- 更新日 : 2024年7月16日
360度評価とは?メリット・デメリットや評価項目、導入する方法を解説!
360度評価とは、従来の評価方法とは違って上司、部下、同僚など様々な立場の複数の人が評価対象者を評価する方法です。360度評価は他の評価制度と比べて、公平であり客観性に優れているのが特徴です。本記事では、360度評価のメリット・デメリット、評価項目、導入方法について解説します。
目次
360度評価とは
360度評価とは、従来の上司や人事担当者からの評価とは異なり、上司、部下、同僚などの複数の従業員が評価対象者を多角的に評価する方法です。複数の様々な立場の人から評価されるため、客観的で公平な評価になるのが特徴です。本項では、360度評価の目的や360度評価が注目される背景について解説します。
360度評価の目的
360度評価の目的の一つは、公正な評価が行われることです。従来の人事評価は上司などが部下に対して一方的に評価をするため、上司の主観や部下との関係性などにより必ずしも公正な評価が行われていたとは限りません。一方、360度評価は、様々な立場の複数の人から評価されるため、客観的で公正な評価が期待できます。
また、360度評価は、人材育成やモチベーションアップを目的としています。複数の人からの評価に基づくフィードバックにより、評価対象者のどのようなところが評価され何が足りないのかが分かります。このような指摘事項を改善していくことで、人材育成につながるのです。さらに、360度評価による公正な評価は、モチベーションアップにもつながります。
360度評価が注目される背景
近年における働き方の変化により、リモートワークなどが普及しました。このような働き方の変化の中で、従来の上司などの人事評価者が評価する方法では、評価対象者の仕事状況を近くで見れないこともあり評価が難しくなってきています。
また、年功序列から成果主義に変わっていった現代では、今までのような主観的な評価では公正な評価ができなくなってきて、客観的な評価が求められているのです。このような背景の中で、360度評価が注目されています。
360度評価のメリット
360度評価は、上司、部下、同僚などの複数の人から多角的に評価されることにより様々なメリットがあります。本項では、360度評価のメリットについて解説します。
公正で客観的な評価が可能になる
従来の評価方法は、上司などの一方的な主観によるものでした。しかし、360度評価は様々な立場の複数の人から多角的な評価がされるため、公正で客観的な評価が行われます。公正で客観的な評価は、従業員のモチベーションアップやスキルアップにつながるのです。
エンゲージメントの向上につながる
360度評価によるポジティブなフィードバックを受けたときは、自分が公正に評価されていると感じ、自分が属しているチームなどへの信頼感が増します。その結果、エンゲージメントが向上し、生産性や業績の向上につながるのです。
上司の顔色のみをうかがわなくなる
従来の評価方法は、上司のみの一方的な評価によって決まることが多くありました。その結果、上司の評価が高い人が昇給や昇進につながるため、上司の顔色や意向ばかりをうかがって仕事をしていく人が増えていったのです。
360度評価は上司のみならず様々な人からの多角的な評価のため、上司の顔色のみをうかがって仕事をする人が少なくなります。
改善点に気づける
360度評価による複数人からのフィードバックにより、自身の長所と短所が分かります。その結果、自身の能力や伸ばせるところ、改善点などに気づくことができ、これからどのような行動をすればよいのかが分かるのです。
また、管理職にとっても行動やマネジメント能力を同僚や部下にまで多角的に評価されるため、修正しなければならない改善点に気づくことができます。
評価対象者が評価に納得できる
360度評価は、従来の評価の不公平感を払拭する公正な評価です。上司だけでなく、部下、同僚などの複数の人が評価をするため、評価対象者の納得感が高くなります。
360度評価のデメリット
360度評価には公正な評価ができるなどの様々なメリットがありますが、よい面ばかりではありません。本項では、360度評価のデメリットについて解説します。
運用コスト、時間、労力が必要
1人の評価対象者に対して多くの従業員が評価にかかわる360度評価には、多くの時間と労力が必要です。上司などの一部の従業員がかかわる従来の評価と比較して多く従業員がかかわるため、運用コストがそれだけかかります。
多くの従業員が評価に慣れていない
多くの従業員が評価をしなければならない360度評価ですが、ほとんどの人が他の人の評価などをしたことがありません。
評価のスキルがない従業員が評価をすると、評価が主観や感情で行われることもあります。そのため、スキルがない従業員がする評価は、客観的や公正な評価にならない可能性があるでしょう。
部下からの評価が気になると上司の指導が甘くなる可能性がある
360度評価は、部下が上司のことを評価するケースもあります。上司が部下からの評価を気にすると、低い評価をされないために、部下に対しての指導が甘くなってしまう可能性があります。
上司が部下に対して甘い指導をすることは、組織の管理体制上も人材育成に対してもよいことではありません。
人間関係によって主観的な評価になる可能性がある
360度評価は多角的に評価をするため、社内の人間関係によって評価が左右される可能性があります。例えば、仲のよい従業員への評価が高くなり、仲の悪い従業員への評価が低くなるなどです。
360度評価の具体的な評価項目
360度評価を実施するにあたって、上司から部下への評価項目と、部下から上司への評価項目と、同僚から同僚への評価項目があります。本項では、360度評価の具体的な評価項目について解説します。
上司から部下への評価項目
上司が部下を評価する基準となる評価項目は、以下のとおりです。
- 実務遂行力仕事を最後までやり遂げられているかや、目標を達成しているかを評価します。
- 主体性上司に頼ることだけでなく、自主的に行動しているかを評価します。
- 協調性チーム内やその他の場でも、協力して仕事を進めているかを評価します。
- 解決力問題や課題について、解決できているかを評価します。
- 論理的思考力仕事に優先順位をつけて、効率的に進められているかを評価します。
部下から上司への評価項目
部下が上司を評価する基準となる評価項目は、以下のとおりです。
- リーダーシップ日常的に部下に対してリーダーシップを発揮しているかを評価します。
- 組織運営力チームを作って、そのチームの関係性を良好に運営しているかを評価します。
- 人材育成能力部下やチームへのサポートと、メンバーを育成できているかを評価します。
- 判断力意思決定に関して、正確な判断ができているかを評価します。
- 業務遂行力業務がスムーズに進み、目標を達成しているかを評価します。
同僚から同僚への評価項目
同僚から同僚への評価項目は、上司から部下への評価項目と同じです。
360度評価のコメント例文
360度評価は、評価をした人が評価シートのコメント欄などにコメントを記載して、評価対象者にフィードバックします。本項では、360度評価のコメント例文を紹介します。
部下から上司へのコメント例文
部下が上司を評価する場合のコメントは、マネジメント力に対するものが中心です。チームの全体が見れているかや、部下に対する管理やフォローができているかを意識してコメントするとよいでしょう。
- チームの先頭に立って、部下の特徴を理解した上で個別にフォローしてくれる。
- チームのメンバーのそれぞれの仕事の状況を理解しているため、相談しやすく業務が順調に進んでいる。
- 部下の意見も受け入れながらも最適な提案をしてくれるため、前向きに仕事ができる。
上司から部下へのコメント例文
上司が部下を評価する場合のコメントは、批判的なものになってはいけません。褒めるところは褒めて、モチベーションアップにつながるコメントをするとよいでしょう。
- 残念ながら目標は達成できなかったが、営業スキルアップのための勉強や努力については評価できる。
- 少々指示待ちのところがあるが、指示された仕事は完璧にこなすので自分から積極的に行動できればよくなる。
- 業務のスキルや能力は高いので、これからは自分のみならずメンバーの教育も期待したい。
同僚へのコメント例文
同僚を評価する場合のコメントは、役職の違いがないなどの近い関係のため、主観的になりがちです。近い関係だからこそ気づけることを、コメントとして記載するとよいでしょう。
- 積極的に提案をするなど仕事に対する意欲が高いが、自分の意見がすべて正しいと思いがちなので柔軟性を持つとよいと思う。
- 人一倍努力をして長時間仕事に打ち込んでいるところは尊敬に値するが、一人で仕事を抱え込むところがあるので他の人をもっと信頼してもよいと思う。
- 明るく誰にでも積極的に挨拶をしているので、会社が明るく楽しい雰囲気になるのがとてもよい。
360度評価のテンプレートシート
360度評価のフォーマットについては、以下のリンクから無料でダウンロード可能です。
自由に使用いただいて問題ありません。ぜひご活用ください。
360度評価を導入するポイント
360度評価を導入するには、いくつかのポイントや注意点があります。本項では、360度評価を導入するポイントについて解説します。
導入目的の明確化と共有
360度評価を導入する場合には、上司だけでなく部下も評価する側になります。そのため、何のために360度評価を導入してどのように活用していくのかを明確化して、評価する側になる全従業員に共有して理解を得なければなりません。
評価基準を定める
大勢の従業員が360度評価の評価側になるため、評価基準を定めておく必要があります。評価基準を定めていない場合には、評価者によって評価が異なり不公平な評価になります。評価基準のガイドラインを作成して、周知しておくとよいでしょう。
評価項目の厳選化
360度評価の評価項目は、できるだけ厳選してあまり多くならないようにしたほうがよいでしょう。評価項目が多くなると従業員が評価にかける時間と労力が増えるため、実際の業務に影響を与える可能性があります。
全従業員を対象にする
評価の対象となる従業員は、すべての従業員としなければなりません。全従業員を対象としなければ、公正と客観性を欠いてしまいます。
360度評価を導入した企業事例
360度評価を導入する企業は、増えてきています。本項では、実際に360度評価を導入した企業の導入事例について紹介します。
アイリスオーヤマ株式会社
アイリスオーヤマ株式会社の評価方法は、実績、プレゼンテーション、360度評価の合算です。実績はもちろん評価対象にはなりますが、実績だけでは評価しません。実績の他にも課題に沿って論文を書かせて、それをもとにプレゼンテーションをします。
さらに、1人の従業員に対して上司、部下、関連部署の社員などの15~20人が一斉に評価する360度評価を合わせて従業員の評価としています。
参考:アイリスオーヤマ、躍進のカギは人事評価 下位1割降格|日本経済新聞
住友林業株式会社
住友林業株式会社の360度評価は、経営総合職の従業員のうち、組織マネジメントを担当する従業員とマネジメント職を目指す従業員を対象に実施されました。この評価結果により現在の状態を認識し、マネジメントにつながるヒントを得ることで、アクションプランを描き実践につなげられるようにフィードバックしています。
また、評価対象者の責任者に対しても、指導や評価の参考にするために評価結果をフィードバックしています。
360度評価は評価後のフィードバックが大事
360度評価を導入することで、従来の評価とは異なった公正で客観的な評価が可能となります。しかし、評価するだけでは従業員の行動の改善にはつながらないため、あまり意味がありません。360度評価をしてその結果と改善策をフィードバックすることで、従業員自身の行動の改善による成長とモチベーションアップにつながっていくでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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