• 更新日 : 2024年10月25日

マネーフォワードクラウドPresents & money ランサーズ株式会社執行役員コーポレート担当兼テックエージェント事業本部長の 小沼志緒さんに聞く!(前編)

さまざまな企業のリーダー、ファイナンス部門の方にフォーカスを当て、その仕事や企業の成長戦略の裏側、その仕事術に迫ります。今回お話を伺ったのは、ランサーズ株式会社 執行役員 コーポレート担当 兼 テックエージェント事業本部長の小沼志緒さん。仕事を依頼したい企業とフリーランスをオンラインでマッチングする日本最大級のサービス「Lancers」を運営されています。前編ではランサーズの事業について、そして大学生時代からずっと目指していたCFOとしてのIPO前後の小沼さんの奮闘についてお話を伺います。

プロフィール

小沼志緒
2005年より株式会社日興シティグループ証券、株式会社リクルート経て2017年11月、ランサーズに参画。2018年4月より執行役員に就任。2021年4月よりグループのランサーズエージェンシー株式会社の代表取締役社長も務める。趣味は子育て。

聞き手: 瀧口友里奈
経済キャスター/東京大学工学部アドバイザリーボード
東京大学卒。セント・フォース所属。「100分de名著」(NHK)、「モーニングサテライト」(テレビ東京)、「CNNサタデーナイト」(BS朝日) 、日経CNBCの番組メインキャスターを複数担当。ForbesJAPANで取材•記事執筆も行い、多くの経営者を取材。東京大学大学院在学中。

フリーランスと企業をオンラインでつなぐ

瀧口 まずはランサーズ株式会社がどんな会社か教えてください。

小沼 ランサーズ株式会社はフリーランスと企業をオンラインでつなぐプラットフォームを運営している会社です。具体的には正社員などで副業をされている方、本業のフリーランスを仕事とされている方、そしてそういった方に対して仕事を依頼したい企業様をマッチングして、オンライン上で仕事を完結するというのが特徴です。代表の秋好陽介が学生時代にフリーランスとしてそういった形で仕事を受けていた経験がありましたので、それをもとにして始まったサービスです。

瀧口 企業側はどんな仕事を依頼することができるんですか。

小沼 分かりやすいものでは企業様やサービスのロゴですね。それを作成したいという企業様がその仕事を出されたら、フリーランスの方が自分でロゴを作って応募するような形で、その中から企業様が一番いいものを選んで仕事を発注いただくサービスになります。

瀧口 デザイナーの方などが多いということですかね。

小沼 そうですね。様々な方に登録いただいていますが、最近ではデザイナー、エンジニア、マーケター、ディレクターという職種が多いです。

瀧口 ちなみに代表の秋好さんは学生時代になんの仕事をフリーランスでされていたのでしょう。

小沼 エンジニアです。

瀧口 企業とエンジニアをマッチングしてくれるプラットフォームがあったらいいのではというところから始まったと。

小沼 当時、秋好は学生でフリーランスでした。その後、一度新卒で会社に入社をして、そこで実際自分がフリーランスの時に培ったネットワークで優秀な個人の方を知っていたので、そういった方に自分も仕事を発注したいと思ったところ、やはり大企業だと個人への発注はNGだというような話になって、そういう社会を変えたいという強い思いを持って起業したと聞いています。

瀧口 フリーランスの方を取り巻く状況は創業された当初と比べてかなり変わったと思いますがその変化をどうご覧になっていますか。

小沼 やはりコロナの中で環境が大きく変わったと思っています。その前からも少しずつフリーランスの人口は増えていましたが、コロナによってオンラインで働くのがわりと当たり前になったことと、在宅が増えた中でそれぞれの正社員で働いていらっしゃる方も少し可処分時間が増え、副業をしやすい環境になり、副業も含めたフリーランスの人口がとても増えています。

瀧口 私自身もフリーランスのキャスターなのでとても共感するところが大きいです。

小沼 ありがとうございます。

オープン、フラットな社風で「101をやり切る」

瀧口 実際にランサーズの社内の雰囲気はどのような感じですか。小沼さんはとても凛々しく、カチッとしていらっしゃる印象を受けています。

小沼 ありがとうございます。私、多分、だいぶ浮いている方で(笑)。全体的には服装もカジュアルな人が多いですし、カルチャーもオープン、フラットというものをとても大事にしているので、非常に若々しい感じの雰囲気です。

瀧口 ミッションに「個のエンパワーメント」ということを掲げてらっしゃるんですよね。
社員も個性的、パワフルな方が多いんですか。

小沼 そうですね。採用するときの基準も、ミッションに共感しているかということを大事にしています。それに共感した上で入社する方が多いので、自分らしい働き方をしたいとか、自己実現をしたいと思っている社員はとても多いと思っています。また、フリーランスの方とわれわれのプラットフォームを運営している中で、自分たちもプラットフォームを使って一緒に仕事をする機会もとても多いです。そういった働き方にとても感化されて、たまに自分で卒業してフリーランス化される方も多いです。こういう環境化で社員としては、フリーランスの方にある種、誇れるような働き方をわれわれとしても実現していこうということを大事にしています。たとえば、大事にしている行動指針で言うと「101をやり切る」というものがあるんですが、フリーランスの方ってなかなか簡単に仕事いただける状況ではない。それで、クライアントの方からいただいた発注を、継続的にお取引できるようにしたいのでいただいた依頼に対して101やらないと、次の仕事がいただけないので、そういったことを当然フリーランスの方がされているんだから、われわれ社員も101やらないとダメだよねっていうことを大事にしています。

瀧口 素晴らしいですね。ほんとうに利用者の方に寄り添ってらっしゃる。

小沼 「フリーランス第一主義」というのを、昔、社是的に持っていて、最近はむしろ、それは当然だから言わなくていいよねとなっているんですが、やはりプラットフォームを運営しているので、クライアントもフリーランスもいらっしゃいますが、どちらかというとやはりもともと出自がフリーランス側なので、フリーランスの方に対していかに仕事をご提供できるかということを大切にしています。

大学生時代から目指したCFOと第二子出産

瀧口 そして小沼さんの肩書は「執行役員コーポレート担当」。これはどのような仕事なのでしょう。この番組ではCFOの方にご出演いただくことが多いですが・・・

小沼 4年ぐらい前からCFOを担当させていただいていて、当時で言うとIPOもありましたので、全体の管理体制を作ったり、資金調達のプランニング、またステークホルダーの皆様とのコミュニケーションなどを担当させていただきました。それで直近、その肩書として、事業部の責任者という役割も増えていく中で少し役割を限定して今は担当させていただいています。たとえばIRと経営企画の担当執行役員が今年度から配置されていて、IR関連のコミュニケーションは全てそのものに任せています。

瀧口 小沼さんがこのランサーズにジョインする経緯について伺いたいんですが、ランサーズにジョインされたのは2017年。ランサーズに来られる前はどんなことをされていたのでしょうか。

小沼 私、大学生の頃からCFOを目指していました。

瀧口 そうなんですか!

小沼 大学の商学部のゼミで先生が「君たちCFOを目指しなさい」ということをおっしゃっていたこともあって(笑)、まあとても真面目な学生だったので、じゃあ目指そうみたいな軽いノリだったんですけれども。どうしたらそれが実現できるかなというのを学生時代から就職活動の過程で考えていて。それでファーストキャリアとしては一番鍛えられる環境に行きたいと思って投資銀行に行きました。投資銀行で4年ぐらい仕事をして、ちょうどリーマン・ショックとかもそのタイミングであり、かなり金融機関の環境が悪化したこともあったので、ちょうどいいタイミングだなと思って事業会社に転職をしました。リクルートにご縁があって転職させていただいて、そこで財務部門で資金調達や、リクルートさんのIPOも担当させていただいて8年ぐらい経験を積ませていただきました。で、その後は、自分自身がちょうどその頃、第二子を出産したこともあって、もう一段成長したいなと思い、いろいろ模索をしました。それで、私は外に出てスタートアップでCFOになりたいからそのためにずっと修行をしてきていたのですが、まあ、むしろCFOになって経験を積んでいく方が、結果として実はなりたいCFOに近づくのではということをちょっと大胆不敵にも考えまして(笑)、それでご縁あってランサーズにジョインをしました。

瀧口 リクルートの時に担当されていらっしゃったのはどんな仕事だったんですか。

小沼 財務部門でしたのでリクルートの資金調達の企画から実行ですとか、あとM&Aも当時から積極的でしたので、M&Aをした会社のPMIなども担当していただきました。

瀧口 経験豊富な小沼さんが、たくさんのスタートアップがある中でどうしてランサーズにジョインされたのでしょう。

小沼 当時、子供を産んだばかりだったので、なるべくこう、子供に誇れるサービスをしている会社がいいなというのはありました。それで、かつ、ランサーズのサービスを聞いていく中で、オンラインで、インターネットの力を通じてどこででも働けるという、やはり育休をしていた自分からするとその体験がすごい、素晴らしいことだなと思って。仕事って自己実現のとても重要な一つの形だと感じていたので、そういったサービスを提供しているランサーズに是非ジョインをして、微力ですけど、尽力したいと思ってジョインしました。

瀧口 やはりお子さんっていうところが大きかったんですね。いろいろ社会を見る視点とか視野っていうのも変わってきますかね。

小沼 何よりも働くことの大切さ、といいますか、いろいろなママさんがいらっしゃるので、一人の意見ではありますが、私個人としてはやはり働くことは自己実現だなというのを働けない環境にいたときにとても感じまして。働かないと社会とのつながりが得られないということを強く感じました。

IPOに向けて“記憶を失うぐらい”の日々

瀧口 そして、小沼さんが2017年にジョインされてから2年後、2019年12月に当時のマザーズ市場に上場、IPOされました。この2年間というのはどんな2年間だったのか、IPOまでの日々を振り返ってみていただきたいんですが。

小沼 ほんとうに記憶を失うぐらいですね(笑)

瀧口 (笑)お忙しかった……

小沼 大変な日々がありまして。もう覚えているのは苦労の連続だったということ。自分が体験したことがない領域も含めて、すべてに対して責任を負っていましたので、挑戦をたくさんさせていただいた時期だったと思っています。

瀧口 記憶がよみがえる範囲で(笑)特に大変だった思い出というのは。

小沼 ちょっと抽象化してお話をすると上場審査の過程があるんですが、その審査プロセスにおいて、東証や証券会社からいろいろなご質問をいただく期間があります。その質問が届いて2週間ぐらいで全部整えてお返しをするんですけれども、そのプロセスで、時間が限られる中でいろいろな課題を瞬時に解決しないといけないっていうのが無茶苦茶大変でした。

瀧口 そこはスピードが求められてくるっていうところなんですね……

小沼 短い期間でしっかりとその課題はクリアしていないといけない。その課題があったらダメじゃないかって言われるので、いかにこう“テストに落ちないようにしていくか”みたいなところが緊張の連続でした。

瀧口 その中で小沼さんご自身が工夫されたりとか、その壁をこう乗り越えたというポイントだったりコツとかってありますか。

小沼 当然ながら一人では決してその課題は解決できないので、なるべく関係者を瞬時に巻き込む。ただ、単に巻き込んで「この課題解決して」と言ってもみんな他の仕事が忙しいのでなかなかそれはできない中で、たとえばこういうやり方だったらできるんじゃないかとか、そういうのを自分も頭も手も動かしながら相談して少しずつ解決していったみたいなところですかね。

瀧口 周りのチームの力をいかに巻き込んで育てていくかというところがCFOとしては大事ということですかね。

小沼 そう思います。会社はいろいろなことをしているので、一人の力でできることってほんとうに限られているので、チームをどう作って、チームにしっかりと情報を共有して、それで、それぞれの人たちの特性を生かしながら、それぞれが少しずつ成長していくということをやっていかないと、なかなか会社としてできることも増えないので、それは、CFOに限らないと思いますがとても大事だと思っています。

瀧口 IPOから今もう3年と数カ月経っていますが、IPO前と後で社内やご自身の中で変化はありましたか。

小沼 あまりないと思っていたんですが、実際上場すると会社の知名度がとても上がったり、採用をしたいという時にエントリーしてくださる方々の層が少し変わったりという変化がありました。私自身も今回のように取材の声がかかるということもあり、やはり社会的な立場は少し変わったのかなと思っています。

瀧口 社会の公器としての芽が出てくるということですかね。

小沼 もともとプラットフォームを運営していたので、社会的に公器なんだからというところは意識はしていたんですが、それがより一段上がったというところです。

瀧口 この3年ぐらいでご自身の内面での変化は何かありましたか。IPOと直接関わっている部分でなくてもいいんですが。

小沼 今、質問をいただいて気づいたんですが、IPOを目的に入社してそこから2年頑張っていたこともあるので、一つそれをクリアしたことによって、自分の中で一つやり遂げたという思いはとてもあったと思います。その中で、じゃあ次のチャレンジをしたいというところもあって、事業側の責任者をやらせていただくというオファーをいただいて、それに飛びついたところはあると思います。

瀧口 大学時代からCFOを目指されてきたということでいうと、CFOとしてこのIPOを達成したというのは大学時代の思いを成就したという感じがしますが、如何ですか。

小沼 まだまだだと思っています(笑)。たまにそう言っていただくこともありますが、自分自身としてはIPOの過程もそうですし、今も含めてできないことがたくさんあると思っています。先ほどもお伝えしたとおりCFOの経験を積むことで、ほんとうになりたいCFOを目指すというところは変わってなくて、会社を成長させる、そのドライブをできるようなCFOになるために、今も修行を重ねている、必死で頑張っています。

瀧口 会社を成長させることができるCFOが小沼さんにとっての理想のCFO、定義ということなんですかね。

小沼 CFOとしてという意味で言うとたとえば、『V字回復の経営』を書かれた三枝匡さんの本を読んで、ああ、CFOってすごいなと思ったんですが、まあ、再生寄りのところをやると活躍が目立つんですが、必ずしもそこを目指しているというよりは、経営者の一角として事業を成長させる、会社を大きくできる、それを役割としてはCFOとして実現するというのを目指しています。

会社の器を決めるのは管理部門の器

瀧口 先ほどIPOまでの記憶がなくなるぐらい大変だったとおっしゃいましたが、この財務の仕事のたいへんさはあってもやはり楽しさが小沼さんの中でたくさんあるのかなと思いますが、この仕事の醍醐味というのはどういうところですか。

小沼 どうしても管理部門の仕事は事業部門の仕事に比べると少し日陰の存在って言いますか、会社の屋台骨を支えるところが多いので、正直報われないと思うこともよくあります。ただ、なんだかんだこの仕事を続けているのは、やはり会社の器を決めるのはわれわれ管理部門のスタッフの器であると思っていて。会社を大きくさせようと思ったときに、たとえば管理がガタガタだと、なかなかそこに向かえないので、自分たちはそういう土台を作っているし、自分たちが頑張ってできることが増えれば会社としてできることも増えるということを強く感じているので、とても意味のある仕事だと思っています。

瀧口 大学時代に出会われた先生はどうしてみんなにCFO勧められたんですか。

小沼 企業価値分析のゼミだったんですが、それこそ伊藤レポートを書かれた、伊藤邦雄先生の弟子の加賀谷哲之先生のゼミでした。やはり企業価値を上げていくことが、ある種企業価値分析の前提みたいなところがありまして。で、それをあなたたちは学ぶんだから、その学んだ知識を活かして日本の企業を大きくさせていく、日本経済を大きくしていこうというようなことが前提としてありました。

瀧口 それが小沼さんの原点、原体験みたいなところで、今もそこの理想を目指していらっしゃるっていうことですよね。

小沼 そうですね、もう道は遠いですけど、頑張っています(笑)。

瀧口 いままで多くの方にこの番組に出ていただいて、学生時代から最初からCFOを目指していましたという方って、いらっしゃらないので、この理想に向かって一直線に進まれてこられた小沼さんがまぶしいなと思いながら、お話伺っていたんですが。

小沼 いえいえ(笑)。

IPOをするという覚悟

ママネーフォワードクラウドPresents & money ランサーズ株式会社 執行役員 コーポレート担当 兼 テックエージェント事業本部長の 小沼志緒さんに聞く!(前編)

瀧口 今後、IPOを考えている企業の財務担当者、CFOの方へのメッセージ、伝えておきたいことがありましたら教えていただけますか。

小沼 私は前職のリクルートと今のランサーズと2回IPOを経験しているんですが、両方でIPOを経験した中で感じていることは、IPOした会社は、やはり毎期、毎クォーター、成長と利益を出すことをコミットしてそれを実現するっていうことが求められます。それがなかなか難しいことだと思っていまして。そういう期待ですよね、当然そうなるよねという。IPOした会社に求められる難しい期待を背負ってIPOしたいのか。それよりも自分たちはある種、自由の中で自分たちが目指すスピード感の中で成長を目指した方が、自分の会社としてはいいのではないかという、どちらを選ぶのかというのを経営陣で話し合って、覚悟を決めた上でIPOした方がいいなっていうのは思います。

瀧口 するかしないかという選択、どうしてその選択をするのかというところをきっちりと詰めておく必要があると。

小沼 はい、あると思います。

瀧口 どうしてそう感じられたんですかね。

小沼 先ほど言った通り、クォーターごとに結果を出さないといけないというところで、たとえば投資をしようと思ったら、一時は赤字になりますよね、と。赤字をして2年後ぐらいにはきっと利益は増えるんですが。では、それをやるかやらないかというのがIPOしている限りとても気になるわけです。クォーターごとに黒字で安定していければ、特に誰にも責められないんですが、赤字になるとかなり株主の皆様からも心配されます。

瀧口 必要な投資だとしても、その場が赤だということですね。

小沼 はい。それは正しい説明責任ではあるんですが、コストというか、対話という時間をかけないとできないというところは制約としてはあるかなと思っています。

瀧口 その責任を感じられているからこそ、そこはしっかりと議論してから進んだ方がいいという、そういうメッセージですかね。

小沼 はい。そう思います。

お話は後編に続きます。
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