した危機に対して迅速に対応することで事業停止などのリスクを軽減する取り組みです。事後対応を重視する点で、事前に危機を予防するリスク管理とは異なる概念ですが、ビジネスではこの両方とも行うことが重要です。 本記事では、危機管理の…
詳しくみる最短で上場するにはどのくらいの準備期間が必要?事前に理解しておくべき条件とは
一般的に新規上場(IPO)というと、それなりの年数がかかるイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、特定の条件を満たすことで、わずか数年での上場に成功した会社もあります。最短で上場するには、どのようなことをしておけばいいのでしょう…
詳しくみるCSR調達とは?概要や実現に向けたポイントを解説
CSR調達とは、CSRの視点を持って行う調達活動です。CSR調達の取り組みでは、対外的なイメージ低下リスクを回避できたり、競合との差別化による事業の成長につながったりするメリットがあります。 本記事では、CSR調達の重要性やプロセス、実施の…
詳しくみるスチュワードシップコードとは?コーポレートガバナンスコードとの違いや改訂状況を解説
スチュワードシップコードとは、機関投資家の望ましい姿や行動を定めた指針です。機関投資家がスチュワードシップコードを導入すると、企業の中長期的な成長や利益増大が促進されるというメリットがあります。 本記事では、スチュワードシップコードの特徴や…
詳しくみるコンフォートレターとは?役割や記載内容、注意点などを解説
IPOを達成するには、引受審査に通過しなければいけません。引受審査前に監査人から主幹事証券会社に提出されるのがコンフォートレターです。 引受審査に関係する過程ですので、IPOを目指す企業はこの流れについて理解しておくことが大切です。 本記事…
詳しくみる