• 更新日 : 2025年3月19日

監査役は誰がなる?権限・任期・報酬・選任の流れを徹底解説!

監査役の役割は、企業の業務執行が適切に行われているか監視・監督することです。そのため監査役を正しく選任することは、企業の健全な経営に欠かせません。

本記事では、監査役の設置が必要な会社、任期や権限、選任方法などについて詳しく解説します。監査役に求められる人物像や報酬など基本的なポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

監査役とは

監査役は、取締役の業務執行が法令に基づく適切なものかを監視します。監査役を適切に選ぶためには、監査役の定義や業務内容を把握することも大切です。

ここからは、監査役の定義や具体的な業務内容を会社法に基づいて解説します。

監査役の定義

監査役とは、会社法381条第1項により、取締役の職務執行を監査する機関であると定義されています。取締役会の業務執行を独立した立場で監視する役割を担うため、企業が法令を遵守し透明性の高い経営を維持するには欠かせない存在です。

監査役の業務内容

監査役の業務は、業務監査と会計監査の両面を担います。

業務監査は、「適法性監査」とも呼ばれ、取締役の業務執行が法令や定款を遵守し、違法性がないかどうかチェックするものです。会社の経営判断に誤りがないかを確認し、取引先や株主、従業員が不利益を被らないようにするためです。

会計監査では、収支報告書や貸借対照表などの計算書類が適正に作成されているかを監査し、正確な内容であるかどうか判断します。通常は定時株主総会の前に行われます。監査役は監査報告書を作成し、定時株主総会で報告することも業務のひとつです。

なお、非公開会社は定款で定めることによって、監査役の監査の範囲を会計業務のみに限定できます。

監査役の設置が必要な会社

すべての会社に監査役の設置が必要なわけではありません。監査役の設置が必要な会社は、「取締役会設置会社」と「会計監査人設置会社」です。以下、それぞれの会社について詳しく解説します。

取締役会設置会社

会社法327条第2項で、「取締役会設置会社は監査役を置かなければならない」と定義されています。ただし、公開会社でなく、かつ会計参与を置く株式会社は例外として監査役の設置義務がありません。

取締役会設置会社とは、取締役会を設置している会社または、会社法により取締役会設置が義務付けられている会社のことです。取締役会は経営の意思決定を迅速に行うための機関であり、多くの会社で採用されています。

取締役会設置会社に監査役を必要とする理由は、取締役会の意思決定の公正性をチェックし、法令遵守と企業の透明性を確保するためです。

参考:会社法|e-Gov 法令検索

会計監査人設置会社

会社法第327条第3項は、会計監査人設置会社に対して監査役の設置を義務付けています。

会計監査人設置会社は、会計監査人の設置義務が求められる大会社を意味します。会社法上の「大会社」とは、資本金5億円以上または負債額200億円以上のいずれかを満たす株式会社のことです。

ただし、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社は、例外的に監査役を設置できません。

監査役には誰がなる?求められる経験とスキルを解説

監査役につく人に特別な資格は必要ありません。とはいえ、企業が法令を遵守し適切な経営を行っているかを判断する高度なスキルが必要です。

以下、監査役にふさわしいと思われる職種について紹介します。

職種特徴
公認会計士財務諸表を精査・報告する一連の監査業務を独占業務として担い、粉飾決算の防止に貢献できる
税理士税務に関する専門的な知識をもち、企業会計の問題点を的確に判断できる
弁護士法律全般に精通しており、第三者の視点で法令遵守の状況を確認できる
内部監査経験者内部統制やリスク管理の必要性を認識し、内部事情にも精通しているため厳しい視点で改善点を指摘できる

法律や財務・会計の専門知識はもとより、経営に関する知識や責任感の強さを備えている人が監査役に向いているでしょう。

監査役になれない人

会社法第335条第1項、第331条第1項により、以下の欠格事由に該当する人は監査役にはなれません。

  1. 法人
  2. 会社法や一般法人法、金融商品取引法やその他の法律によって罰則や刑に処され、執行後から2年を経過していない者
  3. 2以外の法律や規定に従って禁固以上の刑に処され、執行が終わるまで、または執行を受けなくなるまでの者

また監査役は、監査を行う会社の「取締役」「支配人」「使用人」、その子会社の「取締役」「支配人」「使用人」「会計参与」「執行役」と兼務できないため、注意してください。

監査役の設置ができない会社

すべての会社が監査役を設置する必要があるわけではありません。以下の形態の会社では、監査機能の重複を避けるため、例外的な取り扱いが認められています。

  • 監査等委員会設置会社
    3人以上の取締役で構成される監査委員会が、取締役の業務執行を監査する役割を担うため、監査役は設置できません。
  • 指名委員会等設置会社
    「指名委員会」「監査等委員会」「報酬等委員会」の3つの委員会が、それぞれ取締役の業務執行を監査する役を担うため、監査役の設置は不要です。

監査役の選任|任期や選任方法について

監査役を適切に選任するために、任期や選任手続きについて把握しておきましょう。

監査役の任期

監査役の任期は、原則4年です。

監査役の実効性を高めるため、長期間の任期が設定されており、定款で短縮することも認められません。ただし、非公開会社は、定款に定めることで10年まで延長することが可能です。(会社法第336条第1項、第2項)

監査役の選任方法

監査役を選任するには、株主総会の普通決議で過半数の同意が必要です。

以下、選任のおおまかな流れを解説します。

  1. 監査役候補者を選び、欠格事由がないかチェックする
  2. 現任監査役の同意を得る
  3. 株主総会に監査役選任議案を提出する
  4. 株主総会で決定する

取締役が監査役を選任するためには現任監査役の同意が必要であり、監査役が2人以上いる場合は、過半数の同意が必要です。

最終的に、株主総会出席者の過半数が同意することで監査役が選任されます。(会社法第329条第1項、第343条第1項、第3項)

監査役の登記手続き

監査役の就任が決まったら、登記手続きが必要です。株主総会の翌日を起算日として、2週間以内に管轄の法務局で登記申請をしましょう。必要書類は以下の通りです。

参考:商業・法人登記の申請書様式|法務局

登記手続きの手数料として、登録免許税や印鑑証明代などが必要になります。司法書士に依頼する場合の費用は、一般的には3万円程度でしょう。

なお、監査役選任後に登記を怠った場合、会社法976条第1項第1号により100万円以下の罰金が科される場合もあるため、忘れないように注意しましょう。

監査役の解任方法

監査役の解任は会社法第309条、339条に基づき、株主総会の特別決議によって行われます。出席者の議決権の3分の2以上の同意が必要です。

また解任には正当な理由が求められます。たとえば、監査役が相応の仕事をしないことにより、会社に実質的な不利益をもたらしたケースが該当します。

なお、解任決議に対して監査役が不当であると判断した場合、損害賠償を請求することが可能です。(会社法第309条第2項7号、第339条第2項)

監査役の権限と義務

監査役には、取締役の業務執行を監査するほかにも会社法でさまざまな権限が与えられています。広範な権限と同時に特定の義務を果たすことや、一定の行為を控えることが求められており、権限と義務のバランスで監査役の公正性が保たれる仕組みになっています。

監査役の法的権限と義務とは?

会社法に定義されている監査役の権限と義務は、以下の通りです。

  • 取締役の職務執行を監査し、監査報告を作成する(第381条1項)
  • 取締役へ事業報告を要求し、会社の財産調査ができる(第381条2項)
  • 子会社へ事業報告を要求し、会社の財産調査ができる(第381条3項)
  • 取締役会に出席し、意見陳述をしなければならない(第383条1項)
  • 取締役会の招集請求ができる(第383条2項・3項)
  • 取締役の違反行為の差し止め請求ができる(第385条1項)
  • 取締役と会社との訴訟の際に代表となる(第386条1項)
  • 職務執行に必要な費用を会社に請求できる(第388条)

監査役がやってはいけないこととは?

監査役は、監査する側と監査される側の立場の兼任が禁止されています。具体的には、会社法第335条第2項により、監査役は以下の職務を兼務できません。

  • その会社の取締役・支配人・使用人
  • 子会社の取締役・支配人・使用人・会計参与(法人であるときはその職務を負うべき社員)・執行役

例えば、監査される会社の監査役に就任していながら、子会社の取締役に就任することはできません。このような親子会社間の兼任についてとくに注意が必要です。

監査役の報酬

監査役の報酬は、定款にその額を定めていない場合は、一定のプロセスに沿って決定しなければなりません。ここでは、監査役の報酬の決め方と相場について解説します。

監査役の報酬の決め方は?

監査役の報酬は、定款に定めがない場合は株主総会の普通決議で決定されます。監査役が2人以上いる場合の配分額は、株主総会で総額が設定された後、その額の範囲内で監査役の協議によって決定します。

なお、監査役は報酬について株主総会で意見を述べることが可能です。(会社法第387条)

監査役の報酬が、定款や株主総会の決議により決定することが定められているのは、会社の経営陣に左右されることなく監査役が独立した立場を確保するためです。

監査役の報酬の相場はどのくらい?

2019年実施の日本監査協会「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスにおける実態調査」によると、全体1,780人に対して社内常勤監査役の場合では、1,000万円〜1,250万円未満の範囲の報酬額が20.8%ともっとも多い割合となっています。

また、500万円〜750万円未満では9.8%、750万円〜1,000万円未満では14.2%、1,250万円〜1,500万円未満では15.8%の割合です。

これらを合わせると、500万円〜1,500万円未満の値が全体の60.6%になります。常勤監査役の報酬額の範囲が広いですが、会社の規模の違いを考慮すると500万円〜1,500万円が報酬のおよその相場といえるでしょう。

参考:【アンケート調査結果】「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスにおける実態について」41ページ

監査役の選任方法や任期、資格を理解して適任者を選ぼう

監査役は、取締役の業務執行を独立性を確保したうえで監視・監督する役割を担います。企業の健全な経営を確保するために、適切な監査役を選任することが重要です。

監査役の選任は株主総会で選任され、任期は原則4年とされています。取締役からの独立性を確保するため、正当な理由がない限り任期の短縮は認められていません。

欠格事由や兼任禁止など監査役になれないケースもあるため、候補者選びには注意が必要です。

コンプライアンスや内部統制が重視される中、適切な監査役を設置することは企業の社会的な信頼につながります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事