- 作成日 : 2024年10月21日
資金調達を成功に導く事業計画書とは?プレゼンのポイントと合わせて解説
多くの企業、特に創業間もないスタートアップにおいて、経営者やその関係者らの資本だけを頼りに資金を捻出・運用し続けることは困難でしょう。そのため多くの場合、スタートアップは外部から資金提供を受けることになります。
したがって、経営者は資金提供者候補を説得する必要があります。この際に自社の魅力を伝えることが大切であり、その手段として事業計画書が用いられます。本記事では、資金調達を成功に導くために欠かせない、事業計画書の作成方法を解説します。
目次
事業計画書の必要性
まず、スタートアップにとってなぜ事業計画書が必要か、その理由を解説します。
資金調達ラウンドにおける事業計画書
一般的に、企業が自己資金による事業運営を継続できなくなった場合は、外部から資金提供を受けます。
外部へ自社の魅力を伝えて資金提供に踏み切らせるためには、スタートアップおよびその経営者がプレゼンを行う必要があります。
一般的にこれを資金調達ラウンドと呼ばれ、段階に応じてシリーズAやシリーズBなどに区分けされています。各フェーズはそれぞれ、資金調達の規模や資金提供元が異なります。
その中でも特に創業間もない、いわゆるシード期やアーリー期の企業にとっては、自社の魅力を伝えるための事業計画書が、資金調達の成功の鍵を握るといっても過言ではありません。
資金調達ラウンドについては以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
事業計画書を提示する資金提供元の種類
資金を提供する出資者は、その目的に応じて大きく3種類に分かれます。
- 出資:個人投資家、ベンチャーキャピタル、PEファンドなど
- 融資:金融機関など
- 補助金・助成金:政府各省庁、自治体、公的機関など
詳しくは後述しますが、それぞれの種類に応じて、事業計画書および資金調達ラウンドのプレゼンで訴求するポイントが異なる点に留意しましょう。
資金調達ラウンドの事業計画書に反映すべき内容
次に、スタートアップの事業計画書に記載すべき内容やポイントを紹介します。
事業計画書で押さえておくべきポイント
事業計画書は、資金調達ラウンドを成功させる、すなわち資金獲得につなげるための手段です。
資金を得るために、スタートアップが資金提供元に伝えるべきは「このビジネスで自社が儲けられるか、自社が今後成長するか」という点になるため、このポイントを忘れないようにしましょう。
事業計画書の記載事項
自社の成長性やビジネス性を訴求するために必要な項目として、下記の要素が挙げられます。
- プロフィール:経営者および経営陣など主要メンバーの実績や略歴
- パーパス:解決したい課題やミッション
- アイデアの骨子:課題解決およびミッション達成につながるためのソリューション
- ビジネスモデル:アイデアを実現するためのビジネスモデル・戦略
- 市場規模:該当する市場の大きさと成長性
- 独自性:該当する市場の競合と自社の差別性
- 財務計画:PL・BS・CFなどの財務諸表のシミュレーション
- 資金調達額:希望したい資金調達の金額とその使用用途
プレゼンの相手や内容に応じて必要な項目の追加や順番の変更を加える場合もありますが、事業計画書の基本的な要素として上記を押さえておきましょう。
資金提供元に応じた事業計画書のポイント
続いて、出資・融資・補助金/助成金など、資金提供元の違いに応じた事業計画書のポイントについて解説します。
出資を期待する場合のポイント
出資をする投資家としては、ベンチャーキャピタルやPEファンド、エンジェル投資家などが挙げられます。このような投資家は、基本的に企業の株式を取得し、その株式価値の向上分の差となる売却益を期待して、資金を提供するケースが多いでしょう。
したがって、どれだけその企業が成長できそうかという、将来性を伝えることがポイントとなります。
また、投資家の立場やニーズに応じて、個々の展望を踏まえた時間軸を意識してアピールできると尚良いでしょう。例えば、3年後の株式売却を見据える投資家に、10年後の将来性を語ってもあまり効果はありません。
さらに、CVCのように単純な投資の他、投資家側企業の本業とのシナジーを期待する場合も想定されるため、そのような投資家にはシナジーについても言及できると良いでしょう。
融資を期待する場合のポイント
融資を行う投資家は、銀行などの金融機関が該当します。融資では、貸し付けた金額が利子とともにきちんと返済されることが、何よりも重要です。
したがって、該当するスタートアップの財務的な安全性・安定性が重要視されるでしょう。安定的にキャッシュフローを回して、返済をできる計画を示すことがポイントとなります。
補助金・助成金を期待する場合のポイント
補助金や助成金を支給するのは、地方自治体や商工会議所などの公的機関です。このような機関にとっては、支給先が公的な利益に資するか、提示する支給要件に合致しているか、また支給先の健全性に問題はないかなどが重要となるでしょう。
したがって、ミッションなどの社会的インパクトや経営者らのプロフィール、要件に適したビジネスモデルなどが訴求のポイントになるといえます。
資金調達ラウンドのプレゼンを成功させるためのポイント
最後に、事業計画書を用いたプレゼンを成功に導くためのポイントを説明します。
- シンプルかつわかりやすいストーリーを意識すること
- 課題やソリューションが洗練され、独自性・新規性があること
- 独自性のあるアイデアに説得力のあるロジックや根拠を示すこと
3点それぞれのポイントを詳しく解説します。
1. シンプルかつわかりやすいストーリーを意識すること
スタートアップのプレゼンでは独自性を意識しすぎるあまり、第三者に理解されにくい、高度な専門知識を読解に必要とする事業計画書を作成してしまうケースがしばしば見受けられます。
これでは、資金を提供する側が、確信を持って可否を判断することは難しくなります。そのため、できるだけシンプルでわかりやすいプレゼンを意識することが欠かせません。
2. 課題やソリューションが洗練され、独自性・新規性があること
一方、プレゼンがシンプルであることと、ビジネスに独自性や新規性があることは別のポイントです。シンプルなストーリーを意識しつつも、課題やソリューションは洗練させ、イノベーションが起きそうなテーマを見出し、独創的なアイデアを示すことにはこだわり抜くべきです。
多くの場合に資金力や技術力で大企業に劣るスタートアップが差別化を図れるのは、この独自性や新規性のあるアイデアであり、投資家側もこの部分に注目しているということを意識しておきましょう。
3. 独自性のあるアイデアに説得力のあるロジックや根拠を示すこと
既にブランド力がある大手企業とは異なり、スタートアップはそのアイデアのみで勝負する必要があります。
したがって、<相手を説得するための論拠は丁寧に提示すべき/b>でしょう。例えば、研究のエビデンスを示したり、権威ある人物からの評価を引用したりすることも1つの手段です。
まとめ
本記事では、スタートアップが資金調達を成功させるために欠かせない事業計画書について、その記載項目やポイント、プレゼンでの注意点などを解説しました。
スタートアップは事業運営のために資金調達を行う必要があり、その説得を行う手段として事業計画書が存在します。基本的な項目を押さえて資金提供元の立場を意識した構成にすることや、説得力があって分かりやすく独自性のあるプレゼンを心がけることがポイントとなるでしょう。
本記事での内容を参考に、改めて自社の事業計画書を見直し、投資家を惹きつけるプレゼンを目指してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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