- 更新日 : 2024年7月17日
ISO取得のプロセスや費用などの基礎知識を解説
ISO規格とは、国際標準化機構が認定している規格であり、取得によって対外的な信用度の向上や社内意識の向上といった効果が見込めます。取得に際しては、体制の構築費や審査費、維持費といったコストがかかります。
本記事では、ISO規格の定義や取得のメリット・プロセス・費用、ISO規格を取得した企業の事例を解説します。
目次
ISOとは
はじめに、ISOの定義や規格取得のメリット、主要な規格を解説します。
ISOの定義
ISOとは、”International Organization for Standardization”の略称であり、スイスのジュネーブに本部がある「国際標準化機構」を表します。国際標準化機構では、国際的に通用する規格(製品やマネジメントシステムのルール・仕組み)を制定しています。
一般的には、ISOが制定している国際規格のことを「ISO規格」と呼びます。
ISO規格取得のメリット
ISO規格は、ISOに加盟する国々による投票で決定される、国際的に権威のある規格です。ISO規格を取得することは、権威ある機関から製品製造や事業運営に関してお墨付きを得たことを意味するため、対外的な信用度アップが期待できます。
「世界的に通用する品質の製品を製造している」、「国際的な基準に基づいて事業を運営している」といった印象を持ってもらうことで、新しいビジネスチャンスの創出につながります。また、顧客や取引先から積極的に自社製品を選んでもらいやすくなるでしょう。
加えて、社内の意識や業務管理体制の向上も期待できます。
主要なISO規格・適用分野
ISOの規格は多岐にわたり、規格によって適用分野が異なります。
以下の表で、主要なISO規格および適用分野をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ISO規格の名称 | 適用分野 | 目的 |
ISO 9001 | 品質 |
|
ISO 14001 | 環境 |
|
ISO 27001 | 情報セキュリティ |
|
ISO取得およびその後のプロセス
ISO取得〜取得後のプロセスをくわしく解説します。
手順1:事前準備の実施
はじめに、事前準備として下記を実施します。
- 取得するISO規格の決定
- ISO規格の適用対象(事業や商品など)の決定
- ISO取得の手続きを担う担当者や事務局の立ち上げ
- 経営者から従業員に対するキックオフ宣言
また、必要に応じて「外部コンサルティング業者への依頼」や「ISOに関する社員教育」なども実施します。
手順2:マネジメントシステムの構築
本格的にISO規格取得の手続きを開始します。
はじめに、ISO規格の要求事項をクリアするために、マネジメントシステムを構築します。
システム構築にあたっては、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 組織風土や業務環境、情報などの現状を把握し、課題やリスクを洗い出す
- 現状の課題を踏まえた計画や目標を設定する
- 社内の規定や文書などを精査し、不足点や改善すべき部分を見直す
- ISO取得に向けて、各従業員の権限を明確化する
手順3:マネジメントシステムの運用
実際に運用を開始します。基本的には、認証審査予定日から起算して、90日前までに運用を開始します。
この際、事前の計画や書類に沿って運用することが求められます。そのため、運用の記録は正確かつ抜け漏れなく実施することが重要です。
手順4:内部監査・マネジメントレビューの実施
ISO取得を実現するには、マネジメントシステムが有効に働くことが不可欠です。それを確認するために、概ね認証審査予定日の60日前までに内部監査を実施することが一般的です。
内部監査では、マネジメントシステムが計画通りに運用されているか、想定していた効果が表れているかなどをチェックします。想定外の問題が見つかった場合には、計画や書類などの見直しと改善を図ります。
手順5:取得審査の実施およびISO取得
ISOの審査機関から、2段階にわたる取得審査を受けます。一次審査では、「二次審査を受ける水準に達しているのか」がチェックされます。
二次審査では、「ISO規格にふさわしい運用がされているのか」という視点でチェックが行われます。
ふさわしいと認められると、ISO規格を取得できます。不適合であると判断された場合は、どれだけ基準から離れていたかによってその後の手続きが異なります。
基準から大きく外れていると判断された場合は、マネジメントシステムの再構築および再審査が求められます。一方、軽微であるとされた場合は、概ね1ヶ月以内に是正措置を実施し、問題ないと判断されればISO規格を取得できます。
手順6:ISO規格取得後の運用・管理
ISO規格取得後は、継続的にマネジメントシステムを運用していきます。また、ISO規格を継続して保有するためには、原則として年1回の「維持審査」や3年に1回の「更新審査」を受ける必要があります。
ISO規格取得にかかる費用
ISO規格の取得にかかる費用の種類や相場に加え、コストを削減する方法を紹介します。
ISO規格取得にかかる費用の種類・相場
ISO規格の取得にかかる費用は、大きく「マネジメント体制の構築費」、「認証審査費」、「維持費」の3種類に大別されます。各費用の概要と相場は以下のとおりです。
費用の種類 | 概要 | 相場 |
マネジメント体制の構築費 | マネジメントシステムに対応するための体制を確立する費用、コンサルティング費、研修費 |
|
認証審査費 | 認証機関にISO規格の審査を依頼する際にかかる費用 | 50〜200万円 |
維持費 | 定期審査や更新審査にかかる費用や社内体制の維持コスト |
|
コスト削減の方法
ISO規格の取得費用を削減する方法としては、主に下記が効果的です。
1. コンサルタントや審査会社を選ぶ際、複数の企業を相見積もりする
2. 必要な部分のみをコンサルタントに依頼する
依頼するコンサルタントや審査会社によって報酬の金額・体系が異なるため、相見積もりすることで安い業者を選ぶことが可能です。ただし、サービスの質も企業によって異なるため、コストだけでなく評判や実績も加味した上で選定することが望ましいです。
また、必要な部分(または期間)のみをコンサルタントに依頼することで、コンサルタントに支払うコストを抑制できる場合もあります。
ISO取得の事例紹介
株式会社シャトレーゼは、洋菓子屋アイスクリームなどの製造・販売を事業としています。同社では、自社独自の品質マネジメントシステムである「CQM」の運用や定着および進化を図る目的で、ISO9001の規格を取得しました。
規格取得により、CQMが社内に浸透し、以下の成果を得られたとのことです。
- クレーム件数がCQM開始前と比較して30%減少
- 社内教育体制の整備実現
- 実践的な是正措置への転換(レベルアップ)
同社は、今後もISO規格の有効活用により、企業体質を強化していくとのことです。
※出典:日本品質保証機構(JQA)「株式会社シャトレーゼ様(ISO 9001認証取得) | ISO認証事例一覧
まとめ
今回お伝えしたメリットや事例からも分かるとおり、ISO規格を取得することで、「対外的な信用力の向上」や「社内体制の強化」といった効果が期待できます。その副次的な効果として、売上拡大やクレーム減少といった実益も見込めます。
製品開発の品質を高めたい企業様はもちろん、中長期的に企業価値の向上を目指している経営者の方にとっても、ISO規格の取得は非常に有効な戦略だといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
管理部門・管理課とは?業務内容や必要なスキルを徹底解説
管理部門は、人事・経理・総務・法務などの業務を担当し、組織の経営資源を管理・最適化する役割を担います。 本記事では、管理部門・管理課の業務内容や職種別の役割、必要なスキルなどについて解説します。 管理課(管理部門)とは|企業の経営資源を管理…
詳しくみる会社法における内部統制とは?対象企業や罰則規定・裁判例を紹介
内部統制とは、企業の不正などを未然に防ぎ、業務の適正を確保する社内体制をいいます。同じ内部体制という言葉でも、会社法と金融商品取引法での意味が違うため注意しなければなりません。 本記事では内部統制をおこなう目的や内部統制を構成する要素、内部…
詳しくみる内部統制のモニタリングとは?種類や意味、具体的なチェックポイントを紹介します
内部統制が有効に機能しているかどうかを監視するプロセスをモニタリングと呼びます。内部統制の要素のひとつでもあり、企業経営において欠かせない重要な役割でもあります。内部統制が義務化されている企業もありますが、義務化されていない企業が整備・運用…
詳しくみる外部監査とは?IPOで実施することや流れ・スムーズに行うポイントを解説
「外部監査」とは、一般的には独立した監査機関が企業の財務報告の正確性と公正性を評価するプロセスです。この監査は、企業が公開している財務諸表が、適用される会計基準に従って適切に作成されているかどうかを検証します。 外部監査は、投資家やその他の…
詳しくみる指名委員会等設置会社とは?各委員会の権限やメリット・デメリットを解説
指名委員会等設置会社とは、指名委員会や監査委員会、および報酬委員会を設置する組織形態です。業務執行と経営監督が分離している点が特徴であり、委員の過半数を社外の取締役とする必要があります。 コーポレートガバナンスの強化につながるというメリット…
詳しくみるCOSOの内部統制フレームワークとは?要素や原則・活用例をわかりやすく紹介
内部統制の準備を進めている担当者は、COSOの内部統制フレームワークを参考にしたいと考えているのではないでしょうか。COSOのフレームワークを活用すれば、業種形態を問わずに内部統制を構築することが可能です。また、フレームワークに沿って内部統…
詳しくみる