- 更新日 : 2024年7月16日
エンゲージメントサーベイとは?目的や効果、実施方法を解説
エンゲージメントサーベイとは、従業員のエンゲージメントを可視化するアンケート調査のことです。適切な質問項目を設定し、結果を分析することで自社の課題解決に活かせます。
今回はエンゲージメントサーベイの概要や進め方、無駄にしないポイントなどを解説します。自社に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、目に見えない従業員エンゲージメントを数字にして可視化する調査のことです。エンゲージメントとは、従業員の会社に対する愛着や貢献意欲を指します。
サーベイにより組織の現状を確認し、課題を抽出して改善策を講じられます。
ここでは、エンゲージメントの高い企業・低い企業の特徴などをみていきましょう。
エンゲージメントが高い企業
エンゲージメントが高い企業には、次のような特徴があります。
- 経営理念が従業員に浸透している
- 社内コミュニケーションが活性化している
- 公正な人事評価制度を確立している
従業員エンゲージメントの高い企業は明確な経営理念やビジョンがあり、それが従業員全体に浸透しています。企業と従業員は同じ方向性を向いているため、社内には一体感があります。
社内コミュニケーションが活発なことも、エンゲージメントが高い企業の特徴です。従業員同士の信頼関係が構築されており、良好な人間関係で業務も円滑に進みます。働きやすい環境は、従業員の会社への愛着心を高めるでしょう。
また、評価制度が公正で適正な評価が行われている企業では、従業員のモチベーションも上がります。頑張りを評価してくれる会社に対し、貢献意欲も高まるでしょう。
エンゲージメントが低い企業
従業員のエンゲージメントが低い企業もあります。次のような状況があると、エンゲージメントが低いと考えられます。
- 離職率が高い
- 従業員のモチベーションが低い
- 人間関係が悪い
エンゲージメントが低い企業は従業員に「この会社で頑張りたい」という意欲が薄く、離職しやすい傾向にあります。今よりもやりがいがあると感じられる企業が見つかれば、転職を考えることもあるでしょう。
また、従業員のモチベーションが上がらないことも、エンゲージメントの低い企業の特徴です。従業員に企業のビジョンが浸透しておらず、同じ方向性を向いていないため、仕事をする意味を見出せません。仕事への取り組み方も受け身になりがちです。
エンゲージメントが低い企業は、人間関係が良くないという特徴もあります。十分なコミュニケーションが取れない職場は業務が円滑に進まず、働きにくい環境です。従業員の仕事への熱意は下がり、エンゲージメントも低下してしまいます。
エンゲージメントサーベイで企業がわかること
企業にとって、従業員のエンゲージメントは重要です。エンゲージメントが高いか低いかで、生産性に影響します。エンゲージメントの高い従業員は仕事にも意欲的に取り組み、生産性を高めます。離職を防止し、企業の成長にもつながるでしょう。
従業員のエンゲージメントが低いと感じたら、サーベイを実施することをおすすめします。社内の課題を洗い出し、改善策の立案が可能です。
例えば、サーベイでは次のような質問をします。
- 会社の経営理念やビジョンがどの程度浸透しているか
- 職場での人間関係はどうか
- 周りの人に自社で働くことをすすめたいと思うか
- 成長しているという実感できているか
従業員の回答により、会社に対してどのくらい愛着や関心を持っているか、どの程度仕事に意欲的かを測定できます。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査
エンゲージメントサーベイとよく似た調査に、従業員満足度調査があります。
従業員満足度調査は、給与や福利厚生などの待遇に対して、従業員がどの程度満足しているかを測定する調査です。明らかにしたいことは「物理的な満足度」で、職場環境や労働環境の改善を目的に行われます。
一方、エンゲージメントサーベイは従業員が企業に対してどの程度の愛着心があり、仕事に意欲を感じているかなど、「組織や仕事への思い」を調査するものです。離職防止や組織の強化などを目的に行われます。
なお、エンゲージサーベイとビジネスとの関係については、以下の記事をご参照ください。
エンゲージメントサーベイを実施する目的
エンゲージメントサーベイを実施する目的は、次の3つです。
- 組織の課題を可視化する
- データを人事施策に活かす
- 組織のパフォーマンスを向上
それぞれ、詳しく解説します。
組織の課題を可視化する
エンゲージメントサーベイの目的は、現在の状態を把握して、組織にどのような課題があるのかを可視化することです。
サーベイの実施により、経営理念やビジョンがどの程度従業員に浸透しているか、上司や同僚との関係性はどうかなど、組織の課題が明確になります。
課題を知ることで、組織は有効な対策を立てられるでしょう。
データを人事施策に活かす
エンゲージメントサーベイは、調査で得たデータを人事施策に活かすという目的もあります。
実施により、次のような人事上の課題を把握できます。
- 職場のコミュニケーションが不足している
- 従業員のモチベーションが低下している
- 人事評価に不満がある
- ワークライフバランスが整っていない
このような人事上の課題を可視化することで、有効な人事施策を講じられます。
施策を立てて調査を定期的に行うというサイクルを繰り返していけば、職場環境が改善され、従業員のエンゲージメント向上が図れるでしょう。
組織のパフォーマンスを向上
調査で課題を抽出し、改善に取り組むことで組織のパフォーマンスを向上させます。従業員のエンゲージメントが高まれば仕事への意欲を高め、積極的に取り組むことが期待できるためです。
従業員が仕事への熱意を高めれば生産性が高まり、目標達成も早まります。組織全体のパフォーマンスが上がり、企業を成長させるでしょう。
エンゲージメントサーベイの実施方法
エンゲージメントサーベイは、自社で行う方法と外部に委託する方法があります。自社で実施する方法は、自社の課題や企業風土などに合わせた独自の質問を設定でき、コストもかからない点がメリットです。
ここでは、自社でエンゲージメントサーベイを実施する場合の手順を解説します。
サーベイの実施目的を共有する
エンゲージメントサーベイを実施する際は、従業員への目的の共有が必要です。調査は従業員の業務時間に実施されるため、どのような目的で行われるのか理解していないと面倒に感じ、適当に回答してしまうこともあります。
実施前に、どのような問題を解決したいのか、何を測定したいのかを明確にして共有することが大切です。
サーベイの質問項目を選定する
目的を共有したら、質問項目を作成します。サーベイの成功は質問項目で左右されやすく、従業員の本音を聞き出せるような質問の設定が重要です。
社内全体もしくは部署ごとにどのような課題があるのかを予測し、それに合わせた質問を作成しましょう。
質問例として、次のようなものがあげられます。
- 仕事を通じて、成長できていると実感できるか
- 目標を共有し、職場内が一体感を持って働けているか
- 社内の人間関係は良好か
課題を解決するため、従業員の本音を引き出せる質問を用意しましょう。
サーベイを実施する
サーベイの実施にあたっては、匿名で行うことが大切です。回答内容によって個人が特定されないこと、回答者に不利益がない形式で実施するといった内容を説明しておくとよいでしょう。
サーベイへの結果によって従業員が不利益を被ることがあれば、サーベイの実施に従業員からの信頼を得られず、正しい回答が得られないことになります。
サーベイの結果を分析する
サーベイの結果が出たら、分析を行います。まずは全体的にエンゲージメントの数値が高いか低いかを確認しておきましょう。初めてサーベイを実施する場合は比較対象がないため、次に実施する際の指標になります。
人事評価など他のデータと合わせれば、さらに詳しい分析もできます。悪い数値だけでなく、良い人の傾向を分析することで、エンゲージメントを向上させるパターンを見つけることも可能です。
公開されている同業他社の事例があれば、比較してみるのもよいでしょう。
分析結果をもとに組織の課題を設定する
分析結果から、組織の課題を抽出します。特定の質問項目で数値が際立って悪い場合は、早急な対策が必要になるでしょう。特定の部署で数値が悪い場合、マネジメントに課題があるのかもしれません。
サーベイのスコアリングは課題の度合いを可視化できるため、課題に優先順位をつけやすくなります。より重要な課題を特定し、改善施策を考えましょう。
具体的な改善施策を検討・実施する
分析結果をもとに組織の課題を明確にしたら、具体的な改善施策を検討しましょう。
企業の目標やビジョンが共有できていないという課題であれば、社内の勉強会を開催して会社のビジョンを共有する、1on1ミーティングを導入して従業員一人ひとりの目標を設定するといった施策が考えられます。
社内コミュニケーションに問題があれば、チャットツールの導入や社内イベントの開催など、コミュニケーションを活性化する施策を検討します。
従業員が人事評価制度に納得できていないという課題であれば、評価制度の見直しを行いましょう。
従業員へのフィードバック
改善策をスムーズに進めていくためには、サーベイの結果と今後の方針について従業員にフィードバックすることが大切です。
調査に協力してもその結果が何に使われているのかがわからない状態であれば、従業員は調査に協力する気持ちを失うでしょう。
従業員のエンゲージメントを高めるためには、上層部だけの対応ではなく現場を巻き込んだ取り組みが求められます。
サーベイの結果が出たら、従業員にしっかりと分析結果を伝え、会社として改善に取り組む姿勢を伝えましょう。
エンゲージメントサーベイの質問項目例
エンゲージメントサーベイの質問項目は、eNPSやQ12(キュートゥエルブ)などが代表的です。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
ベイン・アンド・カンパニー社の設問例:eNPS
eNPS(Employee Net Promoter Score)は、アメリカのベイン・アンド・カンパニー社が提唱した顧客ロイヤルティの指標である「NPS」がもとになった質問項目です。Apple社が従業員のロイヤルティマネジメントに活用したことから、普及するようになりました。
具体的には、「自社で働くことを親しい友人や知人、家族にどれぐらいすすめたいか」という質問に0〜10点で回答してもらい、次のように結果を分類します。
- 0点~6点:批判者
- 7点~8点:中立者
- 9点~10点:推奨者
推奨者の割合から批判者の割合を差し引いた数値が、eNPSのスコアです。推奨者が多く、批判者が少ない方がeNPSのスコアが高いということになります。
ギャラップ社の設問例:Q12(キュートゥエルブ)
Q12(キュートゥエルブ)は、アメリカのギャラップ社が提供するエンゲージメントを診断する質問項目です。
従業員に対して12の質問を行い、エンゲージメントを図ります。
以下は、質問の一例です。
- 職場で自分が何を期待されているのかを知っている
- 仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
- 職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
ビジョンの浸透や会社への貢献度、上司や同僚との関係などが問われる内容です。
12の質問は、「完全に当てはまる(5点)」から「完全に当てはまらない(1点)」まで5段階の選択肢で回答し、その結果を集計します。
エンゲージメントサーベイを無駄にしないためのポイント
エンゲージメントサーベイを成功させるためには、いくつか押さえるべきポイントがあります。
ここでは、サーベイを無駄にしないため、事前に確認したいポイントを解説します。
目的を明確にする
エンゲージメントサーベイを成功させるためには、どのような問題を解決したいのか、サーベイを実施する目的を明確にすることが大切です。
サーベイの実施では調査することが目的になってしまい、収集したデータがうまく活用されないケースがあります。調査をしてもデータが活用されなければ、実施する意味がありません。目的を明確にして実施することが重要です。
従業員の理解を得る
サーベイの実施にあたり、従業員の理解を得ることは不可欠です。事前にサーベイの目的を共有し、実施手順や結果のフィードバック方法なども伝えておきましょう。
説明会を開くなど、全員がしっかり理解できるようにすることが大切です。十分な理解を得られないと、業務の時間をさいて取り組むことに不満が出る可能性もあります。従業員の理解のないままサーベイを実施しても、適切な回答を得られないでしょう。
定期的にサーベイを実施する場合は、その都度、実施の目的や効果を説明することも必要です。
質問項目の選定
質問項目は、実施の目的に応じて適切なものを選定しましょう。結果を今後の方針や改善施策に活かすため、組織の課題が明確になる質問を選びます。
質問項目は記述式と選択式があります。記述式は個人のエンゲージメントの理解に役立ちますが、定量化して全体のエンゲージメントを可視化するには選択式の質問が適しています。サーベイの目的に従い、バランスよく選びましょう。
従業員の負担にならないよう配慮も必要です。回答に時間がかかったり、質問数が多くなったりしないように注意してください。
労働環境の改善に活かす
エンゲージメントサーベイは、結果を労働環境の改善に活かすことが大切です。従業員の声を反映させて労働環境を改善することにより、従業員の不満やストレスを解消でき、エンゲージメント向上につながります。
実際に抽出された課題を解決するための施策を実行することが、エンゲージメントサーベイを最大限に活かすポイントです。
サーベイで従業員のエンゲージメントを高めよう
エンゲージメントは従業員の会社に対する愛着心や貢献意欲であり、高めることで組織の強化につながります。サーベイは従業員のエンゲージメントを可視化でき、組織の課題を明らかにできます。結果を分析して改善策を講じることで、企業を成長させることができるでしょう。
本記事の内容を参考に、エンゲージメントサーベイを効果的に行うポイントを押さえ、従業員のエンゲージメントを高めてもらえれば何よりです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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