- 作成日 : 2024年10月15日
TDnetとは?適時開示が求められる情報や開示プロセスを解説
TDnetは、東京証券取引所(JPX)によって運営されている情報開示システムです。上場企業が投資家や市場参加者に対して重要な情報を迅速に公開するために利用されています。
情報開示は、投資家が適切な判断を行うために必要な情報を提供するために重要です。適切な情報開示が行われることで、企業の経営状況やリスクが明らかになり、不正や誤解を防ぎ、健全な市場環境が維持されます。本記事では、TDnetの役割やTDnetで開示されるべき情報、TDnetでの開示プロセスについて解説します。
目次
TDnetとは?
はじめに、TDnetの役割や適時開示について解説します。
TDnetの役割
TDnet(Timely Disclosure network)は、東京証券取引所が運営しており、上場企業が決算発表や重要な経営情報を投資家や市場参加者に迅速かつ公平に公開するためのプラットフォームとして利用されています。
上場企業が有価証券上場規程に基づいて会社情報を開示する場合には、TDnetを利用することが義務付けられています。
TDnetの役割は、上場企業が投資家や市場参加者に対して、決算情報や重要な経営方針などの重要情報を迅速かつ公平に公開することを支援し、市場の透明性と信頼性を高めることにあります。言い換えれば、適時開示を可能にすることがTDnetの役割なのです。
参考:日本取引所グループ「TDnetの概要」
適時開示とは?
TDnetが目的とする適時開示とは、上場企業が東京証券取引所の上場規定に則り投資家や市場参加者に対して、投資判断に影響を与える重要な情報を適切なタイミングで公表することを指します。
1990年代に発生した金融危機や企業の不正会計事件が市場に大きな混乱をもたらしたことで、適時開示の重要性が認識されることにつながりました。
参考:日本取引所グループ「適時開示制度の概要」
金融商品取引法との関係
情報開示には法定開示と適時開示があります。金融商品取引法は、有価証券報告書や四半期報告書などの開示を求める法定開示を規定しています。
法定開示が企業の定期的かつ体系的な情報提供をカバーするのに対し、適時開示は企業に重要な変化や重大な出来事が発生した際に迅速に情報を公開することを求めており、法定開示を補完する役割を担います。
TDnetで開示される情報
ここでは、適時開示ルールに基づき、TDnet上で開示されるべき情報を解説します。
上場会社の決定事実
上場企業が取締役会や株主総会で決定した重要な事項で、以下のような情報が該当します。
- 株式の発行や買戻し:新たな株式の発行や自己株式の買戻しに関する決定
- 役員の選任・解任:新しい役員の任命や既存の役員の解任
- 資本政策:増資や資本構成の変更に関する決定
- 事業再編:事業の売却、合併、分割などの重大な組織変更
上場会社の発生事実
上場企業の業務や財務状況に重大な影響を与える事項で、以下のような情報が該当します。
- 災害や事故:自然災害や重大な事故が企業の業務に与える影響
- 訴訟や法的措置:重大な訴訟や規制当局からの調査、処分
- 関係者の交代:親会社、支配株主、公認会計士の異動、変更
上場会社の決算情報
決算情報は、企業の経営状況を示す重要なデータで、以下のような情報が該当します。
- 四半期決算:四半期ごとの業績報告
- 年次決算:年度ごとの総括的な財務状況や業績
- 監査報告:監査法人による監査結果や意見
上場会社の業績予想、配当予想の修正等
企業の業績見通しや配当方針に関する情報で、以下のような情報が該当します。
- 業績予想の修正:売上高や利益の見通しの変更
- 配当予想の修正:配当金の予想額や配当方針の変更
その他の情報
他のカテゴリに該当しないものの、企業の経営状況や投資判断に影響を与える可能性がある重要な情報で、以下のような情報が該当します。
- 経営戦略の変更:長期的な戦略や事業計画の変更
- 重要な契約:企業にとって重要な取引契約の締結や変更
子会社に関する情報
親会社の経営や投資判断に直接的な影響を及ぼす子会社の重要な情報で、以下のような情報が該当します。
- 業績の変動:子会社の売上高、利益などの重要な業績指標の大幅な変動や予想との乖離
- 財務状況の急変:子会社の財務状況に重大な変化があった場合
- 大口取引の締結:子会社が行う重要な取引契約
- 重要な提携や合意:子会社が締結する重要なビジネス提携や戦略的合意
- 設立:新たに設立される子会社の情報
- 売却・譲渡:既存の子会社の売却や譲渡に関する決定
- 合併・分割:子会社の合併や分割、重要な再編計画
- 訴訟や規制対応:子会社が直面する重大な訴訟や規制問題
参考:日本取引所グループ「適時開示が求められる会社情報」
TDnetでの開示プロセス
ここでは、TDnetでの情報開示の流れを解説します。
ステップ1.情報の決定と社内承認
公表すべき重要な情報を決定し、社内で承認するプロセスです。
まず、経営陣や関連部門が情報の重要性を評価し、適時開示の対象となるかどうかを判断します。対象には、例えば決算発表や重要な経営方針の変更、重大な取引の締結などの情報が該当します。
その後、情報の正確性と完全性を確保するために、内部でのレビューと承認を実施します。
ステップ2.TDnetへの入力
情報が正確に入力されるように、東京証券取引所の開示様式例に従い、登録用PDFを作成します。
TDnetの専用入力画面に、決算報告書や経営方針の変更内容など、開示すべき情報を詳細に入力しましょう。この際、正確にデータを入力することが重要であり、入力内容に誤りがないか、事前に確認を行います。
参考:日本取引所グループ「開示様式例」
ステップ3.TDnetへの送信
TDnetシステムに作成した資料を送信します。送信前に、入力した内容が正確であることを再確認し、送信ミスやデータの欠落がないように注意しましょう。
TDnetのシステムでは、送信された情報の受領確認が行われ、処理が進められます。さらに適時開示資料閲覧サービスに資料が掲載されます。
ステップ4.情報開示
情報がTDnetに送信されると、次に市場での情報開示が実施されます。TDnetが情報を公開し、投資家や市場参加者に対して即時に情報を提供します。
TDnetのサイトで公開された情報は、証券取引所のウェブサイトや関連する金融メディアにも配信されるので、広く投資家に情報が提供されることになります。
ステップ5.自社サイトへの掲載
TDnetで情報が公開されたら、自社の公式ウェブサイトにも同じ情報を掲載しなければなりません。具体的には自社のIR(投資家向け広報)ページに、TDnetで開示した情報を同様に掲載し、投資家や利害関係者が容易にアクセスできる状態にします。
自社サイトへの掲載は、情報の透明性をさらに高めるとともに、企業のコミュニケーションの一環としても重要です。
まとめ
TDnetは、東京証券取引所が運営し、上場企業が重要な情報を投資家や市場に迅速かつ公平に提供するための重要なインフラです。企業が、株主や投資家に対して企業活動や財務状況に関する重要な情報を適時に公開する、適時開示の場としての役割を担っています。
TDnetで開示される情報は、決算短信や四半期報告書、年度報告書などの財務情報に加え、株式に関する重要事項など多岐にわたります。
情報開示の流れは、社内承認を得た後にTDnetに情報を送信し、登録された情報が外部のウェブサイトに掲載されるというものです。
TDnetの利用によって情報の伝達スピードが向上し、情報の公平性が確保されることで、株式市場の透明性が高まることが期待されています。
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