- 作成日 : 2024年10月15日
EDINETとは?重要性やTDnetとの違いをはじめメリット・使い方を解説
EDINETは金融庁が運営する「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」のことを指し、開示書類の提出や閲覧を24時間365日行うことができます。EDINETの対象は有価証券報告書や大量保有報告書などであり、書類の提出や閲覧(ダウンロード)が可能です。本記事では、EDINETの概要や重要性をはじめ、メリットや使い方を解説します。
目次
EDINETとは
はじめに、 EDINETの概要や重要性について解説します。
EDINETの概要
EDINETとは「Electronic Disclosure for Investors’ Network」の略であり「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」のことを指します。
企業は財務情報や株の保有状況・大量保有の有無などを適宜開示する必要があります。EDINETを利用すれば、開示書類の提出や閲覧を24時間365日行うことが可能です。
なお、EDINETは2000年に行われた証券取引法改正の際に導入され、2008年からは新EDINETシステムの運用がスタートしています。
EDINETの目的と重要性
金融庁は、EDINETの目的を以下のように定義しています。
- 有価証券の発行者の財務内容、事業内容を正確、公平かつ適時に開示すること。
- 有価証券を大量に取得・保有する者の状況を正確、公平かつ適時に開示すること。
- 投資者がその責任において有価証券の価値その他の投資に必要な判断をするための機会を与え、投資者保護を図ること。
この中でも、最も重要な目的は「投資者の保護」です。
有価証券を大量取得した場合などは、財務内容や事業内容の変化をはじめ、企業経営に大きな影響が発生する可能性があります。かつては証券アナリストと一般投資家の間において、情報取得・伝達のスピードが異なることが問題視されていました。
しかしEDINETを利用すれば、投資に必要となる情報を公平に公開することが可能です。
EDINETとTDnetの違い
TDnetとは「Timely Disclosure Network」の略であり、適時開示情報伝達システムのことを指します。
EDINETは金融庁が運営していますが、TDnetは東京証券取引所が運営しているという点が異なります。また、EDINETは有価証券報告書などを開示するためのシステムですが、TDnetは決算短信やプレスリリースなどを開示するためのシステムです。
TDnetについては以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
EDINETの対象資料と主な機能
ここでは、EDINETの対象資料と主な機能を解説します。
EDINETの対象となる開示書類
EDINETの対象となる書類と概要は次のとおりです。
書類 | 概要 |
---|---|
有価証券報告書 | 企業の概況、事業の状況、経理の状況など、投資判断に資するさまざまな企業情報が記載されている。 |
半期報告書 | 金融商品取引法で規定されている企業内容を外部へ開示するための資料。「半報」と呼ばれる。 |
四半期報告書 | 金融商品取引法で規定されている四半期毎の企業内容の外部への開示資料。2024年4月に廃止された。 |
大量保有報告書 | 金融商品取引所に上場している株券等について発行済み株式数の5%超を保有することとなった株主が内閣総理大臣(財務局長)に提出しなければならない書類を指す。 |
臨時報告書 | 有価証券報告書を提出しなければならない会社が、発行する有価証券を海外にて募集または売出しする場合の報告書類を指す。 |
書類提出機能
EDINETが持つ主な機能の1つが、書類提出機能です。
開示書類などの提出者は、インターネット経由で提出者情報を入力(届出)することができます。有価証券報告書などの開示書類をアップロードし、財務局(あるいは財務支局)に書類を提出できます。
なお、書類提出には「EDINETコード」「ユーザーID」「パスワード」が必要となります。
書類閲覧機能
EDINETは、各企業から提出された書類を閲覧する機能も有しています。
EDINETを利用すればインターネット経由で自由に閲覧できるほか、財務局(あるいは財務支局)の縦覧用パソコンからも閲覧可能です。
書類閲覧はユーザー登録なしで利用できるほか、XBRLデータ(※1)で提出された企業の開示情報については、同形式でのダウンロードも可能です。
※1 国際的に標準化された電子開示に適したコンピュータ言語
EDINETのメリット
本章では、EDINETのメリットについて解説します。
【開示書類等の提出者】財務局(あるいは財務支局)に出向く必要がない
開示書類の提出先は、財務局もしくは財務支局です。しかし、財務局および財務支局は全国に10箇所しかないため、提出者が所在している都道府県に存在しない場合もあります。しかしEDINETであればインターネット経由で提出可能なため、労力がかからない点がメリットといえます。
【投資家】企業情報をスピーディーに取得できる
EDINETを利用すれば、投資家は企業のさまざまな情報をいつでも自由に取得できます。さらにEDINET APIを利用すれば、プログラムなどを通して自動的に必要な情報を取得することもできます。
EDINETの使い方
本章ではEDINETの使い方を解説します。
書類の提出手順
開示書類の提出に関する大まかな手順は以下のとおりです。
- コンピューター利用環境の設定
- 提出者の届け出
- ファンドの届出 (任意)
- サブユーザーの作成 (任意)
- 提出書類データの作成
- 書類の提出
書類の閲覧手順
開示書類の閲覧に関する大まかな手順は以下のとおりです。
- コンピューター利用環境の設定
- 提出者の届け出
便利な利用方法
EDINETは「EDINETコード」「証券コード」「名称」などで検索可能です。
EDINETコードとは、頭文字が「E」ではじまる5桁の数字であり、書類提出が必要な企業にそれぞれ割り当てられています。なお、EDINETは公表されており、公式サイトよりダウンロードが可能です。
これらの検索機能を活用すれば、競合他社の財務情報などをスムーズに取得できます。
EDINET利用時の注意点
2008年、EDINETにおいて、資本金わずか1,000円のある会社が、日本の大企業が発行する株式の過半数を取得したことを示す大量保有報告書が提出されました。
対象となった企業は日本を代表する自動車メーカーや製薬会社など6社であり、合計取得額は20兆円を超えていました。同日、金融庁が調査に乗り出し、本事案は虚偽報告であるとして、その会社に訂正報告書の提出を命じました。
現在、EDINETの提出には登記簿謄本等の書類が必要となっているため、このような事件が発生する可能性は低いのですが、念のため閲覧する情報については注意しておくことをおすすめします。
まとめ
本記事ではEDINETの概要や主な機能をはじめ、メリットや使い方を解説しました。
EDINETを活用すれば、開示書類を効率的に提出したり、他社の開示情報をいつでも自由に参照・ダウンロードすることができます。この機会に有価証券報告書や大量保有報告書などを閲覧して、競合他社の動きを分析してみることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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