- 更新日 : 2024年7月17日
マネーフォワード クラウドpresents「& money」 Recovery International株式会社 柴田旬也CFOに聞く!(前編)
さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのはRecovery International 株式会社 柴田旬也取締役CFO。今年2月にIPOしたばかりの最注目企業が目指すのは「もう一人のあたたかい家族」のような存在。その前編では柴田さんがいかにCFOになったのか、そしてIPOのあとさきについて伺いました。
目次
プロフィール
柴田旬也
公認会計士。1982年生まれ、茨城県出身。大学卒業後、2007年12月あずさ監査法人、現在の有限責任あずさ監査法人入所。2016年9月Recovery International株式会社入社2018年3月 取締役就任、CFO。趣味は筋トレとサーフィン。
聞き手:瀧口友里奈
経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード
東京大学卒。セント・フォース所属。「100分de名著」(NHK)、「モーニングサテライト」(テレビ東京)、「CNNサタデーナイト」(BS朝日) 、日経CNBCの番組メインキャスターを複数担当。ForbesJAPANで取材•記事執筆も行い、多くの経営者を取材。東京大学大学院在学中。
掲げる理念は「もう一人のあたたかい家族」
瀧口:まずはRecovery Internationalがどんな企業なのか教えて下さい。
柴田:当社は「もう一人のあたたかい家族」を理念に掲げ、訪問看護サービスを展開しております。訪問看護を説明するにあたってその名前すら認知されていないというのが現状です。瀧口さんにご質問させていただきたいのですが、もし末期のがんと診断されたら、人生の最期をどこで迎えると思いますか。
瀧口:人生の最期、終末期医療ですよね。やっぱり最期は病院で、というイメージがあります。
柴田:そうなんです。多くの方が、想像されるのが病院のベッドなんですね。一方で、内閣府が行った調査によると、半数以上の方が人生の最期は自宅で迎えたいと答えています。この現実的なところと気持ちの大きなギャップ、ここのギャップを埋めるのが訪問看護だと思っております。自宅で療養している方に、看護師ですとか、リハビリのプロフェッショナルのセラピストが訪問して医療行為をする。それが訪問看護なんですね。
瀧口:ヘルパーさんが来てくださって、高齢者の方を介護してくださる訪問“介護”はよくあると思うんですが、訪問“看護”というのもあるんですね。
柴田:訪問介護は生活のお世話というのがメインで訪問看護は医療行為がメインです。例えば寝ていらっしゃる方だと、床ずれが酷くなり「褥瘡(じょくそう)」になってしまうのですが、褥瘡にお薬を塗ったり、包帯を巻いたりする。あとは、脳血管障害で一時入院されていたけれども、体は回復して退院される方。けれどどうしても手首や関節が固まってしまう。こういった後遺症が残っている方に、リハビリのスタッフが訪問して関節を戻すようなリハビリテーションを行うとか、体にしっかり触れて医療行為をするというのが訪問看護ですね。
瀧口:病床が満杯になってしまって治療の続きはお家で、というケースも多そうですね。
柴田:超高齢化社会の時代にあって、更に2040年に75歳以上の後期高齢者の数がピークを迎えると言われていますが益々高齢者の数が増えていきます。そして75歳を超えると持病を持っている方が急増するというのが統計的にもあります。そうすると病院のベッドは埋まっていきます。なので、自宅に帰ってもらい、地域に帰ってもらい、みんなで支えていこうと。そういった状況でネットワークのハブになると期待されているのが訪問看護なんです。政府は「地域包括ケアシステム」を掲げています。
瀧口:社会的にも、重要な部分を担っているんですね。
“仲間を支えたい”という思い そして仲間に支えられるCFO
瀧口:柴田さんはCFOとして財務部門を統括されていますが財務部門の雰囲気どんな感じなんですか。
柴田:財務部門もやはり理念に沿った、「もう一人のあたたかい家族」が影響していると思います。アットホームな温かみのある雰囲気がすごくあります。財務部門内の部署の縦割り関係なく助け合えるような雰囲気は心地良いなと思いますし、冗談を言い合って、結構笑いのツボがみんな似ているなっていう気はします。
瀧口:それは会社全体のカルチャーでもあるのでしょうか?
柴田:そうですね。
瀧口:柴田さんはどうしてファイナンス、財務関係の道に進まれたのでしょう?
柴田:公認会計士の資格を持っています。その資格を目指すきっかけになったのが、大学時代、結構周りに社長の息子さんや自分は起業するんだという志を持った友達が多かったということなんです。僕はあまりやりたいとかなくて(笑)。“そんな仲間を支えたい”っていう思いが強くなって、会社の経営を見える化する、数値によって見える化してそれを読み解く。その一番の仕事が会計士だということを知って、会計士の資格を目指すことになった、というのがきっかけですね。
瀧口:公認会計士、財務の仕事というのは子供の頃の夢と合致していますか?
柴田:一致していないですね。子供の頃から、これになりたいっていう強い思いを持つ子ではなくて、テレビドラマを見ると、こうなりたいとか、その主役になりたいとか、で学校に行くと、学校の先生になりたいとか。割ともうコロコロ、コロコロ変わるような子だったので今の姿は全く想像してなかったです。
瀧口:ちなみに柴田さんはご自身を分析されて、どんなタイプのCFOだと思いますか。
柴田:私はみんなに、仲間に支えられながら、前に進んで行くようなタイプですね。周りあっての自分です。
瀧口:ご自身も支えたいという気持ちから始まって、そこから支えられる存在になってということなんですね。三国志でいうと劉備(りゅうび)のような・・・
柴田:三国志好きです。魏・呉・蜀でいうと蜀が一番好きです(笑)。劉備ですね。
コロナ禍で今一度見直した会社の理念、バリュー
瀧口:この2年に及ぶコロナは会社の事業にどんな影響を及ぼしていますか?
柴田:当社にとってコロナは、事業を根本的に見直すべきというほどの影響はなかったです。組織を作り会社を成長させていくという過程で、経営課題というのは日々ありますが、その経営課題の一つというような位置づけでした。
瀧口:訪問看護では対面のお仕事をされる方が多いと思うので、影響が大きいのではと思ったのですが、その辺りは如何ですか?
柴田:一般的に飲食業界とかで売上が50パーセント以上落ちるというのに比べると、影響は軽微でした。おっしゃる通り1回目の緊急事態宣言の時は、従業員にも不安が広まりましたし、行っていいのかとか不安もありましたし、お伺いする側の家、自宅に入らないでほしいっていうこともあり、その数か月はキャンセル率がグンと跳ね上がりました。ただそれは第1波のときだけでした。
瀧口:それ以降はやはり、“看護”というのはすごく必要な、エッセンシャルなお仕事というところで、需要は、減ることはなかったということなのでしょうか?
柴田:訪問看護に来てもらわないと体調が悪くなってしまうということに1~2か月でご利用者様やそれを支える地域のサポーターの方も気付いて、やはり来てもらわないといけないというような雰囲気に変わるタイミングがありました。だから第2波以降は、大きな影響はありませんでした。
瀧口:CFOとして、コロナ禍で特別に求められた役割は?
柴田: CFOとしてというよりは、取締役、一経営者として会社の従業員全員の不安を取り除くための動きとか、社長と一緒にどうすれば安心して訪問に行けるか、とかそういうところを考えながら“発信”するということを意識していました。
瀧口:すごく響いてくれた言葉はありますか。
柴田:いくつかありますが、やはり我々は「もう一人のあたたかい家族」ということ。患者さんがコロナになっているとか、コロナが蔓延しているからといって家族と会わないかといったら会いますよね。困っている家族がいたら助けに行きますよという。それでいいんだという話は結構しました。
瀧口:平時のときに持っていた、その理念やバリューをもう一度見直すきっかけになったということ・・・
柴田:そうですね。さらに全員で強くなれたと思います。
IPOを経て広がった視点。自らも“社長目線”
瀧口:今年の2022年2月に東京証券取引所のグロース市場に上場されました。おめでとうございます。このIPOを振り返っていかがでしょう。
柴田:大変でしたね(笑)。私は会計士として10年くらい「あずさ監査法人」という大きな会計事務所で仕事をしました。2016年9月にこの会社に転職してきてIPOまでちょうど5年でしたが、前の10年と今回の5年を比べると今回の5年は非常に密度の濃い時間だったように思います。大変な分、密度が濃かった。
瀧口:安定から大変な道を選ばれたというのはどうしてですか?
柴田:2つあります。1つは、「あずさ監査法人」で6年目ぐらいからIPO業務に従事するようになりました。IPO業務は一部上場企業のような大きな企業を法定監査するという仕事もしたのですが、そういった大きな会社に比べてIPOを目指す会社と接してみて大きな衝撃を受けたのは、社長様やCxOの方々が自分とだいたい同じぐらいの年齢だったということです。そこにまず衝撃を受けました。
瀧口:当時、30歳前後。
柴田:そうです。そして大きな企業の監査だと、役員の方と接する機会ってほとんどないんです。IPO目指す会社っていうのはCFOの方とか社長様とかと接する機会が非常に多くて、いわば一緒にIPOを目指しているみたいな感覚を味わえるんです。それをやっているうちに、自分も事業会社の中に入ってIPOを目指したいなと思うようになり、それがそれまでの組織を飛び出す大きなきっかけの一つでしたね。熱い思いがふつふつと湧いてきました。
瀧口:IPOを目指してからのこの5年間を振り返られて如何でしょう?
柴田:この会社に移って、会計士のことを知らない色々なバックボーンを持っている方々と働いて、価値観の違いに最初はとても苦労しました。
瀧口:それは、仕事に対する価値観ですか。
柴田:仕事に対する価値観もそうですし、人間関係として求める部分、仕事で繋がるよりも気持ちで繋がるっていう方が比重が大きかったですね。
瀧口:やはりスタートアップにはそういう時代が付き物といいますか……
柴田:まあ多分・・・スタートアップだからというか、僕が悪かった(笑)。僕が大企業の論理を持ち込んでしまったところがありました。それからはよくコミュニケーションをとって、信頼関係構築をまず基盤に置いて一人一人を尊重して。基本的に会計士というスキルセットがない人たちと一緒にやっていくには、どうやっていくのがいいかというのはよく考えました。
瀧口:CFOは「財務のトップ」ですが組織づくりとかそれ以上の仕事もするというのも特徴ですよね?
柴田:スタートアップの大変さと共に魅力だと思います。入社してからCFOの役割を持ちながら、ずっと社長目線というか、会社全体をしっかりと見て、社長だったらどうするかなというのを常に考えながら行動しています。
瀧口:二人三脚という形ですかね。IPOの前後での変化は?
柴田:IPOの前はどうしてもこう自分の会社の中にばかり視点が収まってしまうのですが、IPO後になると投資家からも連絡が来たり、あとは株価をよく見るようになり、視野が広がりました。自社の株価もそうですし、競合他社さんだったり、同じ時期にIPOした会社さんの株価を見ていくと、また違った視点で自社の業績が見えてきたりします。
(後編に続く)
お話は後編に続きます。またお届けした内容はポッドキャスティングでも配信しています。
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