- 更新日 : 2025年3月27日
購買業務における内部統制のポイント6つ|リスクもわかりやすく解説
内部統制を行うにあたり、気を付けるべきポイントに購買業務があります。企業によっては大きな力を持っており、それが行き過ぎた結果不正が発生した例も少なくありません。不正の温床にしないために、内部統制を行うことが重要です。
本記事では、購買業務の概要とそれに潜むリスク、内部統制のポイントを6つ解説します。購買業務における内部統制の実施を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
購買業務とは
購買業務とは、商品や原材料を購入して在庫として管理し、代金を支払うまでのフローを担当する業務のことです。仕入れを合わせて実施することもあり、この業務だけで以下のプロセスが完成しています。
- 仕入先への注文
- 商品の検品と保管
- 代金の支払い
購買業務は、実際に現金や手形といった金銭関連や商品・原材料に触れる部門であり、企業によっては経営や財源に影響を与える権限を持っている可能性があります。その中でも仕入れ実務の現場には不正につながりかねない要因が多く潜んでおり、実際に不正が発生した事例があるのも事実です。
内部統制には、この購買業務の仕組みを整理することで不正を未然に防ぎ、トラブルの種にならないようにする意味があるのです。
購買業務に潜むリスク
購買業務に潜むリスクはいくつかありますが、代表的なものは以下の2つです。
- 購買担当者と取引先の癒着
- 購買業務の属人化
それぞれどのような仕組みでリスクがあるのか、詳しく解説します。
購買担当者と取引先の癒着
購買担当者と取引先との癒着は、商品調達のコスト高を招き、会社の業績に大打撃を与えかねません。取引先は購買担当者に対して積極的に営業活動を行いますが、中にはバックマージンを渡して取引を成立させようとするケースも存在しています。
これらの勧誘で購買担当者と癒着関係になると、従来よりも高額な調達コストが発生する可能性があり、企業の財務状態の悪化を招く恐れがあります。一般に知られると社会的信用が地に落ちてしまうことは言うまでもないでしょう。企業としての法的責任を問われることもあるため、絶対に避けたいリスクです。
購買業務の属人化
購買業務はさまざまな書類をやり取りすることから属人化しやすいという特性があります。企業によって取り扱う帳票が異なるため、外部で購買担当をしていた人材が来ても即戦力とはなりえず、根本的に属人化の解消にはなりません。属人化してしまうと引継ぎが困難になったり業務にローカルルールが出来上がってしまったりするため、不正が生まれやすい環境となってしまうでしょう。
また、手書き帳票などが残っている場合、記載ミスやダブりを引き起きして財務体質が悪化する原因になることもあります。属人化とあわせて解決しておかなければ、企業の財務状況に影響を与えるのは必至です。
購買業務における内部統制のポイント
購買業務における内部統制のポイントは、以下の6つです。
- 購買管理規定を作成する
- 購買基準を明確に設定する
- 役割を分担する
- 信用できる仕入れ先を選定する
- 検収手続きは適正かつ迅速におこなう
- 買掛金残高の管理を徹底する
どのような効果があるのか、また何に注意をするのかを合わせて解説します。
購買管理規定を作成する
購買管理規定とは、購買管理に関する不正を防止するために定めるルールのことです。内容は以下の7つで構成されており、購買業務の担当者はこの規定を順守しなければなりません。
- 総則
- 購買計画
- 取引先
- 発注
- 検収
- 仕入れ計上
- 支払い
適切な購買管理を行うためには細かく設定をしなければならず、上記のような項目が必要となります。この規定を作成・実行したうえで適正価格での商品・原材料の購入をする必要があります。
購買基準を明確に設定する
購買基準とは、取引先から商品や原材料を購入する際の基準です。個人の裁量で判断していると不正の温床になってしまう可能性のほか、安定した物資の調達ができなくなってしまいます。それらを防止する目的で購買基準を策定する必要があるのです。
購買基準に明記する項目は以下の通りです。
- 商品の仕様
- 購買先
- 選定条件
- 購入条件 など
役割を分担する
発注担当者と検収担当者を分けることも、購買管理における内部統制の実施では欠かせません。両方の仕事を兼務していると仕入れ先からの営業で不正を働いてしまう可能性があります。仕入れ先から請求書を受け取る場合、処理を行うのは支払い担当にするなどのルールも作りましょう。
同時に、属人化を防ぐ目的で購買業務が特定の人物で長期化しないようするのも良い方法です。担当者の配置換えが定期的に行われていると、仕入れ先との癒着の可能性が低くなります。
信用できる仕入れ先を選定する
信用できる仕入れ先を選ぶことも重要です。ここでいう信頼とは、ビジネスにおいて誠実で信用できるかどうかという意味です。例えば、取引先に対して作業にかかった時間や作業内容を報告してもらうことで、信頼できるかどうかを判断しましょう。これらの質問に答えられない場合は、可能性のひとつとして不正を働かれている可能性があります。
予算消化率を毎週確認するのも方法のひとつです。取引をするにあたり、こちらの質問に誠実に答えられる相手であれば信用できると判断していいでしょう。
検収手続きは適正かつ迅速に行う
検収手続きを適正かつ迅速に行うことも、購買業務における内部統制で重要です。迅速に検収を行うことで、不正が発生する隙を与えずに支払いまでたどり着けます。この時確認するのは納品者ではなく、自社が取引先に渡した発注書をもとに確認してください。こちらの依頼通りの商品が納品されているかを確認するためです。
買掛金残高の管理を徹底する
買掛金とは、商品や原材料を仕入れた際の掛け取引で使用する勘定科目であり、あとで支払わなければならない残高を買掛金残高と言います。不正につながりやすい項目は返品や値引き、割戻しです。これらがどのようになっているかをきちんと追いかけなければなりません。管理の際には責任者に承認を得る仕組みにしてください。
まとめ
購買業務における内部統制を整備することで、不正が発生するリスクを少なくできます。ゼロになるわけではないものの、体制を整えておけば不正発生のリスクを下げられるでしょう。本記事で紹介した6つのポイントを意識し、内部体制をきちんとした形に整えることが重要です。
当社が提供する「マネーフォワード クラウド債務支払」をご活用いただくことで、購買業務における内部統制の強化が可能です。事前申請と支払申請の紐付けにより、不正な支出や不適切な手続きを防止し、組織の承認ルールに基づいたプロセスが構築できます。また、FB(ファームバンキング/総合振込)データをインターネットバンキングへAPI連携する機能によって、全銀データ(FBデータ)の手動登録が不要になり、手間の削減と内部統制に効果的です。購買業務における内部統制強化についてお悩みの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
よくある質問
購買業務における内部統制の重要性は?
購買業務に内部統制は、購買業務の担当者と取引先との癒着関係を阻止できるほか、業務の属人化を防ぐのに効果的です。
購買業務における内部統制のポイントは?
購買業務における内部統制のポイントは以下の6つです。
- 購買管理規定を作成する
- 購買基準を明確に設定する
- 役割を分担する
- 信用できる仕入れ先を選定する
- 検収手続きは適正かつ迅速におこなう
- 買掛金残高の管理を徹底する
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