- 更新日 : 2024年7月16日
リファラル採用とは?意味や進め方とデメリット、成功のポイントを解説
リファラル(referral)採用とは、自社の社員から会社に人材を紹介してもらう採用手法です。採用コストを大きく削減できる一方、候補者が採用に至らなかった場合に、紹介者と候補者が気まずい関係になるなど難しい面もあります。
本記事では、リファラル採用の概要や紹介者への報酬、成功のポイント等について解説します。
リファラルとは?意味や概念
リファラル(referral)とは「推薦」や「紹介」といった意味の言葉です。経営者や社員、外部の専門家などから、情報などの推薦や紹介を受けるという意味合いで使われています。
ここでは、代表的なものをご紹介します。
リファラルマーケティングとは
リファラルマーケティングとは、会社の関係者や既存の顧客を介して、新しい顧客を得ていくマーケティング手法です。「口コミ」をイメージするとわかりやすいでしょう。
実際に商品やサービスを使った人が、その商品などの良さを周囲に伝えるため、一定の効果が見込めます。この効果を利用し、より大きくするために行われるのが「紹介キャンペーン」です。紹介キャンペーンでは「新規の顧客を紹介してくれたら、紹介者に報酬やポイント等を付与する」という仕組みで、紹介するモチベーションを高めます。
リファラル採用とは
リファラル採用とは、自社の社員から、知人や友人を紹介してもらう人材採用の手法です。
関係者からの紹介という点で縁故採用と混同されがちですが、リファラル採用と縁故採用は異なります。縁故採用では経営者や取引先とのコネクションが重視され、候補者の能力が採用基準に満たなくても採用されることが少なくありません。
これに対しリファラル採用は、候補者の能力やスキル、適性等に着目して採用を決定します。そのためリファラル採用では、採用に至らないケースもあるのが特徴です。
リファラル営業とは
リファラル営業とは、自社の社員や知人などの関係者から見込み客を紹介してもらう営業手法です。
リファラル営業は、売り手と買い手の間に「共通の知人」の存在があるため、買い手に信頼されやすいメリットがあります。紹介者を介し、見込み客の就職や結婚、住宅取得などのデータが得やすいため、生命保険などの営業によく使われ、テレアポや飛び込み営業よりも成約率が高いといわれています。
リファラル採用のメリット
自社の社員から人材候補の紹介を受けるリファラル採用では、採用コストの大幅な削減が見込めます。また、より会社にマッチする人材の獲得も期待できるでしょう。ここでは、リファラル採用の主なメリットをご紹介します。
採用コストが削減できる
リファラル採用の大きなメリットは、採用コストを削減できることです。
有料の求人広告を出す場合、人材が獲得できない期間も広告料が発生します。また、人材紹介会社を介して新入社員を採用すれば「年収の30~35%」といった、多額の紹介料が発生するのも課題です。
それに対し、リファラル採用にかかるおもなコストは、社員に支払うインセンティブや紹介活動に要した交通費・食事代等の経費のみです。しかもインセンティブの支払いは、基本的に成果報酬で、人材獲得に至った場合しか発生しません。
またリファラル採用では、求人広告の作成や会社説明会の開催といった手間がかからないため、人事担当者の負担が軽くなります。その結果、時間外労働の減少につながれば、人件費削減効果も期待できるでしょう。
マッチング精度が高い
リファラル採用は、他の採用手法と比べ、自社にマッチする人材に出会える確率が高いといわれています。自社の特徴・求める人材像と、候補者のスキル・性質の双方を理解している社員が紹介を行うため、マッチング精度が高くなりやすい点がメリットです。
求人をする会社は、候補者をよく知っている社員から、能力だけでなく性質や人柄など、履歴書や職務経歴書だけではわからない情報を得られます。
一方、候補者側も実際に働いている社員から、具体的な業務内容や社風、経営者の考え方などについて、事前に聞くことが可能です。そのため、入社後のギャップが少なく、定着率も高くなります。
転職潜在層にアプローチできる
求人広告や人材紹介会社を利用する場合、求職活動をしている人材の情報しか得られません。しかしリファラル採用では、積極的に転職活動を行っていない層にもアプローチできます。
「もし自分に合った企業があるなら、転職を考える」「自分の能力をより活用してくれる会社なら、転職したい」といった転職潜在層を採用候補にできるため、候補者の範囲が広がります。また、具体的な転職活動をしていない候補者も、友人や親しい知人が紹介する会社であれば、前向きに転職を考える可能性が高いでしょう。
リファラル採用のデメリット
リファラル採用にはメリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、おもなデメリットについて確認しておきましょう。
入社までに時間がかかる
リファラル採用では、候補者がまだ他社で働いているケースが多いため、採用が決定してもすぐに入社できるとは限りません。内定を出してから入社まで、数ヶ月以上かかることも少なくないでしょう。また、募集のタイミングによっては、社員の知人・友人に適確な候補者がいないこともあります。
こうした理由により、リファラル採用は「早急に担当者を採用したい」といった要望には不向きでしょう。
不採用の場合にフォローが必要
リファラル採用の候補者が採用されなかった場合は、候補者と紹介者の双方に、丁寧なフォローを行う必要があります。
会社側のフォローが至らない場合、大切な友人を紹介した社員は、会社に対して不信感を持つ可能性が高いでしょう。また、候補者と紹介者の関係が悪化する可能性もあります。
そのような事態を防ぐため、候補者と紹介者の両方に、不採用に至った理由を詳しく説明し、応募・紹介してくれたことへの感謝も誠実に伝えることが重要です。
リファラル採用に向いている会社
リファラル採用と相性が良いのは、社員が採用に協力的な会社です。また採用を急がず、かつ採用コストを削減したい会社にも向いています。以下で、それぞれの詳細を解説します。
社員のエンゲージメントが高い会社
リファラル採用で成果を出しやすいのは、社員のエンゲージメントが高い会社です。エンゲージメントとは、会社と社員の強い信頼関係を指します。
リファラル採用では、社員が候補者に会社の特徴などをプレゼンしますが、会社を信頼しているからこそ、熱の入った説明をします。自分の時間を割いてまで採用活動をするのは「この会社に貢献しよう」との気持ちが強いためです。
またリファラル採用に当たり、知人・友人に自社の特色や経営者のビジョンを説明する中で、改めて自社の良さを再認識し、よりエンゲージメントが向上する相乗効果も期待できます。
採用を急がず、かつコストを抑えたい会社
リファラル採用は、他の採用方法に比べ、採用コストが安価に抑えられます。そのため、採用コストを抑えたい会社は、リファラル採用がおすすめです。
ただしリファラル採用の場合、募集から採用までの時間がかかることが多く、早急な募集には対応しにくい点はデメリットだといえます。したがってファラル採用は、人材の入社を急がず、かつ採用コストを低く抑えていきたい会社に適した採用方法だといえるでしょう。
リファラル採用の進め方
リファラル採用制度を導入し、円滑に進めていくためには、制度の整備だけでなく、社員への充分な周知が不可欠です。ここでは、一般的なリファラル採用の進め方を解説します。
リファラル採用制度を作る
まず、リファラル採用制度を整備します。採用の条件、紹介の手順、紹介者に対するインセンティブの有無、紹介にかかる経費の範囲など、リファラル採用について詳細に取り決めなくてはなりません。
インセンティブについて取り決める
紹介者へのインセンティブの扱いは会社によって異なり、インセンティブを支払う会社、支払わない会社、物品やギフト券などを交付する会社などさまざまです。
インセンティブを支払う場合は、金額や発生のタイミング、支払方法や時期などを取り決めておく必要があります。インセンティブの発生のタイミングは「採用内定が出たとき」「実際に候補者が入社したとき」などが想定されるでしょう。
なお、インセンティブの額は会社によって異なりますが、多くても30万円程といわれています。
制度が法令違反にならないよう気をつける
リファラル採用制度を導入する際は、職業安定法違反にならないよう留意する必要があります。
職業紹介を行うためには、原則として職業安定法上の許可、または届出が必要です。一方、リファラル採用は、人材募集をする会社の社員が募集活動を行うため、職業安定法の許可や届出が必要ない点が特徴です。
インセンティブも賃金や賞与として支払えば、職業安定法にも抵触しません。ただしインティブが高額すぎる場合、職業安定法違反を疑われることがあります。
職業安定法違反にならないよう、知人や友人の紹介は会社業務の一環として行うことや、インセンティブは賃金の一部である旨を、就業規則や賃金規程に明記しておきましょう。
従業員に制度を周知する
リファラル採用制度を作っても、社員が詳細を知らなければ制度は動きません。説明会や社内広報などを使い、リファラル採用制度に関する詳しい情報を社員に知ってもらう必要があります。
また、就業規則や賃金規程にも制度について明記し、従業員に周知しなくてはなりません。別規程として「リファラル採用規程」を作ってもよいでしょう。
リファラル採用制度に関する情報は、制度を作った当初だけでなく、定期的に発信するようにします。情報を更新し続けることは、社員の関心を引き付けることにもつながるでしょう。
リファラル採用を成功させるポイント
リファラル採用制度で最も重要なものは、社員の協力です。社員と情報を共有し、社員が動きやすい環境作りをしましょう。ここでは、リファラル採用を成功させるためのポイントをご紹介します。
制度についての情報を共有する
リファラル採用において、実際に紹介活動をするのは社員です。そのため、人材募集中の業務や空いているポスト、必要な経験や知識、スキルなどを、社員が確実に把握している必要があります。また、古い情報を放置しないよう、情報のアップデートも必須です。
社員が正確な情報を持っていないと、会社の要望から外れた候補者が紹介されることがあり、トラブルの原因になります。社内報やメール、イントラネットなどを活用し、リファラル採用についての情報を常に社員と共有しましょう。
社員の協力が得やすい環境を作る
リファラル採用は、通常の業務範囲内で行うため、どうしても社員に負担がかかります。そのため、社員の負担をできるだけ軽くし、協力が得やすい環境作りが必要です。
具体例としては、会社紹介のためのマニュアルや、採用活動に関する報告書フォーマットを作成しておくことが挙げられます。また、候補者をすぐに採用面接に呼ばず、気軽に参加できる会社見学会などを設けることも、後々のトラブルを回避や円滑な採用活動にプラスになるでしょう。
採用活動をする社員がひとりで悩まないよう、人事担当者が定期的に声をかけ、適切なアドバイスをしていくことが大切です。
リファラル採用は社員の協力がカギ
リファラル採用とは、社員からの紹介による人材採用手法です。採用コストの削減やマッチング精度の向上など、大きな効果が期待できる反面、人材の入社まで時間がかかる、不採用の場合にフォローを要するなど難しい側面もあります。
リファラル採用では採用活動を社員が行うため、社員の協力が不可欠です。インセンティブ制度等を設けるだけでなく、紹介活動を円滑に進めるためのマニュアルや各種制度を整備し、リファラル採用について社員の協力を得やすい環境を作りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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