- 更新日 : 2024年7月17日
フィジビリティスタディとは?重要性と成功のポイントを解説
フィジビリティスタディとは、新規事業の開始前に、課題・リスクの洗い出しを行い、実現可能性を分析することです。リスクの回避につながるだけでなく、利害関係者への説明材料にもなり得ます。
本記事では、フィジビリティスタディの意味やメリット、プロセスを解説します。また、日本企業の海外におけるフィジビリティスタディの実施事例も紹介します。
目次
フィジビリティスタディとは
はじめに、フィジビリティスタディの意味、歴史、POCとの違いを解説します。
フィジビリティスタディの意味
フィジビリティ(英語表記:feasibility)は、直訳すると「実現可能性」や「実行可能性」を表します。フィジビリティスタディは、ビジネスにおいて新規事業や新製品開発などを開始する前に、対象が実現できる可能性を調査することを意味します。
フィジビリティスタディの歴史
フィジビリティスタディは、アメリカ政府が1933年にテネシー川流域開発公社を立ち上げた際の事例が発端であるといわれています。世界恐慌対策であった公社の設立に際しては、さまざまな視点から実現可能性の調査が実施されました。
この調査によってリスクの軽減に成功したことから、それ以降フィジビリティスタディが広く活用されるようになっています。
フィジビリティスタディとPOCとの違い
フィジビリティスタディとPOC(Proof of Concept)は、厳密に見ると意味が異なります。POCは「仮説検証」や「概念実証」を意味し、新規事業などにおいてプロトタイプを用いてニーズや課題の検証を行うことを指します。
フィジビリティスタディとPOCの主な違いは以下のとおりです。
| フィジビリティスタディ | POC | |
| タイミング | プロトタイプの作成前 | プロトタイプの作成後 |
| 目的 | 実現可能性の調査 | 実現可能性のテスト |
フィジビリティスタディのメリット・重要性
フィジビリティスタディの実施で期待できる3つのメリットを解説します。
メリット1:事業の実現可能性や活動指針が明確となる
多角的な視点から新規事業や新製品を分析することで、実現する可能性がどの程度あるかを明確化できます。また、「いつ・何を行うべきか」という活動の指針も見えやすくなり、リソース活用や業務の進行を効率化します。
メリット2:リスクの回避につながる
フィジビリティスタディでは、社内および市場に存在するリスクを評価します。事業を取り巻くリスクを洗い出し、対策を立てておくことで、失敗をにつながるリスクを回避しやすくなります。
リスクが軽減されることで、プロジェクトが成功する可能性アップを期待できるでしょう。
メリット3:利害関係者に対する説明資料の作成に役立つ
フィジビリティスタディの分析結果は、銀行や投資家などの利害関係者に対して、事業計画の根拠や背景を説明する際の資料作りに役立ちます。
緻密な分析に裏付けられた説得力のある情報を提示することで、利害関係者からの信用や協力を得やすくなり、資金調達などを有利に進めることができるでしょう。
フィジビリティスタディにおける5つのプロセス
フィジビリティスタディは、主に以下の流れで実施します。
1. 課題の洗い出し
2. 必要事項のリスト化
3. 代替案の決定
4. 評価項目の洗い出し
5. 調査の実施・分析 ・評価
この章では、これらの流れに沿って各プロセスの実施事項を解説します。
ステップ1:課題の洗い出し
はじめに、新規事業の立ち上げで課題となる要素を洗い出します。
内部環境(自社の強みや弱み)、と外部環境(市場環境や顧客のニーズなど)を分析し、資金繰りや人員、業務プロセスなどで抱えている・将来的に起こり得る課題を明らかにしましょう。
ステップ2:必要事項のリスト化
次に、課題解決に向けてクリアすべき項目(必要事項)をリスト化します。
例えば人材不足ならば人材の新規採用、生産性の低さであれば最新システムの導入といったように考えます。
必要事項をリスト化する際には、課題の解決にかかるコストや期間も明確にすることが一般的です。
ステップ3:代替案の決定
ステップ2でリスト化した必要事項をもとに、課題解決に向けた施策を複数決定します。
1つしか施策を検討していないと、課題の解決が困難となり、新規事業の続行が不可能になり得ます。
そのため、多角的な視点から状況の変化を予測し、複数の代替案を検討しておくことが不可欠です。
ステップ4:評価項目の洗い出し
代替案を複数決定したら、フィジビリティスタディで評価する項目を洗い出します。評価項目に関しては、内部環境と外部環境の双方を考慮して洗い出すことが重要です。
具体的な評価項目に関しては、後ほどくわしく解説します。
ステップ5:調査の実施・分析 ・評価
最後に、ステップ4で決定した評価項目を基準として、フィジビリティスタディを実施します。また、その結果を分析し、資料にまとめます。
一般的に、資料には「新規事業で想定される課題」、「(課題解決に向けた)必要事項の一覧」、「課題解決の方法」、「実現可能性の度合い」などを取りまとめます。
フィジビリティスタディを成功させる2つのポイント
フィジビリティスタディを成功させる2つのポイントを解説します。
ポイント1:評価項目を明確にする
前述のとおり、最も重要なのは「評価項目の明確化」です。
評価項目を明確にすることで、実現可能性の基準が明確となり、利害関係者や経営陣にとって必要な情報を得やすくなります。
一般的に、評価項目(調査対象の分野)は「技術」、「財務」、「市場」、「運用面」の4つとなります。それぞれの主な評価内容は以下のとおりです。
| 評価項目 | 主な評価内容 |
| 技術 |
|
| 財務 |
|
| 市場 |
|
| 運用面 |
|
ポイント2:完璧さを求めすぎない
新規事業の立ち上げ時には不確定要素が高く、実現可能性を完璧に見積ったり、リスクへの対策を実行したりすることは難しいです。そのため、あらかじめフィジビリティスタディを行う期間や完了の基準を決めておくことが重要です。
そうすることで、いつまでもフィジビリティスタディを続けてしまい、新規事業の開始が先延ばしになる事態を回避できます。
フィジビリティスタディの実施事例
株式会社イースクエアは、フィリピンにおいて、日之出産業株式会社が有する「分散菌処理システムを活用した汚水処理改善技術導入案件」に関してフィジビリティスタディ支援を実施しました。
本件調査では、対象国及び対象地域における「開発課題(汚水処理システムの機能不全など)」や「当該技術の競争優位性」などが分析されました。調査では、処理水のモニタリング作業や市内公設市場の現地調査など、本格的な調査が行われています。
報告書では、調査の結果として課題に対する対応策や、具体的なビジネス展開計画などが記載されており、実用的な提案がされているといえます。
※参照元:
株式会社イースクエア「実現可能性調査(フィージビリティ・スタディ)」
日之出産業株式会社「フィリピン国分散菌処理システムを用いた汚水処理改善技術導入案件化調査 業務完了報告書」
まとめ
フィジビリティスタディの実施は、新規事業の立ち上げに潜むリスクを洗い出し、事業の成功可能性を高めることにつながります。
今後は、経済のさらなるグローバル化や競争の激化に伴い、事業の不確実性が高まると考えられます。それに伴い、フィジビリティスタディの重要性はより一層高まるでしょう。
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