• 更新日 : 2024年5月27日

CSR調達とは?概要や実現に向けたポイントを解説

CSR調達とは、CSRの視点を持って行う調達活動です。CSR調達の取り組みでは、対外的なイメージ低下リスクを回避できたり、競合との差別化による事業の成長につながったりするメリットがあります。

本記事では、CSR調達の重要性やプロセス、実施のポイントを解説します。また、CSR調達の実施事例も2例紹介します。

CSR調達とは

はじめに、CSR調達の定義と重要性・メリットを解説します。

CSR調達の定義

一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンでは、CSR調達を「製品や原材料の調達に際して、品質や性能などの従来的な要素にCSR要素を加えることで、サプライチェーン全体で社会的責任を果たそうとする活動」と定義しています(一部意訳)。

つまりCSR調達とは、CSRの視点(≒環境や労働条件、人権などへの配慮)を持って調達活動を行うことです。

CSR調達の重要性・メリット

サプライチェーンのグローバル化が進んだことによって、調達活動において自然環境や人権などに及ぼす影響が問題視されるケースが増えてきました。それに伴い、一企業がCSR活動を行うだけでは、こうした問題に対応しきれなくなっています。
そこで、サプライチェーンに携わる企業が一丸となってCSR調達に取り組む重要性が高まっています。

ただしCSR調達は、「社会的に求められているから行う」という消極的な活動ではありません。CSR調達に取り組むと、以下2つのメリットを期待できます。

  •  調達活動に伴うリスク(強制労働への間接的な関与によるイメージ低下など)の回避
  •  競合との差別化や対外的なイメージアップによる事業の成長

大きなメリットが期待できるため、積極的に取り組む意義が大きい活動であるといえるでしょう。

※参考:一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン「CSR調達入門書

CSR調達の実施に向けた手順

CSR調達の手順を解説します。

Step1:基準の明確化

はじめに、CSR調達の基準を明確化します。調達業務・プロセスを分析し、「どのような基準でCSR調達を行うべきか」を考えます。CSRの範囲と主に考えられる基準は以下のとおりです。

CSRの範囲主な基準
人権・労働
  • 児童労働や強制労働の禁止
  • 人種差別の禁止
自然環境
  • CO2の排出量削減
  • 生物多様性の保全
その他
  • 法令遵守
  • 社会貢献活動の実施

 

Step2:目的・目標の決定

明確化した基準を踏まえて、CSR調達を行う目的や達成したい目標を決定します。一般的に、目的に関しては長期、目標に関しては短〜中期の目線で設定します。簡単な例は以下のとおりです。

  • 目的:自然環境や人権への悪影響を最小限に抑えたサプライチェーンを実現する
  • 目標:調達先に対して、排気ガスの流出量を抑えるように指導する

Step3:実施計画の策定

具体的なCSR調達の実施計画を策定します。例えば「排気ガスの流出量削減」が目標の場合、「いつまでに、どの部門で、どのくらいの量を削減するか」を明確にします。

現実性の高さを重視するとともに、調達を実行する人材が一目見て理解できる内容とすることがポイントです。

Step4:第三者目線による計画の確認

計画を策定したら、第三者目線で以下の項目をチェックします。

  • 実現可能かどうか
  • 自社の経営理念やビジョン、事業内容と乖離していないか
  • 社会にとって本当に望ましい調達計画かどうか

Step5:CSR調達の実施と情報開示

実施計画に沿って、CSR調達を実施します。実施に際しては、計画を「CSR調達ガイドライン」という分かりやすい形で言語化し、社内外の利害関係者(従業員や取引先、投資家など)にも発信します。

CSR調達ガイドラインの策定

CSR調達ガイドラインとは、CSR調達の取り組みをまとめた資料であり、実施計画を対外的に公開する目的で作成します。内容に関する明確な決まりはないため、他の企業が公開しているガイドラインを参考にして作成されることが一般的です。

ガイドラインを公開することで、顧客や投資家などに対して、自社が倫理的な視点でCSRの活動を行っていることを訴求できます。また、取引先への共有により、CSR調達をサプライチェーン全体で推し進めることにもつながります。

なおCSR調達ガイドラインの内容は、調達の進捗や利害関係者からの反応などを踏まえて、定期的に見直しや改善を図ることが重要です。

CSR調達の実現に向けた2つのポイント

CSR調達を実現させる2つのポイントを解説します。

ポイント1:業務の効率化

1つ目は業務の効率化です。CSRの視点が加わるため、一般的な調達業務とは対応が異なってくるケースが大半です。慣れない業務を行うことで生産性が下がったり、業務量が増えたりと、現場の負担増加につながることもあります。

こうしたリスクを軽減するためにも、CSR調達に関わる業務の効率化が不可欠です。具体的には、調達業務の可視化による無駄の削減や、ITシステムの導入による作業の自動化などが効果的でしょう。

ポイント2:倫理的な視点での調達

CSR調達では、企業視点でやりたいことを行うのではなく、倫理的な視点で社会問題の解決に貢献する活動を行うことが重要です。なぜならば、企業視点で進めてしまうと「社会的責任を果たす」というCSRの大前提からズレた調達内容となり、投資家や顧客からの支持を得られない事態となり得るためです。

倫理的な視点での調達を実現するには、前述のとおり第三者視点でのレビューが不可欠です。また、取引先や顧客、従業員などの意見を積極的に取り入れる姿勢も重要となるでしょう。

CSR調達の事例

最後に、CSR調達の取り組みを実践している企業の事例を2例紹介します。

ナブテスコ株式会社

2020年12月、機械メーカーのナブテスコはCSR調達方針を公表し、サプライチェーンマネジメントの強化を宣言しました。この方針では、倫理や環境など計7つの範囲にわたって、取引において遵守すべき事項が詳細に定められています。

同社の特徴的な点としては、グループを横断する体制を構築してCSR調達を推進していることが挙げられます。また、取引基本契約書にCSR調達方針の要素を含めたり、サプライヤー向けに説明会を開催したりと、全社を挙げて徹底的にCSR調達方針の浸透を図っている点からも、お手本になる事例だといえます。
※参考記事:
ナブテスコ株式会社「強靭なサプライチェーンの構築

帝人株式会社

総合化学メーカーの帝人では、2007年5月という早い時期にCSR調達ガイドラインを制定し、実行に移しています。本ガイドラインでは、環境保全や安全衛生など、計10個の領域において、取引先に求める取り組み事項を定めています。

特徴的な点としては、世界中の取引先から大量調達を行う企業ならではの視点が盛り込まれていることが挙げられます。例えば、「6.安全保障輸出管理」では、違法な輸出や技術の提供を防ぐための対策が求められています。また、「8.地域社会への配慮」では、あらかじめ地域住民との対話を行った上で、事業活動を行うことが推奨されています。

なお同社では、アンケート調査により、各取引先におけるCSR調達の実践度合いを詳細に調査しています。ガイドラインを公表し、その達成度合いを数値化して評価している点は参考となるでしょう。

※参考記事:
帝人株式会社「サプライチェーンのサステナビリティ

まとめ

CSR調達の取り組みにより、取引先が人権侵害や自然環境の破壊といった問題を起こすリスクを軽減できます。それにより、自社に風評被害などの悪影響が生じるリスクも軽減します。また、社会的に意義のある活動を行うことで、競合企業との差別化につながり、中長期的には企業価値の向上も実現可能です。

本記事を参考に、攻めの姿勢でCSR調達に取り組んでみるとよいでしょう。


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