- 更新日 : 2024年7月12日
東証マザーズとは?特徴やジャスダックとの違いなどわかりやすく解説
「東証マザーズ」とは、東京証券取引所が運営している株式市場のひとつで、主にベンチャー企業(新興企業)を対象にした市場です。株式会社メルカリやBASE株式会社といった成長企業を中心に、2022年2月時点で426社が東証マザーズに上場しています。今回はこの東証マザーズについて、特徴やメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説していきます。
※この記事は2022年2月に作成しました。
目次
東証マザーズとは?ベンチャー企業向けの株式市場
「東証マザーズ」とは、東京証券取引所が運営している、ベンチャー企業(新興企業)向けの株式市場です。「マザーズ」と略して呼ばれることも多く、1999年11月に開設されました。
マザーズは東証一部や二部と比べて上場基準は緩く、審査基準も「成長性」が重視されます。そのため、経営者としては高い成長力があれば上場することができ、また投資家としては相対的により大きな株価の値上がり益が期待できるという特徴があります。また、マザーズに上場した企業の多くがその後、東証一部に昇格しています。
東証マザーズ以外の市場について
日本の株式市場には、東証マザーズ以外にも多くの市場があります。東京証券取引所が運営している株式市場は、以下のとおりです。
- 市場第一部(東証一部)
国内外の大企業や中堅企業が上場している世界的な株式市場。2,182社が上場中
- 市場第二部(東証二部)
東証一部に次ぐ規模の企業が多く上場している株式市場。473社が上場中
- ジャスダック(JASDAQ)
マザーズと同じく、ベンチャー企業向けの株式市場。新興市場の多い「グロース」とマザーズやグロースと比べて歴史ある企業が中心の「スタンダード」に分かれる。スタンダード・グロース合わせて694社が上場中
- TOKYO PRO Market
プロ投資家と呼ばれる特定投資家や非居住者が売買できる株式市場。50社が上場している
上記のなかでは、マザーズはジャスダック市場に近い性格を持っています。
東証マザーズとジャスダック(JASDAQ)の違いは?
同じベンチャー企業向けの株式市場である東証マザーズとジャスダック。両者の違いは以下のとおりです。
- マザーズは一部構成、ジャスダックは「スタンダード」と「グロース」の二部構成
- 上場企業数はマザーズが426社、ジャスダックが694社とJASDAQのほうがやや多い
- マザーズはベンチャー企業が中心。マザーズに比べると、ジャスダックスタンダードは老舗企業が多い
- 上場審査が異なる
上場審査については例えば、マザーズは上場した際の見込み株主数が150人以上、時価総額が5億円以上に対し、JASDAQスタンダードは見込み株主数が400人以上、時価総額が10億円以上と、株主数や時価総額でみると、マザーズのほうが審査は緩くなっています。
東証マザーズの特徴は?
東証マザーズは、高い成長力を持つベンチャー企業へ、より早く資金調達の場を提供することを目的としている市場です。マザーズの主な特徴についてみていきましょう。
<マザーズの主な特徴>
- 高い成長性を有するベンチャー企業向けの株式市場である
- 東証一部や二部と比べて上場審査期間が短く、スムーズに上場できる可能性がある
- 赤字であっても上場できる
上記の特徴を持つマザーズにおいて、ベンチャー企業は早い段階で資金調達を行い、さらなる成長および産業の育成をすることが期待されています。投資家にとっても成長速度が早いベンチャー企業の株は、短期間で大きなリターンを得る可能性を秘めていますが、そのぶんリスクもあるという特徴があります。
東証マザーズに上場するメリット・デメリットは?
東証マザーズに上場するメリット・デメリットをみていきましょう。
東証マザーズに上場するメリット
東証マザーズに上場する主なメリットは以下のとおりです。
資金調達力の向上
株式市場から不特定多数の人より資金を調達することができます。また信頼性も向上するため、金融機関からの融資も受けやすくなります。
優秀な人材の確保や従業員のモチベーションUP
マザーズに上場することで会社の知名度が上がり、優秀な人材が集まりやすくなります。また、従業員も上場企業に勤めているという意識を持て、モチベーションが上がる効果が期待できます。
内部管理体制の充実
マザーズ上場にあたり証券取引所の審査を受ける過程で必然的に内部管理体制が強化・充実されます。
特にこれから成長を加速させたいベンチャー企業にとって、資金調達力の向上は大きなメリットになるでしょう。
東証マザーズに上場するデメリット
一方で、東証マザーズに上場するデメリットもあります。
企業情報開示義務の負担
上場すると有価証券報告書や四半期報告書などを開示しなければならず、準備や人件費などのコストが生まれます。
上場に関するコスト負担
上場前には上場審査料200万円のほか、監査法人等への支払いが年間5,000万円程度、上場後には年間上場料48万円~408万円など莫大なコストがかかります。
買収されるリスクの増加
上場することで買収されるリスクが増加するため、対策が必要になります。
株主対策の必要性
不特定多数の株主、特に「物言う株主」などへの対策も求められます。
マザーズ上場にはメリットだけでなく、対策を考えなければならないデメリットもあります。こうしたデメリットも踏まえたうえで、上場を検討するかどうかを決めましょう。
2022年4月、東証市場再編に伴いマザーズはなくなる
東証マザーズを含め、東京証券取引所が運営している株式市場は2022年4月に以下の3つの市場区分に再編されます。この再編に伴い、東証マザーズはなくなります。
- プライム市場:東証一部に代わる、中・大企業が上場する市場
- スタンダード市場:プライム市場に次ぐ規模の企業が上場する市場
- グロース市場:高い成長性を有する企業が上場する市場
なお、マザーズ上場企業の多くは、グロース市場に移行する予定です。
東証マザーズの3銘柄を紹介
ここでは実際に東証マザーズに上場している3つの銘柄をご紹介していきます。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリ(以下、メルカリ社)は、日本最大のフリマアプリ「メルカリ」を運営をしている企業です。メルカリ利用者は実際のフリーマーケットのように、売りたい物を手軽に出品したり、出品物を購入したりすることができます。
メルカリ社は、2018年6月19日にマザーズに上場を果たし、544億円を調達しました。上場に伴い調達した資金は、米国事業を中心に投資を行ったとみられています。
CYBERDYNE株式会社
CYBERDYNE株式会社(以下、サイバーダイン社)は、世界初の装着型サイボーグHAL®を開発した、筑波大学発のベンチャー企業です。HAL®は装着者が身体を動かそうとするときに流れる信号を読み取り、装着者の動きをサポートするロボットスーツです。
サイバーダイン社は、2014年3月26日に、医療・福祉用ロボットメーカーとして日本で初めてマザーズに上場しました。上場に伴い調達した資金は、製品の開発資金などに充てたとみられます。
ウェルスナビ株式会社
ウェルスナビ株式会社(以下、ウェルスナビ社)は、ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」を開発・提供している企業です。WealthNaviは、投資家に代わって株式や債券、金、不動産へ投資を行い、資産運用を自動で行ってくれるサービスです。
ウェルスナビ社は、2020年12月22日にマザーズへ上場しました。時価総額は2022年2月17時点で約897億円と、マザーズ市場で9位の規模を誇ります。
東証マザーズ指数とは何?
東証マザーズを対象とした株価指数に「東証マザーズ指数」があります。株価指数とは、日経平均株価やTOPIXのように特定の銘柄群の株価を数値化したもの。例えば、日経平均株価は、東証一部に上場している225銘柄の株価を基に算出した株価指数になります。
東証マザーズ指数は、マザーズに上場している全銘柄を対象に算出した株価指数です。全銘柄を対象としているため東証マザーズ指数をチェックすれば、マザーズの全体の方向性を把握することに役立てることができます。
東証マザーズに上場するには?
東証マザーズに上場するには審査を通過して、東京証券取引所に上場を承認してもらわなければいけません。上場するには、例えば以下の項目に対処する必要があります。
- 主幹事証券会社・監査法人の選定
- ショートレビュー(短期調査)
- 資本政策や事情計画の策定
- 証券印刷会社の選定
- 株式事務代行機関の設置
- 定款の変更
- 上場申請および審査
上記項目の対処のため、上場準備担当者の採用・選定も必要になります。なお、マザーズの審査期間は、約2ヶ月です。
東証マザーズに上場する条件として、以下の審査基準をクリアする必要があります。
東証マザーズに上場するための条件となる審査基準
東証マザーズへ上場するには、東京証券取引所が設ける審査を通過する必要があります。例えば、マザーズの審査基準には以下のような項目があります。
項目 | 要件 |
---|---|
株主数 | 150人以上 |
流通株式数 | 1,000単位以上 |
流通株式時価総額 | 5億円以上 |
マザーズでは事業計画などを参考に、成長可能性についてもしっかりチェックされます。またマザーズの審査基準は、東証一部・二部と比較すると緩いといわれていますが、当然しっかりした準備が必要です。マザーズの審査基準について詳しくは「マザーズ 上場基準」の記事を参考にしてください。
東証マザーズについて正しく理解しましょう
東証マザーズは、ベンチャー企業向けの株式市場で、成長可能性を有するベンチャー企業にとっては貴重な資金調達の場です。東京証券取引所の市場は2022年4月より再編され、マザーズ上場企業の多くはグロース市場に移る見込みで、マザーズの役割はグロース市場に受け継がれることが想像されます。市場再編前後の流れを抑えるためにも東証マザーズについて正しく理解しておくことが大切です。
よくある質問
東証マザーズとは何ですか?
東京証券取引所が運営している、ベンチャー企業(新興企業)向けの株式市場です。
東証マザーズの特徴は?
成長性の高いベンチャー企業向けの株式市場であることや赤字でも上場できる可能性があること、東証一部などより審査期間が短いといった特徴があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
経営革新計画とは?承認申請するメリットや要件・作成方法を詳しく解説
経営革新計画は、企業が競争力を高め、持続可能な成長を達成するための重要な戦略です。この計画では、技術革新、市場開拓、業務効率化など、多岐にわたる分野での改革を推進します。 本記事では、経営革新計画の概要や対象となる事業者、承認申請の流れなど…
詳しくみるKPIとは?ビジネスにおける指標をわかりやすく解説!
KPIとは企業の最終目標到達までの各プロセスにおける達成度を示す指標です。企業が最終的な目標を達成するためには途中にある各プロセスをしっかりとクリアしていくことが大切で、その評価や達成度計測を行うためにKPIが必要とされます。重要業績評価指…
詳しくみる赤字でも上場できる!メリットや満たすべき基準・事例を紹介
「自社は赤字だから上場できないのでは…」と思い込んでいませんか?実は、赤字でも上場できる可能性があります。必ず可能というわけではありませんが、可能性が残っているのならチャレンジしようと考える人もいるでしょう。 この記事では、赤字でも上場する…
詳しくみるコンフォートレターとは?役割や記載内容、注意点などを解説
IPOを達成するには、引受審査に通過しなければいけません。引受審査前に監査人から主幹事証券会社に提出されるのがコンフォートレターです。 引受審査に関係する過程ですので、IPOを目指す企業はこの流れについて理解しておくことが大切です。 本記事…
詳しくみるVRIO分析とは?やり方や注意点・具体的な企業事例をわかりやすく解説
VRIO分析は企業戦略の核心をなす手法です。この分析を駆使し、独自の価値を持ち、希少性のあるリソースを識別、保護し、最大限に活用する方法を探ります。 本記事では、VRIO分析の概要やメリット、やり方などを詳しく解説します。 VRIO分析とは…
詳しくみる上場審査は厳しい?基準や落ちる理由・通過するためのポイントを解説【テンプレート付き】
上場審査の基準や申請から上場までの流れなど、実はよく理解できていないという方もいることでしょう。上場審査は厳しい条件を課していますが、上場することで社会的信用性が増したり、取引先が増えたりします。審査に通過する基準をきちんと理解していないと…
詳しくみる