- 作成日 : 2024年7月29日
三様監査とは?役割の違いや連携の重要性などを解説
現代のビジネスにおいて企業経営の透明性と信頼性を確保することはますます重要になっていますが、「三様監査」は企業経営の健全性を高めるための有力な手法とされています。
そこで本記事では、三様監査の基本的な概念、三者の連携の重要性、そして実際の連携の例について解説します。
三様監査の理解を深めることで、企業経営の信頼性向上とリスク管理の強化につなげましょう。
目次
三様監査とは
三様監査とは以下の3つを指します。
- 監査役監査
- 会計監査人監査
- 内部監査
それぞれ監査の対象や目的は異なりますが、適切な監査と情報提供を行うためにはぞれぞれの連携が必要です。
各監査の立場や役割は異なるものの、会社の健全な成長に寄与するという共通の目的を持っています。
次章でそれぞれについて詳しく解説します。
三様監査の各役割と違い
三様監査における監査の主体や監査対象、観点はそれぞれ以下となります。
監査種類 | 監査役監査 | 会計監査人監査 | 内部監査 |
監査の主体 | 監査役 | 会計監査人(外部の公認会計士や監査法人) | 内部監査室(従業員) |
監査対象 | 取締役の職務執行 | 計算書類(貸借対照表や損益計算書など) | 組織体内の全ての業務活動 |
監査の観点 |
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監査役監査
監査役監査を行う監査役は会社法で定められた役員であり、株主総会で選ばれます。
原則として、取締役会設置会社および会計監査人設置会社は監査役を設置しなければなりません。
監査役監査の目的は、取締役が法令や定款を守りながら職務を遂行しているかを株主に代わって管理監督し、株主の利益を保護することです。
取締役の専横を防止する役割を担っており、職務執行に違法性や不当な行為を発見した場合には、監査役はそれを阻止または是正する責務を負います。
監査役監査の範囲は会社法に基づき、各会社の定款で定められます。監査役設置会社では、「会計監査」と「業務監査」が行われます。
- 会計監査
計算書類およびその附属明細書を監査します。しかし、金融商品取引法上の監査とは異なり、定時株主総会の前に実施される事前監査である点が特徴です。 - 業務監査
適法性監査として取締役の職務執行が法令や定款を遵守しているかを確認します。また妥当性監査として取締役の職務執行が経営方針に適合し、合理的かつ経済的に行われているかを確認します。
会計監査人監査
会計監査人は、会計監査を担当する外部の独立した専門家のことです。会計監査人は会社法によって公認会計士または監査法人でなければならないとされています。
監査対象は計算書類です。
なお会社法では、どの株式会社も定款に定めることで会計監査人を設置できます。また大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社では会計監査人の設置が義務付けられています。
会計監査人の任期は約1年です。特別な決議がない場合は再任されたとみなされ、解任は株主総会の決議で行います。
内部監査
内部監査とは企業内に設置された独立した監査部門が業務の調査・評価を行い、その結果を報告し助言を提供する活動です。内部監査は法的に必須ではない任意の監査ですが、以下の条件に該当する企業には、金融商品取引法や会社法により内部統制が義務付けられており、内部監査の実施が必要です。
- 取締役会設置企業
- 大会社
- 新規上場企業
これらの企業に該当しない場合でも、組織の透明性を高め、社会的信用を向上させるために内部監査を行っている企業もあります。
また、内部監査は企業内部の独立した監査部門が行います。
それぞれの監査は異なる役割を持っており、企業の健全な運営に寄与します。
三様監査における連携の重要性
監査対象の範囲には重複が生じることもあるため、三者の連携が非常に重要です。それぞれの監査計画や結果について定期的に協議し意見を交換することで監査の重複を避け、各業務を効果的に進めることができます。
通常、三者の定期協議は半期ごとの財務諸表監査終了後に行われます。これは、特に会計監査人の財務諸表監査が終了し、監査結果が出るタイミングだからです。
しかし、重大な問題が発生した場合には、臨時に協議の場を設けることもあります。
三者が連携することでそれぞれの監査の効率と有用性が向上し、会社にとって有益な監査が実現します。主体的に動く役割について特に決まりはありませんが、内部監査部門が動くケースが多く見られます。
三様監査の連携における具体例
それでは、三様監査における連携とは具体的にどのようなものなのか、解説します。
監査役と会計監査人の連携
監査役は必ずしも会計の専門知識を持っているわけではありません。そのため、監査役が会計監査人の監査結果の正確性を確認するためには、監査役と会計監査人の連携が不可欠です。
また会計監査人は公認会計士などの外部の専門家であるため、社内情報へのアクセスが制限されることがあります。監査役は、会計監査人が社内で円滑にヒアリングや調査を行えるような環境を整えることが重要です。
さらに、会計監査人と経理および財務部門の間で意見の相違が生じることも考えられます。このような場合、監査役が状況を正確に把握して適切に対処する必要があり、やはり連携が必要となります。
会計監査人と内部監査の連携
会計監査人は経理・財務部門と密接に関わることが多い一方、内部監査部門との関係はあまり深くない傾向があります。しかし、内部監査部門が財務報告に係る内部統制の評価を実施しているケースでは、両者の連携と意思疎通が必要になります。
内部監査は法定監査ではありません。しかし会計監査人が会計報告を行う際に内部監査部門の担当者が出席するなどして接点を持つことが監査の質を向上させる点で有効です。
監査役と内部監査の連携
監査役は取締役の職務執行を監査し、内部統制の整備および運用状況を監視する役割を担っています。
一方で内部監査部門は、内部統制の整備・運用状況を監査します。
そのため、監査役と内部監査部門は、監査領域が重複しないように調整しつつ相互に補完し合うと良いでしょう。
まとめ
三様監査は、各役割に応じた効果的な監査と連携が求められる仕組みです。
課題が発生することもありますが、コーポレートガバナンスの強化において重要な役割を果たしています。会社のリスク管理や迅速な対応には、三様監査による実効性のある監査が不可欠です。
三様監査によるコーポレートガバナンス強化を検討している方は、本記事を参考に体制構築に取り組んでみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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