- 更新日 : 2024年7月12日
マザーズから東証一部への昇格条件は?新市場区分の上場条件を説明
「マザーズから東証一部へ昇格するにはどうすればいい?」と疑問に思っている経営者の方も多いのではないでしょうか?マザーズから東証一部へ昇格するには、一定の条件をクリアする必要があります。資金の調達が効率的に行えたり会社のステータスを高められたりなど、多くのメリットが期待できるため、東証一部上場に昇格を目指す経営者にとっては、条件について詳しく知りたいはずです。
そこで本記事では、マザーズから東証一部への昇格に必要な条件をご紹介し、 東証プライム市場の経過措置についても解説します。これから自社を東証一部へ上場させたいと思う経営者の方に向けて、有益な情報を記載しておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
マザーズから東証一部への昇格に必要な条件は?
マザーズから東証一部へ昇格するためには、主に以下の条件をクリアする必要があります。
- 株主数:800人以上
- 流通株式数:2万単位以上
- 流通株式時価総額:100億円以上
- 流通株式比率:35%以上
- 時価総額:250億円以上
- 収益:最近2年の利益合計25億円
- 純資産の額:連結純資産の額が 50 億円以上
上記を見ると、さまざまな条件を満たす必要があることがわかります。
時期としては、マザーズへの上場後、一定期間(大体5年)が経過していることが求められます。また財務面では、安定した業績と財務状況が必要で、売上高や営業利益の増加、負債比率の低減なども重要です。さらに、株式市場における評価も重要であり、流動性の高さや市場規模に関わる要素も考慮されます。
このように、昇格には財務面や業績面での一定水準の達成が求められ、厳格な審査を通じて、業績の安定性や持続性、財務の健全性が評価される仕組みとなっています。
なお、2022年4月に市場再編が行われ、現在ではマザーズや東証一部は廃止されています。
次章では、東証一部が廃止になった背景について詳しく解説していきます。
2022年にマザーズや東証一部は廃止
先述した通り、2022年4月4日にマザーズや東証一部は廃止されました。
その理由として挙げられるのが、以下の2点が課題だったことです。
- 各市場区分のコンセプトが曖昧でかつ投資家の利便性が低い
- 上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けが不十分
かつて東証一部上場企業は、優良企業である証のように認識されており、多くの会社が目指していました。しかし、上場後に業績が悪くなる企業もあり、売買の成立がしにくいといった流動性の低い企業も散見されるようになったのです。
これらの背景によって、東証一部等は廃止され、以下3つの市場に再編となりました。
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
従来の東証一部は、上場する時の基準より維持する基準の方が緩い傾向にあったため、上場後も継続して各市場区分の新規上場基準の水準を維持できるように市場再編を行なったのです。
なお、以前の市場区分と新しい市場区分の対応については、およそ以下の通りとなるため、参考にしてみてください。
以前の市場区分 | 現在の市場区分 | |
市場第一部 | → | プライム市場 |
市場第二部、JASDAQスタンダード | → | スタンダード市場 |
マザーズ、JASDAQグロース | → | グロース市場 |
東証一部と東証プライムの違い
東証一部と東証プライムの違いは、上場基準と上場維持基準の数値にあります。
東証プライムは、東証一部とは異なり上場基準と上場維持基準の数値が同じであるため、上場してから維持するのが大変です。
また、東証プライムは国際的な投資家からの投資も頻繁に行われる傾向があるため、「環境・社会・経済」といった観点を持ちつつ企業価値向上を図るための活動も必要となるでしょう。
上場するために必要な条件
ここからは、上場するために必要な条件をご紹介します。
あらかじめ上場するために必要な条件を理解しておけば、クリアするために必要なことが明確にでき、少しでも早く上場を達成できるようになるでしょう。
以下3つの市場ごとにお伝えするため、ぜひ参考にしてみてください。
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
それでは、順番に解説します。
プライム市場
プライム市場とは、3つの市場の中で最も上位の市場です。
グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業が多く参入しており、中長期的な企業価値の向上にコミットしている企業が多く存在しています。
そんなプライム市場へ上場したい場合、以下の表に記載されている条件等を満たす必要があります。
流通株式時価総額 | 100億円以上 |
流通株式数 | 2万単位以上 |
時価総額 | 250億円以上 |
株主数 | 800人以上 |
流通株式比率 | 35%以上 |
収益基盤 | 最近2年の利益合計25億円 |
経営成績・財政状態 | 売上高100億円以上かつ 時価総額1,000億円以上・純資産額50億円以上 |
これらの上場基準は、スタンダード市場とグロース市場よりも厳しめに設定されています。審査基準を達成させるためには、社員一人ひとりが責任感を持って仕事に取り組むことが重要です。
逆に上記基準を満たせば、国内外の幅広い投資家から資金の調達をしてもらえるといったメリットが期待できます。プライム市場に上場できるよう、ぜひ参考にしてみてください。
スタンダード市場
スタンダード市場とは、公開された市場における投資対象として十分な流動性とガバナンス 水準を備えた企業向けの市場です。上場企業として最低限の公開性があり、安定的な収益基盤や財政状態を有していることが求められます。
そんなスタンダード市場へ上場したい場合、以下の表に記載されている条件を満たす必要があります。
流通株式時価総額 | 10億円以上 |
流通株式数 | 2,000単位以上 |
時価総額 | - |
株主数 | 400人以上 |
流通株式比率 | 25%以上 |
収益基盤 | 最近1年間の利益が1億円以上 |
経営成績・財政状態 | 純資産額が正であること |
スタンダード市場に上場する条件の難易度は、グロース市場より基準が難しく、プライム市場よりも緩いという位置づけです。
スタンダード市場に上場すれば、コーポレート・ガバナンスや内部管理体制が整った優良企業とみなされやすいというメリットが期待できるでしょう。
仮に上場することができ、維持もできれば、常に安定した収益基盤や財政状態を備えている企業という証明もできるため、まずは上場できるように、上記条件をぜひ参考にしてみてください。
グロース市場
グロース市場は、高い成長の可能性を実現させることを目指している企業向けの市場です。また、通常の株式市場と比べてリスクやボラティリティ(変動性)が高いとも言われています。
そんなグロース市場へ上場したい場合、以下の表に記載されている条件を満たす必要があります。
流通株式時価総額 | 5億円以上 |
流通株式数 | 1,000単位以上 |
時価総額 | - |
株主数 | 150人以上 |
流通株式比率 | 25%以上 |
収益基盤 | - |
経営成績・財政状態 | - |
グロース市場は、3つの市場の中で最も基準が緩い傾向があります。
とはいえ、グロース市場に上場している企業と認知されるだけでも、将来性のある企業だと認識され、リスク許容度の高い投資家から資金を調達がしてもらいやすくなるでしょう。
ぜひ参考にしてみてください。
東証プライム市場の経過措置
東証プライム市場の経過措置とは、市場再編に伴い上場基準を満たしていない企業でも一定の期間を設けて上場を支援するための措置です。これにより、特定の要件に一時的に適合しない企業でも上場する機会を得ることができます。
経過措置は、一部の企業に対して上場のチャンスを提供するものでもあり、東証の上場基準の一貫性と市場の信頼性を保つために慎重に運用されます。
しかし、この措置の期限が明らかになっていなかったため、投資家から「市場の魅力がわからなくなってきている」といった批判の声が相次ぎました。この結果を踏まえて、東京証券取引所は経過措置の期間を2025年3月で終了することになりました。
経過措置が終了してから1年以内に基準を満たせない場合は、上場廃止のおそれがあるため、注意しましょう。
まとめ
本記事では、マザーズから東証一部への昇格に必要な条件をご紹介し、 東証プライム市場の経過措置についても解説しました。
東証マザーズから東証一部へ昇格したい経営者の方は、まずはマザーズ・東証一部が廃止されたことを頭に入れておき、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場で上場基準が違うことも理解しておく必要があります。上場するためには、各市場で設けられている条件をクリアしなければなりません。自社を上場させたい経営者の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
よくある質問
マザーズから東証一部への昇格に必要な条件は?
先述した通り、マザーズから東証一部(現在のプライム市場相当)への昇格に必要な条件は、主に以下の通りです。
- 株主数:800人以上
- 流通株式数:2万単位以上
- 流通株式時価総額:100億円以上
- 流通株式比率:35%以上
- 時価総額:250億円以上
- 収益:最近2年の利益合計25億円
- 純資産の額:連結純資産の額が 50 億円以上
マザーズや東証一部が廃止されたのはなぜ?
マザーズや東証一部が廃止された理由は、主に以下の通りです。
- 各市場区分のコンセプトが曖昧でかつ投資家の利便性が低い
- 上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けが不十分
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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