- 更新日 : 2024年7月12日
エンジェル投資家とは?メリットや探し方、出資後にIPOした事例を解説
エンジェル投資家とは、創業したてのスタートアップ企業に出資する個人投資家です。
エンジェル投資家から出資を受けると、経営のアドバイスを受けられたり、人脈を活用できるといったメリットがあります。
本記事では、エンジェル投資家の概要やベンチャーキャピタルとの違い、出資を受けるメリット・デメリット、探し方などを解説します。
目次
エンジェル投資家とは
エンジェル投資家とは、創業したばかりで実績があまりない企業(=スタートアップ)に投資する個人投資家です。
投資の目的・理由
エンジェル投資家は、主に将来性の高い企業や、ビジネスモデルが優れているスタートアップを投資対象としています。こうした企業に投資する理由としては、出資した企業のIPOやM&A(エグジット)の際に、株式の売却によって多額のリターンを得られることが挙げられます。
ただし、リターンが第一の目的ではなく、「社会問題の解決につながるビジネスを支援したい」といった理由で投資するエンジェル投資家も存在します。
エンジェル投資家が果たす役割
エンジェル投資家は、商品やサービスが出来上がっていない「プレシード」や、事業立ち上げ初期段階の「シード」といったフェーズにある企業へと投資します。
一般的に、革新的なアイデアや技術を形にするまでには、多大な資金を要します。しかし、プレシードやシード期にある企業への資金提供はハイリスクであるため、銀行や自治体の融資はもちろん、ベンチャーキャピタルからの投資を受けるのはハードルが高いのが現状です(一部、シードを対象としたベンチャーキャピタルもあります)。
そのため、起業したばかりの企業にとって、エンジェル投資家は数少ない資金調達先として貴重であり、事業成長を実現する上で重要な役割を果たします。
エンジェル投資家からの出資を受けるメリット
エンジェル投資家から出資してもらうメリットは以下の3つです。
メリット1:返済義務がない
エンジェル投資家からの資金調達は銀行の融資とは異なり、「出資」であるため、返済する義務が生じません。利息の支払いや元本の返済がないため、資金繰りの悪化を回避できます。また、起業家個人の財産をもって返済しなければならないという心配もありません。
他の資金調達手段が難しい場合でも、エンジェル投資家からの出資によって資金調達が可能となります。
メリット2:人脈を活用できる
エンジェル投資家の多くは、自らも経営者として成功した人物であり、他の経営者や企業との豊富なネットワークを有しています。そのため、投資を受ける際に優秀な人材や取引先などを紹介してもらい、事業の成長を加速させることが可能です。事業戦略の構築や業界知識の提供など、ビジネスの発展に役立つサポートも期待できます。
メリット3:経営のノウハウやアドバイスを得られる
成功した経営者でもあるエンジェル投資家から、経営に役立つノウハウやアドバイスを得られる可能性があります。
多くの場合、エンジェル投資家から出資してもらう起業家は、起業や経営の経験をあまり持っていないでしょう。そのため、起業家が自力でビジネスを展開する場合と比較して、有用なノウハウや経験を提供してもらうことで失敗の可能性を軽減でき、事業の成長性アップにもつながります。
エンジェル投資家からの出資を受けるデメリット
エンジェル投資家から出資してもらう際には、以下3つのデメリットに注意が必要です。
デメリット1:経営の自由度が低下する
自らがリターンを得られる可能性を高めるために、エンジェル投資家が積極的に経営に関与してくる可能性があります。エンジェル投資家と起業家の意見が食い違った場合、起業家の思う通りに事業を運営できなくなる恐れがあります。特に、エンジェル投資家の持株比率(≒議決権比率)には注意が必要です。
デメリット2:調達額が少ない場合が多い
一般的に、ベンチャーキャピタルや銀行からの資金調達と比較して、エンジェル投資家からの調達額は1,000万円未満と少ない傾向があります。そのため、起業当初から数億円単位での調達を必要とするケースには適していません。
デメリット3:企業の成長に責任を負う
エンジェル投資家は将来の成果に期待して投資するため、成果がその期待に到達しない場合、関係が悪化する可能性があります。投資家からの圧力に対処するためには、事業計画や成果を明確にする必要があります。
出資するエンジェル投資家のメリット・デメリット
エンジェル投資家を探す上では、投資家側の考えも知っておく必要があります。エンジェル投資家側の視点で、出資のメリットとデメリットを解説します。
エンジェル投資家が出資するメリット
創業まもない企業に投資するため、株価や時価総額が低いタイミングで株式を取得できます。投資後にIPOなどによってエグジットすると、その企業の株価は数十倍〜数千倍といった幅で上昇することもあります。つまり、安いうちに投資することで、IPOなどの際に莫大なリターンを得られる可能性があるのです。
エンジェル投資家が出資するデメリット
事業が始まっていない企業や、アイデアのみの状態にある企業に投資するため、当初の想定とは異なり、事業が頓挫する可能性が高いです。その結果、リターンを得られないどころか、投資資金を回収できなくなります。つまり、エンジェル投資は超ハイリスク・ハイリターンの投資手法だといえます。
エンジェル投資家の探し方
ここからは、エンジェル投資家を探す方法をいくつか取り上げ、それぞれの概要やメリット・デメリットを解説します。トラブルを避けるための注意点も併せてご紹介します。
方法1:知人からの紹介
知り合いの経営者仲間などから紹介してもらう方法です。
知人からの紹介ということで、エンジェル投資家から信用してもらいやすくなる点がメリットです。ただし起業家の人脈によって、探しやすさやエンジェル投資家の質が変わってくる点に注意が必要です。
方法2:ビジネスコンテスト(ピッチコンテスト)
スタートアップ企業などが集まるコンテストで、自社のビジネスについてプレゼンを行う方法です。企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)や自治体が開催しているケースもあります。
コンテストでは、投資家に対して事業への思いを直接を伝えることができる点がメリットです。起業家と直接交流できるイベントなども開催されています。
ただし、参加には条件が課される場合もあるため、事前に確認が必要です。
方法3:マッチングサイトを利用する
エンジェル投資家とのマッチングサイトを利用する方法です。
条件(経営への参画を控えめにしてほしいなど)を絞って、希望に適うエンジェル投資家を探せる点がメリットです。ただし、サービスによっては課金が必要となる上に、偽の投資家から詐欺行為を働かれる恐れがあります。
方法4:交流会に参加する
起業家や経営者が集う交流会やセミナーに参加し、エンジェル投資家と知り合う方法です。
直接対面で自らのビジネスモデルをアピールできる点や、比較的投資に積極的な起業家と出会いやすい点がメリットです。
ただし、参加するたびに時間や費用を要する上に、参加するイベントによって出会えるエンジェル投資家の質や量が左右されやすい点に注意を要します。
方法5:ソーシャルメディアの活用
X(旧Twitter)などのSNSやメルマガなどを利用する方法です。
投資家が関心を持つ情報やビジネスの進捗、業界トピックに関する情報を定期的に発信することで、エンジェル投資家を見つけられる可能性があります。
ただし、面識がない場合は反応が得られにくい可能性があります。
エンジェル投資家から出資を受けて成長した企業の成功事例
エンジェル投資による資金調達を経て、IPOおよびその後の成長を成功させた有名な事例として、株式会社メルカリを紹介します。
フリマアプリを運営する「メルカリ」の創業者は、同サービスの創業からわずか3ヶ月半後に5,000万円を出資してもらいました。サービスの構想のみの段階で5,000万円という大金を出資してもらった上に、企業価値も23倍ほどまで上昇しました。
このような形で大規模なエンジェル投資が決まった背景としては、下記が推測されます。
- メルカリ創業前に、創業者がM&Aによって数億円の売却益を得るほどの成功を収めている
- 創業者とエンジェル投資家が旧知の仲であり、投資家側が創業者の能力や人柄を理解していた
結果的には東証マザーズへのIPOを果たし、初日の終値ベースで7,100億円を超える時価総額を記録しました。優れたビジネスモデルや積極的な資金調達はもちろんですが、サービスが形になっていない時期に5,000万円という資金を調達できたことも、成功の一因を担ったと考えられます。
まとめ
本記事では、エンジェル投資家の定義やベンチャーキャピタルとの違い、出資を受けるメリット・デメリットなどを解説しました。
経営の助言を受けられるなど、エンジェル投資家からの出資を受けるメリットは大きいです。IPOを検討している方には、事業成長に向けてエンジェル投資家の活用を検討してみることがおすすめです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
私募債とは?概要、メリット、デメリット、発行の流れを解説
私募債は、スタートアップ企業やベンチャー企業が利用できる資金調達方法の一つです。資金調達といえば銀行からの融資を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、私募債を上手に活用すれば、短期間で資金を調達でき、事業成長を促進することにつながります。 …
詳しくみるエクイティファイナンスとは?メリットやデメリットをわかりやすく解説
企業が事業を展開し、さらに成長するためには資金調達が重要になります。資金調達方法にはさまざまなものがありますが、中でも新株を発行し、出資者から資金を調達するエクイティファイナンスはよく利用される資金調達方法です。 エクイティファイナンスは株…
詳しくみる時価発行増資とは? 他の増資方法との違いやメリット、注意点を解説
成長期にあるスタートアップ企業にとって資金調達は死活問題です。 資金の調達方法はさまざまですが、市場価格を基準に新株を発行する時価発行増資が注目されています。時価で発行するため公平性を保ちながら柔軟に資金調達できる点が魅力ですが、市場価格の…
詳しくみる転換社債とは?普通社債との違いやメリット、リスクを解説
転換社債とは、一定の条件下で株式に転換できる「新株予約権」がついた社債です。 この金融商品は企業の資金調達の手段として利用され、投資家にとっては株式と債券の中間的な特性を持つ魅力的なオプションであるといえます。 企業にとっては、普通社債より…
詳しくみるシリーズCとは?資金調達方法や金額の相場・成功のポイントを解説
投資ラウンドには複数の段階があり、そのうちの一つがシリーズCです。一般的に、シリーズCは将来に向けた資金を調達する重要な局面ですが、具体的にどのような性質を持ち、どうやって資金を調達するのかご存知ない方も多いのではないでしょうか。 本記事で…
詳しくみる資金調達におけるファクタリングとは?メリット・デメリットや注意点を解説
ファクタリングとは、将来回収予定の売掛金や未収入金などの債権を特定の業者に買い取ってもらい、早期に現金化するサービスのことです。売掛金の未回収は企業の経営に大きな影響を与えるため、中小企業やベンチャー企業を中心にファクタリングに関心を持つ人…
詳しくみる