- 作成日 : 2024年11月8日
IPO成功のために必要なITシステムとは?運用ポイントも解説
IPO(新規株式公開)の成功には、財務情報の透明性や法令の遵守、ガバナンス強化のほか、適切なITシステムの導入も欠かせません。しかし、ITシステムの導入には少なくない費用がかかる上、業務プロセスに大きな影響をもたらすため、慎重な判断が求められることも多いでしょう。
本記事では、IPOを目指す企業に必要なITシステムについて説明した上で、具体的なシステムやその役割を解説します。
目次
IPO準備におけるITシステムの重要性
まず、IPOを控える企業にとってITシステムがなぜ不可欠なのか、その重要性について解説します。
IPOを成功させるためには、企業が情報を正確に管理し迅速に報告する能力を持つことが重要です。この2点を実現するにあたり、ITシステムが非常に重要な役割を果たします。ITシステムがIPOの成功のために果たす役割は、主に次の3つです。
- データ管理による透明性確保
- セキュリティとコンプライアンス強化
- 効率化によるコスト削減
まず、IPOに必要な財務データやその他の重要情報を適切に管理するためには、最新のデータ管理システムが有用です。最新のシステムを用いることで、IPO審査の際に要求される透明性を確保し、投資家や規制当局からの信頼を得ることができます。
またセキュリティとコンプライアンスの強化も、IPO準備において不可欠なプロセスです。これらに関わるITシステムが適切に整備されていない場合、企業は重大な情報漏えいリスクにさらされる可能性があります。これを防ぐため、データ保護とガバナンスの観点からもITシステムの強化が求められます。
さらに、IPOプロセス全体を効率化しコストを削減するためにも、企業は適切なITツールを導入し、業務の自動化を図る必要があるでしょう。
IPO準備に必要ITシステム
続いて、IPOで必要となるITシステムについて、主要な4つのシステムを例に挙げて紹介します。
- 内部統制システム
- 財務管理システム
- 法務対応システム
- コミュニケーションおよびコラボレーションツール
内部統制システム
IPOの審査プロセスでは、内部統制システムが非常に重要です。内部統制システムは、業務プロセスの透明性を確保し、不正を防止するために役立ちます。
具体的には、業務プロセスを見える化し組織全体のガバナンスを強化することでリスク管理を行い、規制当局や監査法人からの監査要求に迅速に対応することが可能となります。
また、内部監査プロセスの自動化を実現することで、監査の効率化と正確性向上が期待できるでしょう。
なお、内部統制システムについては以下の記事で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
財務管理システム
財務管理システムは、全ての財務データを一元的に管理し、IPOに必要とされる正確な財務情報を提供する役割を果たします。
このシステムを使用することで決算作業が効率化され、監査対応の準備もスムーズに行うことができるようになるでしょう。
具体的には、財務管理システムが企業の全ての財務取引をリアルタイムで追跡することでデータの整合性を確保できるようになり、迅速かつ正確な財務報告を可能にします。迅速で正確な財務報告は、投資家の信頼獲得にもつながります。
さらに決算作業の自動化によって、人的エラーの削減や、業務のスピードおよび効率アップも期待できるでしょう。
法務対応システム
IPOのプロセスでは数多くの法的要件を満たすことが求められるため、法務関連のタスクを効率化するシステムも必要不可欠です。
例えば、契約管理システムは、企業が締結する全ての契約書や法的文書を一元的に管理し、迅速な対応を可能にします。
また、コンプライアンス遵守のためのドキュメント管理ツールを導入すれば、企業は規制当局からの要求に迅速に対応できるようになります。これによって、法的リスクを低減し、法務部門の作業効率を向上させることができるでしょう。
コミュニケーションおよびコラボレーションツール
IPOの準備プロセスでは、社内外のステークホルダーとの効果的なコミュニケーションが求められます。これを実現するためには、コミュニケーションおよびコラボレーションツールの導入が有効です。プロジェクトチームがリアルタイムで情報を共有し、迅速な意思決定を行うことができる環境を整備しましょう。
適切なツールの使用は、チームの生産性を向上させ、IPOプロセス全体のスムーズな進行を支援します。
システムを効果的に運用するためのポイント
次に、セキュリティやデータガバナンスなどの観点から、効果的なシステム運用を行うためのポイントを解説します。単にツールを導入して終わりではなく、仕組みや運用などのソフト面の対応も欠かせません。
セキュリティとデータ保護の強化
IPO準備では大量の機密情報と個人情報を扱うため、これらを適切に保護することが求められます。情報漏えいやサイバー攻撃に対する防御策として、最新のセキュリティ技術を導入することが不可欠です。
具体的には、サイバーセキュリティの強化やリスク管理のためのツールを導入することで、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
さらに、データバックアップとリカバリー計画を整備しておくことで、万が一の事態に迅速に対応できる体制を整えることも重要です。インシデント対応プロトコルを策定し、セキュリティインシデントへの備えも同時に行いましょう。
システム統合とデータガバナンスの確立
複数のシステムを統合することで、業務の効率化だけでなく、データの正確性と整合性を保つことも可能になります。例えば、財務管理システムや内部統制システム、法務対応システムを連携させることで、情報の一貫性を維持し、業務プロセスを最適化することができるでしょう。
また、データガバナンスフレームワークの導入によってデータの品質管理やアクセス制御を強化し、データの信頼性を高めることもポイントとなります。
さらに、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを活用して収集したデータを分析し、IPO後の戦略的意思決定を支援することも可能です。
システム導入・強化のためのロードマップ
最後に、ITシステムを導入する際の実践方法を解説します。
IPO準備のためには、適切なITシステムの導入と強化が必要ですが、それには計画的なアプローチが求められます。一般的なシステム検討のロードマップとしては、次の4つのステップが挙げられるでしょう。
- 現状の運用を分析し、改善点を明確にするためのギャップ分析を実施
- 優先順位を設定し、リソースの最適な配分を決定
- 社内体制を整備し、ステークホルダーを巻き込み、社内の各部門と連携を図る
- 信頼性の高いベンダーを選定し、プロジェクト管理のポイントを明確にする
これらを、素早いPDCAサイクルの中で実践していくことが重要です。
まとめ
本記事では、IPO時に検討すべきITシステムの必要性と具体的なシステム例、またその際に検討すべきポイントや、導入へのロードマップについて解説しました。
IPOの成功には、適切なITシステムの導入と運用が欠かせません。ITシステムは企業の情報管理能力を向上させ、透明性と効率性を確保するための基盤を提供してくれます。
IPOを見据えている企業は、本記事のポイントを踏まえて、IPOに向けた準備を万全に整えましょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
やることリスト付き!内部統制構築ガイド
内部統制を基礎から知りたい方・内部統制の導入を検討している担当の方・形式だけになっている内部統制を見直したい方におすすめの人気ガイドです。
内部統制の基本と内部統制構築のポイントをギュッとまとめています。
J-SOX 3点セット攻略ガイド
すべての上場企業が対象となるJ-SOX(内部統制報告制度)。
本資料では、IPO準備などでこれからはじめてJ-SOXに対応する企業向けにJ-SOXの基本からその対応方法までをまとめた、役立つガイドです。
経理担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ12選
経理担当者がChat GPTをどのように活用できるか、主なアイデアを12選まとめた人気のガイドです。
プロンプトと出力内容も掲載しており、コピペで簡単に試すことも可能です。
マネーフォワード クラウド会計Plus サービス資料
マネーフォワード クラウド会計Plusは、IPO準備・中堅〜上場企業向けの業務効率化と内部統制強化を実現するクラウド会計ソフトです。
銀行やクレジットカード連携で取引データを自動取得、AIによる自動仕訳で会計業務を効率化。周辺システムと連携することで、二重入力や確認工数を削減します。また、仕訳承認機能やユーザーごとの権限・ログ管理機能を搭載しており、内部統制にも対応。SOC報告書も提供しています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
管理部門・管理課とは?業務内容や必要なスキルを徹底解説
管理部門は、人事・経理・総務・法務などの業務を担当し、組織の経営資源を管理・最適化する役割を担います。 本記事では、管理部門・管理課の業務内容や職種別の役割、必要なスキルなどについて解説します。 管理課(管理部門)とは|企業の経営資源を管理…
詳しくみるIPOにおける内部統制の重要性|監査免除でも内部統制報告書の提出はすること!
IPO(新規株式公開)に向けて、内部統制は企業の信頼性と透明性を高めるために欠かせない要素です。 適切な内部統制の整備は、法令遵守やリスク管理を徹底するだけでなく、投資家からの信頼を獲得し、企業の持続的成長を支援します。 本記事では、IPO…
詳しくみる上場(IPO)に向けてやることは?ワークフロー整備のポイントと合わせて解説
スタートアップにとって上場(IPO)は、1つの重要なマイルストーンとなっている場合も多いでしょう。上場によって開かれた株式市場に上がることで多くの投資家から資金を募ることができ、企業としての箔もつく一方、企業の成長や健全性に対してもその分更…
詳しくみる海外子会社における内部統制の必要性|導入手順や内部通報制度も紹介
企業のグローバル化に伴い、子会社が海外にあることも珍しくなくなりました。内部統制においては海外子会社も対象となることがあるものの、言語や習慣の違いから親会社と同じ内部統制を構築・評価できるわけではありません。 本記事では海外子会社における内…
詳しくみる脅威インテリジェンスでISMSを強化!基本から連携方法まで徹底解説
サイバー攻撃が高度化・巧妙化する現代において、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の重要性は増す一方です。しかし、形式的な運用だけでは十分な効果は得られません。そこで鍵となるのが「脅威インテリジェンス」の活用です。 この記事では…
詳しくみる社内不正調査とは?社内不正の事例や調査方法・対応の流れを解説
社内で不正行為が発覚した際には、迅速で適切な対応が求められますが、その具体的な対処方法がわからない企業も少なくありません。 不正が発覚した時こそ、丁寧な報告を行い、信頼性を保つことが重要です。 本記事では、社内不正調査の方法や流れを詳しく解…
詳しくみる


