- 作成日 : 2024年10月21日
IPOにおける内部監査チェックリスト!内部監査の重要性や実施方法も
近年、反社会的勢力に関する問題や長期労働といった労働環境の問題など、コンプライアンスがより厳しくなってきています。
IPOを実現させるためには、会社の内部をしっかりと構築していくことが大切であり、会社を見る目が厳しくなっているからこそ、内部監査が必要です。
本記事では、IPOと内部監査の関係性、内部監査の方法などを解説します。
目次
IPOと内部監査の関係性

IPOを行う際、企業は投資家や規制当局に対して、財務状況や業務プロセスが適切に管理されていることを示す必要があります。
内部監査は、この信頼性を裏付けるための重要な仕組みであり、IPOの成功には重要な要素です。
なぜIPOに内部監査が必須なのか
IPOを行う際、企業は投資家や規制当局に対して透明性と信頼性のある情報を提供する責任があります。
特に会計処理や経営報告における不備は、IPOプロセス全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、事前にこうしたリスクを排除することが求められます。
そのためにも、投資家に対して正確な財務情報を提供し、その情報が適切であることを内部監査が確認することが大切なのです。
内部監査の役割
内部監査の役割は、主に以下の通りです。
- 財務報告の信頼性担保
- 業務プロセスにおけるリスク管理の強化
- 法令遵守の徹底
財務報告は、企業の経営状態や業績を正確に反映した情報であり、ステークホルダーや投資家に対して、企業の透明性と誠実性を示すための重要な手段です。
特にIPOを実現させるのであれば、企業の信頼性の担保が大切であるため、業務プロセスが適切に管理されているか、リスクが正しく認識され、適切な対策が講じられているかを確認する必要があります。
内部監査がない場合のリスク
内部監査がない場合のリスクとして、主に以下の通りです。
- 不正リスクの増加
- IPO審査の遅延や中止の可能性
- 企業価値の毀損
適切な監視やチェックが行われていない環境では、経理の不正操作や不正な取引、虚偽報告などが行われやすくなり、企業の資産が不正に流用されることがあります。
これにより、会社の資金が外部に流出したり、利益が不当に操作されたりする恐れがあり、IPOの実現にも悪影響を及ぼすでしょう。
IPOに向けた内部監査の基本

IPOに向けた内部監査の基本として、主に以下3つの内容を詳しく解説します。
- 監査対象範囲
- 監査の視点
- 監査の実施時期
監査対象範囲
IPOに向けた内部監査の対象範囲は、主に以下の通りです。
- 会計監査
- システム監査
- ISO監査
- 業務監査
- コンプライアンス監査
内部監査の監査対象範囲は、企業の全体的な業務運営を包括的にカバーする広範な領域を指します。
内部監査は、単に財務データや会計に限られたものではなく、企業のあらゆる業務プロセスに対して独立した評価を行い、リスク管理や統制の有効性を確認する役割を持っています。
そのため、監査対象範囲は非常に広く、企業の持続可能性や効率的な運営を支える要素をすべて含むことが求められるのです。
監査の視点
IPOに向けた内部監査で持つべき視点は、主に以下の通りです。
- 適切性
- 実効性
- 合理性
企業は常に競争力を維持するため、無駄を排除し、業務が最適な形で運営されていることを求められます。内部監査は、この点を確認し、業務のフローに不合理な遅延や非効率がないかをチェックします。
実効性とは、企業の内部統制やリスク管理が意図した成果を実際に達成しているかどうかを評価することです。
単に形式的な手続きが整っているだけではなく、それらが実際の運用上でどれだけ効果的に機能しているかが重要となります。
また、合理性とは内部統制や業務プロセスが企業の目的に対して無駄なく効率的に機能しているか、また、リスクやコストに対して適切な対応が取られているかを評価することです。
この視点が欠けると、非効率な手続きや過度のリスク回避が企業の成長を阻害する可能性があります。
監査の実施時期
監査の実施時期については、以下の通りです。
- 1年前:内部監査導入
- 半年前:仮運用
- 1か月前:運用
IPO準備には時間がかかるため、内部監査実務は遅くとも申請する1年前までにはしておく必要があります。
特に上場審査では内部監査の状況、その結果を記載する必要があるため、余裕を持って準備を行い、運用するようにしましょう。
【サンプル】IPOに向けた内部監査チェックリスト

IPO内部監査チェックリストは、主に以下の通りです。
| 監査対象範囲 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 会計監査 | |
| システム監査 | |
| ISO監査 | |
| 業務監査 | |
| コンプライアンス監査 |
会計監査
会計監査の目的は、企業の財務報告が適正であるかどうかを第三者の監査人が確認し、投資家に対して安心して投資できる環境を整えることです。
特にIPOに向けた監査は、通常の会計監査に比べて要求される基準が高く、より厳格な基準が求められます。
| 項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 賃借対照表や損益計算書の内容 | 貸借対照表と損益計算書に計上されている金額と総勘定元帳の残高が合っているか |
| 売掛金、買掛金の残高 | 売掛金と買掛金の残高を、取引先から入手する残高証明書と比較して合っているか |
| 現金、預金、借入金残高 | 現金出納帳の残高と現金が合っているか |
| 経理知識チェック、帳簿とシステム間の連携 | 経理担当者の会計知識があるかどうか 各帳簿組織とシステム間が正しく連携されているか |
| 伝票確認 | 発行されている伝票が、取引にもとづいて正確に作成されているか |
| 勘定科目の確認 | 勘定科目の内容に不明なものはあるか |
| 引当金などの確認 | 引当金が正しく計上されているか |
| 固定資産計上や除去処理の確認 | 取得した固定資産の計上方法が正確に計算されているか |
| 実地棚卸しの確認 | 棚卸が適切に行われているか |
システム監査
システム監査は、財務監査や業務監査と同様に、企業全体の透明性やリスク管理能力を評価する重要な役割を果たします。
特に情報技術が業務の根幹を支える現代の企業においては、システム監査の重要性がますます高まっています。
| 項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 個人情報に関する監査 | 個人情報取得の目的が明確に定義されているか |
| 情報システムの有効性 | 導入した情報システムは目的と合っているか |
| 情報システムの可用性 | トラブルが起きても継続的に利用ができるか |
| 情報セキュリティ体制 | 情報セキュリティ基本方針を明確にしているか |
| 外部委託の保守体制 | 委託業務の内容などを定期的に監査しているか |
ISO監査
ISO監査の目的は、企業の品質管理、環境管理、情報セキュリティ管理などの体制が、国際的に認められた基準に合致しているかを確認し、外部ステークホルダーに対して信頼性と透明性を提供することにあります。
| 項目 | チェック内容 |
|---|---|
| EMSの適用範囲 | EMSの適用範囲を明確にし、文書として保管しているか |
| 適用範囲に除外があるケース | 正当な理由が明記されているか |
| 環境方針のトップマネジメント | トップマネジメントが環境方針にコミットしているか |
| 環境方針の入手可否 | 環境方針を全従業員共有しているか |
業務監査
上場企業としての信頼性を市場や投資家に示すために、業務の効率性、リスク管理、コンプライアンスが厳格に管理されていることが求められます。
業務監査の役割は、これらの側面が適切に実行され、持続的な成長を支える基盤が整っていることを証明することです。
| 項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 組織体制 | 組織図や職務分掌書の整備がされているか |
| 業務プロセス | 業務プロセスが文書化されているか |
| 規程・規則 | 規程・規則が整っているか |
| 記録・資料 | 記録・資料の管理がしっかりしているか |
| リスク管理 | リスクを特定・評価しているか |
コンプライアンス監査
コンプライアンス監査の目的は、企業が上場後に求められるコンプライアンス基準を満たしているかどうかを事前に確認し、法令違反や規制違反のリスクを最小限に抑えることにあります。
査を適切に実施することで、企業は信頼性の高い上場を実現し、投資家や取引先に対して確固たる信頼を築くことが可能です。
| 項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 法令遵守 | 最新の法令改正に基づいて対応しているか |
| 社内規則遵守 | 社内規則違反に対する懲戒規定が明確化されているか |
| 業務プロセス | 業務プロセスにおけるコンプライアンスリスクがはっきりしているか |
| 組織体制 | コンプライアンスに関する情報共有の体制がしっかりとできているか |
| 教育・研修 | 教育・研修の効果測定が行われており、改善が図られているか |
IPOに向けた内部監査を成功させるためのポイント

IPOに向けた内部監査を成功させるためのポイントは、主に以下の通りです。
- 内部監査の実施体制
- 監査計画の策定
- 監査結果の報告とフォローアップ
詳しく解説します。
内部監査の実施体制
IPOに向けた内部監査を成功させるためには、まず内部監査の実施体制をしっかりと整えることが重要です。
この体制の確立は、企業のガバナンスや内部統制の整備が上場基準に達しているかを評価し、上場審査をクリアするための基本的な要件を満たすことに繋がります。
例えば、独立した立場と権限を持つ内部監査部門の設置や専門知識と経験を有する人材の確保などが挙げられます。
監査体制の整備は、企業の上場における信頼性や透明性を高めるだけでなく、企業全体の成長を支える重要な要素です。
監査計画の策定
監査計画は、全体の監査業務をスムーズに進行させるための道筋を描くものであり、IPO準備段階での監査業務の核となる部分です。
主にやることとしては、以下の通りです。
- リスクの高い領域を重点的に監査
- 監査資源の効率的な配分
適切な監査計画を策定することで、上場に向けた内部統制やガバナンスの整備が効率的に行われ、企業の透明性と信頼性が強化されます。
監査結果の報告とフォローアップ
監査業務の最終的な目標は、企業が上場の基準に適合しているかどうかを確認し、必要な改善を行うことです。
そのため、監査結果の報告とフォローアップのプロセスを適切に設計・実行する必要があります。
例えば、監査結果に基づく改善策の実施状況の確認や、内部統制システムの継続的な改善などを行うということです。
報告業務やフォロー体制を整備しておくことで、企業全体の透明性と信頼性を向上させられるでしょう。
まとめ
内部監査は、財務報告の信頼性や業務プロセスのリスク管理を強化し、法令遵守を徹底する役割を果たします。
IPOに向けた準備では、会計やシステムなど幅広い分野にわたる監査が必要なため、正確な監査を行うためにも、内部監査チェックリストを活用し、スムーズな監査を行うことが大切です。
企業の透明性や信頼性向上のためにも、ぜひ本記事を参考にしていただき、監査体制を構築できるようにしてください。
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よくある質問
内部監査のチェックリストの作り方は?
内部監査のチェックリストを作成する際には、監査対象の業務やプロセスを十分に理解し、適切な基準に基づいた詳細な項目を設定することが重要です。 作成したチェックリストは一度レビューを行い、実用的で効果的なチェックリストに仕上げましょう。
内部監査に向いている人とは?
内部監査では、業務プロセスやデータを詳細に検証し、潜在的なリスクや改善点を見つけ出す必要があります。 そのため、数字や情報を正確に読み解く能力が必要不可欠です。 分析力が高い人は、複雑な情報を整理し、明確な結論を導き出すことができるため、監査結果を効果的に活用できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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