• 作成日 : 2023年11月9日

財務管理とは?目的や円滑に行うためのポイントをわかりやすく解説

財務管理とは、経営を安定させ、事業を成長させるために、資金や資産をきちんと管理することです。財務管理を怠ると、お金が不足したり、無駄に多くの借金をしたりしてしまうリスクが高まります。

本記事では、財務管理の概要や業務内容、円滑に行うためのポイントを解説します。本記事を読むことで、財務管理の業務内容や円滑に行うポイントを理解でき、企業の財務管理に役立てられるでしょう。

財務管理とは

財務管理とは?目的や円滑に行うためのポイントをわかりやすく解説
財務管理とは、企業が資金を効果的に管理・運用し、健全な経営状態を維持することです。

具体的には、資金の調達や投資、現金管理、リスク管理などを含んでおり、良好な財務管理は、資本の最適な利用、リスクの最小化、および利益の最大化を目指しています。

本章では、財務管理の目的や財務会計管理会計との違いを紹介します。

財務管理の目的

財務管理の目的は会社に必要なお金を集め、うまく使って利益を上げ、会社の価値を上げることです。

財務管理を行わないと、経営資金が足りなかったり、過度な借入を行い不適切な資金調達を行ったりする可能性があります。

そのため、会社のリスクを管理することも大切で、資金不足を避けるためや、災害時の備えとしてのお金の確保も目的の一つです。

利益を出す計画を立てるだけではなく、キャッシュフローを把握することも重要であり、会社を成長させて長く続けるためには、きちんとした財務管理が求められます。

財務会計との違い

財務会計とは、企業の財務状況や業績を数値で示し、株主や債権者に対して報告するためのシステムです。

具体的な業務内容としては、取引の記録や財務諸表の作成(損益計算書貸借対照表など)、外部監査の対応などがあります。

一方で財務管理とは、企業の資金の調達や運用、予算の策定、リスクの管理など、経営資源を最適に活用し企業価値を向上させるための活動を指します。

目的は、資金の適切な運用や企業の成長と持続性を確保することです。

双方の違いは、財務会計は「報告」に重点を置き、外部に対して社内の状況を伝えるのに対して、財務管理は「経営」に焦点を当て、未来を見据えた戦略的な判断や行動の指針を考えます。

管理会計との違い

管理会計と財務管理の違いは、対象と目的です。

管理会計とは、企業内部の経営者や従業員向けに、経営の意思決定や計画・評価のための情報を提供する会計のことです。

業務内容としては、製品の原価計算や予算策定、業績評価、将来の予測など、経営戦略の策定と実行をサポートする情報の提供などがあります。管理会計は経営者や従業員に内部の情報を伝えて、より良い経営を目指します。

一方で財務管理の主な目的は、企業の資金を適切に調達し運用し、経営資源を効率的に活用することで、企業価値の最大化を追求することです。

財務管理は会社のお金の流れやリソースの適切な使い方を中心に、会社の健全な経済状態と成長をサポートします。

財務管理の業務内容

財務管理とは?目的や円滑に行うためのポイントをわかりやすく解説
本章では、財務管理の業務内容は主に以下の5つです。

財務管理はいくつかの業務に分かれており、目的が異なっているため、それぞれの特徴を解説します。

決算書の作成

決算書は、1年間の会社の経営成績や末日の資産や負債の状況などを示す書類です。

書類を確認することで、会社がうまくやっているのか、出資者のお金が正しく使われているのかがわかります。

特に、「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」「損益計算書」の3つは、会社の財務の健康状態を知るための大切な資料です。

書類の種類概要
貸借対照表企業の資産・負債・純資産の状態を示している書類
損益計算書特定の期間における企業の収益と費用を示し、利益または損失がわかる書類
キャッシュ・フロー計算書営業活動・投資活動・財務活動の3つのカテゴリにわけられ、現金等の動きがわかる書類

新しくお金を借りるときに、金融機関が会社を信用するかの基準にもなります。

決算書はたくさんの書類やデータをまとめるので、早めに準備しておくとスムーズです。

財務分析

財務分析とは、決算書を詳しく見て企業の状態を評価することで、経営の良い点や直すべき点が明確になり、企業の強みや弱みがわかります。

財務分析は、以下5つの手法で行います。

財務分析の手法概要
収益性分析企業の収益を生み出す能力や実績を評価するための方法。収益性分析は企業の実績や能力を数値的に捉えるのに役立ちます。
安全性分析企業の財務的な健全性やリスクを評価するための方法。企業が負債や他の金融的義務を期限通りに支払う能力があるかどうかを中心に分析できます。
生産性分析企業の資産や資本をどれだけ効果的に活用して収益を生み出しているかを評価するための方法。資産や資本に対する収益を生み出せるかどうかがわかります。
効率性分析企業の運営の効率性を評価するための方法。企業が資源や投資をどれだけ効率的に活用して収益を上げているか、コストをコントロールしているかを評価するのに役立ちます。
成長性分析企業の成長のペースや将来の成長の可能性を評価するための方法。成長性を分析することで、競争力を持っているのか、成長が持続的かどうかを理解できます。

財務分析の目的は、現在の企業の状態をしっかりと理解し、将来の動きを予想して、最善の決定をくだすことです。

資金管理

資金管理は、事業で使う資金の調達と運用の仕組みで、資金計画と資金統制の二つに分けられています。

資金計画とは、未来の収入や支出の予測を立てることです。また資金統制は、計画通りにお金を確保する活動のことです。

資金計画をしっかりと行えば、銀行融資や株式の発行で資金を集める手段が広がります。

企業を安定的に運営し、成長させるためにも資金管理は欠かせません。

利益管理

利益管理は、利益を計画し、収入と支出のバランスを整える活動です。利益計画と利益統制の二つに分けられます。

利益計画では、経営者の考えや方針に基づいて売上を予測し、どれだけの利益を目指すのか計画を立てます。一方で利益統制は、計画した利益と実際の利益の違いをチェックする作業のことです。

計画通りで進んでいなければ、各部門の社員に目標をしっかり達成するよう動機づけるための指示やアドバイスを行います。

予算管理

予算管理は、企業が利益の目標を達成するために予算をしっかりと監視・調整することです。

予算は大きく、売上予算や原価予算、経費予算、利益予算の4つに分けられます。
それぞれの特徴を下表にまとめました。

予算管理の種類概要
売上予算特定の期間における企業の予想される売上高や販売量を計画するもの。
原価予算特定の期間における企業の予想される仕入原価や原材料費を計画するもの。
経費予算売上予算は、特定の期間における企業の予想される人件費や広告宣伝費などの経費を計画するもの。
利益予算予想される売上から原価や経費を差し引いた期間内の利益を計画するもの。

事業を始める前に、売上やかかる経費を予想し、予算として設定するのが目的です。

財務管理でよくある問題

財務管理とは?目的や円滑に行うためのポイントをわかりやすく解説
財務管理でよくある問題は、主に以下の3つです。

  • 流動性の問題
  • 過度な借入
  • 不適切な投資判断

⚫︎流動性の問題
資金不足や未収入金の増加により、企業が短期的な支払い義務を果たせなくなる場合に起こります。在庫管理の最適化やクレジットポリシーの見直し、短期的な資金調達策の導入といった対応が必要です。

⚫︎過度な借入
企業拡大や設備投資などのために多額の借入を行い、返済負担が重くなることが原因です。そのため、借入先や条件の選定を慎重に行い、利益を再投資して自己資本を増やす方法を考える必要があります。

⚫︎不適切な投資判断
過度な楽観主義や市場調査の不足などが原因で起こります。投資の前に十分な市場調査やリスク分析を行い、多角的な意見を取り入れ、偏った判断を避けることが大切です。

財務管理を円滑に行うためのポイント

財務管理とは?目的や円滑に行うためのポイントをわかりやすく解説
財務管理を円滑に行う際には、部署間の連携強化や財務管理システムの活用などがポイントとなります。

本章では、財務管理を円滑に行うポイントを5つ紹介します。

  • 部署間の連携体制を強化する
  • 資金繰り表を活用する
  • 財務と経理で担当者を分ける
  • 財務管理システムを活用する
  • 代行サービスを活用する

それぞれ解説します。

部署間の連携体制を強化する

財務管理では、各部署からの正確な情報が不可欠で、企業全体の資金流れや予算を把握するために部署間の連携が必要です。

財務部門は会社の成功のための戦略的な意思決定の中心となり、各部署からの情報を基に正確なデータを作成して情報を共有する役割があります。

収集したデータは慎重に確認しなければならないため、毎月の決算書作成がおすすめです。

財務管理を最適化するためには、部署ごとの情報の壁を取り払い、全体として連携した情報共有の体制を築くことが重要です。

資金繰り表を活用する

資金繰り表の利用は、財務管理を効果的に行うために必要です。

表は企業の収入と支出の動きを時系列で捉えられるため、現金の不足や余剰を早期に把握するのに役立ちます。適切に活用することで、突発的な資金不足を未然に防げます。

資金繰り表は、企業の財務の健全性を維持するための判断基準となり、計画的な資金運用やリスク回避の戦略を実施するうえで、必要不可欠なツールです。

財務と経理で担当者を分ける

財務管理を効果的に進めるためには、財務と経理の役割を明確に分け、専任の担当者を置くことが必要です。

財務と経理は、どちらも金銭に関わる業務でありますが、内容と目的は異なります。

財務は資金調達や適切な投資先の選定、予算管理などの戦略的な判断を必要とする一方、経理は日々の取引の記録や帳簿の整理、決算書の作成など、事務的な作業が中心です。

二つの業務を一人が兼任すると、業務の負荷が増え、ミスのリスクも高まることが考えられます。

財務と経理の業務を明確に区別し、それぞれの専門家に任せることで、より効率的で正確な財務管理を実現でき、企業の成長と安定的な経営のために欠かせません。

財務管理システムを活用する

財務管理を効果的に遂行するためには、最新の財務管理システムの導入が不可欠です。経営環境は複雑で変動が激しいため、従来の手法のみでは財務状況の正確な把握や迅速な判断が難しくなっています。

財務管理システムは自動化されたツールを提供し、データの収集から解析、報告までのプロセスを効率的に行えるのが特徴です。

ツールを活用することで、リアルタイムでの財務状況の監視が可能となり、早急な経営判断を下す際の参考になります。

財務管理システムは、現代の複雑な経営環境での迅速かつ正確な財務判断のための強力なサポートツールで、企業の経営基盤をさらに強化できます。

代行サービスを活用する

財務管理の業務効率を高めるためには、専門の代行サービスも有効です。専門家に任せることで、正確かつ迅速な業務の進行が期待できます。

特に人材リソースに限界のある中小企業など、適切な人材を確保するのが困難な企業は活用するのがおすすめです。

代行サービスを利用すれば、財務業務の精度を上げつつ、企業内のリソースを他の重要な業務に集中させられます。

IPO準備で経理・財務担当者がやること

財務管理とは?目的や円滑に行うためのポイントをわかりやすく解説
IPO準備で経理・財務担当者がやることは、主に以下の二つです。

  • 不明な残高の解消
  • 会計書類の作成

不明な残高がある場合、原因を調べて解決することが大切です。

実際に存在しない資産が記載されていると、企業の実際の価値が低くなる恐れがあるため、過去の記録をチェックして正確に把握することが重要です。

上場企業になると、決算短信有価証券報告書の作成をする必要があります。

決算短信は取引所のルール、有価証券報告書は金融商品取引法に定められたルールに則って作成する必要があるので、まずは各ルールを理解して作成しましょう。

まとめ

財務管理とは企業がお金を効率的に運用し、経営を安定させる活動のことで、目的は資金を効率的に使い、リスクを抑え、利益を増やすことです。どのように資金を集め、どこに投資するか、また、現金の取り扱いやリスクの対応が業務内容となります。

財務管理を円滑に行う際には、部署間の連携体制を強化したり、資金繰り表を活用したりすることで、効率的な管理が可能です。この記事で財務管理の業務内容や円滑に行うポイントを理解し、企業の財務管理の参考に役立てれば幸いです。

よくある質問

財務管理とは?

財務管理とは、企業や個人が資金の運用を行い、経済的な健全さを維持・向上させるための活動のことです。 資金の調達や投資判断、現金の管理、リスクの監視・対応などが業務内容であり、資源を最適に活用し、経済的な目標達成を目指します。

財務管理の業務内容は?

財務管理の業務内容は主に以下の5つです。

  • 決算書の作成
  • 財務分析
  • 資金管理
  • 利益管理
  • 予算管理
財務管理では、部署間の円滑なコミュニケーションや明確な目標設定を行うことが重要です。


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