- 更新日 : 2024年7月17日
US-GAAPとは?日本会計基準やIFRSとの違いをわかりやすく解説
US-GAAP(米国一般会計原則)は、国際ビジネスの舞台で不可欠な要素です。
特に財務報告の透明性を高め、グローバルな投資家からの信頼を獲得するために、US-GAAPの知識は必要となるでしょう。
本記事では、US-GAAPの基礎から応用までを網羅的に解説し、その重要性と適用についての理解を深めます。
GAAPとは
GAAPとは、企業の会計基準をまとめたルールを指すことで、Generally Accepted Accounting Principlesの略称です。
読み方はギャープと読み、米国会計基準のUS-GAAP、日本会計準のJ-GAAPなどがあります。
これらの原則の目的は、財務諸表を透明性が高く、比較可能で、一貫性のある方法で作成し提供することにあり、投資家や利害関係者が適切な財務判断を下すための信頼できる情報を確保することです。
US-GAAP(米国会計基準)とは
US-GAAPとは、米国で一般的に採用されている会計基準であることです。
金融報告の透明性、一貫性、比較可能性を促進するための詳細な規則とガイドラインの集合体とも言われています。
企業が財務諸表を作成する際、この基準に従うことで、投資家やクレジット提供者が企業の財務状態、経営成績、キャッシュフローを正確に評価できるようになります。
米国で採用しているとは言ったものの、国内企業でもUS-GAAPを採用することが可能です。
J-GAAP(日本会計基準)との違い
US-GAAP(米国一般に認められた会計原則)とJ-GAAP(日本の一般に認められた会計原則)は、それぞれ米国と日本における企業の財務報告の基準となっています。
US-GAAPは、特に投資者保護に重点を置いた非常に詳細で規則ベースのアプローチを採用しています。これは、具体的なガイドラインと詳細な規則を提供し、企業がその財務諸表をどのように作成すべきかについて明確な指示を与えているのです。
一方、J-GAAPは、企業の実質をより強調する原則ベースのアプローチを取り、企業が独自の判断を用いることを許容しています。これにより、企業はその特定の状況に最適な会計処理方法を選択することができます。
IFRS(国際会計基準)との違い
US-GAAPとIFRSの間には、資産、負債、収益の認識と測定に関していくつかの違いが存在しますが、昨今は双方でさまざまな変更がなされ、その差はなくなりつつあるといわれています。
US-GAAPとIFRSの主な違いとして挙げられるのは、時価評価の使用の範囲についてです。例えば、IFRSは時価評価をより広範に採用しており、一部の資産や負債を市場価値で評価することを許可しています。これに対し、US-GAAPは時価評価の使用がより制限されており、特定の条件下でのみ許される仕組みです。
一方、収益認識については、IFRSは新しい基準を導入して企業が契約から生じる収益をいつ認識するかに関する原則を明確にしましたが、これと同様の変更がUS-GAAPでも行われています。
前述のとおり、US-GAAPとIFRSの間には依然として細かな違いはあるものの、平準化が進んでいるのが現状です。
US-GAAPの採用企業
US-GAAPを採用している国内の企業は、主に以下6社です。
【US-GAAPを採用する上場企業】
- 富士フイルムホールディングス株式会社
- 株式会社小松製作所
- オムロン株式会社
- キヤノン株式会社
- オリックス株式会社
- 野村ホールディングス株式会社
参照:J-LiC 上場企業サーチ|米国基準採用の上場企業一覧
これらの企業は、各々が異なる産業セクターに属しながらも、グローバルなビジネス展開を加速させる戦略的な一環としてUS-GAAPを選択しています。
US-GAAPを採用することにより、これらの企業は米国の投資家や他国の投資家からの信頼を高めることができるでしょう。
US-GAAPが向いている企業
US-GAAPを採用するメリット、デメリットは主に以下の通りです。
メリット | デメリット |
|
|
US-GAAPは、特に国際的に事業展開を行う企業や、米国の資本市場での資金調達を目指す企業に適しています。
この会計基準は、その詳細な規則と透明性が高い財務報告要求により、世界中の投資家から高い信頼を得ています。
そのため、グローバルな視野で事業戦略を立て、国際的な投資家からの資金調達やパートナーシップを模索する企業にとって、US-GAAPの採用は大きな利点となるでしょう。
まとめ
US-GAAP(米国一般会計原則)の採用は、グローバルな視野で事業展開を志向する企業にとって、不可欠な戦略的選択となります。
この会計基準は、財務報告の透明性、一貫性、比較可能性を高めることにより、世界中の投資家からの信頼を獲得するための鍵です。
よくある質問
GAAPとは何?
GAAPとは、企業の会計基準をまとめたルールを指すことです。 これには、米国のUS-GAAPや、国際的なIFRS(国際財務報告基準)が含まれます。
US-GAAPが向いている企業は?
US-GAAPを採用することで、米国市場に上場しやすくなったり、企業の信頼性を向上できたり、といったメリットが期待できます。 そのため、国際的に事業展開を行う企業や、米国の資本市場での資金調達を目指す企業に向いています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
遡及監査(そきゅうかんさ)とは?実施の目的や条件、問題点などを徹底解説
多くのベンチャー企業が目標とするIPOには約3年の準備期間が必要だといわれています。 IPO申請には上場申請直前期から2期分の監査証明が必要ですが、さまざまな事情で監査対象期の期首を過ぎても監査人と監査契約を締結できない場合があります。 こ…
詳しくみるIPOにおける法務の重要性や役割、業務内容を解説
不正会計などの問題が深刻化したことに伴い、IPOにおける法務の重要性が高まっています。 法務部門はIPOにおいて内部統制やリスクマネジメントなどの役割を担い、法務DDの実施やコンプライアンス体制の構築などを行います。本記事では、IPOにおけ…
詳しくみるJ-SOX法(内部統制報告制度)とは?目的や対応の進め方・改正のポイントをわかりやすく解説【テンプレート付き】
上場企業は、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度への対応が必要となります。この内部統制報告制度が、いわゆるJ-SOXです。2002年7月にエネルギー大手企業のエンロンや通信大手企業のワールドコムの粉飾決算を受けてサーベンス・オクスリー法(…
詳しくみる中小企業において内部統制が重要な理由3つ|進め方をわかりやすく説明
内部統制は法律で定める大企業、上場企業に義務化されています。しかし、対象外の企業も内部統制を構築しても何ら問題はありません。むしろ中小企業が内部統制を整備することで、企業の成長を促進できる可能性があるのです。 本記事では、中小企業に内部統制…
詳しくみる内部統制とリスクマネジメントの関係は?違いや手順をわかりやすく説明
内部統制とリスクマネジメントは同じプロセスだと思われがちですが、実は異なる点も多々あります。あらかじめ違いを押さえておかないと、いざ進めるとなった際にスムーズに遂行ができなくなるかもしれません。 本記事では、内部統制とリスクマネジメントの違…
詳しくみるIPOに向けた社内規程(社内規定)の重要性、作成ポイントを解説
IPOに向けた社内規程の整備は、上場審査をクリアする上で重要なプロセスです。また、法令遵守やガバナンス強化によって対外的な信用力が高まることで、企業価値の向上も期待できます。本記事では、社内規程の重要性や作成のポイントを解説します。 IPO…
詳しくみる