- 更新日 : 2024年7月17日
SDGs融資とは?金融機関が取り組みを進める背景やESG・SDGs融資商品を紹介
SDGs達成に向けた融資は、持続可能な開発目標を経済的に支援する重要な手段です。
世界がSDGsの推進に注目する中、日本においても、個人やビジネス界におけるSDGsへの関心が高まっています。
この動きに伴い、SDGsの目標達成に取り組む企業への融資を前向きに行う金融機関の数も増加しているのが現状です。
そこで本記事では、SDGsに貢献する融資の仕組みやその影響力について、具体的な事例を交えて詳しく解説します。
目次
SDGs融資とは
SDGs融資は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の達成に貢献する企業やプロジェクトに対して、金融機関が提供する特別な融資サービスです。
SDGs融資商品は大手銀行から地方銀行までさまざまな金融機関が提供しており、融資条件とは異なります。
基本的にSDGs融資を行う際、金融機関は、貸出対象となる企業やプロジェクトがSDGsのどの目標に貢献しているかを評価します。
貢献度が高いほど、より好条件での融資が可能になる場合もあり、これにより企業はSDGsに沿った経営をより積極的に進めるインセンティブを得ることが可能です。
企業がSDGsに取り組むメリット
そもそもSDGsとは、2015年に国連によって採択された、2030年までに達成を目指す国際的な目標のセットです。
これらは、環境の保護、貧困の撲滅、平和と正義の促進など、広範な社会経済的課題に対処することを目指しています。
帝国データバンクによる「SDGs に関する企業の意識調査(2023年)」によると、SDGsに積極的な企業は増加傾向で2022年、2023年には全体の5割を超えました。
出典:帝国データバンク|SDGs に関する企業の意識調査(2023年)
企業がSDGsへ取り組むことには、主に以下のメリットがあります。
- 企業イメージの向上
- 従業員のモチベーションの向上
- 経営方針等の明確化
- 採用活動におけるプラスの効果
- 売り上げの増加
参照元:帝国データバンク|SDGs に関する企業の意識調査(2023年)
上記のメリットは帝国データバンクによる「SDGs に関する企業の意識調査(2023 年)」で実際に効果を実感する企業が多かった項目です。
企業は必要な資金を調達し、持続可能な事業運営を実現できる一方、金融機関はSDGsの達成に貢献することで社会的責任を果たし、その評価を高めることができます。
金融機関によるSDGsの取り組みが進む背景
帝国データバンクによる「SDGsに関する企業の意識調査(2023年)」によると、SDGsへ特に積極的に取り組んでいる業種は金融機関です。
出典:帝国データバンク|SDGs に関する企業の意識調査(2023年)
近年、投資家や顧客は企業の収益性だけでなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みも投資判断の重要な要素と考えるようになってきました。
ESG経営に積極的な企業は、持続的な成長が見込めるとして評価が高く、資金調達において有利な条件を得られる可能性があります。金融機関も、こうした投資家や顧客のニーズに応えるため、SDGsに貢献する企業への投資や融資を積極的に進めているのです。
金融機関のSDGs融資商品
SDGs融資商品は大手銀行から地方銀行までさまざまな金融機関が提供しており、主に以下の商品があります。
- 東邦銀行「ESG/SDGs貢献型融資」
- 三井住友銀行「ESG/SDGs推進分析融資/シンジケーション」
- みずほ銀行「SDGs推進サポートローン」
- りそな銀行「サステナビリティ・リンク・ローン」
- 愛知銀行「あいぎんSDGs・ESG応援ローン」
- 北日本銀行「SDGs経営サポートローン」
- 千葉銀行「ちばぎんSDGsリーダーズローン」
- 京都中央信用金庫「中信SDGsサポートローン」
- 東京信用保証協会「SDGs推進応援保証制度」
詳しく解説します。
東邦銀行「ESG/SDGs貢献型融資」
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を組み合わせた総称です。
ESG融資は、持続可能な社会構築を目指す活動へ資金を供給する取り組みです。
企業にとっては、ESG/SDGsへの取り組みが経済的利益に直結することを意味し、金融機関としては、投資のリスクを低減しつつ、社会的価値の高い活動を支援することで、そのブランド価値と顧客の信頼を高められます。
対象 | ESG・SDGsに取り組んでいる法人または個人事業主 |
資金使途 | 事業に必要な運転資金・設備資金 |
融資金額 | 3億円以内 |
融資形式 | 証書貸付 |
融資期間 | 保証貸:7年以内 有担保貸:20年以内 |
融資金利 | 銀行所定の金利(連動金利) ※通常金利より最大0.2%の引下げ |
保証・担保 | 審査により必要となる場合あり |
※2024年4月時点
参照元:東邦銀行|ESG/SDGs貢献型融資
三井住友銀行「ESG/SDGs推進分析融資/シンジケーション」
SMBCグループのシンクタンク、日本総合研究所と当行が共同で開発した基準に従い、顧客のESG/SDGsへの取り組み及び情報公開の様子を評価し、その進展をサポートするための資金提供サービスです。
この融資サービスは、CSRレポートなどにてESG関連情報を公開している法人顧客を対象としています。
資金を調達した後、ESG/SDGsに関する取り組みと情報公開の程度を「診断シート」にまとめて提供し、これを基に今後の取り組みをより一層推進してもらえるように支援します。
対象 | ESG関連情報を公開している法人 |
資金使途 | 要確認 |
融資金額 | 要確認 |
融資形式 | 要確認 |
融資期間 | 要確認 |
融資金利 | 要確認 |
保証・担保 | 要確認 |
※2024年4月時点
参照元: 三井住友銀行「ESG/SDGs推進分析融資/シンジケーション」
みずほ銀行「SDGs推進サポートローン」
みずほ銀行「SDGs推進サポートローン」は、SDGsへの取り組みに既に着手している、あるいはこれから取り組む予定の顧客を対象に、資金の調達を支援するとともに、その活動を後押しする融資制度です。
対象 | SDGsに取り組んでいるまたは、今後取り組む意向のある、以下の条件に合致するお客さま。 以下のすべての資料をみずほ銀行に提出し、SDGsに取り組むことが確認できること ①SDGs宣言書 ②SDGs対応度 簡易診断ツール |
資金使途 | 原則1億円以上 |
融資金額 | 証書貸付・手形貸付 |
融資形式 | 運転資金、設備資金(SDGs投資に限定いたしません) |
融資期間 | みずほ銀行所定の審査により決定します。 |
融資金利 | みずほ銀行所定の審査により決定します。 |
保証・担保 | みずほ銀行所定の審査により決定します。 |
※2024年4月時点
参照元: みずほ銀行「SDGs推進サポートローン」
りそな銀行「サステナビリティ・リンク・ローン」
りそな銀行「サステナビリティ・リンク・ローン」は、顧客の事業運営が環境や社会、経済へ与える影響を踏まえ、それに沿った「サステナビリティ戦略」に基づく具体的な目標設定を行い、その達成具合によって融資の金利などの条件が変動する融資手段を指します。
対象 | 要確認 |
資金使途 | 長期事業資金 |
融資金額 | 50億円 |
融資形式 | 要確認 |
融資期間 | 7年 |
融資金利 | 要確認 |
保証・担保 | 要確認 |
※2024年4月時点
参照元:りそな銀行
愛知銀行「あいぎんSDGs・ESG応援ローン」
愛知銀行「あいぎんSDGs・ESG応援ローン」は、愛知銀行が提供するSDGsの融資制度です。
この支援は、独立行政法人国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」で選ばれた顧客や働き方改革に取り組む事業者などに向けて、その事業の資金を援助することを目的としています。
対象 | 要確認 |
資金使途 | 運転資金、設備資金 |
融資金額 | 3億円以内 |
融資形式 | 手形貸付 |
融資期間 | 運転資金:5年以内 設備資金:10年以内 |
融資金利 | 当行所定の金利 ※ 最大▲0.2%優遇いたします |
保証・担保 | 当行所定 |
※2024年4月時点
参照元:あいぎんSDGs・ESG応援ローン
北日本銀行「SDGs経営サポートローン」
「きたぎんSDGs経営サポートローン」は、企業が「きたぎんSDGs経営サポート」を用いて自社の現状を分析し、重要な課題を選定し、目標を設定するプロセスを経た後に提供される金融援助です。
この支援の目的は、企業が追求する理想の姿に一歩近づくための成長を促すことにあります。
対象 | サステナビリティ・リンク・ローン型:「サステナビリティ・リンク・ローン原則」及び「環境省サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」に整合するSPTsを設定し、株式会社ちばぎん総合研究所から第三者評価を受けた(受けることが可能な)法人 グリーンローン型:「グリーンローン原則」及び「環境省グリーンローンガイドライン」に整合し、環境改善効果をもたらすグリーンプロジェクトを実施し、株式会社ちばぎん総合研究所から第三者評価を受けた(受けることが可能な)法人 |
資金使途 | サステナビリティ・リンク・ローン型:運転資金または設備資金 グリーンローン型:原則、設備資金(グリーンプロジェクトに対する資金に限定) |
融資金額 | サステナビリティ・リンク・ローン型:100百万円以上 グリーンローン型:100百万円以上 |
融資形式 | 要確認 |
融資期間 | サステナビリティ・リンク・ローン型:SPTsと整合する期間内 グリーンローン型:グリーンプロジェクトと整合する期間内 |
融資金利 | サステナビリティ・リンク・ローン型:当行所定利率 グリーンローン型:当行所定利率 |
保証・担保 | 要確認 |
※2024年4月時点
参照元:北日本銀行「SDGs経営サポートローン」
千葉銀行「ちばぎんSDGsリーダーズローン」
千葉銀行「ちばぎんSDGsリーダーズローン」は、サステナビリティを重視する経営を推進する事業者向けの融資制度であり、事業の規模や実情に応じた適切な目標を定めることが可能です。
ちばぎんSDGsリーダーズローンは、「サステナビリティ・リンク・ローン型」と「グリーンローン型」の2種類あります。
対象 | サステナビリティ・リンク・ローン型:「サステナビリティ・リンク・ローン原則」及び「環境省サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」に整合するSPTsを設定し、株式会社ちばぎん総合研究所から第三者評価を受けた(受けることが可能な)法人 グリーンローン型:「グリーンローン原則」及び「環境省グリーンローンガイドライン」に整合し、環境改善効果をもたらすグリーンプロジェクトを実施し、株式会社ちばぎん総合研究所から第三者評価を受けた(受けることが可能な)法人 |
資金使途 | サステナビリティ・リンク・ローン型:運転資金または設備資金 グリーンローン型:原則、設備資金(グリーンプロジェクトに対する資金に限定) |
融資金額 | サステナビリティ・リンク・ローン型:100百万円以上 グリーンローン型:100百万円以上 |
融資形式 | 要確認 |
融資期間 | サステナビリティ・リンク・ローン型:SPTsと整合する期間内 グリーンローン型:グリーンプロジェクトと整合する期間内 |
融資金利 | サステナビリティ・リンク・ローン型:当行所定利率 グリーンローン型:当行所定利率 |
保証・担保 | 要確認 |
※2024年4月時点
参照元:千葉銀行「ちばぎんSDGsリーダーズローン」
京都中央信用金庫「中信SDGsサポートローン」
京都中央信用金庫「中信SDGsサポートローン」は、SDGsの達成に向けて取り組まれる会社を支援する融資制度です。
お客さまの事業や地域での「SDGs(持続可能な開発目標)の実現」や「健康経営への取り組み」に関する資金用途に、幅広く活用できます。
対象 | 当金庫の定める融資基準を満たしている方。 当金庫の会員資格のある方。 |
資金使途 | お客さまの事業・地域等の「SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取組み」または「健康経営に向けた取組み」に対する資金・関連資金及びその借換資金 |
融資金額 | 個別の事案に応じて対応 |
融資形式 | 証書貸付方式 |
融資期間 | 個別の事案に応じて対応 |
融資金利 | 下記①~③のいずれかに該当する場合、当金庫所定の利率より最大年0.2%優遇します。 ①「京都中信SDGs宣言サポート」宣言書を策定された事業者 ②「健康経営優良法人」の認定を受けられている事業者 ③「全国健康保険協会」に「健康づくり宣言」を行い、受付された事業者 ※上記のいずれにも該当しない場合、当金庫所定の利率より最大年0.1%優遇します |
保証・担保 | 必要に応じて不動産、動産担保等 |
※2024年4月時点
参照元: 京都中央信用金庫「中信SDGsサポートローン」
東京信用保証協会「SDGs推進応援保証制度」
東京信用保証協会「SDGs推進応援保証制度」は、SDGs(持続可能な開発目標)を支持し、社会的な問題解決や将来の社会構築に積極的に取り組む意欲がある、あるいはすでに取り組みを行っている中小企業を支援するための低保証料の保証制度です。
対象 | 貧困をなくそう 飢餓をゼロに すべての人に健康と福祉を 質の高い教育をみんなに ジェンダー平等を実現しよう 安全な水とトイレを世界中に エネルギーをみんなにそしてクリーンに 働きがいも経済成長も 産業と技術革新の基盤をつくろう 人や国の不平等をなくそう 住み続けられるまちづくりを つくる責任つかう責任 気候変動に具体的な対策を 海の豊かさを守ろう 陸の豊かさも守ろう 平和と公正をすべての人に パートナーシップで目標を達成しよう |
資金使途 | 運転資金・設備資金 |
融資金額 | 3,000万円 |
融資形式 | 証書貸付(融資期間が 1 年以内の場合は手形貸付も可) |
融資期間 | 7年以内(据置期間 1年以内を含む) |
融資金利 | 金融機関所定利率 |
保証・担保 | 必要に応じて |
※2024年4月時点
参照元: 東京信用保証協会「SDGs推進応援保証制度」
SDGs融資を利用する際の注意点
SDGs融資を受ける際には、通常の融資と同じく毎月返済が求められる点を十分に理解しておく必要があります。
SDGs融資は、あくまで借りたお金となるため、受けやすいことをいいことに返済のことを考えずに融資を受けすぎてしまうと、使いすぎてしまい返済できなくなってしまう恐れがあります。
特にSDGs融資では、持続可能な開発目標達成に向けたプロジェクト資金として使われることが多いため、計画的な資金使用と確実な返済戦略が求められるのです。
まとめ
SDGs融資は、企業が持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与するための重要な財政支援手段です。
日本国内でもSDGsへの関心が高まり、多くの金融機関がこれを支援するための融資プログラムを提供しています。
これらの融資は、受ける企業がSDGsの具体的な目標にどのように貢献しているかに基づき、条件が決定されます。
企業にとっては、SDGsに取り組むことでブランド価値の向上が期待できるでしょう。
よくある質問
SDGs融資とは?
SDGs融資とは、持続可能な開発目標、つまりSDGsの達成に貢献する企業やプロジェクトに対して、金融機関が提供する特別な融資サービスのことです。
金融機関がSDGsに取り組む理由は?
投資家がESG経営に取り組む企業を重視する傾向があり、金融機関としてもそのような企業を支援するために、SDGsに貢献する企業への投資や融資を積極的に進めています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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