- 更新日 : 2024年7月17日
ガバナンスとは?コーポレートガバナンスコードや体制づくりについて解説!
昨今、企業は会計不正や品質偽装、贈収賄などの内的要因に加え、自然災害や地政学、パンデミックなどの外的要因にも激しく晒されています。これらのリスクをいかに最小限に留められるかは、重要なポイントであるといえるでしょう。
言い換えれば、リスク最小化に向けて適切な対応をとれた企業は、価値向上および差別化を実現できます。
本記事では、リスク対応に欠かせないガバナンスについて、コーポレートガバナンスコードを中心に体制づくりなども踏まえて解説します。
目次
ガバナンスの概要
まずはじめに、ガバナンスの定義や目的などの全体像を解説します。
企業におけるガバナンス(コーポレートガバナンス)
ガバナンスとは、英語で管理や統治を意味する言葉ですが、企業におけるガバナンスも同様に「企業が企業自身を統治し管理すること」を意味します。
すなわち、企業が健全な経営を行うために、組織として必要な管理・監督・評価の一連の行為のことを指します。
また、これらの取り組みによって企業価値が高まることから、ガバナンスは株主やステークホルダーの利益を高めることにもつながるといえるでしょう。
類似する概念との違い
ガバナンスに類似する概念がいくつか存在しているため、それらとの違いについても紹介します。
コンプライアンス
コンプライアンスは一般的に法令遵守を意味し、社会的な規範に則って業務を行うことを指しています。
ガバナンスはコンプライアンスなどの意識を高めて維持するための仕組みを指すため、コンプライアンスはガバナンスの一部として扱われることも多いです。
リスクマネジメント
リスクマネジメントとは、リスクを事前に洗い出し対策を取るプロセスのことです。
したがって、リスクマネジメントもコンプライアンスと同様に、ガバナンスの一部として扱われます。
内部統制
内部統制は、各種法令を遵守しながら適切に経営活動を運用するための仕組みや体制のことを意味します。
内部統制は主に経営者が従業員らに対して行う一方、ガバナンスは株主が経営者に対して行うという点で異なります。
グローバルガバナンス
ガバナンスという言葉は企業(コーポレート)だけでなく、グローバルで起こるさまざまな問題に対して、国や地域を超えて解決するための統治活動としても用いられます。
1992年のリオデジャネイロ地球サミットを起点にグローバルガバナンスが注目され、テロや難民、気候変動などの問題が対象とされています。
コーポレートガバナンスとは異なり、管理主体が不在の中でこれらの問題に取り組む必要があるため、共通の規範やルールを策定し運用する仕組みが必要な点で、若干性質が異なります。
コーポレートガバナンスの特徴
次にコーポレートガバナンスを機能させることによるメリットやデメリットなどを紹介します。
コーポレートガバナンスによって組織力が向上する一方で、デメリットも存在することを忘れてはいけません。
ただし、コーポレートガバナンスを効かせないことによるリスクもあるため、下記の点を参考にしながら自社にとっての必要性を総合的に判断しましょう。
コーポレートガバナンスのメリット
- 不正が防止され、経営が健全化する
- 中長期的に企業価値および社会的信頼性が向上する
- 属人的な経営体制から脱却できる
コーポレートガバナンスのデメリット
- 適切に運用するには時間とコストが必要となる
- 意思決定のスピードが低下する可能性がある
- 株主意向に重きが置かれ、短期的な利益主義に陥る恐れがある
コーポレートガバナンスがないことによるリスク
- 社会およびステークホルダーからの信頼が低下する
- 競争力の低下につながる恐れがある
- 不正などを防止することができず、重大なビジネス毀損(きそん)につながる可能性がある
コーポレートガバナンスコードとは
国内では上場企業に求められるガバナンスのガイドラインとして、コーポレートガバナンスコードと呼ばれる指針が存在します。
本章ではそのコーポレートガバナンスコードについて解説します。
コーポレートガバナンスコードの概要
コーポレートガバナンスコードは、2015年に金融庁と東京証券取引所によってまとめられ、2021年に改訂されました。
策定の背景は、日本企業の国際競争力の低下にあり、ROE(自己資本比率)や株価が低迷し、投資家が投資をしにくい状況から脱却することを目的として制定されています。
以降、全ての上場企業に適用され、上場審査時点でコーポレートガバナンスコードへの適用状況が確認される形となっているため、上場を目指す企業にとっては必須のガイドラインであるといえるでしょう。
コーポレートガバナンスコードは、原則主義で細かい運用は各企業に任せるプリンシプルベース・アプローチと、全ての原則を遵守しなくて良い代わりにその根拠の説明が必要となるコンプライ・オア・エクスプレインの2つがあり、企業はいずれかの方法を採用します。
原則
コーポレートガバナンスコードでは、下記5つの基本原則を中心に、31の原則と47の補充原則の計83の原則によって成り立っています。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話
プライム市場・スタンダード市場では全ての原則に、グロース市場では5つの基本原則の対応が必須です。
また、東京証券取引所から隔年で上場企業に関するコーポレートガバナンスコードへの対応状況が原則別にレポートされているため、これらを参照しながら競合各社の動向や国内のトレンドを探ることも重要だといえるかもしれません。
参考記事:JPX 日本取引所グループ「コーポレート・ガバナンス白書」
コーポレートガバナンスコードへの適用・強化に向けたアクション
上場に向けてコーポレートガバナンスコードを満たすために必要なアクションを下記にて列挙します。
必要な機関の設置
- 取締役会:3名以上の取締役と、1名以上の社外取締役の選任
- 監査役会、監査等委員会または指名委員会等:3名以上の監査役の選任(常勤監査役1名以上、監査役の半数以上が社外監査役)
- 会計監査人
- 独立役員
- 執行役員
各種会議体や規程の整備
- 株主総会
- 取締役会
- 執行役員会
- 内部監査
- 基本・経営規程
- 組織関連規程
- 業務関連規程
- 総務関連規程
- 人事規程
- コンプライアンス規程
その他のアクション
- 内部統制を構築する
- 上記の監査体制を機能させる仕組みを整備する
- コンプライアンス徹底などに向けた社内教育・浸透を行う
コーポレートガバナンスにおける今後の展望
最後に、各省庁などのレポートなども参照した上での、コーポレートガバナンスの今後の展望について紹介します。
今後コーポレートガバナンスとして強化・改善が求められる点は下記の4点となるでしょう。
- サステナビリティ経営およびサステナビリティ活動の適切な開示
- 資本コストの把握および収益性や成長性を意識した経営
- 社外取締役の機能性向上
- 企業と投資家の対話機会の促進による情報開示や法課題および市場環境課題への対応
参考:金融庁 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」
まとめ
コーポレートガバナンスは上場企業にとって不可欠であり、その実現には時間とコストを要することから、上場を目指すスタートアップは早い段階から準備が必要です。
また上場を目指さない企業にとっても、組織力の向上、ひいては企業価値の向上を実現するためにガバナンスを強化することは重要なアクションであるといえるでしょう。
本記事での内容やコーポレートガバナンスコードなどを参考にし、国際社会で生き抜くための健全な経営組織の実現に向けて、自社のガバナンスを改めて見直してみてはいかがでしょうか。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
やることリスト付き!内部統制構築ガイド
内部統制を基礎から知りたい方・内部統制の導入を検討している担当の方・形式だけになっている内部統制を見直したい方におすすめの人気ガイドです。
内部統制の基本と内部統制構築のポイントをギュッとまとめています。
J-SOX 3点セット攻略ガイド
すべての上場企業が対象となるJ-SOX(内部統制報告制度)。
本資料では、IPO準備などでこれからはじめてJ-SOXに対応する企業向けにJ-SOXの基本からその対応方法までをまとめた、役立つガイドです。
経理担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ12選
経理担当者がChat GPTをどのように活用できるか、主なアイデアを12選まとめた人気のガイドです。
プロンプトと出力内容も掲載しており、コピペで簡単に試すことも可能です。
マネーフォワード クラウド会計Plus サービス資料
マネーフォワード クラウド会計Plusは、IPO準備・中堅〜上場企業向けの業務効率化と内部統制強化を実現するクラウド会計ソフトです。
銀行やクレジットカード連携で取引データを自動取得、AIによる自動仕訳で会計業務を効率化。周辺システムと連携することで、二重入力や確認工数を削減します。また、仕訳承認機能やユーザーごとの権限・ログ管理機能を搭載しており、内部統制にも対応。SOC報告書も提供しています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
改正会社法における内部統制とは?2021年3月に施行された変更点を説明
内部統制を実施することで、企業内の業務適正化が期待できるとして多くの会社で実施されています。しかし、内部統制は法律で規定されていることもあり、節目に改正されていることもあります。2021年3月に改正されたものの、以前の内容と何が変わったのか…
詳しくみる内部監査の目的をわかりやすく解説|設置義務のある会社や不正事例も紹介【テンプレート付き】
内部監査は上場企業に設置義務があり、経営目標の達成やリスクマネジメントを目的に行われます。その際、企業ごとに計画を実施するため、専門的な知識が必要です。 本記事では内部監査の目的を説明したうえで、内部監査の設置義務のある会社や不正事例などを…
詳しくみるIPO準備の業務内容は?流れや期間別に必要な手続きについて解説
IPO業務に関心を持つ企業にとって、適切な準備と手続きは成功の鍵です。株式公開を目指す過程では、財務の透明性、法的準拠、ガバナンスの強化が求められ、多岐にわたる業務が発生します。 本記事では、IPO準備の全体像と期間、業務内容などを詳しく解…
詳しくみる内部統制に役立つ資格9選|内部監査との違いや整備が必要な企業を説明
会社の信頼度向上と透明化を実施する内部統制において、担当者個人として資格が必要なわけではありません。もちろん、内部統制を専門にした人材に対して与えられる資格も存在していません。しかし、内部統制を実施するにあたり、持っておくと役に立つ資格があ…
詳しくみる外部監査とは?IPOで実施することや流れ・スムーズに行うポイントを解説
「外部監査」とは、一般的には独立した監査機関が企業の財務報告の正確性と公正性を評価するプロセスです。この監査は、企業が公開している財務諸表が、適用される会計基準に従って適切に作成されているかどうかを検証します。 外部監査は、投資家やその他の…
詳しくみる内部統制におけるキーコントロールとは?識別のやり方やポイントを説明
内部統制において、キーコントロールの選定は重要です。比較的負担が大きいといわれる運用状況評価において、評価するコントロールが多いとより大きな負担となります。 本記事では内部統制におけるキーコントロールの識別方法や識別手順、コントロール数が多…
詳しくみる