- 更新日 : 2024年7月17日
リスク管理委員会(リスクマネジメント委員会)とは?役割や目的を解説
現代社会では、複雑化とグローバル化が進展し、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。このような状況下において、企業が持続的な成長と発展を遂げるためには、将来起こり得るリスクを的確に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。
そこで重要な役割を果たすのが、「リスク管理委員会」です。本記事では、リスク管理委員会の概要、役割、重要性について解説していきます。
目次
リスク管理委員会(リスクマネジメント委員会)とは
リスク管理委員会とは、企業や組織が直面する様々なリスクを識別、評価、そして管理するために設立される専門の委員会です。
リスク管理委員会は通常、企業の上層部や取締役会のメンバー、リスク管理の専門家、財務部門の代表などで構成されます。
この多様なメンバー構成により、委員会は幅広い視点からリスクを評価し、包括的な対策を講じることが可能です。
リスク管理委員会の役割
リスク管理委員会の役割は、企業の信頼性や発展などを担保するために伴ってくるリスクを管理する役割があります。
まず、委員会は企業全体のリスクを体系的に識別し、その影響を評価します。これには、財務リスクや運営リスク、法的リスク、さらには市場の変動やブランドイメージに関わるリスクなど、多岐にわたるリスクが含まれるのです。
次に、リスク管理委員会は識別されたリスクに対して、規程類の策定など適切な対策を立案し実行します。
これらの対策は、リスクの発生を防ぐための予防策、発生したリスクの影響を最小限に抑えるための軽減策、そしてリスクが現実化した際の迅速な対応策など、多層的なアプローチを含みます。
このプロセスでは、リスクの受容、移転、軽減、回避といった選択肢を慎重に検討します。
リスク管理委員会の目的
リスク管理委員会の目的は、企業の健全な運営と持続的な成長を確保するために、潜在的なリスクを予測し、これに対処する方策を立案・実行することです。
委員会の活動は、まず企業の業務に関連するリスクの特定から始まります。これには、財務リスク、運営リスク、法的リスク、さらには市場リスクなど、さまざまな側面が含まれます。
次に、特定されたリスクの影響度や発生確率を評価し、優先順位をつけて対策を講じます。この過程で、リスクの受容、移転、軽減、または回避の戦略が検討されます。
さらに、リスク管理委員会は定期的にリスクのモニタリングとレビューを行い、状況の変化に応じて対策を見直します。これは、リスク環境が常に変動する中で、企業が柔軟かつ迅速に対応できるようにするためです。
リスク管理委員会の立ち上げ方
リスク管理委員会の立ち上げ方として、まず組織体制を決定すること、委員会規定を制定することが大切です。
➀組織体制を決定する
まずは、組織体制を構築していくことから始めます。リスク管理委員会の事務局は、会社のリスク管理を担当する部署が務めます。
同様に、コンプライアンス委員会の事務局は会社のコンプライアンスを担当する部署が担い、規模が小さい企業では、両委員会の事務局が同じ部署となることもあります。
特に委員会で何をどのように調査・審議するかは、会社のリスク管理やコンプライアンス体制の基盤となるため、調査・審議事項の決定において重要な役割を担う事務局の責務は大きいです。
②委員会規定を制定する
委員会を立ち上げるためには、委員会の内容を規定する社内ルールを制定する必要があります。この規定の制定およびその後の改定は重要であるため、通常は取締役会や経営会議で決議されます。
委員会で決める必要がある規定は、主に以下のとおりです。
【委員会規定の事項例】
- 委員会の位置づけ
- 委員
- 委員長
- 開催頻度
- 調査・審議内容
- 取締役会・経営会議への付議・報告
- 事務局
リスク管理委員会の進め方
リスク管理委員会を開催する際、主に以下の流れで進めます。
- 議題を確定する
- 報告事項を確定する
- 資料を作成する
- 委員会を開催する
- 審議内容を報告する
➀議題を確定する
議題を確定するためには、まずリスク管理に関する現状の把握が必要です。企業全体のリスク状況を詳細に分析し、潜在的なリスクを洗い出すことから始めます。
この分析には、各部門からのリスク報告や、外部環境の変化に関する情報収集が含まれます。これにより、企業が直面する主要なリスクを特定し、優先順位をつけることが可能です。
②報告事項を確定する
リスクカテゴリーごとの調査・説明に加えて、最近のリスク管理やコンプライアンスに関する話題、監督当局の動向、法令の改正状況などを報告事項として取り上げます。
さらに、経営陣に適時・適切な情報提供を行うことで、リスク管理とコンプライアンス体制の整備と向上を図ります。
③資料を作成する
まず、資料作成の第一歩として、会議のアジェンダを明確にすることが必要です。アジェンダには、議題の要点や討議すべきリスク項目を具体的に記載します。
これにより、委員会メンバーが事前に議論の方向性を把握し、効果的な準備が可能となります。アジェンダは、会議の進行をスムーズにするための重要なツールとなります。
次に、各議題に関連する背景情報を収集し、整理することが求められます。リスク評価のデータ、最近のリスク事象、外部環境の変化、法令改正の状況など、必要な情報を網羅的に収集し、分かりやすくまとめます。
具体的なデータや事例を用いることで、議論がより具体的かつ実践的なものになるでしょう。
資料には、リスク評価の結果やリスク対応策の進捗状況も含めます。これにより、委員会メンバーは現状のリスク管理状況を把握し、次のステップを検討するための基礎情報を得ることが可能です。
④委員会を開催する
会議当日は、まず事務局がリスク管理およびコンプライアンス体制の現状について、委員会資料に基づき説明を行います。
この説明は委員による調査や審議の基盤となるため、情報は分かりやすく、かつ十分に詳細であることが必要です。
まず、事務局が委員会資料に基づいてリスク管理およびコンプライアンス体制の整備状況について説明します。
この説明は委員の調査や審議の基礎となるため、分かりやすく、かつ必要な情報を十分に提供することが求められます。
⑤審議内容を報告する
委員会を開催しただけでは終わりではありません。委員会終了後、審議状況を含め、その内容を取締役会や経営会議に報告する必要があります。
これにより、組織全体でリスクに対する共通理解が深まり、リスク管理体制の一貫性が維持されます。報告書の内容は、定期的な会議でのフォローアップや改善活動にも活用され、継続的なリスク管理の質の向上に寄与するでしょう。
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まとめ
リスク管理委員会は、企業が直面する財務、運営、法的、市場などのリスクを識別、評価、管理するために設立される専門委員会です。
委員会は企業の上層部やリスク管理専門家で構成され、多角的な視点からリスクを分析し、予防策や軽減策を含む対策を立案します。主な目的は企業の健全な運営と持続的成長を支えることであり、リスクのモニタリングとレビューを定期的に行うことで、柔軟かつ迅速な対応が可能です。これにより、リスク管理体制の一貫性と質の向上が図られます。
企業はリスク管理体制を強化することで、持続的で安定した成長を期待できるでしょう。
よくある質問
リスク管理委員会の役割は?
リスク管理委員会の役割は、企業の健全な運営と持続的な成長を確保するために、潜在的なリスクを予測し、戦略を策定することです。 財務リスク、運営リスク、法的リスク、さらには市場リスクなど、さまざまなリスクを回避するよう、企業努力を努める必要があります。
リスク管理委員会の主な議題は?
リスクマネジメント委員会の主な議題は、以下のとおりです。
- リスク状況
- 法務・コンプライアンス
- J-SOX
- 個人情報保護計画
- 情報システムセキュリティ点検報告
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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