- 更新日 : 2024年7月16日
ムーンショット目標とは?制定された背景や企業との関わり
ムーンショット目標とは、内閣府の政策の一つであるムーンショット型研究開発制度において掲げられている、9つの目標のことです。日本が抱える問題を解決するために破壊的イノベーションの創出を目指す目標で、2024年または2050年までの実現を目指しています。目標1は、サイバネッティク・アバター基盤を構築することを目指すものです。
目次
ムーンショット目標とは?
ムーンショット目標は、内閣府が進める政策の一つである科学技術・イノベーション分野における「ムーンショット型研究開発制度」で掲げられている目標です。ムーンショット型研究開発制度は破壊的イノベーションの創出を目指す、大型の研究プログラムです。従来技術の延長を担い、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発の推進を目的としています。
「ムーンショット」はもともと、1961年にジョン・F・ケネディ大統領がアポロ計画に関する演説の中で用いた言葉です。これがきっかけで、ビジネスにおいて達成できないと思われるような大きな挑戦を指す言葉として用いられるようになりました。既存の技術や知識では達成不可能と思われるような目標を設定し、その実現に向けて大胆な挑戦をすることを意味します。
ムーンショット目標が立てられた背景
日本でムーンショット目標が立てられた背景には、少子高齢化社会や大規模自然災害、地球温暖化といった問題の解決が必要とされていることがあります。これらの難しい問題の解決に取り組み、未来社会への展望を切り開くためにムーンショット目標が設定されました。欧米諸国や中国が破壊的イノベーションの創出を目指し、大規模な投資を行って成長を遂げていることに倣って設定され、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発が求められています。
ムーンショット目標における9つの目標
ムーンショット目標では、人々の幸福(Human Well-being)を実現するために以下の9つが設定されています。
- 身体、脳、空間、時間の制約からの解放2050年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会実現に向けた目標。誰もが多様な社会活動に参画できるサイバネティック・アバター基盤を構築することを目指す。
- 疾患の超早期予測・予防2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を目指す。
- 自ら学習・行動し、人と共生するAIロボット2050年までにAIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを目指す。
- 地球環境の再生2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を目指す。
- 2050年の食と農2050年までに未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食糧供給産業の創出を目指す。
- 誤り耐性型汎用量子コンピュータ2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータの開発を目指す。
- 健康不安なく100歳まで2040年までに主要な疾患を予防・克服し、100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システム構築を目指す。
- 気象制御による極端風水害の軽減2050年までに激甚化しつつある台風や豪雨を制御し、極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を目指す。
- こころの安らぎや活力を増大
2050年までにこころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を目指す。
ムーンショット目標の実現年はいつ?
ムーンショット目標7は2040年、それ以外は2050年までの実現を目指しています。また、以下のように内容ごとの実現年も設定されています。
- 身体、脳、空間、時間の制約からの解放2030年まで 1つのタスクに対して1人で10体以上のアバターをアバター1体の場合と同等の速度・精度で操作できる技術を開発し、その運用等に必要な基盤を構築する。2050年まで 大規模で複雑なタスクを実行するための技術を開発し、その運用等に必要な基盤を構築する。
- 疾患の超早期予測・予防2030年まで 人の臓器間ネットワークを包括的に解明する。2050年まで 疾患予測・未病評価システムを確立し、疾患の発症自体の抑制・予防を目指す、など。
- 自ら学習・行動し、人と共生するAIロボット2030年まで 一定のルールの下で一緒に行動して90%以上の人が違和感を持たないAIボットを開発する、など。2050年まで 人が違和感を持たない、人と同等以上の身体能力を持ち、人生に寄り添って一緒に成長するAIロボットを開発する、など。
- 地球環境の再生
2030年まで 温室効果ガスに対する循環技術を開発する、など。2050年まで 資源循環技術の商業規模のプラントや製品を世界的に普及させる。 - 2050年の食と農
2030年まで 倫理的・法的・社会的(ELSI)な議論を並行的に進めることにより、2050年までにグローバルに普及させる。2050年まで 微生物や昆虫等の生物機能をフル活用し、完全資源循環型の食料生産システムを開発する、など。 - 誤り耐性型汎用量子コンピュータ
2030年まで 一定規模のNISQ量子コンピュータを開発するとともに、実効的な量子誤り訂正を実証する。2050年頃まで 誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現する。 - 健康不安なく100歳まで
2030年まで すべての生体トレンドを低負荷で把握・管理できる技術を開発する、など。2040年まで 心身共に健康を維持できる社会基盤を構築する、など。 - 気象制御による極端風水害の軽減
2030年まで 台風や豪雨の被害を軽減するための操作について、屋外実験を開始する。2050年まで 制御によって極端風水害による被害を大幅に軽減し、幅広く便益を得る。 - こころの安らぎや活力を増大
2030年まで こころの安らぎや活力を増大する要素技術を創出する、など。2050年まで こころ豊かな状態を叶える技術を確立する、など。
ムーンショット目標に対して企業が行うアクションはある?
ムーンショット目標は日本が抱える課題の解決に必要な、社会として取り組むべき目標です。社会全体の変革を促すもので、その達成に向けて企業も大きな役割を果たすことが求められています。具体的にはリーダーシップの確立や組織文化の変革、研究開発の推進、イノベーションの創出といったことに対して、必要なアクションを取ることが求められます。
ムーンショット目標達成によって企業において変わること
ムーンショット目標の達成によって、企業には働き方や組織文化の変化がもたらされます。より柔軟な働き方が可能になり、より自律的な組織文化が生まれるでしょう。また、新しいビジネスモデルやテクノロジーの開発により、新しい市場や産業が生まれることも考えられます。
ムーンショット目標とともに企業に求められていることを理解しよう
ムーンショット目標とは、政策の一つであるムーンショット型研究開発制度において掲げられている、9つの目標のことです。日本が抱える問題を科学技術によって解決するために、破壊的イノベーションの創出を目的として掲げられました。2040年や2050年を実現年とし、それぞれの目標の中でもターゲットごとに実現年が設定されています。
ムーンショット目標によって、企業にも変化が求められています。ムーンショット目標とともに企業はどう変わるべきかを理解し、社会全体の変容に対して必要なアクションを起こせるようになりましょう。
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