• 更新日 : 2025年3月19日

福岡証券取引所で上場するメリット4選!基本情報から取り組みまで解説

上場を目指す企業や経営者の中には、上場するのに東京証券取引所と地方証券取引所でするのとのちがいに迷う人も多いのではないでしょうか。その中でも福岡証券取引所は、九州に本社を置く企業や新興企業をメインに上場した例が多いのが特徴です。

この記事では、福岡証券取引所を取り上げ、上場するメリットや審査基準などを解説します。

福岡証券取引所とは

福岡証券取引所とは、福岡県福岡市中央区天神にある九州で唯一の金融商品取引所です。東京証券取引所に対し、名古屋証券取引所、札幌証券取引所と同列の地方証券取引所のひとつで、略して「福証」と呼ばれます。

1949年設立。2000年には新興企業向けの市場であるQ-Boardを開設しました。九州エリアの企業が中心に上場していることが特徴で、本則市場とQ-Boardはそれぞれ上場基準が異なります。

金融商品会員制法人福岡証券取引所
  • 所在地
    福岡県福岡市中央区天神二丁目14番2号
  • 設立
    1949年
  • 取引時間
    前場/9時~11時30分、後場/12時30分~15時30分

福岡証券取引所で上場している企業数は?

福岡証券取引所で2025年1月分時点で上場している企業数は、以下の通りです。

本則市場87社
新興市場21社
特定取引所金融商品市場7社
合計115社

※2025年2月分時点での上場企業数
※銘柄も同数

福岡証券取引所は九州の新規上場企業が多い?

福岡証券取引所は、九州地方に拠点を置く企業の新規上場が多いのが特徴の1つです。背景には2000年の「Q-Basrd」開設があります。

Q-Basrd(キューボード)の対象は九州に本店を有するまたは事業実績や計画を有する企業で、上場審査では上場時見込みの株主数が200人、上場時の純資産が3億円以上、事業を1年以上継続していることなどが条件です。

さらに2024年12月16日には、TOKYO PRO Marketに次ぐ特定取引所金融商品市場であるFukuoka PRO Marketを開設しました。特定取引所金融商品市場とはいわゆるプロ投資家向け市場で、注目の地方証券取引所といえるでしょう。

福岡証券取引所の取り組み

福岡証券取引所の取り組みは主に2つあります。1つは「福岡単独上場会社の会」と呼ばれ、福岡証券取引所に単独上場している企業が作った組織です。もう1つは「九州IPO挑戦隊」と呼ばれ、上場を目指す企業をサポートするプロジェクト組織です。

どちらも企業や経営者、また市場関係者たちが交流できる場を設けることを目的に市場の活性化を図るための催しや投資家に向けたセミナーを積極的に実施しています。

福岡単独上場会社の会

福岡単独上場会社の会、通称「福証単場会」とは、福証に単独上場している企業が作った組織です。1999年から「株式の流動性向上策の協議」や「IR誌の発行」などの広報的活動を実施しています。

九州IPO挑戦隊

九州IPO挑戦隊とは、3〜5年以内に上場を果たす目標を持った企業を対象に、九州の中小・ベンチャー企業IPO支援プロジェクト(QSP)が中心となって、企業の経営力や組織力を集中的にサポートするプロジェクトです。上場を目指す中小企業やベンチャー企業が上場準備を効率的に推進することを目的に2009年7月に作られました。

福岡証券取引所で上場するメリット

上場するだけなら資金調達の円滑化・多様化、企業の社会的信用力と知名度の向上などがメリットとして挙げられますが、ここでは、福岡証券取引所で上場するメリットについてそれぞれ解説します。

上場予定の企業向けIPOサポート

福岡証券取引所では「九州IPO挑戦隊」など上場を目指す企業に対して積極的なサポートが充実していることがメリットの1つです。

上場予定の企業にはIPOチャレンジアカデミーという、上場を予定している企業で、まだ監査法人との契約が未定である企業を対象とした全8回の監査法人監修の挑戦隊独自の特別なプログラムが受講できます。

上場後の個人投資家向けのPRの場の提供

福岡証券取引所では個人投資家向けにPRできる場を設けていることもメリットの1つです。

福岡証券取引所は九州・福岡を中心とした地域経済とのつながりが強く、ローカルメディアや地元証券会社、銀行などとの連携イベントを行うことがあります。これに参加することで、地元の個人投資家層へのリーチを拡大しやすくなります。

低コストで個人投資家向けに直接IRが実施できることも大きなメリットと言えるでしょう。

地方証券取引所で上場するデメリット

福岡証券取引所に限らず、地方証券取引所で上場した場合に考えられるデメリットとはなんでしょうか。東証での上場の違いにも関わる部分になりますが、おもに以下の2つが挙げられます。

東証と比較して少ない出来高

多くの投資家の集まる東京証券取引所と比べて、地方証券取引所はどうしても出来高が少なくなります。

投資家からすると、売買注文が成立しにくく、希望価格が通りにくくなるという流動性リスクが高まるため、投資先として避けるようになります。その結果、企業にとっても資金調達の面で不利となってしまいます。

一方で、地方証券取引所は個人投資家の割合が大きく、地元の企業を応援したいという気持ちから、長期間にわたり株式を保有する長期投資家も多く存在します。このような個人投資家に支えられている場合、出来高の多寡はあまり問題にならないでしょう。

求められる投資家コミュニケーション

投資家とのコミュニケーションもデメリットに感じる場合があります。

機関投資家は会社の業績を重視しますが、個人投資家の場合、会社に求めるものは様々です。時代の変化に伴って、株主の多様化は更に進んだといえるでしょう。

たとえば、会社を応援するファン株主などは、その会社らしさを感じられる情報や取り組みを求めているかもしれません。

従来通りの財務情報の開示だけでは足りず、サスティナビリティなどの非財務情報の開示が求められます。つまり、充実したIRへの取り組みや、投資家との距離感の近いコミュニケ―ションが必要となり、企業にとっては取り組みへの負担が考えられます。

福岡証券取引所の上場審査基準

福岡証券取引所の上場審査基準を整理しましょう。

福岡証券取引所の上場審査は、申請会社の企業グループ(申請会社及びその資本下位会社等)が対象となります。

形式基準及び実質審査基準に基づき申請会社の発行する株券が、上場後において、公正な株価の形成及び円滑な流通の確保が行えるか、または公益又は投資者保護の観点から上場会社としての適格性を有しているかなどを検討し、上場の適否を判断します。

以下では、本則市場とQ-Boardとそれぞれの形式基準と実質基準を解説します。

本則市場

福証一部に上場するためには、さまざまな審査基準があります。下記では形式基準と実施基準でそれぞれの項目を確認しましょう。

形式基準

本則市場における形式基準の審査項目と概要は、以下の通りです。

対象
株主数300人以上
流通株式流通株式数2,000単位以上かつ上場株式数の25%以上、または上場日の前日までに公募又は売出しを1,000単位又は上場株式数の10%のいずれか多い株式数以上を行うこと
上場時価総額10億円以上
売上高
事業継続年数3年以前から株式会社として、継続的に事業活動をしていること
純資産の額連結純資産の額 3億円以上
(かつ単体純資産の額が正)
経常利益の額最近1年間 5,000万円以上
虚偽記載又は不適正意見等
  • 最近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
  • 最近2年間(最近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定の適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
  • 最近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」
登録上場会社等監査人による監査最近2年間の財務諸表等及び最近1年間の中間財務諸表等について登録上場会社等監査人による監査又は期中レビューを受けていること
株式事務代行機関株式事務を本所の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること
単元株式数上場時に100株となる見込みのあること
株式の譲渡制限株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること
指定振替期間指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること

実質基準

本則市場における実質基準の審査項目と概要は、以下の通りです。

(1)企業の継続性及び収益性
  • 事業計画の適切性
  • 安定的な利益計上の見込み
  • 仕入、生産、販売等の事業活動・投資活動・財務活動の状況、主要な事業の前提となる事項の継続性
(2)企業経営の健全性
  • 関連当事者その他特定の者との取引の合理性・妥当性
  • 役員の構成及び兼務の状況
  • 親会社等から独立した経営の確保
(3)企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
  • 機関設計及び監査の有効性
  • 内部管理体制の整備・運用の状況
  • 必要な人員の確保の状況
  • 会計組織の整備・運用の状況
  • 法令遵守体制の有効性
(4)企業内容等の開示の適正性
  • 会社情報の管理・開示の状況
  • 企業内容等の開示の状況
  • 企業グループの実態の開示の状況
  • 親会社等の開示の有効性
  • 開示実績の状況(既上場会社である場合)
(5)その他公益又は投資者保護の観点から本所が必要と認める事項
  • 株主の権利
  • 買収への対応方針導入に関する事項
  • 反社会的勢力関与防止の体制整備
  • その他

Q-Board(キューボード)

Q-Boardの対象は九州周辺に本店を有する企業または九州周辺における事業実績・計画を有する企業です。

上場審査では、上場時見込みの株主数が200人、上場時の純資産3億円以上、事業を継続して1年以上行っていることなどが求められています。

以下では、Q-Boardの審査基準を整理していきます。

形式基準

Q-Boardにおける形式基準の審査項目と概要は、以下の通りです。

対象九州周辺に本店を有する企業又は九州周辺における事業実績・計画を有する企業
株主数200人以上
流通株式(500単位以上の公募)
上場時価総額3億円以上
売上高成長可能事業の売上高が計上されていること
事業継続年数1年以前から株式会社として、継続的に事業活動をしていること
純資産の額連結・単体純資産の額 正
経常利益の額
虚偽記載又は不適正意見等
  • 「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書(最近1年間を除く)において、「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」
  • 「上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書等(最近1年間)において、「無限定適正」
  • 上記監査報告書又は期中レビュー報告書に係る財務諸表等が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」なし
登録上場会社等監査人による監査「上場申請のための有価証券報告書」に記載及び添付される財務諸表等について、登録上場会社等監査人による監査等を受けていること
株式事務代行機関株式事務を本所の承認する株式事務代行機関に委託しているか、又は株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること
単元株式数上場時に100株となる見込みのあること
株式の譲渡制限株式の譲渡につき制限を行っていないこと又は上場の時までに制限を行わないこととなる見込みのあること
指定振替期間指定振替機関の振替業における取扱いの対象であること又は取扱いの対象となる見込みのあること

では実質基準も確認しましょう。

実質基準

続いて、Q-Boardにおける実質基準の審査項目と概要は、以下の通りです。

(1)企業の継続性及び収益性
  • 会社情報の管理・開示の状況
  • 企業内容、リスク情報の開示の状況
  • 企業グループの実態の開示の状況
  • 親会社等の開示の有効性
  • 開示実績の状況(既上場会社である場合)
(2)企業経営の健全性
  • 関連当事者その他特定の者との取引の合理性・妥当性
  • 役員の構成及び兼務の状況
  • 親会社等から独立した経営の確保
(3)企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
  • 機関設計及び監査の有効性
  • 内部管理体制の整備・運用の状況
  • 必要な人員の確保の状況
  • 会計組織の整備・運用の状況
  • 法令遵守体制の有効性
(4)企業内容等の開示の適正性
  • 株主の権利
  • 買収への対応方針導入に関する事項
  • 反社会的勢力関与防止の体制整備
  • その他

上場を目指す企業をサポートならマネーフォワード

福岡証券取引所の特徴や取り組み、福岡証券取引所で上場する場合のメリットや地方証券取引所と東証との差異を確認したうえでデメリットと考えられる事例について解説しました。

東証ではなく、あえて地方証券取引所である福岡証券取引所で上場する企業の考えや背景がわかり、どこで上場するかを検討している企業にとって有益な情報となりました。

しかし、企業が上場を目指す際には複雑でさまざまな手続きが必要となります。網羅する範囲も広いため、経営陣だけではなかなか管理が行き届かない場合も考えられます。

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