- 更新日 : 2025年3月19日
東海で上場するなら名古屋証券取引所がおすすめ!その理由とは?
東海エリアで事業展開する事業者の中には上場を目指す人も多いのではないでしょうか。
しかし、名古屋証券取引所は2022年に市場を再編したことでも話題になったことで、新しくなった市場コンセプトや上場するメリットを知っておく必要があります。
この記事では、名古屋証券取引所の概要から、新しくなったコンセプトなどを解説します。審査基準なども併せてご紹介しますので、名古屋証券取引所で上場を検討している経営者や財務担当者はぜひ参考にしてみてください。
目次
名古屋証券取引所とは
名古屋証券取引所とは、愛知県名古屋市にある地方証券取引所で、名証と省略されます。
かつては、東京証券取引所(東証)と大阪証券取引所(大証)とともに日本の三大市場とも呼ばれていましたが、現在では福岡証券取引所・札幌証券取引所と並び、地方証券取引所のひとつという位置づけです。
名古屋証券取引所の前身は1886年に創設された名古屋株式取引所で、1949年に証券会社を会員とする法人組織として証券取引法に基づき設立されました。 2002年4月には証券会員制法人から株式会社へ組織変更し、現在の株式会社名古屋証券取引所となりました。
以前は市場第一部・市場第二部・セントレックスという3つの市場区分でしたが、2022年4月には各市場のコンセプトや基準が見直され、プレミア・メイン・ネクストとそれぞれ名称変更されました。現在の上場企業数は東証に次ぐ国内第2位という規模感も特徴のひとつです。
名古屋証券取引所は内閣総理大臣の免許を受け、取引所有価証券市場を開設しています。取引所有価証券市場を公正かつ円滑に運営し、投資者保護を行う公共的な使命を背負っています。
- 所在地
愛知県名古屋市中区栄三丁目8番20号 - 設立
1949年 - 取引時間
前場/9時~11時30分、後場/12時30分~15時30分
名古屋証券取引所の4つの主要事業
名古屋証券取引所は大きく4つの主要事業を展開しています。以下では、名古屋証券取引所の4つの事業について解説します。
有価証券の上場
名古屋証券取引所の市場で売買ができる有価証券は、名古屋証券取引所で上場されているものに限定されています。有価証券は、名古屋証券取引所が発行会社からの上場申請に基づいて審査したうえで上場を認めます。
名古屋証券取引所に上場している有価証券は「内国株券」と「債券」のふたつです。内国株券はプレミア市場・メイン市場・ネクスト市場に区分されます。
債券は新株予約権付社債(転換社債型)・国債・公社債が上場しています。全上場株券と債券(普通債を除く)についてはコンピュータシステムで売買取引されています。
伝統的な財産的価値のある私権を表章する証券で、その権利の発生、移転または行使の全部又は一部が証券によってなされるもの
上場管理とディスクロージャー
上場管理とは、上場有価証券が上場の継続が適切かを管理し、必要に応じて適切な措置を講じることです。
また、有価証券の価格に影響が出ると予測される企業情報を迅速、正確、広範囲で公平に発信されるようにルールを制定しています。
発信された情報は名古屋証券取引所のホームページ等で掲載しているため、検索すれば誰でも取引所内で閲覧が可能です。
売買等の審査
証券取引所としての機能として、売買の審査も行います。有価証券市場での売買は価格と時間の優先の原則によって競争売買で行われます。
名古屋証券取引所では売買が迅速にかつ適正に行われるように常時監視されてます。さらに、株価や出来高に異常を発見した場合には都度調査を行い、問題が発覚すれば随時対処するなどの厳正な審査を実施しています。
取引参加者の管理
名古屋証券取引所の市場を利用したい場合、取引参加者として登録が必要です。高い公共性を持つ証券取引所は取引参加者の加入にあたり、随時厳正な審査を行います。
また、取引参加者の営業・資産等の経営状況について調査を実施するなどの管理も、名古屋証券取引所の重要な事業のひとつです。
名古屋証券取引所の3つのコンセプト
名古屋証券取引所には「プレミア市場」「メイン市場」「ネクスト市場」という3つのコンセプトがあります。
プレミア市場は東証プライム市場と同等の企業規模水準で名古屋証券取引所における最上位市場です。
メイン市場は名称通り名古屋証券取引所のメインとなる市場で、ネクスト市場は将来的にメイン市場へのステップアップが期待される次世代企業向けの新興市場です。
また、名古屋証券取引所で上場している企業数は以下になります。
プレミア市場 | 170社 |
---|---|
メイン市場 | 108社 |
ネクスト市場 | 21社 |
合計 | 299社 |
※2025年3月時点のデータ
全体を通してみると、プレミア市場が170社と最大ですが、名証単独上場会社数に着目するとメイン市場40社と最も多く上場しています。
名古屋証券取引所の最大の特徴は「個人投資家を重視する証券取引所」というコンセプトを掲げていることです。詳しく解説していきましょう。
プレミア市場
プレミア市場は、名古屋証券取引所において最上位の市場で、優れた収益基盤や財務状態に基づく高い市場評価を持ち、個人投資家をはじめとする多くの投資家の継続的な保有対象となりうる優良企業が集まる市場です。
上場時価総額基準が250億円以上など優れた財務体質を保持していると判断され、高い市場評価を得ている企業向けの市場です。
メイン市場
メイン市場は、名古屋証券取引所におけるメインとなる市場で、安定した経営基盤が確立され、一定の事業実績に基づく市場評価を有し、個人投資家をはじめとする多くの投資家の継続的な保有対象となりうる企業向けの市場となっています。
継続的な事業経営で安定した収益基盤を保持している企業向けの市場です。
ネクスト市場
ネクスト市場は、将来のステップアップを見据えた事業計画及び進捗の適時・適切な開示が行われ、一定の市場評価を得ながら成長を目指す企業向けの市場で、言い換えれば新興市場です。
将来的にメイン市場などへのステップアップが期待できるベンチャーなどの成長企業向けの市場です。
名古屋証券取引所で上場するメリット
名古屋証券取引所で上場すると4つのメリットが考えられます。
流通株式時価総額基準を持たない市場であることや、IRサポート体制の整備、情報交換・交流の場の設置のほか割引制度など株式会社らしい特色や、個人投資家を重視する名古屋証券取引所ならではのメリットが受けられます。
それぞれのメリットを詳しく見てみましょう。
流通株式時価総額基準を持たない市場である
名古屋証券取引所には「流通株式時価総額基準」が設置されていません。流通株式時価総額基準を持たないことは自由度の高い資本政策が組めることを意味します。
この特徴は個人投資家をメインプレーヤーとして扱う名古屋証券取引所だからこそのメリットです。個人投資家は機関投資家よりも相対的に投資額が大きくないため、あえて流通金額の基準を設けずに運営しています。
これにより上場準備中の企業にとって持ち株比率や資金調達額が自由に設定できるようになります。つまり経営者の持ち株比率を一定以上確保したまま上場が可能となります。
株式市場における企業が特定の株価指数(例:TOPIXやJPX日経400)や市場区分(例:東証プライム市場)に適格かどうかを判断するための基準のひとつ
IRサポートがある
個人投資家がメインプレーヤーの名古屋証券取引所では、IRサポートの充実に注力しています。たとえば2024年に開催された「名証IRエキスポ」では約8,400人で賑わいました。ほかにもIRイベントを展開し、リアルイベントでは東京・大阪・名古屋の中心都市で行い、ときにはオンラインでも開催されました。
名古屋証券取引所は個人投資家とアナリスト等証券専門家の双方が対面で交流できる場を設けたり、企業の事業内容や業績PRができる場を提供したりなど、個人投資家へのIRサポート体制が充実しています。
IR実務担当者のための学習・情報交換の場がある
イベントや交流の場の提供にとどまらず、企業のIR実務担当者向けに講習会などの学習の場も提供しています。
「名証IR懇談会」ではIR実務担当者のための学習・情報交換の場としてセミナーなどを随時開催しています。学習の場があることで、日々変化するIR環境を的確に捉え、自社のIR活動のより品質向上が図れるでしょう。
IRポイント割引制度がある
IRポイント割引制度とは、一定期間の名証立会外取引での取引量に応じて、IRイベント参加料が割引になる制度です。名古屋証券取引所で新規上場した際には20万ポイントが付与されます。
こういったポイント制度や割引特典などは特徴・メリットといえるでしょう。
名古屋証券取引所で上場するデメリット
名古屋証券取引所に限らず、地方証券取引所で上場した場合に考えられるデメリットとはなんでしょうか。東証での上場のちがいにも関わる部分になりますが、おもに以下の2つが挙げられます。
個人投資家に重点を置いている
名古屋証券取引所は他の地方証券取引所とちがい、メインプレーヤーである個人投資家に重点を置きます。機関投資家を重視している取引所と勝手が違う点ではデメリットに感じる場合もあります。
投資家との対話を通して自社のファンを増やし、知名度を上げながら中長期的に投資を受けたいと考える企業なら個人投資家から投資を受けることからはじめると良いでしょう。
投資家との円滑なコミュニケーションが求められる
名古屋証券取引所では個人投資家に重点を置いています。そのため、対個人投資家のコミュニケーションに注力する必要があり、デメリットに感じる場合もあります。
さらに、昨今では株主にも変化や多様化が見受けられ、株主へのそれぞれの対応に備える必要があります。他の証券取引所と異なり、個人投資家へのケアには細心の注意を払うべきでしょう。
名古屋証券取引所の上場審査基準
名古屋証券取引所のプレミア市場・メイン市場それぞれの上場審査基準を確認しましょう。形式基準(上場申請要件)と実質基準(上場適格要件)に分けて解説します。
プレミア市場
名古屋証券取引所で上場するためには、さまざまな審査基準があります。下記では形式基準と実施基準でそれぞれの項目を確認しましょう。
形式基準(上場申請要件)
本則市場における形式基準の審査項目と概要は、以下の通りです。
株主数 | 800人以上 |
---|---|
流通株(上場時見込み)または公募等の実施 | 流通株式数が2万単位以上かつ 流通株式比率が35%以上 |
上場時価総額 | 250億円以上 |
事業継続年数 | 3年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること |
純資産の額 | 連結純資産の額50億円以上 (かつ単体純資産の額が正) |
利益の額(連結経常利益)または売上高 | 最近2年間の利益の額が総額25億円以上 または最近1年間の連結売上高が100億円以上かつ時価総額が1,000億円以上 |
虚偽記載又は不適正意見等 |
|
登録上場会社等監査人による監査 | 最近2年間の財務諸表等および最近1年間の四半期財務諸表等について、登録上場会社等監査人の監査または四半期レビューを受けていること |
株式事務代行機関の設置 | 株式事務代行機関に委託している、または株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
単元株式数 | 上場の時に100株となる見込みのあること |
株式の譲渡制限 | 上場の時までに上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行わないこととなる見込みのあること |
指定振替機関における取扱い | 上場の時までに指定振替機関の振替業における取扱いの対象となる見込みのあること |
合併等の実施の見込み | 新規上場申請日以後、基準事業年度の末日から2年以内に、合併、会社分割、子会社化若しくは非子会社化若しくは事業の譲受け若しくは譲渡を行う予定があり、かつ申請会社が当該行為により実質的な存続会社でなくなる場合、申請会社が解散会社となる合併、他の会社の完全子会社となる株式交換又は株式移転を基準事業年度の末日から2年以内に行う予定のある場合(上場日以前に行う予定のある場合を除く) |
実質基準(上場適格要件)
プレミア市場における実質基準(上場適格要件)の審査項目と概要は、有価証券上場規定第213条をもとに以下の通りに定められています。
(1)企業の継続性及び収益性 | 継続的に事業を営み、かつ、安定的かつ優れた収益基盤を有していること |
---|---|
(2)企業経営の健全性 | 事業を公正かつ忠実に遂行していること |
(3)企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 | コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること |
(4)企業内容等の開示の適正性 | 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること |
(5)その他公益又は投資者保護の観点から本所が必要と認める事項 |
メイン市場
名古屋証券取引所のメイン市場で上場するためには、下記のような審査基準をクリアする必要があります。メイン市場では表に記載の条件を満たした企業が対象となります。プライム市場と比較してもかなりハードルの差異を感じる条件です。
形式基準と実施基準でそれぞれの項目を確認しましょう。
形式基準(上場申請要件)
メイン市場における形式基準(上場申請要件)の審査項目と概要は以下の通りです。
株主数 | 300人以上 |
---|---|
流通株(上場時見込み)または公募等の実施 | 流通株式数が2,000単位以上 かつ上場株式数の25%以上または上場日の前日までに公募又は売出しを1,000単位又は上場株式数の10%のいずれか多い株式数以上を行うこと |
上場時価総額 | 10億円以上 |
事業継続年数 | 3年以前から株式会社として継続的に事業活動をしていること |
純資産の額 | 連結純資産の額が「正」 |
利益の額(連結経常利益)または売上高 | 最近1年間の利益の額が1億円以上である |
虚偽記載又は不適正意見等 |
|
登録上場会社等監査人による監査 | 最近2年間の財務諸表等および最近1年間の四半期財務諸表等について、登録上場会社等監査人の監査または四半期レビューを受けていること |
株式事務代行機関の設置 | 株式事務代行機関に委託している、または株式事務代行機関から株式事務を受託する旨の内諾を得ていること |
単元株式数 | 上場の時に100株となる見込みのあること |
株式の譲渡制限 | 上場の時までに上場申請に係る株式の譲渡につき制限を行わないこととなる見込みのあること |
指定振替機関における取扱い | 上場の時までに指定振替機関の振替業における取扱いの対象となる見込みのあること |
合併等の実施の見込み |
|
実質基準(上場適格要件)
続いて、メイン市場における実質基準(上場適格要件)の審査項目と概要は、有価証券上場規程第207条をもとに以下の通りに定められています。
(1)企業の継続性及び収益性 | 継続的に事業を営み、かつ、安定的かつ優れた収益基盤を有していること |
---|---|
(2)企業経営の健全性 | 事業を公正かつ忠実に遂行していること |
(3)企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 | コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること |
(4)企業内容等の開示の適正性 | 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること |
(5)その他公益又は投資者保護の観点から本所が必要と認める事項 |
名古屋証券取引所で上場するならマネーフォワードがサポート
名古屋証券取引所の基本情報や特徴、取り組んでいる催しなどを紹介しました。またプレミア市場とメイン市場の審査基準も整理でき、名古屋証券取引所で上場を検討している企業にとって重要な情報になりました。
これから上場しようとする企業にとって上場準備だけでなく、個人投資家へのケアやIRの充実などの非財務情報の開示まで求められ、複雑な手続きに加えて、多くの時間を割く必要があります。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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