• 作成日 : 2022年11月8日

子会社も内部統制の対象範囲に含まれる!重要性や不正事例、評価の実施手順を解説

内部統制を整備するにあたって、対応がどうなるのか気になるのが子会社の扱いです。J-SOX法では子会社も内部統制の適用範囲とされており、親会社と同様に実施することが求められています。

本記事では、子会社の内部統制の重要性や海外子会社に対する内部統制の手順について詳しく解説します。子会社の内部統制について理解したいという方は、ぜひ参考にしてください。

子会社も対象となる「内部統制」とは

子会社も内部統制の対象範囲に含まれる!重要性や不正事例、評価の実施手順を解説

会社法における内部統制とは、条文で以下のように示されています。

取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(会社法第362条4項6号

わかりやすく言い換えると、本社に関係するすべての会社が倫理規範や定款、関係する法令各種に違反していないかを照らし合わせて業務遂行する体制確保のことです。会社が事業を円滑に運営するために遵守すべきルール、と理解しておけばよいでしょう。

内部統制の構成要素は、以下の6点です。

  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動
  • 情報と伝達
  • モニタリング
  • ITへの対応

同じ内部統制には、金融商品取引法におけるものも存在します。評価項目の説明や両者の違いは以下の記事を参考にしてください。

関連記事:会社法における内部統制とは?対象企業や罰則規定・裁判例を紹介

 

J-SOXの適用範囲

子会社も内部統制の対象範囲に含まれる!重要性や不正事例、評価の実施手順を解説

J-SOXは別名「内部統制報告制度」といいます。金融商品取引法における内部統制に準じて定められたもので、上場企業に対して事業年度ごとに内部統制報告祖の提出が義務付けられています。これを金融商品取引法の中で制度化したのがJ-SOXです。

対象範囲は次のとおりです。

  • 子会社
  • 関連会社
  • 在外子会社(海外にある子会社)
  • 外部委託先

企業の事業拡大に関係しているすべての会社が対象だと思っておきましょう。実施をするのは本社であるため各対象範囲で何かをする必要はありません。ただし、在外子会社だけは所在国に同種の精度が存在する場合、その制度を活用できる規定が設けられています。

在外子会社に関する内部統制の手順は「海外子会社に内部統制の評価をおこなう手順」で詳しく解説しています。

子会社の内部統制の評価をおこなう重要性

子会社も内部統制の対象範囲に含まれる!重要性や不正事例、評価の実施手順を解説

子会社の内部統制の評価をおこなうのにはれっきとした理由があります。それは法律で義務と定められているためです。

親会社が子会社を管理するのは一見すると当たり前のように思われますが、子会社や関連会社への管理が徹底されていなかったために起きた不祥事も少なくありません。内部統制は義務と定められているものの、万が一、子会社が問題を起こした場合、責任を問われるのは親会社です。

東京商工リサーチが発表した「2020年度全上場企業『不適切な会計・経理の開示企業』」では、もっとも多い発生理由が子会社・関連会社とされています。


(引用:東京商工リサーチ「2020年度全上場企業『不適切な会計・経理の開示企業』」)

単純なヒューマンエラーによるミスもカウントされているものの、なかには故意に不適切な会計処理を行ったケースも存在しています。これらの問題を引き起こさないためにも、親会社は子会社や関連会社の内部統制を徹底する必要があるのです。

子会社に多い不正・不祥事の事例


子会社に多い不祥事は以下の3つです。

いずれの不正・不祥事も、発生すれば親会社に影響を及ぼします。なぜそういったことが起こるのか、親会社へのダメージはどの程度なのかを見ていきましょう。

残業代の不払い

子会社では従業員の残業時間の管理が不十分であったり、担当者の知識・経験が不足していたりすることがあり、それが残業代の不払いや過重労働を招くことがあります。

特に残業代不払いの場合、従業員からの請求に遅延損害金と呼ばれる支払いが遅れた分で発生する利息を上乗せされる可能性もあるのです。また親会社も監督不行き届きなどの責任を負う場合があり、子会社だけで解決する問題に収まらなくなってしまうこともあります。

ハラスメント

ハラスメント、特に職場でのパワーハラスメントからの保護も子会社で起こりうる不祥事のひとつです。2020年6月に施行された「労働施策総合推進法(パワーハラスメント防止法)」では企業がパワーハラスメントを防止する義務を負うとしています。

中小企業は2022年4月以降に義務となりましたが、中小企業でも子会社や関連会社を保有しているケースは少なくありません。ハラスメントは社会的に問題視されており、子会社が問題を起こすと親会社にも悪いイメージがついてしまうでしょう。

粉飾決算

赤字決算を黒字決算のように見せる粉飾決算も、子会社や関連会社で発生することが多い不正だと言われています。主な原因としては社内のチェック体制が機能していない、親会社による管理不足・圧力があるでしょう。

粉飾決算は、関係する取締役が民事・刑事の両方で罪を問われる犯罪行為です。子会社はもちろん、親会社にも影響は波及し、取引先や銀行からの信頼を失ってしまう可能性もあります。

 

海外子会社に内部統制の評価をおこなう手順

子会社も内部統制の対象範囲に含まれる!重要性や不正事例、評価の実施手順を解説

J-SOXの適用範囲」のなかでも触れましたが、子会社といっても在外(海外)子会社は国内子会社と評価手順が異なります。もし海外子会社に日本で適用されている内部統制の評価を実施する場合、以下の手順で実施するようにしましょう。

  1. 内部統制のスケジュールを作成する
  2. 内部統制文書のフォーマットを作成する
  3. 内部統制報告制度について説明する
  4. 統制内容を調査する
  5. 業務内容を調査する
  6. 内部統制の3点セットを作成する

それぞれ詳しく解説します。

 

①内部統制のスケジュールを作成する

海外子会社に内部統制の評価を実施する場合、国内子会社とは別でスケジュールを作成する必要があります。理由は時差や物理的距離によるもので、国内子会社のようにやり取りがスムーズにいかないことも珍しくありません。

また、国内子会社と海外子会社で休暇の日程や取得方法に違いがある場合もあります。これらの違いを考慮したうえで、海外子会社専用の内部統制スケジュールを作成しましょう。

 

②内部統制文書のフォーマットを作成する

内部統制を実施すると決まったら、次に行うのが文書の作成です。3点セットと呼ばれるもののほかに、評価調書のフォーマットを作成しましょう。

フォーマットで使用する言語は担当者が理解できるものを選び、かつ新任の担当者が理解できる簡単な文書にするのがベストです。同時に作成する必要のある評価調書も同様ですが、評価項目については監査法人と話し合っておかなければなりません。どの程度の評価項目を設けるのかも含めて相談しておくと良いでしょう。

 

③内部統制報告制度について説明す

内部統制を実施すると決まった段階で、海外子会社には内部統制報告制度を実施する旨を説明します。現場への教育はもちろんの事、子会社の管理職も含めて、内部統制の意義も含めて説明しなければなりません。うまく伝達できていないとミスコミュニケーションの原因となることも考えられます。

ただし、無理やりにでも進めるのはよくありません。海外子会社の所在地によって、慣習やルールがあるためです。内部統制を実施するのは子会社であるため、彼らが主体となって構築できるよう理解を求める必要があるでしょう。

 

④統制内容を調査する

海外子会社への説明と同意が得られれば、構築へと移ります。この過程で実施するのが統制内容の調査です。

現地の慣習やルールによって柔軟に対応する必要がある一方、J-SOXにおいて決められている評価項目も存在しています。ベストな進め方としては親会社から海外子会社に対して質問書を送付し回答をもらい、すり合わせを行うのが良いでしょう。

 

⑤業務内容を調査する

現地の海外子会社がどのような業務内容なのかを調査することも④と同時に行いましょう。海外子会社が作成している規定やマニュアルを取り寄せ、3点セット作成に必要な業務内容がどれにあたるのかを確認します。その後、質問書を送付し、すり合わせを行うと良いです。

具体的には、販売プロセスで使用するシステムや決済方法が挙げられます。規定やマニュアルではわからない場合も、質問書に記載して送付するようにしてください。

 

⑥内部統制の3点セットを作成する

内部統制を導入する最後のステップが3点セットの作成です。3点セットの内容は次のとおりです。

  • 業務フローチャート
  • 業務記述書
  • RCM

現地特有の業務内容がある場合も珍しくなく、内部統制の構築に必要な工程では最も時間を費やすステップでもあります。調査が不十分なまま3点セットを作成してしまうと、想定外のトラブルにつながることも考えられます。親会社が必要に応じてサポートをしつつ、品質の高い3点セットを作成しなければなりません。

子会社の内部統制を外部委託するのもひとつの手

子会社も内部統制の対象範囲に含まれる!重要性や不正事例、評価の実施手順を解説
子会社の内部統制を外部委託するケースも考えられます。本来であれば、親会社が子会社の内部統制を徹底できるのがベストではあるものの、管理体制の構築や人員確保が難しい場合も珍しくありません。

そういった場合、内部統制を外部委託するのもひとつの方法です。社内のリソースを気にすることなく、子会社の内部統制実施・管理ができるようになるでしょう。

ただし、あくまでも外部委託となるため、委託先の企業の理念や方針が浸透しない場合も考えられます。結果として内部統制がきちんと機能せず、不正や不祥事につながってしまいかねません。外部委託する場合は、実績を考慮して委託先を選出するようにしましょう。

まとめ

子会社の内部統制は親会社の責任で実施されることがわかりました。企業としては別の存在であっても、法律で義務付けられていることであり、事業拡大のためには子会社・関連会社を含めたグループ全体での内部統制が必須です。海外子会社であっても同様のことが言えるため、内部統制を構築する場合は親会社が率先しつつ、子会社の事情も考慮しながら時間をかけて構築するようにしましょう。

よくある質問

子会社で起こる不祥事には何がある?

子会社や関連会社で起こりがちな不祥事には、主に以下の3つがあります。

  • 残業代の不払い
  • ハラスメント
  • 粉飾決算

子会社における内部統制の重要性は?

子会社による不正や不祥事を回避し、事業拡大をグループ全体で推進するために内部統制は存在しています。法律で義務付けられており、親会社は子会社の内部統制も監督しなければなりません。監督が行き届いていない結果、不祥事の多くが子会社や関連会社で発生したとする統計も出ています。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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内部統制を構築する5ステップを解説

監修:中川崇

田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。