- 更新日 : 2024年7月12日
株式報酬とは?普及している背景やメリット・主な種類を紹介
株式報酬は、株価に連動して報酬が支払われるインセンティブ報酬の仕組みの1つです。株式がもらえる仕組みだとわかっていても、8つの種類があることまでをご存じの方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、株式報酬に興味がある初心者でもわかりやすいように、株式報酬が普及している背景や利用するメリットを解説しています。さらに、交付されるタイミング別に8種類の株式報酬の概要をやさしく紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
株式報酬とは
株式報酬とは、企業の短期的もしくは長中期の業績や株価に連動して支払われるインセンティブ報酬の1つです。インセンティブ報酬には、株式で支給される報酬(株式報酬)と現金で支給される報酬(現金報酬)の2つに分けられます。
株式報酬は資産性が高く、将来的に大きなリターンが見込めます。なぜなら、株価が上昇した時に売却すれば、入手した株式の価値以上のお金を得られるからです。例えば、株価が1万円から2万円に上昇すれば、数量に応じた金額を得るチャンスがあるのです。したがって、中長期的に資産が増やせるのが株式報酬の特徴です。
一方、現金報酬は価値が目減りするリスクが低く、短期的な利益が得られます。株式のように、価値が変動しないのが理由です。さらに、すぐに使える現金で入手できるので、安心感があると言えるでしょう。この様に、現金報酬は短期的なメリットがある点が特徴です。
株式報酬が普及している背景
株式報酬が普及する背景には、「攻めの経営」が推奨されていることが挙げられます。「攻めの経営」とは、経営者が中長期的に企業価値を高めるための施策に、積極的に取り組むことです。経営者に株式報酬を与えれば、会社の業績が自らの利益に直結するので、意欲的に経営に取り組めるのです。
特に日本企業では、最高経営責任者(CEO)の報酬において株式の占める割合が、他の先進国と比べると低いことが問題だと言われています。経済産業省によれば、日本企業のCEO報酬に占める株式など変動報酬の割合は58%です。一方、欧米の各国でその割合は70~90%となっており、このことからも日本企業の割合の低さがわかると思います。仮に変動報酬の割合を今よりも増やせば、経営者がより意欲的に経営に取り組むことが想像できるでしょう。この様に、日本企業のグローバル競争力を高めることが、株式報酬が普及している背景にあります。
株式報酬制度を利用するメリット
株式報酬制度を利用するメリットは、2つあります。
- 社員のモチベーションが向上する
- 人材の流出を防止できる
社員のモチベーションが向上する
給与の他に、株式が報酬として与えられれば社員のモチベーションが高まります。自らの役割をより高い水準で達成して、会社の業績の向上に貢献しようと努めるからです。株価が上がれば、自分が得られる報酬も増やせます。
人材の流出を防止できる
株式報酬制度を工夫すれば、人材の流出にも効果的です。例えば、すぐに株式報酬を与えるのではなく、定められた年数以上、勤務をしなければ株式報酬を得られない、といった制度にします。
交付タイミング別!株式報酬の種類
株式報酬の種類を交付するタイミング別に紹介します。株式報酬は、事前交付型と事後交付型の2つに分けられます。
事前交付型は、決められた条件を満たす前に株式が交付される仕組みです。条件の達成度合いによっては、株式の一部またはすべてを返還する必要があります。一方、事後交付型は勤続年数や会社の業績など、一定の条件を満たした後に株式が交付される仕組みです。
事前交付型の株式報酬の種類
事前交付型の株式報酬には、以下の3種類あります。
- 業績連動型株式(PS)
- 譲渡制限付株式(RS)
- ストック・オプション(SO)
業績連動型株式(PS)
業績連動型株式(PS)とは、譲渡制限が付いた株式が付与される仕組みです。PSとはパフォーマンス・シェアの略称です。業績の目標を設定して、達成の度合いに応じて制限が解除されます。もし、目標が達成できなければ株式は会社に没収されるので、目標を達成する強い動機付けになります。
なお、業績連動型株式には事前交付型だけでなく、事後交付型もあります。
譲渡制限付株式(RS)
譲渡制限付株式(RS)とは定められた期間、勤務することを条件に株式が付与される仕組みです。RSとはリストリクテッド・ストックの略称です。期間を超えずに転職などで退職すると株式が没収されるので、優秀な人材を確保する効果が期待できます。
ストック・オプション(SO)
ストック・オプション(SO)とは、あらかじめ定められた金額で株式を取得できる権利です。株価が上昇した後でも、値上がりする前の株価で購入できるので、低いリスクで利益を得られるのが特徴です。
事後交付型の株式報酬の種類
事後交付型の株式報酬には、以下の5つがあります。
- 業績連動型株式ユニット(PSU)
- 譲渡制限付株式ユニット(RSU)
- ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)
- 株式交付信託
- ファントムストック
業績連動型株式ユニット(PSU)
業績連動型株式ユニット(PSU)とは、役職などに応じたポイントを事前に付与して、保有するポイントに応じた株式や現金を付与する仕組みです。事前に設定した業績目標の達成の度合いに応じて、算出した株式や現金が付与されます。なお、PSUとはパフォーマンス・シェア・ユニットの略称です。
譲渡制限付株式ユニット(RSU)
譲渡制限付株式ユニット(RSU)とは、一定期間の継続勤務などの条件を満たした後に、株式が交付される仕組みです。PSUと同様に、保有するポイントに応じた株式が付与されます。なお、RSUとはリストリクテッド・ストック・ユニットの略称です。
ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)
ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)とは、業績に連動して報酬が与えられる仕組みです。SARでは、あらかじめ決められた株価を上回った場合に、その差額分の現金を受け取れます。株価が下がった場合は、報酬が与えられないだけで、損失を被ることはありません。
株式交付信託
株式交付信託は、自社の株式を役員や従業員に付与する仕組みです。役員は業績の達成度合いに応じて、在職時または退職時に自社株が付与されます。いっぽう、従業員が受け取る方法は2つあります。1つ目は、社内の規定に基づいて自社株を受け取れる「株式給付型」です。2つ目は、従業員持株会を通して自社株を購入する「従業員持株型」です。
ファントムストック
ファントムストックはストック・アプリシエーション・ライト(SAR)と同様に、業績に連動して報酬が与えられる仕組みです。株式を付与して一定期間が経過した後に売却したものとみなして、株価と同額の現金を受け取れる仕組みです。SARが値上がりした差分の利益を受け取れるのに対して、ファントムストックでは株価に相当する金額を受け取れる点に違いがあります。
まとめ
株式報酬は、企業の業績や株価に連動して支払われるインセンティブ報酬の1つです。株式報酬が普及する背景には、日本のグローバル競争力を高める狙いがあります。株式報酬の種類は事前交付型と事後交付型に分けられ、8種類があるので、それぞれの違いを理解しておくとよいでしょう。
よくある質問
株式報酬制度を利用するメリットとは?
株式報酬制度を利用するメリットは、社員のモチベーションの向上と人材の流出を防止できる2点です。
株式報酬の種類には何がある?
株式報酬は、事前交付型と事後交付型に分けられ、8種類あります。 事前交付型の株式報酬には、以下の3種類あります。
- 業績連動型株式(PS)
- 譲渡制限付株式(RS)
- ストック・オプション(SO)
- 業績連動型株式ユニット(PSU)
- 譲渡制限付株式ユニット(RSU)
- ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)
- 株式交付信託
- ファントムストック
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
OKRとは?目標設定や管理に使える方法をわかりやすく解説
企業の目標管理にはいろいろな方法があります。OKRとは、それらの目標管理手法のひとつです。全社員が同じ方向を向いて、明確な優先順位を持ちながら、一定ペースで計画を進行することを目的としています。 ここではOKRの意味、他の手法との違い、設定…
詳しくみる計画的偶発性理論とは?5つの行動特性と企業導入のメリットを解説
計画的偶発性理論は、明確な目標をあえて設定しないキャリア理論です。この理論では「予測不能な出来事に柔軟に対応することが、結果的にキャリア形成につながる」と考えます。 本記事では、計画的偶発性理論の概要、キャリアアンカー理論との相違点、偶然の…
詳しくみる1on1とは?ミーティングの目的と方法を解説!
1on1とは、上司と部下が1対1で話し合うミーティングをいいます。対話を通じて部下が自分で悩みや問題点の解決方法を考える機会を与え、成長を促すのが主な目的です。 部下が主体的に話ができるのが理想です。1対1で話す場合、話題に困ってしまうこと…
詳しくみる取締役のスキルマトリックスとは?重要性と実践方法を解説
企業が持続的に成長し競争力を維持するためには、取締役会のメンバーがどのようなスキルを持ち、どのように企業に貢献できるかを可視化し、最適なバランスを取ることが不可欠です。昨今のコーポレートガバナンス強化においても、取締役のスキルセットを開示す…
詳しくみるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?意味や各要素の違いを解説!
MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューのそれぞれの英語の頭文字をとったものです。企業の存在意義や果たすべき使命、目指すべき方向性、行動指針を言語化したものであり、多くの企業でこの考え方を取り入れています。 ここでは、ミッション、ビジョン…
詳しくみる譲渡制限付株式報酬制度のメリットやデメリット、導入プロセスを解説
譲渡制限付株式報酬とは、一定期間の勤務などを譲渡制限解除の条件とした株式を、役員・従業員に付与する制度です。主に、インセンティブの付与によって従業員や役員の意欲を高める目的で活用されます。 本記事では、IPO準備企業を対象に、譲渡制限付株式…
詳しくみる