• 更新日 : 2024年7月12日

上場ゴールとは?意味や要因、回避するためのポイントを解説

上場ゴールとは、IPOに際する利益獲得を目的に上場したと見られる状況を揶揄する表現です。経営陣が売却益の獲得をゴールに見据えて上場することはもちろん、ノウハウや能力不足でも上場ゴールとなり得ます。

上場ゴールと見なされると、IPO後に会社のイメージ低下を招いたり、経営陣が大きなひんしゅくを買ったりする恐れがあります。
本記事では、上場ゴールを巡る動向や事例、原因と対策を解説します。

上場ゴールとは

はじめに、上場ゴールの意味と動向を解説します。

上場ゴールの意味

上場ゴールとは、IPOによる利益獲得を目的に上場したと見られる状況を揶揄する表現です。

IPOに伴い、VCや創業者が株式の売却益を得ること自体は問題ではありません。しかし、利益獲得のみが目的となってしまうと、IPO後に配当の見送りや業績の下方修正を実施し、株価が下がり続けて一般投資家が損をする恐れがあります。

つまり、IPO後に継続的に企業価値を高める努力をせず、上場時点が期待度のピークになる(=ゴールとなる)場合に上場ゴールと揶揄されるのです。

本来、IPOにおける利益獲得は副次的なメリットであり、知名度の向上や資金調達が主な目的となるべきです。そのために企業はIPO後の成長戦略やビジョンを示し、それに期待を示した投資家が資金を投じます。したがって、上場ゴールは投資家を裏切る行為だといえるでしょう。

上場ゴールを巡る動向

2010年代半ば以降、IPO直後の業績下方修正や経営陣の辞任・不祥事などをはじめとして、上場ゴールと揶揄されても仕方のない事例が多々ありました。

日本取引所グループの「新規上場基本情報」を見ると、2015年以降はIPO件数の増加率が緩やか〜横ばい傾向となっていることが分かります。

また、日本取引所グループの「自主規制法人の年次報告 2019」によると、2018年には法令遵守状況などを理由に、申請後に上場承認されなかった銘柄数が46銘柄もあり、上場ゴールを巡る状況は深刻化しました。こうした上場ゴールの増加を受けて、日本取引所グループは2019年に引受審査厳格化の要請を実施しました。

上場ゴールの問題が表面化したことで、IPOブームは水を差された形になったといえるでしょう。

上場ゴールと呼ばれるケース

この章では、過去に上場ゴールと呼ばれた事例をもとに、上場ゴールと呼ばれる主なケースを紹介します。

IPO後すぐに業績悪化

1つ目は、IPO後すぐに業績が悪化し、それに伴って株価が急速に下落したケースです。
例えば、黒字予想であったにもかかわらず、IPOから半年〜1年以内といった短い期間で数億円規模の赤字に転換するケースなどが挙げられます。

投資家は、IPOする企業の業績予想や事業計画などを踏まえて投資します。
黒字予想を信じて投資したにもかかわらず短期間で業績が悪化した場合、投資家の間に強烈な失望が生じる可能性が高まります。その結果、株価の急激な下落が生じます。

業績の悪化度合いが著しい場合、半減〜10分の1近くまで株価が暴落する恐れもあります。こうした暴落が生じると、上場ゴールと揶揄されてしまいます。

長期的に見ると、強気な業績予測で投資家からの投資を誘う戦略は、かえって上場ゴールと見なされる要因となり得るため、注意が必要です。

商品やサービスに対するニーズの減少

2つ目は、IPOする企業が行なっている事業(取り扱っている商品やサービス)に対するニーズが減少し、株価が暴落するケースです。

例えば、有名人の紹介によって、海外の健康食品が流行したとしましょう。流行に乗って事業を成長させることができれば、短期間で業績を伸ばし、IPOを実現することは十分に可能です。
ですが、IPO後すぐにブームが過ぎ去ってしまった場合、投資家たちは業績の悪化を予想し、株式を手放そうとする可能性があります。もしくは、業績の下方修正が公表されることで、失望売りが始まるケースもあります。

その結果、株価が大幅に下落し、上場ゴールと呼ばれる事態になり得ます。

商品やサービスのニーズが低下する理由は、ブームの低迷だけでなく、代替品の出現や法規制などさまざまです。すべての要因は予測できないため、経営陣はリスクを軽減する策(事業の多角化など)を実施し、可能な限り影響を最小限にとどめることが重要です。

経営陣の不祥事

最後の要因は、経営陣の不祥事です。

IPO後に売上の不正計上などが発覚した場合、経営陣が責任を問われるだけでなく、会社全体に対する信頼度も低下します。その結果、失望売りによる株価の暴落が生じ、上場ゴールと揶揄される可能性があります。

なぜ上場ゴールは起きるのか?

上場ゴールが起きる(上場ゴールと揶揄されるような結果に終わる)理由として、主な3つを紹介します。

利益や資金の獲得を目的に上場する

創業者やVCが株式の売却益を得るために上場する場合、IPO後の成長戦略が綿密に練られていない、もしくは見通しが甘い可能性があります。
他にも、上場のために楽観的な見通しや実力以上の将来性を投資家に示すケースもあります。

この場合、IPO後は業績が低迷してしまい、株価は下落の一途を辿る結果となり得ます。

経営の能力やノウハウが不足している

経営能力やノウハウが不足しているために、IPO後の成長が低迷するケースもあります。

注意すべきなのは、企業のステージによって必要となる経営能力やノウハウは異なるということです。創業から上場までの経営が得意でも、上場した事業を大きく成長させることができなかった場合、IPO後の業績が低迷してしまう恐れがあるでしょう。

成長に準備期間がかかる

成長に準備期間を要することも理由の1つです。
経営陣の考えや能力に問題がなくても、IPO後しばらくは業績や株価が低迷してしまう可能性があります。

例えば、長期的な研究開発や、事業が成長するまでに多額のマーケティング費用を要するビジネスモデルである場合などが当てはまるでしょう。

こうした場合も、現時点での結果だけを見られて上場ゴールと揶揄されるケースが散見されます。

上場ゴールを回避するためのポイント

上場ゴールを回避するには、前述の原因を1つずつ解消していく必要があります。
具体的には、以下3つのポイントを押さえてIPO前後の経営を行うことが効果的です。

  • IPO後の経営戦略やビジョンを明確化する
  • IPO後の成長ビジョンを投資家や従業員に理解してもらう
  • 上場後も事業の成長に注力し続ける

特に重要なのは、IPOをゴールとせずに、その後の成長も考慮して戦略やビジョンを明確にし、着々と実行し続けることです。また、成長ビジョンや戦略を示し、投資家はもちろん事業を担う従業員に理解してもらうことも大切です。

そうすることで、IPO後の準備期間に株価が暴落するリスクを軽減しつつ、目標達成に向けて事業を推進できるでしょう。

まとめ

上場ゴールは、IPO後の株価下落に伴い、上場による売却益獲得を目的としたIPOであると揶揄される状況です。経営陣や会社のイメージ低下を招くため、IPOを目指す場合には事前に対策しておくことが大切です。

特別な対策は必要なく、IPO後の成長を見据えたビジョンや戦略の策定と、それを投資家に示すことが大切です。本記事で紹介した原因や対策を踏まえ、IPOの準備を進めていきましょう。


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