- 更新日 : 2024年7月12日
IPOにおける原価管理の重要性|目的や原価管理体制強化のポイントを解説
IPOにおける原価管理は、利益を上げるために重要です。
企業が原価管理を行うと事業の原価が把握できるため、経済や社会情勢で原価が大きく変動した場合でも損失を最小限に抑えられます。会社の利益を上げるためにも、原価管理体制を強化する目的を再認識し、管理方法を理解する必要があるでしょう。
本記事では、IPOにおける原価管理を強化する重要性や原価管理の流れ、IPOの原価管理でよく起こる問題などについて解説します。
目次
IPOで原価管理体制を強化する重要性

IPOでは、原価管理体制を整備することが重要です。
その理由として、あらゆる経営管理体制の構築や運用と密に関係している点が挙げられます。
原価管理は、企業の予算計画や予算の見直しなどで重要となり、適切な管理ができていない場合は予算の決定が難しくなります。
仮に原価管理体制が構築されない中で経営を進めてしまうと、正確な利益管理がしづらく、勤怠管理や販売管理、購買管理などの業務フローの整備がきれいにできなくなる恐れがあるのです。
これらがしっかりと整備されていないと、原価計算に大きな手間が発生してしまいます。無駄な手間が増えることで、月次決算の遅れを招き決算の早期化を実現できなくなるかもしれません。
IPOの準備期間においては、さまざまな経営管理体制に結びつく項目となるため軽視しないようにしましょう。
IPOにおける原価管理の目的

企業がIPOを実現させるだけでなく、IPO後も成長し続けるためにも重要になります。
IPOにおける原価管理を行う目的は、主に以下の2つです。
- 利益率を向上する
- リスクを管理する
それぞれ見ていきましょう。
利益率を向上する
自社の利益がどのくらいになるのかを把握するためにも、原価管理は必要です。
自社の製品やサービスを提供するのにかかる費用の原価を把握することで、適切な製品価格の設定や無駄なコストの削減が実現できます。
原価管理体制が整備されている企業は生産プロセスを最適化できるため、不要なコストをかけることなく利益率を効率よく上げられます。
また、正確な原価情報を把握することで、競争市場で価格戦略を適切に調整できる点も特徴です。競合他社の価格設定に合わせたり、利益を最大化できる価格に設定したりできるので、収益性を高められるでしょう。
リスクを管理する
リスク管理も目的の一つとして挙げられます。原価管理は利益率を向上させるために行うので、販売価格に対して仕入れ価格がどの程度の割合を占めているのか、把握しておくことが必要です。
管理が行われていない企業では、仕入れ価格と販売価格のバランスが保たれず、損失に繋がりかねません。
原価の動きを把握できれば、円相場や原油価格の高騰などの原価変動のリスクにも対応できるでしょう。
原価管理の流れ

原価管理の流れは、以下の通りです。
- 標準原価を設定する
- 実際原価を算出する
- 標準原価との差異を分析する
- 差異を改善する
標準原価や実際原価の設定は業種や製品、システムなど関係なく共通して行われます。
それぞれの項目でやるべき内容について、詳しく見ていきましょう。
①標準原価を設定する
標準原価とは、商品の製造するにあたって目標とする原価価格のことです。標準原価は、製品を製造するのに使用される原材料の価格や量などから計算されます。
設定する際は、実現可能な標準原価であること、利益バランスを考慮することなどを意識しましょう。
②実際原価を算出する
具体的な開発・生産段階に入ったら、実際に原価計算を行います。
実際原価は、製品やサービスを提供する際にかかる実際の費用やコストのことです。材料の購入費や人件費、製造設備の維持費や運送費など、具体的な経費を正確に計算したものを指します。
実際原価情報によってコストの透明性を高められるので、どのコスト項目が高いのか特定し、無駄を削減するための施策を策定する際にも役立ちます。
③標準原価との差異を分析する
実際原価を算出したあとは、標準原価と比較し、差異を分析します。
実際のコストとの差異を分析することで、どこでコストが発生しているのかを把握できます。たとえば、原材料価格の上昇や生産プロセスの効率の低下によるコスト差異を特定することが可能です。
差異分析で課題点を見つけることは、事業が今後成長していくためにも重要です。
④差異を改善する
差異分析で無駄や課題が見つかったら、改善案を検討しましょう。
標準原価と実際原価で大きな違いがある場合、適切な利益を得られていないため改善しなければならない箇所は多くあります。
例えば、生産ラインの工程改善や労働力の最適化などを行うために一部の業務を外部委託する、といったことです。
業務フローを改善していく上で、うまく外注を使えば、業務がスムーズに回り、利益を生み出せる仕組みが作れるでしょう。
また、変動費よりも固定費の方が割高になっている場合もあるため、コストを削減したい時は固定費の見直しも必要です。
IPOの原価管理でよく起こる問題

事業の成功にも繋がるため重要となる原価管理ですが、さまざまな問題点もあります。
よく起こる問題には、以下が挙げられます。
- 原価を正確には把握できない
- 原価計算をおこなうためには専門的な知識が必要になる
- 原価管理の作業には時間と手間がかかる
原価は世界の情勢などさまざまな要因によって大きく変動するため、正確な数値を把握するのは容易ではありません。
また、複雑な計算となるため専門知識がない人がおこなうと正確な数値の算出は難しくなります。
専門的な知識がある人がおこなったとしても時間と手間がかかる作業なため、企業にとっても負担になるでしょう。
IPOの原価管理体制を強化するためのポイント

強化するためには、以下の2つのポイントを意識しましょう。
- 原価管理システムを活用する
- IPO支援サービスを活用する
IPOにおいて、原価管理体制の強化は企業を成長させるために重要ですが、専門的な知識が求められたり手間がかかったりするリスクもあります。
このリスクを軽減させるためには、システムやサービスを活用して効率よく進めていきましょう。
なおIPOの原価管理体制を強化するためのポイントについて、詳しく紹介します。
原価管理システムを活用する
強化するためのポイントとして、原価管理システムを活用するのが有効です。原価管理システムとは、原材料費だけでなく設備費や人件費など原価管理に関係のあるすべての費用を把握できるシステムです。
システムを活用すると、経理データや生産実績データなどを自動で組み合わせてくれるため原価の算出が少ない手間で可能になります。
また、システムは原価の算出できるだけでなく、損益計算や原価差異分析も可能です。改善点や問題点も発見できるため、コスト削減にも繋がる利点があります。
より正確なデータを算出したい人やコストを削減したい人は、原価管理システムの導入も検討しましょう。
個別原価管理に活用可能なシステム
IPOを目指す企業にとって、精緻な原価管理は不可欠です。属人的なExcel管理では限界がある中で「マネーフォワード クラウド個別原価」では、効率的かつ正確な個別原価計算を行うことが可能です。
プロジェクト単位の収支や予実管理をリアルタイムで可視化し、経営判断に必要なデータをスムーズに把握可能です。原価差異の要因分析や部門間の連携強化にも有効で、IPO準備段階の原価管理体制の高度化に貢献します。
IPO支援サービスを活用する
IPO支援サービスを活用するのも有効でしょう。IPO支援サービスとは、IPOに関する知識のある専門家にアドバイザーになってもらうサービスのことです。
企業がIPOに至るまでに、監査関連業務や資本政策の策定、管理体制の整備などさまざまな業務の対応をしなければなりません。また業務に対応するためには、管理部門責任者が必要です。しかし外部に委託する場合、それだけコストや時間がかかります。
IPO支援サービスを活用すれば、外部委託ほど費用をかけずに、知識の豊富な専門家からサポートを受けながらIPOを進められます。
まとめ
原価管理が整備されている企業は、無駄を省いて安定した収益が得られます。原価計算を行うことは、事業の利益率を向上させるだけでなく、リスク管理の点でもメリットがあるのです。
一方で、計算が複雑で手間がかるため知識がない場合は正確な原価を算出できないリスクもあります。原価計算を簡単におこなうためには、原価管理サービスやIPO支援サービスを活用して効率よく進めましょう。
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よくある質問
IPOで原価管理が重要な理由は?
原価管理を行うことで、企業の利益を継続的に確保する点が挙げられます。 原価管理は企業の利益に影響を与えるので、正しく実施することで予算計画の見直しにも役立ち、長い目で見れば事業の成長にも繋がるのです。
IPOにおける原価管理の目的は?
自社の事業によって生まれた利益を正確に把握し、より収益を向上できるようにお金の流れを見直す目的があります。 原価を正しく把握できていないと、無駄な費用が発生していたり、適正価格を設定できていなかったりして、損失を見逃していることも考えられるのです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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