- 更新日 : 2024年7月17日
スタートアップ支援とは?種類やメリット、具体的な支援策を解説
スタートアップ支援には、公的機関による補助金・助成金や投資家による出資、コンサルティング会社によるセミナーなどがあります。こうした支援を受けることで、IPOやM&Aなどに向けた事業の成長を加速させやすくなります。
本記事では、スタートアップ支援の種類や具体的な支援制度、支援を受ける際のポイントを解説します。
目次
スタートアップ支援とは
スタートアップ支援とは、スタートアップ企業を財務やビジネスなどのさまざまな分野からサポートする取り組みを指します。
経済産業省の報告書では、スタートアップを「新しいビジネスモデルを考えて、新たな市場を開拓し、社会に新しい価値を提供したり、社会に貢献することによって事業の価値を短期間で飛躍的に高め、株式上場や事業売却を目指す企業や組織」と定義しています。
社会にインパクトを与える革新的なビジネスの創出を目指すため、一般的な中小・ベンチャー企業と比較すると、より多くの経営資源(資金や優秀な人材など)を必要とします。
また、市場の最新トレンドや技術に対する理解も求められるため、資金やノウハウの不足によって事業が頓挫するケースも少なくありません。
また社会をより良い方向に変革するスタートアップの失敗は、国内外の経済にとって大きな損失となり得ます。そこで近年は、国や大手企業が一丸となって、スタートアップを資金や経営面から支援する事例が増えています。
国や地方自治体、民間企業などの支援を受けるスタートアップには、以下のメリットがもたらされます。
- 信用力がない場合でも、事業の成長に不可欠な資金を確保できる
- 成功している企業の経営ノウハウや、自社のみでは構築できないようなネットワークを確立できる
事業の成長速度を加速させることにつながるため、スタートアップ支援は積極的に活用すると良いでしょう。
※参考記事:経済産業省「平成30年度 地方創生に向けたスタートアップエコシステム 整備促進に関する調査事業報告書」
スタートアップ支援の種類
スタートアップ支援の種類と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
補助金・助成金
主に国や地方自治体が、原則として返済不要の資金をスタートアップに提供する支援策です。
返済不要であるため、利息の返済による資金繰りの悪化や、倒産後の弁済などを考慮せずに利用できる点が大きなメリットです。ただし、要件を満たしていないと利用できない点や、補助金・助成金対象となる事業の実施後に原則支払いがされるため、すぐに資金調達できない点がデメリットです。
投資
主にベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家などが、スタートアップの株式を購入する形で出資する支援策です。
こちらも原則として返済不要である点がメリットです。また、事業のポテンシャルが高く評価されれば、迅速に多額の資金を調達できる可能性もあります。
ただし、経営に介入されたり、議決権比率次第では会社を乗っ取られたりするリスクがあります。また、革新的で将来性の高いビジネスモデルや、投資家やVCとのネットワークがないと利用しづらい点もデメリットとなります。
セミナー・コンサルティング
開業や事業運営、IPOなど、スタートアップの成長に役立つノウハウを提供する支援策です。こうした支援策は、公的機関や地方自治体、民間企業で幅広く開催されています。
原則として無料で経営に役立つノウハウを得られる点がメリットです。また、イベントによっては投資家やVCなどとのネットワークを構築できるものもあります。
ただし、セミナーやコンサルティングの数は無数にあるため、自社にとって役立つものを見極めることが求められます。
国や地方自治体、公的機関によるスタートアップ支援
国や地方自治体、公的機関では、手厚いスタートアップ支援を行なっています。
この章では、代表的な支援策を2つ紹介します。また、特定の分野にフォーカスした支援策もお伝えします。
スタートアップ挑戦支援事業
スタートアップ挑戦支援事業は、独立行政法人である中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)が運営する支援策です。IPOやM&Aを目指すスタートアップ、または起業予定の個人を対象としています。
この制度では、スタートアップが抱えるさまざまな課題について、実績のあるアドバイザーに無料で相談することができます。オンライン会議システムを利用するため、全国どこからでも手軽に相談できる点が魅力です。1回あたり1時間〜1時間半程度の無料相談を何度でも利用できる点も、おすすめする理由の1つです。
※参考記事:中小企業基盤整備機構「スタートアップ挑戦支援事業」
東京都創業NET
東京都創業NETは、東京都で創業・起業を行う方を支援する総合プラットフォームです。主に、以下の支援を行っています。
- 創業・起業に関連する相談
- 融資や助成金制度の紹介
- 都内インキュベーション施設の紹介
- 各種セミナーおよびイベントの開催
ノウハウの獲得や資金調達、創業者同士のネットワーク形成などの支援サービスをワンストップで提供している点が特徴です。
※参考記事:東京都産業労働局「東京都創業NET」
特定分野への支援策
支援策の中には、特定分野(業界)のスタートアップを対象としたものもあります。
例えばNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営する「ディープテック・スタートアップ支援基金」では、革新的な技術の研究開発に取り組んでいるスタートアップを対象に、研究費用などの一部を助成しています。
また、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が運営する「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」では、創薬スタートアップを対象に、臨床試験などにかかる開発資金の一部を補助しています。
※参考記事:
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ディープテック・スタートアップ支援基金」
国立研究開発法人日本医療研究開発機構「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」
スタートアップが支援を受ける際のポイント
最後に、スタートアップが支援を受ける際のポイントを2点解説します。
プレゼンテーションや資料作成のコツを押さえる
資金提供を受けるには、数ある支援候補の中から選ばれる必要があります。そのため、ピッチング技術(プレゼンテーションのスキル)や資料作成のコツを押さえることが重要です。
たとえば、投資獲得のためのプレゼンテーションでは、主に以下の要素を押さえることが効果的です。
- ビジネスモデルをシンプルかつわかりやすく説明する
- 支援元を納得させるような説得材料を入れる(実績など)
- ライブ感を演出し、支援元を惹きつける
- 他の企業にはない自社らしさを訴求する(そのビジネスモデルを作るに至ったストーリーなど)
また、補助金や助成金申請の資料作成では、審査項目や加点項目を意識した書き方をすると効果的です。
幅広いネットワークを構築する
投資家や公的機関、士業などとの幅広いネットワークを構築することも重要です。
ネットワークを構築することで、必要なときに円滑に資金や経営面の支援を受けやすくなります。また、新たな支援制度をいち早く知ることにもつながるでしょう。
ネットワークの構築には、ビジネスマッチングのイベントや起業家向けのセミナーなどを活用するのがおすすめです。
まとめ
経済のグローバル化や技術革新などの影響により、スタートアップを取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。こうした変化にいち早く対応し、IPOやM&Aなどのイグジットを成功させるには、投資家や公的機関などによる支援の活用が効果的です。
本記事を参考に、スタートアップ向けの支援制度を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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